循環器トライアルデータベース

ACCORD Lipid
Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes Lipid

目的 1万例を超える高リスク2型糖尿病患者において,心血管疾患(CVD)発症予防戦略を検討している試験。
厳格な血糖コントロールに,脂質または血圧コントロールを加えることによるCVD抑制効果をダブルの2×2 factorialで比較検討しており,本報は血糖コントロール+脂質コントロール(スタチン系薬剤[LDL-C低下]+フィブラート系薬剤[HDL-C上昇,トリグリセライド;TG低下])によるCVD抑制効果の結果。

一次エンドポイントは主要CVD初発(非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,心血管死の複合エンドポイント)。
コメント フィブラートの心血管イベント抑制効果は,いまだに確立されていない。今までに大規模臨床試験として成功しているのは,gemfibrozilをもちいたHelsinki Heart Study とVA-HIT studyのみで他の試験は心血管イベントの抑制効果を示しえていない。その理由として,高トリグリセライド(TG)血症や低HDL-C血症の原因が必ずしも一定でないためと考えられていた。そこで,WHO主導で,高TG血症,低HDL-C血症を特徴とする2型糖尿病における脂質異常症に対してのフィブラートの有効性が検討された。これがFIELD試験であるが,これも一次エンドポイントに対する効果は示しえず,各イベントでみると有効性が示されたにすぎなかった。
今回のACCORD試験は2型糖尿病の脂質異常症としてはLDL-C低下が必須であるとしてスタチン投与に加えて,フィブラートを投与することによりスタチン単独に勝る有効性が示しえるか否かをみた試験である。残念なことに,今回もこの併用療法による効果は,スタチン単独療法に勝るものではないことが明らかになった。二つの問題点を指摘しておきたい。まず,対象となった,脂質異常症自体が軽症である点である。この点はFIELD試験でも同様であった。しかし,サブ解析で,高TG血症で低HDL-C血症を示す群では,有効性が認められていることからも,TG:204mg/dL以上,HDL-C:35mg/dL未満の患者においてのみ,この併用療法が正当性をもつものと考えられる。もう一点,もともと60%の患者にスタチンが用いられており,血圧,血糖のコントロールもされていてイベントの発症が予想を超えて低かったという点も考慮すべきである。脂質異常治療の効果が拡散された可能性は否めない。
この試験のもう一つの注目すべき点は,スタチンとフィブラートの併用の副作用である。大規模に調査した限りにおいて,危惧した横紋筋融解症や肝機能障害は全く問題とならなかった。
以上より,2型糖尿病における脂質異常症において,TG:204mg/dL以上かつHDL-C:35mg/dL未満であれば,併用療法の有効性と安全性が認められたといってもいいのではないであろうか。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,double 2×2 factorial,多施設(米国,カナダの77施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は4.7年。
ランダム化は2001年1月11日~2005年10月29日。
対象患者 5,518例。HbA1c≧7.5%の2型糖尿病で40~79歳のCVDを合併するもの,あるいは55~79歳で無症候のCVDを有する,あるいはその他に2つ以上の危険因子を合併しているもの;LDL-C 60 ~180mg/dL,HDL-C<55mg/dL(女性,黒人);<50mg/dL(その他),TG<750mg/dL(非脂質治療例);<400mg/dL(脂質治療例)。
■患者背景:平均年齢62.3歳,女性30.7%,白人68.4%,黒人15.1%,CVD既往36.5%,喫煙中/喫煙歴14.6%/46.2%,BMI 32.3kg/m²,血圧133.9/74.0mmHg,
治療状況:インスリン33.3%,metformin 62.0%,SU薬52.4%,チアゾリジン系薬剤17.6%,ACE阻害薬/ARB 53.8%/15.2%,aspirin 56.3%,β遮断薬32.6%,チアジド系利尿薬26.7%,スタチン系薬剤59.8%,全脂質低下薬64.5%。
糖尿病罹病期間(中央値)9年,HbA1c 8.3%,空腹時血糖値175.8mg/dL,カリウム4.5mg/dL,推算糸球体濾過量(eGFR)>50mL/分/1.73m² 97.4%,総コレステロール175.2mg/dL,LDL-C 100.6mg/dL,HDL-C 38.1mg/dL,TG(中央値)162mg/dL。
治療法 ランダム化時にsimvastatinをオープンラベルで投与。投与開始量はその時のガイドラインに準じ,ガイドライン改訂に合わせて用量を変更した。
fenofibrate群(2,765例):simvastatin+fenofibrate。fenofibrateは試験開始当初は160mg/日投与であったが,クレアチニン値上昇がみられ,2004年からMDRD式によるeGFRに基づいて投与量を調整した。
プラセボ群(2,753例):simvastatin+プラセボ。
結果 最終外来時の試験薬投与率はfenofibrate群は77.3%,プラセボ群81.3%。simvastatin投与は各群約80%で,平均投与量/日はそれぞれ22.3mg, 22.4mg。eGFRの低下により投与量を減量したのはfenofibrate群440例(15.9%),プラセボ群194例(7.0%),投与中止例は66例(2.4%),30例(1.1%)。
[安全性]
クレアチンキナーゼ値>正常上限の10倍は,fenofibrate群10例(0.4%),プラセボ群9例(0.3%),アラニンアミノトランスフェラーゼ>正常上限の3倍は,52例(1.9%),40例(1.5%)。
クレアチニン値:1年後にfenofibrate群で0.93→ 1.10mg/dLと上昇したが,その後は比較的安定していた。プラセボ群は0.93→ 1.04mg/dLに上昇。
[脂質値]
LDL-C:fenofibrate群で100.0→ 81.1mg/dL,プラセボ群で101.1→ 80.0mg/dLへ低下,HDL-C:それぞれ38.0→ 41.2mg/dL, 38.2→ 40.5mg/dLへ上昇,TG(中央値):164→ 122mg/dL, 160→ 144mg/dLへ低下した。

