循環器トライアルデータベース

STICH
Surgical Treatment for Ischemic Heart Failure

目的 STICHは虚血性心不全(左室機能収縮障害を有する冠動脈疾患)患者におけるCABGの有効性を評価する試験で,次の主要2試験から成る。
(1) hypothesis 1:薬物治療 vs CABG+薬物治療,
(2) hypothesis 2:CABG vs CABG+左室形成術(surgical ventricular reconstruction:SVR)。

一次エンドポイントは,(1) 全死亡,(2) 全死亡,心疾患による入院の複合エンドポイント。
コメント ■コメント 星田四朗
■コメント 木村 剛

(1)N Engl J Med. 2011; 364: 1607-16.へのコメント
欧米では2千万人以上の心不全患者がおり,その主たる原因は冠動脈疾患と考えられている。しかし,心不全を有する冠動脈疾患患者に対するCABGの有用性は明らかではない。薬物療法よりもCABGの有用性を示した1970年代のランドマークstudyでは心不全例を除外しており,現在では薬物療法の進歩が著しい。本研究は虚血性心不全患者を対象にCABGと薬物療法にランダム化し平均56か月後の総死亡率を評価したが,両治療法の間には差を認めなかった。しかし,心血管死や総死亡+心血管病による入院率はCABGの方に軍配が上がった(本研究は盲検化していないので心血管病による入院率に関してはバイアスを考慮する必要がある)。クロスオーバー率をみると,CABG群は9%が薬物療法となったが薬物療法群は17%がCABGを行っており,ITT解析によりCABGの総死亡率における有用性がマスクされた可能性もある。このクロスオーバー率の違いがreal-worldにおいて今回のような対象患者の場合でのCABGの位置づけをより明確に示している。(星田

(1)のサブ解析(N Engl J Med. 2011: 364: 1617-25.)へのコメント
虚血性心不全患者のうち心筋バイアビリティーが残存している心筋にこそCABGが有効であり,その死亡率を低下させうると考えられる。これを証明するために組まれたのが本研究であったが,種々の変数で調整するとCABGと薬物療法でバイアビリティーの有無による全死亡率に差は認められなかった。調整変数の中にはLV volumeやEFも含まれており,これが心筋バイアビリティーと相関するため差が消失した可能性があること,薬物療法の進歩により薬物療法群の死亡率が以前の論文に比し低いこと(15%/年vs 7%/年),が今回の結果と関連しうる。全死亡+心血管病による入院のみは多変量解析でも心筋バイアビリティーのある群でCABGの有用性は残ったが,本研究は非盲検であるので入院率にはバイアスがかかりうる。心筋バイアビリティーの評価はSPECTとドブタミンストレスエコーで行っているがこの評価法が問題なのか(MRI,PETは省略),心筋バイアビリティーの評価では予後を予測できないのかは明らかではない。本研究はSTICHアーム1(hypothesis 1)の半数以下しか対象に含まれておらず,バイアビリティーを評価した601例中バイアビリティーを認めなかったのが114例にすぎなかったことより,サンプル抽出バイアスも考慮すべきかもしれない。(星田


(2)N Engl J Med. 2009; 360: 1705-17.へのコメント
本試験は,CABGが適応となる冠動脈疾患で,左室駆出率35%以下でかつ左室前壁にakinesisあるいはdyskinesisを有する患者をCABG単独治療群とCABGに加え左室形成術(SVR)を追加する群に無作為に割り付け,4年間追跡し死亡および心疾患による入院の頻度を比較するものである。
SVRはCABGの併用療法として広く行われているが,その施行根拠はSVRによる左室容積の縮小が長期的な左室リモデリングを抑制するであろうという期待と少数例の観察研究による比較の報告のみであった。心臓血管外科医の間でもSVRの適応に関してコンセンサスが得られていた訳ではなかった。STICH試験は,CABGの併用療法として広く行われているSVRをCABGに併用しても死亡および心疾患による入院の頻度を減少させないことを明確に示した。
循環器内科領域ではPCIの方法や使用するステントによる成績の相違を前向きの無作為化試験によって検証し,適切な治療法を規定することが一般的となっているが,心臓血管外科領域においては無作為化試験によって手術の方法が評価されるということはきわめて稀であった。手術の技量が成績に影響するという前提もevidence-based medicineへの移行の障害となっているのかもしれない。歴史的には,理論的に優れていると考えられる治療法が,無作為化試験を行うと実は有害であったという例は,低左心機能例におけるI群抗不整脈薬やHDL-Cを上昇させる薬剤であるtorcetrapibなど数多い。今回のSTICH試験はnegative trialではあったが,心臓血管外科領域における無作為化試験の重要性を示したランドマークスタディである。今後,SVRは難治性心不全や不整脈を有する心室瘤患者においてのみ適応が考慮される治療法となるであろう。(木村
デザイン 無作為割付け,非盲検,多施設((1) 22か国99施設;(2) 96施設),intention-to-treat解析。
期間 (1) 追跡期間は56か月(中央値)。
ランダム化期間は2002年7月24日~2007年5月5日,2010年11月30日まで追跡。
(2) 追跡期間は48か月(中央値)。
ランダム化期間は2002年9月~2006年1月,2008年12月まで追跡。
対象患者 (1) 1,212例*。EF≦35%,CABG適応の冠動脈疾患。薬物治療のみの採用基準は,左主幹部に≧50%の狭窄がなく,薬物治療中のCanadian Cardiovascular Society(CCS)分類がIII~IVでない狭心症患者(CCS分類は0[症状なし]~IV[労作時狭心症])。
* 当初の症例数は2,000例,追跡期間は3年を予定していたが,登録が遅れたため予定症例数を1,200例に減少し,追跡期間を5年に延長した。
■患者背景:年齢中央値:(CABG+薬物治療群60歳,薬物治療群59歳),女性(両群とも12%),白人(64%, 67%),BMI*(両群とも27kg/m²),心筋梗塞既往(76%, 78%),高脂血症(59%, 61%),高血圧(59%, 61%),糖尿病(39%, 40%),現喫煙(21%, 20%),CCS分類:0(36%, 37%);I(16%, 15%);II(両群とも43%),NYHA心機能分類:II度(52%, 51%);III度(両群とも34%),収縮期血圧*(両群とも120mmHg),脈拍数*(74拍/分,72拍/分),6分間歩行距離*(349m, 340m)。
* 中央値

