循環器トライアルデータベース

PROTECT AF
WATCHMAN Left Atrial Appendage System for Embolic Protection in Patients with Atrial Fibrillation

目的 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において,デバイス(Watchman)による経皮的左心耳閉鎖の脳卒中予防効果を抗凝固薬warfarinと比較する非劣性試験。

有効性の一次エンドポイント:脳卒中,心血管死,全身性塞栓症の複合。
安全性の一次エンドポイント:大出血(頭蓋内,消化管出血),手技による合併症(重篤な心膜液貯留,デバイス塞栓症,脳卒中)。
コメント Circulation. 2013; 127: 720-9. へのコメント
PROTECT AFの最終報告である。結果は中間報告(Lancet. 2009; 374: 534-42.)と同じで,Watchmanによって左心耳を塞ぐと非弁膜症性心房細動の塞栓症の発生を,warfarinによる抗凝固療法と同程度に抑制できることが確認された。塞栓子が左心耳内に形成されることが改めて示された。warfarinによる抗凝固療法には様々な問題があるが,新しい経口抗凝固薬とくらべWatchmanが同等であるのかは不明である。Watchmanでは抗凝固薬療法は中断できるが,抗血小板薬の投与(aspirin)を継続しなくてはならず,これに伴う問題点(出血等)は残ることになる。(井上

中間報告(Lancet. 2009; 374: 534-42.)へのコメント
以前からAF例の塞栓症の原因となる血栓の90%が左心耳で形成されるとされてきたが,デバイスによる左心耳閉鎖により塞栓症が抑制されたことは,従来の考え方が正しかったことを裏づける。本デバイスは有効とはいえ問題がない訳ではない。植込み手技に伴う合併症が多いこと,植込み後の抗血栓療法が必要なこと,追跡期間が短いことなどであり,本デバイスが直ちにwarfarinに取って代わるものとは言えない。warfarinに代わる新たな抗凝固薬(直接抗トロンビン薬など)が有望とされていることも考慮に入れる必要がある。(井上
デザイン 無作為割付け,オープン,多施設(アメリカ,ヨーロッパの59施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は2.3年。
登録期間は2005年2月~2008年6月,最終解析は2010年4月。
対象患者 707例。>18歳の発作性・持続性・永続性NVAFの既往患者で,CHADS2リスクスコア≧1(≧75歳;高血圧;糖尿病;心不全;脳卒中・一過性脳虚血発作[TIA]・全身性塞栓症既往を1つ以上有する)のwarfarin治療適応例。
除外基準:心房中隔欠損症,人工心臓弁置換患者,卵円孔開存と心房中隔瘤の合併,EF<30%など。
■患者背景(Lancet. 2009; 374: 534-42):平均年齢(デバイス群71.7歳,warfarin群72.7歳),75歳以上(41.0%, 47.1%),男性(70.4%, 70.1%),CHADS2スコア:1(33.9%, 27.0%);2(34.1%, 36.1%);3(19.0%, 20.9%);4(8.0%, 9.8%);5(両群とも4.1%);6(0.9%, 2.0%),うっ血性心不全(26.8%, 27.0%),糖尿病(24.4%, 29.5%),既往:高血圧(89.2%, 90.2%);TIA /脳梗塞(17.7%, 20.1%)。
治療法 左心耳閉鎖術(デバイス)群とwarfarin群が2:1になるようランダム化。
デバイス群(463例):Watchman(Atritech社。繊維で被覆した自己拡張型ナイチノール製のケージをカテーテルで左心耳入口部に留置し,左心耳内血栓が左心耳から流出するのを阻止することで,塞栓症発症を抑制する)を植込んだ。植込み後,デバイスの内皮化促進のため45日間warfarinを投与。45日後,経食道心エコー(TEE)で左心耳の完全閉鎖が確認されたらwarfarinの投与を中止。中止後は,clopidogrel 75mg/日,aspirin 81~325mg/日を6か月の追跡終了まで投与し,以降aspirinは無期限に投与。
warfarin群(244例):INR 2~3となるようwarfarinを投与。INRのモニタリングは少なくとも隔週で6か月間行い,それ以降は1回/月実施。
結果 2年の追跡を完了したのは469例(デバイス群319例,warfarin群150例)。
デバイス群:植込み率は88%,追跡不能,脱落は77例。warfarin投与中止率は45日後が86.8%, 6か月後が92.2%,1年後が93.2%。
warfarin群:非投与は3例,追跡不能,脱落は51例。追跡期間の88%でwarfarin投与,治療域がINR範囲(2.0~3.0)であったのは治療期間の66%(TTR)。
[有効性の一次エンドポイント]
デバイス群(1,025.7患者・年)3.0%/年(95%信頼区間2.1~4.3%/年) vs warfarin群(562.7患者・年)4.3%/年(2.6~5.9%/年):リスク比0.71(0.44~1.30)で,デバイス群のwarfarin群に対する非劣性が示された(非劣性の事後確率[probability of noninferiority]>0.999)。