[一次エンドポイント:非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,心血管死の複合エンドポイント]
fenofibrate群291例(2.2%/年) vs プラセボ群310例(2.4%/年):ハザード比0.92;95%信頼区間0.79~1.08(p=0.32)。
[二次エンドポイント]
・一次エンドポイント+血行再建術またはうっ血性心不全(CHF)による入院:641例(5.4%/年) vs 667例(5.6%/年):0.94;0.85~1.05(p=0.30)。
・主要な冠動脈疾患イベント:332例(2.58%/年) vs 353例(2.79%/年);0.92;0.79~1.07(p=0.26)。
・非致死的MI:173例(1.3%/年) vs 186例(1.4%/年):0.91;0.74~1.12(p=0.39)。
・脳卒中[非致死的]:51例(0.4%/年)[47例(0.4%/年)] vs 48例(0.36%/年)[40例(0.30%/年)]:1.05;0.71~1.56(p=0.80)[1.17;0.76~1.78, p=0.48]。
・全死亡[心血管死]:203例(1.47%/年)[99例(0.72%/年)] vs 221例(1.61%/年)[114例(0.83%/年)]:0.91;0.75~1.10(p=0.33)[0.86;0.66~1.12, p=0.26]。
[その他]
全CHF:120例(0.90%/年) vs 143例(1.09%/年):0.82;0.65~1.05(p=0.10)。
(サブグループ)一次エンドポイントで有意な交互作用がみられたのは性別のみ:男性11.2% vs 13.3%,女性9.1% vs 6.6%:p=0.01 for interaction。
非有意ながら異質性がみられたのは,TGの最高3分位(≧204mg/dL)・HDL-Cの最低3分位(≦34mg/dL)例:12.37% vs 17.32%。
★結論★高リスクの2型糖尿病患者において,simvastatin+fenofibrate併用によるsimvastatin単独投与を上回る主要心血管イベント抑制効果は認められなかった。
ClinicalTrials. gov No: NCT00000620
文献
  • [main]
  • The ACCORD study group: Effects of combination lipid therapy in type 2 diabetes mellitus. N Engl J Med. 2010; 362: 1563-74. PubMed
    Nilsson PM: ACCORD and risk-factor control in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2010; 362: 1628-30. PubMed
  • [substudy]
  • fenofibrate群でみられた血清クレアチニンの上昇は可逆的で,51日間休薬後に回復。
    本試験中にfenofibrate群で認められた血清クレアチニン上昇が試験終了後に回復するかを検討した結果(ACCORD Renal Ancillary Study):症例群(fenofibrate 3か月投与後に血清クレアチンが≧20%上昇した症例;321例),対照群(同≦2%;175例),プラセボ群(血清クレアチニンの条件なし;565例)。症例群では試験終了時まで血清クレアチニン値が他の2群よりも高かった(3か月投与後:症例群1.16mg/dL vs対照群0.90mg/dL vs プラセボ群0.90mg/dL;試験終了時:1.11 vs 1.01 vs 0.98mg/dL)。
    試験終了後51日間で,症例群のクレアチニン値はプラセボ群と同等レベルまで低下したが,対照群との差は依然として認められた(0.97 vs 0.90 vs 0.99mg/dL)。eGFRも試験終了時は症例群が他の2群よりも低かったが(68.4 vs 74.8 vs 77.8mL/min/1.73m2),51日後に症例群はプラセボ群をわずかに上回るレベルまで増加した一方(有意差なし),対照群はプラセボ群を有意に上回るレベルまで増加した(77.8 vs 81.8 vs 76.6mL/min/1.73m2)。シスタチン値についても同様の変化が認められたことから,この変化はクレアチニン固有のメカニズムによるものではない可能性が示された:Diabetes Care. 2012; 35: 1008-14. PubMed
  • 血糖コントロール+脂質コントロール治療は糖尿病性網膜症の進展を抑制した(ACCORD Eye study)。
    2,856例について17段階あるEarly Treatment Diabetic Retinopathy Study(ETDRS) Severity Scaleの3段階以上の進展あるいは,レーザー光凝固法または硝子体切除術の必要な糖尿病網膜症の進展で網膜症の進行を評価:4年後,糖尿病網膜症は厳格血糖コントロール群7.3% vs 標準コントロール群10.4%:調整オッズ比0.67;95%信頼区間0.51~0.87(p=0.003)。
    血糖コントロール+脂質コントロール(ACCORD Lipid・1593例):fenofibrate群6.5% vs プラセボ群10.2%:0.60;0.42~0.87(p=0.006):N Engl J Med. 2010; 363: 233-44. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2010.03
更新年月2012.07