循環器トライアルデータベース

WATCH
Warfarin and Antiplatelet Therapy in Chronic Heart Failure

目的 心機能の低下した洞調律の慢性心不全患者における至適な抗血栓薬の有効性を確認するため,次の2つの仮説を検証する:(1) 主要心血管イベント抑制において抗凝固療法(warfarin)は抗血栓療法(aspirin,clopidogrel)より優れている,(2) プロスタグランジンに影響を及ぼさない抗血小板薬であるclopidogrelはaspirinより優れている。
一次エンドポイントは全死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中の複合。
安全性の一次エンドポイントは重大な出血,すなわち死亡あるいは障害(神経知覚あるいは特殊感覚機能損失)を伴うもの,外科的手技が必要なもの,ヘモグロビン≧2g/dLの低下あるいは輸血(>1単位)を必要とする出血。
コメント 心不全例では易血栓性が増すことが知られているが,洞調律の例において抗血栓薬が予後を改善するか否かは不明であった。本試験ではプラセボ群が置かれていないため,抗血栓薬の投与が有益であるのか否かは明らかにできない。3つの薬効の効果が同等であるので,この研究をもとに,洞調律の心不全例に抗血栓薬の投与を薦めることはできない。

心房細動を合併する心不全にはワルファリン(warfarin)投与が必須であるが,洞調律の心不全に対する抗凝固・抗血小板療法の適応については未だ定まった見解はない。本試験で,一次エンドポイント(死亡および非致死性心筋梗塞と脳卒中)に関してwarfarin群,aspirin群,clopidogrel群の3群間に有意な差がみられなかったため,洞調律の心不全例に抗凝固/抗血小板療法を推奨することにはならないが,warfarin群で,心不全による入院が減少しているのは興味深い。aspirinは,ACE阻害薬によるプロスタグランディン産生作用を抑制し,ACE 阻害薬の効果を減弱していることが関与している可能性が考えられる。(井上
デザイン 無作為割付け,オープン(warfarin)・二重盲検(aspirin,clopidogrel),多施設(米国,カナダ,英国の142施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は1.9年(中央値は21か月)。
登録期間は1999年10月~2002年6月。
対象患者 1587例。18歳以上;>3か月の症候性心不全(NYHA II~IV度);3か月以内にEF≦35%;洞調律;利尿薬,ACE阻害薬を60日以上投与しているもの(ACE阻害薬が不忍容の場合はhydralazine+長時間作用型硝酸薬あるいはARBを推奨)。β遮断薬は強く推奨され,その他の心不全治療は医師の判断に委ねた。
除外基準:試験薬の禁忌あるいは適応;試験薬中止あるいは試験薬投与が必要になる緊急手技;治療可能な原因による心不全など。
■患者背景:平均年齢63歳,男性85%,白人77%,心不全の原因:虚血性心筋症73%;特発性心筋症21%,心不全罹病期間:≧2年70%;1~<2年19%,NYHA心機能分類:II度44%;III度54%,6か月以内の心不全による入院35%,心拍数72拍/分,収縮期血圧119mmHg,EF 25%,喫煙:現在17%;喫煙歴60%。
合併症:心筋梗塞既往58%,高血圧48%,糖尿病34%,末梢動脈疾患11%。
治療状況:ACE阻害薬87%,ARB 10%,β遮断薬70%,ループ系利尿薬99%,digoxin 51%,spironolactone 28%。
治療法 warfarin群(540例):4mg/日から投与を開始,70歳以上あるいはamiodarone投与例は3mg/日から開始。INRは投与から1週間後に測定し,INR 2.5~3.0を達成するまで必要に応じ1mgずつ増量。モニタリングは担当医に委ねたが6週間以内の外来とした。
aspirin群(523例):162mg/日。
clopidogrel群(524例):75mg/日。
結果 登録に時間がかかったため試験は2002年1月に予定より早く終了した。
[忍容性]
投与中止例
warfarin群110例:患者の拒否32例,出血11例,出血リスクの増大5例など。aspirin群100例:患者の拒否16例,心房細動[AF]15例,左室内血栓/心筋梗塞/CABG 10例,胃腸障害10例,脳血管イベント7例など。clopidogrel群102例:患者の拒否19例,AF 14例,脳血管イベント11例,左室内血栓/心筋梗塞/CABG 6例など。
[一次エンドポイント:全死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中]
3群間に有意差は認められなかった:warfarin群106例,aspirin群108例,clopidogrel群113例。
warfarin群 vs aspirin群:調整前のハザード比0.98;95%信頼区間0.86~1.12(p=0.77)。
clopidogrel群 vs aspirin群:1.08;0.83~1.40(p=0.57)。
warfarin群 vs clopidogrel群:0.89;0.68~1.16(p=0.39)。
・各イベント結果
全死亡:warfarin群 vs aspirin群:0.98;0.85~1.13(p=0.75),clopidogrel群 vs aspirin群:1.04;0.78~1.38(p=0.80),warfarin群 vs clopidogrel群:0.92;0.69~1.23(p=0.58)。
warfarin群はaspirin群,clopidogrel群よりも非致死的脳卒中が少なかった。
[その他の結果]
心不全悪化による入院:warfarin群89例(16.5%),aspirin群116例(22.2%),clopidogrel群97例(18.5%):p=0.02(warfarin群 vs aspirin群)。
重大な出血:28例(5.2%),19例(3.6%),11例(2.1%):p<0.01(clopidogrel群 vs warfarin群)。
小出血:155例(28.7%),123例(23.5%),119例(22.7%)。
★結論★全死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中の複合,死亡抑制効果について,warfarinおよびclopidogrelはaspirinと同等であった。
文献
  • [main]
  • Massie BM et al for the WATCH trial investigators: Randomized trial of warfarin, aspirin, and clopidogrel in patients with chronic heart failure: the warfarin and antiplatelet therapy in chronic heart failure (WATCH) trial. Circulation. 2009; 119: 1616-24. PubMed
    Konstam MA: Antithrombotic therapy in heart failure: WATCHful wondering. Circulation. 2009; 119: 1559-61. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2009.08