循環器トライアルデータベース

UK EVAR
United Kingdom Endovascular Aneurysm Repair

目的 (1) EVAR 1:腹部大動脈瘤患者において,血管内治療*の長期転帰を開腹手術*と比較する。EVARはEVAR 1と2から成る。
(2) EVAR 2:開腹手術が身体的に不適応な患者における血管内治療の有効性を検討する。
一次エンドポイントは,(1),(2)とも全死亡,グラフト関連合併症および再介入。
* 開腹術は1951年から実施され,血管内治療の最初の報告がされたのは1986年。開腹術の長期転帰に対する有効性には強いエビデンスがある一方で,血管内治療は30日後の死亡には顕著な有効性を示しているが長期の転帰に関しては十分なエビデンスがない。また,血管内治療は本来開腹手術が身体的に不適応とされた患者のために開発された。
コメント 腹部大動脈瘤に対するステントグラフトによる血管内治療については,国内ではその実施にあたり,施設基準や実施医基準が詳細に設定されている。UK EVAR 1では,血管内治療と開腹術で総死亡に差がなかったが,合併症やコストにおいて,血管内治療に不利な結果となった。また,EVAR 2においても,血管内治療群における総死亡率は非介入群と大きな違いがなかった。腹部大動脈瘤に対する血管内治療については,デバイスや手技が一層進歩することが必要であると思われる。(中村中野永井
デザイン EVAR 1:無作為割付け,多施設(英国の37施設),intention-to-treat解析。
EVAR 2:無作為割付け,多施設(英国の33施設),intention-to-treat解析。
期間 (1) EVAR 1:追跡期間は6年(中央値)。
(2) EVAR 2:追跡期間は3.1年(中央値)。
(1),(2) とも登録期間は1999年9月1日~2004年8月31日。追跡は2009年9月1日まで。
対象患者 (1) EVAR 1:1,252例(2005年の中間解析は1,082例で行い,2004年1月~8月に170例を登録)。60歳以上で,大きな(直径≧5.5cm)腹部大動脈瘤がCTで評価されたもの,開腹術あるいは血管内治療が臨床的にも解剖学的にも適応と考えられるもの。
■患者背景:平均年齢(血管内治療群74.1歳,開腹術群74.0歳),男性(90.3%, 91.1%),腹部大動脈瘤直径(6.4cm, 6.5cm),BMI(両群とも26.5kg/m²),糖尿病(9.8%, 11.0%),喫煙:現在の喫煙者(21.4%, 21.8%);喫煙歴(67.0%, 71.0%),心疾患既往(43.0%, 41.8%),血圧(148/82mmHg, 147/82mmHg),足関節-上腕血圧比(ABI)(1.01, 1.03),1秒の努力呼気肺活量(2.1L, 2.2L),クレアチニン(中央値:両群とも102μmol/L),総コレステロール(両群とも197.2mg/dL),スタチン系薬剤使用(34.9%, 36.0%),aspirin(54.0%, 51.9%)。
(2) EVAR 2:404例(2005年の中間解析は338例で行い,2004年1月~8月に66例を登録)。60歳以上で,大きな(直径≧5.5cm)腹部大動脈瘤がCTで評価されたもの,開腹術は不適応であるが,血管内治療は適応と考えられるもの。
■患者背景:平均年齢(血管内治療群77.2歳,非介入群76.4歳),男性(85.3%, 86.5%),腹部大動脈瘤直径(6.8cm, 6.7cm),BMI(26.4kg/m², 26.5kg/m²),糖尿病(15.4%, 14.1%),喫煙:現在の喫煙者(16.8%, 17.9%);喫煙歴(77.2%, 75.4%),心疾患既往(67.0%, 73.9%),血圧(140/79mmHg, 139/79mmHg),ABI(0.99, 0.98),1秒の努力呼気肺活量(1.6L, 1.7L),クレアチニン(中央値:107μmol/L, 112μmol/L),総コレステロール(両群とも185.6mg/dL),スタチン系薬剤使用(41.8%, 41.5%),aspirin(58.2%, 55.1%)。
治療法 (1) EVAR 1
血管内治療群(626例),開腹術群(626例)にランダム化。
(2) EVAR 2
血管内治療群(197例),非介入群(207例)にランダム化。
(1),(2)とも,ランダム化から1か月以内の実施を奨励。CTを血管内治療例には1・3か月後,全例に年に1回実施した。
結果 (1) EVAR 1
[手技結果]
ランダム化から手技施行までの時間(中央値)は血管内治療群44日,開腹術群35日。
血管内治療群の非施行例12例(開腹術群24例)のうち,6か月以内の死亡は7例(7例)(破裂による死亡3例[3例]),身体的に不適格になったもの3例(7例),手技を拒否したもの1例(8例,うち3例死亡),大動脈の形の変化により解剖学的に不適格となったもの1例。開腹術群の2例は非施行の原因が不明で,2例とも死亡した。
[死亡]
・30日の手術死亡:血管内治療群11/164例(1.8%;緊急術施行1例を含む) vs
開腹術群26/602例(4.3%;緊急術施行1例を含む):血管内治療群の開腹術群に対する調整オッズ比0.39;95%信頼区間0.18~0.87(p=0.02)。
・総死亡,動脈瘤関連死:6,904人・年の追跡で524例が死亡,うち動脈瘤関連死は76例。
総死亡率は血管内治療群7.5例/100人・年 vs 開腹術群7.7例/100人・年:調整ハザード比(HR)1.03;0.86~1.23(p=0.72)。比例ハザード推定による有意な偏差はみられなかった(p=0.11)。
総動脈瘤関連死は1.0例/100人・年 vs 1.2例/100人・年:調整HR 0.92;0.57~1.49(p=0.73) 。
早期(最初の6か月:調整HR 0.47;0.23~0.93, p=0.03)に総動脈瘤関連死に対する血管内治療群の有効性が認められたが,4年後以降はリスクが増大した(4.85;1.04~22.72, p=0.05)。原因の一つは,致死的血管内グラフトの破裂であった(25例発生し,30日以内の死亡率は68.0%と高かった)。
[グラフト関連合併症,再介入]
5,309人・年の追跡でグラフト合併症は360患者・567件:1件の発生は238患者,2件;67患者,3件;33患者,4件;17患者,5件;2患者,6件;3患者。
血管内治療群12.6例/100人・年 vs 開腹術群2.5例/100人・年:4.39;3.38~5.70(p<0.001)。
グラフト関連再介入は200患者・257件:1回の再介入は161患者,2回;26患者,3~5回;13患者。
5.1例/100人・年 vs 1.7例/100人・年:2.86;2.08~3.94(p<0.001)。
[コスト]
8年間の平均総コストは血管内治療群15,303ポンド(23,153ドル) vs 開腹術群12,284ポンド(18,586ドル)。
★結論★腹部大動脈瘤に対する血管内治療は開腹手術よりも手術死亡率を有意に低下させたが,長期総死亡,大動脈瘤関連死は両治療に差は認められなかった。血管内治療はグラフト関連合併症と再介入が増加し,コスト高であった。

