循環器トライアルデータベース

ABOARD
Angioplasty to Blunt the Rise of Troponin in Acute Coronary Syndromes Randomized for an Immediate or Delayed Intervention

目的 非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)患者において,早期侵襲的治療が待機的侵襲治療に比べ心筋梗塞(MI)を抑制するかを検討する。
一次エンドポイントは入院中のトロポニンI最高値。
コメント ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)に対する早期侵襲的治療では,その是非や治療のタイミングが議論されてきた。その結果,ACC/AHA ガイドライン(2007)では高リスク症例での早期侵襲的治療が推奨されるに至っている。しかしその根拠となった文献やメタ解析を見ると“早期”の定義は発症数時間以内から数日までとまちまちであった。
早期侵襲的治療を前提としてそのタイミングにこだわった無作為試験はISAR-COOL(2000~2002年,410例)とTIMACS(2003~2008年,3031例)に続いてABOARDが3つめである。“ Immediate vs Delayed Intervention for Acute Coronary Syndromes ”という表題は既視感を伴い新鮮味に欠ける。“ Early vs Delayed Invasive Intervention in Acute Coronary Syndromes (TIMACS) ”との違いは,ランダム化からカテーテル検査までの時間(ABOARD早期群; 70分・TIMACS早期群; 14時間,ABOARD待機群; 21時間・TIMACS待機群; 50時間,ちなみにISAR-COOLは各々2.5時間・86時間)であるが,ABOARDの“ delayed ”とTIMACSの“ early ”はかなり接近している。しかし結論的には両トライアルに大差はなく,両群での有効性・安全性のエンドポイントに有意差は出なかった。十分な抗血小板剤とEBMのある薬剤(スタチン・β遮断剤・RAS系阻害剤)が乗っかって(aboard)いれば,STEMIに準じて治療しても医療側の都合で翌診療日(金曜夜なら翌週の月曜日!)にズレ込んでも問題ないと言うことである。
一方TIMACSでは,GRACE risk score>140のハイリスク群での早期侵襲的治療が推奨された。ABOARDでもTIMI score≧5のハイリスク群が2~3割含まれていたが,サブ解析に耐えうる症例数ではないため,リスクの層別化はできていない。STEMIでの十分な経験を積み重ねてきた24時間稼働するカテラボを持つhigh-volume centerでの結果ということも併せると,リアルワールドでの大規模臨床試験を行わないと真の結論は出ないのかもしれない。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,多施設(フランスのprimary PCIが24時間可能な症例数の多い13施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は1か月。
実施期間は2006年8月~’08年9月。
対象患者 352例。NSTE-ACS(心筋虚血の症状;ECG上の2つ以上の近接誘導でST異常あるいはT波逆転;心トロポニンI値上昇,のうち2項目以上が該当),TIMIスコア≧3,冠動脈造影適応の入院患者。
除外基準:18歳未満;ただちにカテーテルを要する難治性虚血・重大な不整脈・血行動態不安定;warfarin・血栓溶解薬・血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬治療例;abciximabの禁忌。
■患者背景:平均年齢(早期群:65歳,待機群:65歳),女性(27.4%,29.4%),喫煙(32.0%,33.9%),糖尿病(21.7%,32.2%),脂質代謝異常(57.1%,57.6%),高血圧(65.7%,61.0%),MI既往(16.6%,18.6%),PCI既往(24.6%,30.5%),登録合致基準:虚血症状(98.3%,97.7%);ST異常(69.7%,76.8%);トロポニンI値上昇(75.4%,72.9%),TIMIスコア≧5(22.9%,30.5%),1枝病変(43.2%,33.8%),責任動脈:左前下行枝(48.6%,45.0%)。
治療法 早期インターベンション群(175例),待機的インターベンション群(177例):翌診療日(平日の場合は翌日,週末の場合は翌週月曜;登録から8~60時間後)にカテーテル検査を行い治療方針を決定する。
血行再建の術式は担当医が決定。aspirinを最大500mgで投与開始後75mg/日で維持,clopidogrelを≧300mgで投与開始後75~150mg/日投与を推奨。PCI施行例ではインターベンション直前にabciximab 0.25mg/kgのボーラス静注を開始し,0.125μg/kg/分でPCI終了後12時間まで継続投与。併用治療としてβ遮断薬,スタチン系薬剤,ACE阻害薬を推奨。血行再建術術前後に12誘導ECG。インターベンション前および終了後24時間あるいは退院まで6時間ごとに採血し,トロポニンI,クレアチンキナーゼを測定。
結果 [入院中の薬物治療]
aspirin(早期群99.4%,待機群100%),clopidogrel(96.6%,98.9%):投与開始量(660mg,663mg);維持投与量(両群とも111mg),abciximab(65.1%,57.4%),低分子量heparin(LMWH)のみ(68.6%,67.2%),未分画heparin+LMWH(22.9%,28.8%),β遮断薬(87.4%,85.3%),スタチン系薬剤(94.3%,95.5%),ACE阻害薬/ARB(84.5%,80.2%),インスリン(20.7%,30.5%)。
[手技関連]
ランダム化からsheath挿入までの時間(中央値)は,早期群70分 vs 待機群21時間であった。
[一次エンドポイント:入院中のトロポニンIの最高値(中央値)]
早期群2.1(四分位範囲0.3~7.1)ng/mL vs 待機群1.7(0.3~7.2)ng/mLと両群間差はなかった(p=0.70)。
[主要な二次エンドポイント:1か月後の死亡,MI,緊急血行再建術の複合]
早期群13.7%(95%信頼区間8.6~18.8%)vs 待機群10.2%(5.7~14.6%);p=0.31。
1か月以内の虚血の再発は12.0%(7.2~16.8%)vs 18.6%(12.9~24.4%);p=0.08,死亡,MI,緊急血行再建術,虚血の複合の再発は21.1%(15.1~27.2%) vs 21.5%(15.4~27.5%);p=0.94)と両群間に有意差はなかった。入院期間の中央値は,55時間 vs 77時間と早期群で有意に短縮された(p<0.001)。1か月の大出血は4.0% vs 6.8%と群間差はなかった(p=0.25)。
★結論★NSTE-ACS患者において,早期インターベンション後のトロポニン最高値で定義されるMIの発生は,翌診療日の待機的インターベンションと差がなかった。
ClinicalTrials gov. No: NCT00442949
文献
  • [main]
  • Montalescot G et al for the ABOARD investigators. Immediate vs delayed intervention for acute coronary syndromes: a randomized clinical trial. JAMA. 2009; 302: 947-54. PubMed

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収載年月2009.11