・脳卒中(2.0%/年[1.3~3.1%/年] vs 2.7%/年[1.5~4.1%/年]:0.77;0.42~1.62,probability of noninferiority>0.99)。
・心血管・原因不明死(1.0%/年[0.5~1.8%/年] vs 2.8%/年[1.5~4.2%/年]:0.38;0.18~0.85,probability of noninferiority>0.99)。
・全身性塞栓症(0.3%/年[0.1~0.7%/年] vs 0)。
デバイス群の有効性は性,年齢別などのサブグループでも一貫して認められた。
[安全性の一次エンドポイント]
979.9患者・年で54例発生し,デバイス群でwarfarin群より多かった(5.5%/年[4.2~7.1%/年]) vs 3.6%/年([2.2~5.3%/年]:1.53;0.95~2.70)。
[その他]
手技日を除外して解析すると,有効性の一次エンドポイントはデバイス群で少なかった(手技後:2.5%/年 vs 4.3%/年,probability of superiority=0.953)。手技後にwarfarinの投与を止めたものでも同じような結果であった(per-protocol解析:2.3%/年 vs 4.1%/年,probability of superiority=0.955)。
★結論★左心耳閉鎖術による“局所”抗凝固戦略のwarfarinによる“全身”戦略に対する非劣性が認められた。
ClinicalTrials.gov No: NCT00129545
文献
  • [main]
  • Reddy VY et al: PROTECT AF investigators. Percutaneous left atrial appendage closure for stroke prophylaxis in patients with atrial fibrillation: 2.3-year follow-up of the PROTECT AF (Watchman left atrial appendage system for embolic protection in patients with atrial fibrillation) trial. Circulation. 2013; 127: 720-9. PubMed
  • [substudy]
  • デバイスWatchmanによる左心耳閉鎖術5年後の脳卒中予防はwarfarin群と同等で,大出血,出血性脳卒中,死亡リスクは低かった。
    PREVAIL,PROTECT AFの患者個人データを統合解析し,左心耳閉鎖術の5年後の有効性,安全性を評価した。
    デバイス群732例[平均72.6歳;CHADS2スコア2.3,CHA2DS2-VAScスコア3.6],warfarin群382例[73.5歳;2.4,3.9])。
    有効性の一次エンドポイントに有意な両群間差はみられなかった(デバイス群2.8 vs warfarin群3.4/100人・年:ハザード比0.82;95%信頼区間0.58~1.17[p=0.27])。有意な交互作用が示されたサブグループもなかった。脳卒中二次予防例でも同様の結果だった。
    脳卒中,全身性塞栓症(SE)も両群で同等だった(1.7 vs 1.8/100人・年:0.96;0.60~1.54[p=0.87])が,虚血性脳卒中,SEは有意ではないもののデバイス群でリスクが高かった(1.6 vs 0.95/100人・年:1.71;0.94~3.11[p=0.08])。しかし,手技関連の脳卒中を除外するとリスクが低下した(1.3 vs 0.95/100人・年:1.40;0.76~2.59[p=0.28])。一方で,デバイス群では出血性脳卒中リスクが有意に低かった(0.17 vs 0.87/100人・年:0.20;0.07~0.56[p=0.0022])。また,同群では後遺障害を残す・致死的脳卒中(0.44 vs 1.0/100人・年:0.45;0.21~0.94[p=0.03]),CV死,原因不明死(1.3 vs 2.2/100人・年:0.59;0.37~0.94[p=0.027])のリスクも低かった。
    さらに全死亡(3.6 vs 4.9/100人・年:0.73;0.54~0.98[p=0.035]),大出血,手技非関連出血(1.7 vs 3.6/100人・年:0.48;0.32~0.71[p=0.0003])もデバイス群のほうが有意に少なかった。手技時や血管アクセス合併症の出血を含む大出血は両群間に有意差はなかった(3.1 vs 3.5/100人・年:0.91;0.64~1.29[p=0.60]):J Am Coll Cardiol. 2017; 70: 2964-75. PubMed
  • 左心耳閉鎖術による脳卒中予防の長期有効性と安全性-3.8年後,warfarin群とくらべた非劣性,優越性が示された。
    2012年10月まで追跡した4年後の結果:追跡不能はデバイス群4.5%,warfarin群2.8%。2,621人-年追跡で,有効性の一次エンドポイント(脳卒中,心血管死,全身性塞栓症の複合エンドポイント)は,デバイス群39/463例(8.4%;2.3イベント/100人-年)vs warfarin群34/244例(13.9%;3.8イベント/100人-年:率比[RR]0.60;95%確信区間0.41~1.05)で,デバイス群の非劣性(RRが事前に設定した2.0を下回る事後確率>99.9%;基準≧97.5%)および優越性(事後確率96.0%;基準≧95%)が示された。
