循環器トライアルデータベース

DREAM
Dutch Randomized Endovascular Aneurysm Repair

目的 腹部大動脈瘤に対する血管内治療は周術期の生存率で開腹手術より優れていることが示されているが,この有効性は2年以上持続しないといわれている。そこで臨床的意思決定に重要な血管内治療の長期(2年以上)の有効性を検証する。
一次エンドポイントは全死亡率と再介入(手術あるいは血管内治療)率。
コメント 腹部大動脈瘤に対する血管内治療はより非侵襲的であり,アメリカでは最も選ばれている治療手段である。周術期の生存率は開腹手術より優れているが耐久性に欠け,後期の破裂のリスクが高く再介入率が高いと報告されている。どちらの治療法を選択するかには長期の予後データが不可欠であり,本研究では両治療が可能な症例へのランダム化多施設長期比較試験を行った。
結果は予想通りであり,6年後の生存率は同等で再介入率は開腹手術で少なかった。術後30日での生存率は血管内治療が有意に良かったが,2年後にはこの差は消失している。これまでの同様の比較試験では,術後4年の予後を見たEVAR 1 trialでは3年後以降まで観察された症例は半分以下であり,OVER trialでは2年間の観察のみであった。これに対し本研究ではすべての症例を長期に観察している。ランダム化されていない症例を後ろ向きに9年間観察した報告でも本研究と同様の結果を示している。血管内治療後4年以上たっても血管内グラフトのずれやリーク,下肢血栓症に由来する再介入が必要となり,長期のQOLの低下や6年以降での生存率の低下も示唆されうる。しかし,本研究では5年後のCT検査を受けているのは血管内治療群ではほぼ全例であるが,開腹手術群では1/4に過ぎず再介入率にバイアスは否めない。最近ではデバイスや術者の技術の向上もあるので,どのような症例が血管内治療に適しているかを判断でき,長期の再介入率を低下させうると考えられる。
実臨床では,各症例の合併症や予後予測を考慮し血管内治療が優先される症例や,逆に解剖学的に血管内治療が出来ない症例もありうるが,両治療には長所も短所も存在する。両治療が同等に可能な症例に対して本研究結果はインフォームドコンセントの材料となるであろう。(星田
デザイン 無作為割付け,多施設(30施設:オランダの26施設,ベルギーの4施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は6.4年(中央値)。
ランダム化期間は2000年11月~2003年12月。
対象患者 351例。直径≧5cmの腹部大動脈瘤を有し待機的血管内手術,開腹手術適応例。
除外基準:緊急大動脈瘤修復術が必要なもの;炎症性腹部大動脈瘤;解剖学的変異(馬蹄腎など);結合組織疾患など。
■患者背景:平均年齢(血管内治療群70.7歳,開腹手術群69.6歳),男性(93.1%, 90.4%),SVS/ISCVS(Society for Vascular Surgery/ International Society for Cardiovascular Surgery)分類で軽度以上のリスク因子保有例:糖尿病(10.4%, 9.6%);喫煙(64.2%, 55.1%);高血圧(58.4%, 54.5%);高コレステロール血症(47.0%, 52.6%);頸動脈疾患(14.5%, 15.2%);心疾患(41.0%, 46.6%);肺疾患(27.7%, 18.5%;p=0.04),努力呼気量(2.5L/秒, 2.6L/秒),BMI(26.3kg/m2, 26.6kg/m2),ASA(American Society of Anesthesiologists)クラス:I(healthy:21.4%, 24.7%);II(mild systemic disease:70.5%, 61.8%);III(severe systemic disease:8.1%, 13.5%)。
薬物治療状況:β遮断薬(43.9%, 51.7%),スタチン系薬剤(37.3%, 41.9%),抗血小板薬(40.5%, 40.4%),ACE阻害薬(33.5%, 28.1%),Ca拮抗薬(17.3%, 18.0%),抗凝固薬(11.6%, 15.2%)。
治療法 血管内治療群(173例),開腹手術群(178例)。
血管内治療群では毎年追跡外来時にCTを実施。開腹手術群では毎年医師に会うことを勧めたが,術後3~4年後は追跡を積極的には行わなかった。全例5年後に電話連絡し,追跡検査とCTを実施。
データ収集は2009年2月1日で中止した。
結果 追跡期間は全例5年以上,6年が79%,7年が53%。
追跡を完了したのは血管内治療群99.7%,開腹手術群99.3%。

ランダム化から6年後の累積生存率は,血管内治療群68.9% vs 開腹手術群69.9%(両群差1.0パーセンテージポイント;95%信頼区間-8.8~10.8, p=0.97)。
開腹手術群では周術期の死亡率が上昇したが,退院後は血管内治療群で死亡リスクが増大した(心血管起因よりも,その他の理由によるものが多かった)。
再介入非発生率は70.4% vs 81.9%(11.5パーセンテージポイント;2.0~21.0, p=0.03)。再介入として血管内治療を実施したのは,開腹手術群の再介入41件中5件,血管内治療群の再介入69件中25件。再介入が2回必要であったものは,開腹術群9例,血管内治療群14例,3回必要だったものは,それぞれ2例,7例。
★結論★腹部大動脈瘤に対する血管内治療と開腹手術の6年間の生存率は同程度であるが,再介入率は血管内治療のほうが有意に高い。
ClinicalTrials. gov No: NCT00421330
文献
  • [main]
  • De Bruin JL et al for the DREAM study group: Long-term outcome of open or endovascular repair of abdominal aortic aneurysm. N Engl J Med. 2010 ;362: 1881-9. PubMed
    Kent KC: Endovascular aneurysm repair--is it durable? N Engl J Med. 2010; 362: 1930-1. PubMed

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EBM 提供:大日本住友製薬 「循環器トライアルデータベース
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収載年月2010.07