(1) EVAR 2
[手技結果]
血管内治療群のランダム化から手技施行までの時間(中央値)は55日。
非介入群の70例(うち64例が待機的手技)が大動脈瘤修復術を施行(ランダム化から244日後[中央値])。血管内治療群の非施行例(18例)のうち,6か月以内の死亡は7例(破裂2例),肉体的あるいは解剖学的に不適格になったもの8例,手技を拒否したもの1例,2例が原因不明。
[死亡]
・30日の手術死亡:血管内治療群13例/179例(7.3%),入院中の死亡は15例(8.4%),待機的手技例(175例)中10例(5.7%)が手技から30日以内に死亡し,11例(6.3%)が入院中に死亡した。非介入群(70例)の30日以内の死亡は2例(3%),入院中の死亡は3例(4.3%)。
・総死亡,動脈瘤関連死:1,413人・年の追跡で305例が死亡,うち動脈瘤関連死は78例。
総死亡率は血管内治療群21.0例/100人・年 vs 非介入群22.1例/100人・年:血管内治療群の非介入群に対する調整HR 0.99;0.78~1.27(p=0.97)。
総動脈瘤関連死は3.6例/100人・年 vs 7.3例/100人・年:調整HR 0.53;0.32~0.89(p=0.02)。
早期(最初の6か月:調整HR 1.78;0.75~4.21, p=0.19)に総動脈瘤関連死に対する血管内治療群の非有意なリスク上昇が認められたが,6か月以降はリスクが低下した(0.34;0.16~0.72, p=0.005)。
破裂は両群で68例発生し,うち63例が致死性。非介入群では55例(非調整破裂率は12.4例(9.6~16.2)/100人・年)。
[グラフト関連合併症,再介入]
1,084人・年の追跡でグラフト合併症は97患者・158件:1件の発生は52患者,2件;33患者,3件;8患者,4件;4患者。
グラフト関連再介入は55患者・66件:1回の再介入は48患者,2回;3患者,3回;4患者,4回;4患者。
血管内治療群の生存者の48%がグラフト関連の合併症を発症し,27%が最初の6年に再介入を要した。血管内治療群のグラフト関連イベントに,EVAR 1とEVAR 2の間に有意差はみられなかった。
[コスト]
8年間の平均総コストは血管内治療群14,995ポンド(22,687ドル) vs 非介入群5,169ポンド(7,821ドル):コスト差9,826ポンド(14,867ドル;7,638~12,013)。コスト差の大半はprimary 大動脈瘤修復術(13,301ポンド[20,124ドル] vs 4,467ポンド[6,759ドル])によるものであった。
★結論★開腹術が身体的に不適応な腹部大動脈瘤例において,血管内治療は非介入例に比べ動脈瘤関連死を有意に抑制したが,全死亡率は低下しなかった。また,グラフト関連合併症,再介入が増加し,コスト高であった。
Current Controlled Trials No: ISRCTN55703451
文献
  • [main]
  • (1) United Kingdom EVAR trial investigators: Endovascular versus open repair of abdominal aortic aneurysm. N Engl J Med. 2010; 362: 1863-71. PubMed
  • (2) Greenhalgh RM, et al.; United Kingdom EVAR trial investigators. Endovascular repair of aortic aneurysm in patients physically ineligible for open repair. N Engl J Med. 2010; 362: 1872-80. PubMed
    Kent KC: Endovascular aneurysm repair--is it durable? N Engl J Med. 2010; 362 :1930-1. PubMed

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収載年月2010.07