循環器トライアルデータベース

SPIRIT IV

目的 冠動脈造影(CAG)上の評価項目で示されているeverolimus溶出ステントのpaclitaxel溶出ステントに対する優位性を,臨床エンドポイントで検討する。
一次エンドポイントは,1年後の標的病変不全(心臓死,標的血管心筋梗塞[MI],虚血による標的病変血行再建術[TLR]の複合エンドポイント)。
コメント Everolimus-eluting stent(EES)の圧勝である。SPIRIT II,SPIRIT IIIの結果からtarget lesion revascularization(TLR)の発生率がPaclitaxel-eluting stent(PES)に比べてEESで少ないであろうことは予想されていたが,ステント血栓症の発生率がEESでPESに比べて有意に少なかったことは予想外であり驚きであった。本研究がステント血栓症発生率の比較について十分な検出力を有していないことには留意すべきであるが,同様の試験であるCOMPARE試験においてもステント血栓症発生率に関してEES群でSPIRIT Ⅳ試験と同程度のリスク低下が示されたことを併せて考えると,EESによるステント血栓症抑制はrobustである可能性が高いように思われる。PES群のステント血栓症発生率は従来の報告と同等であり,今回の結果はEESに抗血栓性があることを示すものと考えられる。薬剤溶出性ステント(DES)のステント血栓症問題がしばしば指摘されるが,従来の報告で1年の時点でのステント血栓症発生率はベアメタルステント(BMS)とPESで全く差がないことが示されており,今回の結果はEESのステント血栓症発生率がBMSのそれよりも低いという可能性をも示唆している。今後,ステント血栓症の予防を目的としてDESを使用するというパラダイムシフトにもつながる可能性もある。ステント血栓症発生率低下はステント留置後30日以内において顕著であり,これは修復反応の差というよりもEESに使用されているfluorinated copolymerに抗血栓性があることによると個人的には考えている。DESの大きな問題点である1年以降に発生する超遅発性ステント血栓症を抑制するため生体吸収性ポリマーの使用やポリマーフリーDESの開発が進められているが,抗血栓性のあるポリマーの選択という方向性の重要性が示唆されている。また30日から1年までのステント血栓症発生率もEES群で有意に低いと報告されているが,今回は1年以降の結果は報告されていない。今後,pooled analysisで症例数を増やし,追跡期間を延長したEESのステント血栓症発生率評価の結果が待たれるところである。
今回の試験結果のclinical implicationは何であろうか? Lancet誌に掲載されたCOMPARE試験の論文の結論として,“We suggest that paclitaxel-eluting stents should no longer be used in everyday clinical practice.”と記載されている。私も全く同意見である。いくらdiscountされたとしても,EESに比べ全く優れた点がないDESを使用し続けることは臨床医として許されない。また今後の新規DESのpivotal trialにおいてPESを対照とすることも許容されないであろう。さらに我々が認識すべき重要な点は,SYNTAX試験のPCI群において使用されたステントがPES であったことである。SPIRIT IV試験で示された,TLRについての45%の相対リスク低下をSYNTAX試験に外挿すると,今後のCABGとPCIの比較試験で再血行再建を含めたmajor adverse cardiovascular event(MACE)についてもCABGとPCIで差がないという結果が示される可能性が開けているのである。(木村
デザイン 無作為割付け,単盲検,多施設(米国の66施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は1年。
登録期間は2006年8月10日~2008年7月30日。
対象患者 3,687例。18歳以上,狭心症または誘発性虚血,未治療病変≦3(心外膜血管1枝あたり2病変まで),病変長≦28mm,参照血管径2.5~3.75mm。
■患者背景:平均年齢63.3歳,男性(everolimus群67.7%,paclitaxel群67.8%),高血圧(77.4%, 76.1%),高コレステロール血症(76.1%, 75.5%),糖尿病(32.0%, 32.5%),現喫煙者(21.9%, 22.4%),MI既往(21.1%, 19.9%),不安定狭心症(27.7%, 28.9%)。治療病変数:1(75.2%,74.4%);2(21.7%,21.6%);1患者当たりの治療病変数は平均1.3,複雑病変数≧1(11.1%,10.8%)。
■CAG背景(標的病変数:everolimus群3,142, paclitaxel群1,585):左前下行枝(40.5%, 39.8%),左回旋枝(24.2%, 25.4%),右冠動脈(35.4%, 34.8%),参照血管径(両群とも2.75mm),病変長(14.8mm, 14.5mm)。
治療法 everolimus群(2,458例):everolimus溶出ステントを植込み。使用可能ステント径は2.5~4.0mm,ステント長は8,18,28mm。
paclitaxel 群(1,229例):paclitaxel溶出ステントを植込み。ステント径は2.5~3.5mm,ステント長は8~32mm。
カテーテル挿入前にaspirin≧300mgを投与,clopidogrelは≧300mgの手技前投与を推奨し,手技後1時間以内に≧300mgを投与することとした。手技後はaspirin 80mg/日無期限投与,またclopidogrel 75mg/日を12か月以上投与。
ルーチンのCAGは実施せず。
結果 1年の追跡終了は3,611例(97.9%)。
1年後のaspirin服用者は両群とも97.1%,チエノピリジン系薬服用者はeverolimus群94.9%,paclitaxel群95.1%。
[手技]
ステント数:1患者当たり(everolimus群1.49,paclitaxel群1.46);1病変当たり(1.17,1.14),最大ステント径/病変(両群とも3.01mm),最大ステント径/参照血管径比(両群とも1.11),病変当たりの総ステント長(22.4mm,20.9mm;p<0.001),総ステント長/病変長比(1.65,1.55;p<0.001)。
[初期成績]
最小血管径:everolimus群(手技前0.75mm→手技後2.69mm),paclitaxel群(0.76mm→ 2.71mm),狭窄率:72.3%→ 1.3%, 72.0%→ 1.0%,急性期獲得径:1.95mm,1.96mm。
[一次エンドポイント:1年後の標的病変不全]
everolimus群はpaclitaxel群よりも有意に抑制した(4.2% vs 6.8%:相対リスク0.62;95%信頼区間0.46~0.82,p=0.001)。
[二次エンドポイント]
・虚血によるTLR:everolimus群のほうが有意に低かった(2.5% vs 4.6%:0.55;0.38~0.78,p=0.001)。
・心臓死または標的血管MI:everolimus群はpaclitaxel群に対して非劣性であった(非劣性のp<0.001;優越性のp=0.09)。
・1年後のMIおよびステント血栓症:everolimus群のほうが有意に低かった(MI:1.9% vs 3.1%[p=0.02],ステント血栓症:0.17% vs 0.85%[p=0.004])。
[サブグループ解析]
糖尿病(6.4% vs 6.9%[p=0.80];交互作用のp=0.02)を除き,検討した12のサブグループでも同様にeverolimus群のほうがpaclitaxel群よりも有効で,治療群と転帰に有意な交互作用は認められなかった。
★結論★everolimus溶出ステントはpaclitaxel溶出ステントと比べ1年後の標的病変不全を抑制した。この結果は糖尿病患者を除き全例で一貫して認められた。
ClinicalTrials. gov No: NCT00307047
文献
  • [main]
  • Stone GW et al for the SPIRIT IV investigators: Everolimus-eluting versus paclitaxel-eluting stents in coronary artery disease. N Engl J Med. 2010; 362: 1663-74. PubMed
    Lange RA and Hillis LD: Second-generation drug-eluting coronary stents. N Engl J Med. 2010; 362: 1728-30. PubMed

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収載年月2010.06