    デバイス群ではwarfarin群より心血管死(3.7%;1.0イベント/100人-年 vs 9.0%;2.4イベント/100人-年:ハザード比0.40;0.21~0.75, p=0.005),全死亡(12.3%;3.2イベント/100人-年 vs 18.0%;4.8イベント/100人-年:HR 0.66;0.45~0.98, p=0.04)が少なかった。
    安全性の一次エンドポイントは両群間に有意差はなかった(3.6イベント/100人-年 vs 3.1イベント/100人-年:RR 1.17;0.78~1.95 ):JAMA. 2014; 312: 1988-98. PubMed
  • 経皮的左心耳閉閉鎖術による正味の臨床上のベネフィット(net clinical benefit)-最も大きいのは脳卒中高リスク患者。
    本試験でみられたデバイス群での安全性リスク増大は術者の経験不足に負うところが大きいため,本試験に続けて実施した経験を積んだ術者による登録研究(Continued Access PROTECT-AF registry:CAP。抗血栓療法は本試験と同様)と合わせて,経皮的左心耳閉鎖術の血栓塞栓リスクに対する正味の臨床上のベネフィット(NCB:warfarin群でのイベント率-手技後の年間血栓塞栓イベント率を特定の方程式に基づいて算出)を検証した結果:CAP群の平均年齢74.0歳(本試験:デバイス群71.7歳,warfarin群72.7歳),CHADS2スコア2.4(本試験:2.2, 2.3),脳梗塞,一過性脳虚血発作が本試験より多く(30.6%,本試験:17.7%, 20.1%),心不全発症が少なかった(18.9%,本試験:26.8%, 27%)。
    本試験:1,623人・年(平均28か月/患者)追跡で血栓塞栓イベント(脳梗塞,脳内出血,頭蓋外大出血,心嚢液貯留,死亡)は27例(デバイス群19例[1.80%/年;95%信頼区間1.68~1.94%/年],warfarin群8例[1.39%/年; 1.25~1.55%/年])。デバイス群のNCBは1.73%/年;-0.54~4.39%/年。
    CAP:741人・年(平均16か月/患者)追跡で10例(1.35%/年;1.26~1.45%/年)。デバイス群のNCBは4.97%/年;3.07~7.15%/年。
    脳梗塞既往例のNCBは本試験よりCAPで大きかった(4.30%/年;-2.07~11.25%/年 vs 8.68%/年;2.82~14.92%/年)。CAPではデバイス群のNCBがCHADS2スコア1の例(2.22%/年;0.27~6.01%/年)より≧2の例(6.12%/年;3.19~8.92%/年)で増加した:Euro Heart J. 2012; 33: 2700-8. PubMed
  • 中間報告(平均追跡期間18か月)
    [有効性の一次エンドポイント]
    デバイス群で抑制された。
    1,065人・年の追跡で,デバイス群3.0/100患者・年(95%信頼区間1.9~4.5) vs warfarin群4.9/100人・年(2.8~7.1):相対リスク0.62(0.35~1.25)で,左心耳閉鎖術群のwarfarin群に対する非劣性が認められた(事後確率:非劣性;>99.9%,優位性;90.0%)。
    ・全脳卒中:2.3/100人・年(1.3~3.6) vs 3.2/100人・年(1.6~5.2):0.71(0.35~1.64);99.3%, 76.9%。
    脳梗塞:2.2/100人・年(1.2~3.5) vs 1.6/100人・年(0.6~3.0):1.34(0.60~4.29);71.8%, 20.1%,脳出血:0.1/100人・年(0.0~0.5)vs 1.6/100人・年(0.6~3.1):0.09(0.00~0.45);>99.9%, 99.8%。
    ・心血管死,原因不明の死亡:0.7/100人・年(0.2~1.5)vs 2.7/100人・年(1.2~4.4):0.26(0.08~0.77);>99.9%, 99.3%。
    ・全身性塞栓症:0.3/100人・年(0.0~0.8)vs 0/100人・年。
    [安全性の一次エンドポイント]
    デバイス群でリスクが増大した。
    デバイス群7.4/100人・年(5.5~9.7)vs warfarin群4.4/100人・年(2.5~6.7):1.69(1.01~3.19)。
    ・重篤な(経皮的,手術によるドレナージが必要)心膜液貯留:22例(4.8%)vs 0例。
    ・大出血(赤血球>2単位の輸血,あるいは止血術):16例(3.5%) vs 10例(4.1%)。
    ・手技による脳梗塞:5例(1.1%) vs 0例。
    脳出血:1例(0.2%) vs 6例(2.5%)で,デバイス群の1例,warfarin群の5例が死亡。
    ・デバイス塞栓症:3例(0.6%) vs 0例★考察★非弁膜症性心房細動患者において,左心耳閉鎖のwarfarinに対する非劣性が示された。左心耳閉鎖術群でwarfarin群に比べ有害イベントが多くみられたものの大半が周術期のものであり,脳卒中予防戦略として左心耳閉鎖術がwarfarinの代替治療になる可能性がある:Lancet. 2009; 374: 534-42. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2009.10
更新年月2018.03