循環器トライアルデータベース

HEAAL
Heart Failure Endpoint Evaluation of Angiotensin II Antagonist Losartan

目的 ARBが心不全患者の治療に有効であることが示されているが,投与量とアウトカムとの関連は検討されていない。
EFが低下したACE阻害薬不忍容の心不全患者においてARB losartanの高用量(150mg)と低用量(50mg)の有効性を比較する。
一次エンドポイントは死亡,心不全による入院の複合。
コメント RA系の抑制は,交感神経活性の抑制とともに慢性心不全の治療の中で最も重要であるが,長期成績の用量依存性については十分検討されていない。ACE 阻害薬の用量依存性に関する検討は,lisinoprilを用いたATLAS試験があり,低用量群 (2.5 – 5.0 mg/日) に比し,高用量群(32.5 – 35 mg/日)で,15%のリスク(死亡+心不全入院)減少がみられているが,本試験 (HEAAL) でもロサルタン50mg/日群に比し,150mg/日群で10%のリスク減少がみられた。しかし,両試験とも死亡率の減少には有意差が認められず,ACE阻害薬にせよ,ARBにせよ,用量を増大しても予後の改善効果はみられないことになる。ACE阻害薬にARBの上乗せ効果をみたVAL-HeFT試験(valsartan 320mg/日)およびCHARM-added 試験 (candesartan 32 mg/日)でも心不全の入院は有意に減少しているが,予後の改善効果はみられていない。一方で,高用量群では,高カリウム血症,低血圧,腎機能障害が高率にみられることから,副作用に十分注意しながら,できるだけ増量するのが望ましいということになろう。本試験はACE阻害薬不耐の患者を対象にしているが,ACE阻害薬を投与している場合,ACE阻害薬を増量するか,ARBを追加するかについては,回答は得られていない。また,HEAAL試験で用いられたlosartanの用量が日本人にもあてはまるかは検討すべき別の大きな課題である。(
デザイン ランダム割付け,二重盲検,多施設(30か国255施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は4.7年(中央値)。
登録期間は2001年11月~2005年3月。
対象患者 3,846例。18歳以上,症候性心不全(NYHA心機能分類II~IV度);EF≦40%で安定した心血管治療を2週間以上実施している例;ACE阻害薬不忍容*
* 次の有害事象のうち1つ以上の理由によりACE阻害薬の投与を中止したもの。咳,症候性低血圧,高窒素血症,高カリウム血症,味覚障害,胃腸障害,発疹。
除外基準:収縮期血圧<90mmHg;高度の弁狭窄症;活動性心筋炎;活動性心膜炎;6か月以内の心臓移植予定;12週以内の冠動脈血管形成術,CABG,急性心筋梗塞,不安定狭心症,脳血管疾患または一過性脳虚血発作;腎動脈狭窄確定または疑い;心不全以外の致死性疾患;血清クレアチニン>220μmol/L;血清カリウム<3.5mmol/Lまたは>5.7mmol/L;肝酵素レベルが正常範囲の3倍以上;ヘモグロビン<6.2mmol/L。
■患者背景:年齢(両群とも66.0歳),男性(losartan 150mg群70%,losartan 50mg群71%),人種(白人:60%, 61%,アジア人:両群とも22%),心房細動(両群とも28%),虚血性心疾患(64%, 65%),高血圧(両群とも60%),高コレステロール血症(52%, 50%),糖尿病(31%, 32%),NYHA:II度(69%, 70%);III度(両群とも30%),EF(両群とも33%),血圧(124/77mmHg, 125/77mmHg),血清クレアチニン(97.2μmol/L, 97.0μmol/L)。値は中央値あるいは数(%)
治療背景:ARB*(77%, 76%),アンチトロンビン/抗凝固薬(33%, 32%),β遮断薬(両群とも72%),強心配糖体(両群とも42%),利尿薬(アルドステロン拮抗薬を除く:77%, 76%,アルドステロン拮抗薬:両群とも38%),サリチル酸とその誘導体(50%, 52%),スタチン系薬剤(両群とも39%)。
* スクリーニング時
治療法 ランダム化前:ARB非投与例は2週間かけてlosartan 12.5/日から25mg/日まで漸増投与。ARB投与例は投与を中断し,オープンラベルでlosartan 25mg/日を1週間投与または直ちにランダム化へ移行。
ランダム化後:両群とも50mg/日(50mg錠1錠+プラセボ1錠)より投与開始。
losartan 150mg/日群(1,921例): 100mg/日(50mg×2錠/日)→ 150mg/日(50mg錠1錠+100mg錠1錠/日)に3週間かけて増量。
losartan 50mg/日群(1,913例):50mg錠1錠+プラセボ1錠。
可能な限りβ遮断薬投与を開始し最大用量までの漸増投与を奨励した。
結果 [投与中止例(有害事象による投与中止例)]
150mg群28%(1.99例/100人・年),50mg群27%(1.83例/100人・年);p=0.67(p=0.44)。
[一次エンドポイント:死亡,心不全による入院の複合]
150mg群で50mg群に比べ有意に低下した(828例[11.1例/100人・年]vs 889例[12.4例/100人・年]:ハザード比[HR]0.90;95%信頼区間0.82~0.99,p=0.027)。
[二次エンドポイント]
・一次エンドポイント構成イベント
心不全による入院:450例(6.0例/100人・年)vs 503例(7.0例/100人・年):0.87;0.76~0.98(p=0.025)
全死亡は有意な両群間差はみられなかった。
・150mg群が50mg群に比べ有意に抑制したイベント
心血管疾患による入院:11.5例/100人・年 vs 12.9例/100人・年:0.89;0.81~0.98(p=0.023)
心血管死または心血管疾患による入院:14.2例/100人・年 vs 15.7例/100人・年:0.91;0.83~0.99(p=0.034)
心血管死または心不全による入院:9.3例/100人・年 vs 10.7例/100人・年:0.88;0.79~0.97(p=0.011)
・NYHA心機能分類の変化
losartan 150mg群は50mg群に比べ改善した。
改善:33.7%,31.0%;不変:57.9%,58.5%;悪化:8.3%,10.5%(p=0.015)
[サブグループ解析]
高血圧例では一次エンドポイントの有意な両群間差は認められなかったが,非高血圧例では150mg群で有意に低下した(p=0.01)。
[有害事象]
高カリウム血症:2.79例/100人・年 vs 1.87例/100人・年(p=0.0004)
低血圧:2.92例/100人・年 vs 2.07例/100人・年(p=0.002)
腎障害:7.12例/100人・年 vs 4.73例/100人・年(p<0.0001)
★考察★心機能が低下したACE阻害薬不忍容の心不全患者において,losartan 150mg/日は50mg/日に比べて死亡,心不全による入院を有意に抑制した。
ClinicalTrials.gov No: NCT00090259
文献
  • [main]
  • Konstam MA et al for the HEAAL investigators: Effects of high-dose versus low-dose losartan on clinical outcomes in patients with heart failure (HEAAL study): a randomised, double-blind trial. Lancet. 2009; 374: 1840-8. PubMed
    Krum H: Optimising management of chronic heart failure. Lancet. 2009; 374: 1808-9. PubMed

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収載年月2010.02