循環器トライアルデータベース

FAIR-HF
Ferinject Assessment in Patients with Iron Deficiency and Chronic Heart Failure

目的 慢性心不全患者は鉄貯蔵量の枯渇などから鉄欠乏を起こしやすく,鉄欠乏は有酸素能力を低下させる。貧血の有無にかかわらず,鉄欠乏状態のEFが低下した慢性心不全患者において,鉄欠乏性貧血治療薬ferric carboxymaltose *の静注が症状を改善するかを検証。
一次エンドポイントは24週後の患者評価によるPatient Global Assessment(PGA)スコアおよびNYHA心機能分類。
* カルボキシマルトース鉄
コメント 慢性心不全患者に貧血の合併が多く,貧血の程度は心不全の重症度や予後と相関すると報告されており,血中ヘモグロビン濃度が1g/dL低下すると死亡率は約15%上昇するといわれている。またエリスロポイエチン投与により貧血を是正すると予後も改善することから貧血は重要な予後規定因子であることも確かである。慢性心不全の貧血の大部分は鉄欠乏性貧血であり,鉄の利用が低下していることが指摘されているが,本試験は鉄剤の投与が貧血 (Hb濃度) の有無にかかわらず,運動能やQOL の改善をもたらすことを明らかにした報告で興味深い。鉄の補給による血液の酸素運搬能の改善によるものと考えられる。しかし,経口鉄製剤では有効性が期待できないとされており,本治療により予後改善効果が示されなければ実地臨床での普及は期待できないであろう。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(11か国75施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は24週。
登録期間は2007年6月25日~2008年12月31日。
対象患者 459例。NYHA心機能分類II~III度,EF≦40%(NYHA II度)または≦45%(III度),ヘモグロビン値95~135g/L,鉄欠乏(血清フェリチン濃度<100μg/L,トランスフェリン飽和度<20%の場合は100~299μg/L)。
除外基準:コントロール不良の高血圧,その他の重度の心疾患,炎症,重度の肝または腎機能障害。
■患者背景:平均年齢(ferric carboxymaltose[FCM]群67.8歳,プラセボ群67.4歳),女性(52.3%,54.8%),白人(99.7%, 100.0%),NYHA III度(82.6%, 81.3%),EF(31.9%, 33.0%),血圧(126/77mmHg, 126/76mmHg),6分間歩行距離(274m, 269m),虚血性(80.6%, 79.4%),薬物療法下の高血圧(79.9%, 82.6%),薬物療法下の脂質異常症(47.4%, 45.2%),糖尿病(30.6%, 23.9%),心房細動(30.9%, 28.4%),ヘモグロビン値(ともに119g/L),平均赤血球容積(91.6μm³, 91.7μm³),トランスフェリン飽和度(17.7%, 16.7%),CRP(7.46mg/L, 9.12mg/L),クレアチニン(両群とも1.2mg/dL),eGFR(63.8mL/分/1.73m², 64.8mL/分/1.73m²)。
既往:心筋梗塞(55.3%, 58.1%),狭心症(56.3%, 57.4%),血行再建術(21.1%, 20.0%)。
治療背景:利尿薬(92.1%, 90.3%),ACE阻害薬,ARB(92.4%, 91.0%),β遮断薬(86.2%, 83.2%),抗血小板療法(62.2%, 62.6%),抗凝固療法(22.0%, 14.2%),脂質低下薬(46.7%, 46.5%),経口血糖降下薬(16.1%, 14.2%)。
治療法 FCM群(304例):FCM 4mL(鉄200mgに相当)週1回ボーラス静注(補正期)→ 4週に1回投与(維持期)。
プラセボ群(155例):生食4mLを静注。
結果 脱落はFCM群26例(8.6%),プラセボ群20例(12.9%)。
投与中止例は16例(5.3%),14例(9.0%)。
[一次エンドポイント:PGAスコア,心機能]
FCM群でプラセボ群に比べ有意に改善した。
24週後のPGAスコア:「非常に改善」または「ある程度改善」と回答した患者の割合は50% vs 28%(改善のオッズ比[OR]2.51;95%信頼区間1.75~3.61,p<0.001)。
24週後の心機能分類:NYHA I~II度の患者は47% vs 30%(ベースライン調整後のI度改善のOR 2.40;1.55~3.71,p<0.001)。
[二次エンドポイント]
4週後,12週後のPGAスコアおよびNYHA心機能分類,4週後,12週後,24週後の6分間歩行距離およびQOL(European Quality of Life-5 Dimensionsスコア,Kansas City Cardiomyopathy questionnaireスコア)は,FCM群でプラセボ群に比べ有意に改善(すべてp<0.001)。
[サブグループ解析]
貧血の有無(ヘモグロビン値≦120g/L,>120g/L)による一次エンドポイントの差は認められなかった。
[安全性エンドポイント:26週後の重篤または非重篤有害事象,入院または死亡]
有意な両群間差は認められなかったが,心血管疾患による入院はFCM群で低い傾向がみられた(10.4例/100人・年 vs 20.0例/100人・年,p=0.08)。
[有害事象]
FCM群で発症率が高かったのは胃腸障害(p=0.06)で,重篤な過敏症反応は両群ともにみられなかった。
★結論★鉄欠乏状態の症候性慢性心不全患者において,鉄欠乏性貧血治療薬ferric carboxymaltoseの静注は,貧血の有無にかかわらず,24週後の健康状態,身体機能,QOLを有意に改善した。副作用は許容範囲内であった。
ClinicalTrials gov. No: NCT00520780
文献
  • [main]
  • Anker SD et al for the the FAIR-HF trial investigators: Ferric carboxymaltose in patients with heart failure and iron deficiency. N Engl J Med. 2009; 361: 2436-48. PubMed
    Dec GW: Anemia and Iron Deficiency -- New Therapeutic Targets in Heart Failure? N Engl J Med. 2009; 361: 2475-7. PubMed

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収載年月2010.02