(2) 1,000例。EF≦35%のCABGが適応の冠動脈疾患;SVRが適応の左室前壁運動の消失,収縮異常。
除外基準:最近発症した心筋梗塞,大動脈弁置換術の必要なもの,PCI予定例など。
■患者背景:年齢62歳*,BMI 27kg/m²*,女性(CABG+SVR群14%,CABG群16%),血圧*(120/74, 120/71mmHg),脈拍*(72,70拍/分),非狭心症(26%, 24%),狭心症CCS分類:II(両群とも19%);III(両群とも41%),NYHA心機能分類:II度(41%, 44%);III度(44%, 42%),既往:心筋梗塞(両群とも87%),高コレステロール血症(70%, 74%),高血圧(59%, 58%),糖尿病(34%, 35%),PCI(19%, 20%)。
左室機能:EF*(両群とも28%),収縮末期容積指標*(両群とも82mL/m²),前壁壁運動の消失,収縮異常*(50%, 56%),僧帽弁逆流:無しあるいはtrace(38%, 35%);軽症(≦2+)(43%, 47%);中等度(3+)(両群とも14%)。
血管造影背景:≧50%の狭窄病変数:2枝(26%, 29%);3枝病変(両群とも64%),左主幹部病変:50~74%(12%, 14%);≧75%(7%, 6%),≧75%の近位左前下行枝病変(74%, 78%),Duke Coronary Artery Disease Severity Index*(両群とも65%。・本指標は0~100で表記し高値ほど重症)。
治療状況:β遮断薬(87%, 85%),ACE阻害薬あるいはARB(89%, 87%),ACE阻害薬(82%, 80%),利尿薬(66%, 69%),digoxin(14%, 17),aspirin(両群とも77%),aspirinあるいはwarfarin(83%, 81%),スタチン系薬剤(75%, 79%)。
* 中央値
治療法 (1) CABG+薬物治療群(610例),薬物治療群(602例)。
各施設の責任心臓医がガイドラインに基づいた集中的薬物治療,デバイスの使用を推奨。心臓手術はEF≦40%の患者25例以上の手術実績があり,手術による死亡率≦5%の心臓外科医が実施。CABGは割付けから14日以内に実施することとした。

(2) CABG+SVR群(501例),CABG単独群(499例)。
全例にガイドラインに基づいた薬物治療,デバイスの使用を推奨。各施設の責任心臓医が,ACE阻害薬,ARB,β遮断薬,アルドステロン受容体拮抗薬,抗血小板薬,スタチン系薬剤,利尿薬,digitalis,ペースメーカー,ICDの妥当な使用がなされているかをモニタリングすることとした。
結果 (1) CABG+薬物治療 vs 薬物治療
[手技]
CABG+薬物治療群のCABG実施例は555例(91%)で,このうち529例(95%)が待機的手術例。CABG実施までの時間は10日(中央値)。
薬物治療群の100例(17%)がCABGに変更。CABG実施までの時間は142日(中央値)。主な理由は症状の進行(40%),急性非代償性不全(27%)など。
薬物治療に対するアドヒアランスは高く,両群間差はみられなかった。
[一次エンドポイント]
有意な群間差は認められなかった:CABG+薬物治療群218例(36%)vs 薬物治療群244例(41%);CABG+薬物治療群のハザード比0.86, 95%信頼区間0.72~1.04(p=0.12)。
as-treated解析(CABG実施例620例[薬物治療群からの変更例を含む],薬物治療実施例592例),per-protocol解析(割り付けられた群で実際にCABGを実施した555例,薬物治療を受けた537例)の結果も,同様にCABG+薬物治療群のほうが良好であった(0.70, 0.58~0.84[p<0.001];0.76, 0.62~0.92[p=0.005])。
[二次エンドポイント]
心血管死はCABG+薬物治療群で少ない傾向が示された:168例(28%)vs 201例(33%);0.81, 0.66~1.00(p=0.05)。
全死亡+心血管疾患による入院はCABG+薬物治療群が有意に少なかった:351例(58%)vs 411例(68%):0.74, 0.64~0.85(p<0.001)。
★結論★左室機能が低下したCABG適応の冠動脈疾患患者において,CABG+薬物治療群と薬物治療群の全死亡リスクは同等であった。心血管死リスクと全死亡+心血管疾患による入院のリスクは,CABG+薬物治療群のほうが低かった。

(2) CABG vs CABG+SVR
[手技]
ランダム化された手技施行例はCABG+SVR群454例(91%):35例がCABGのみ,CABG群463例(93%):27例がCABG+SVR施行。
外科術を行った979例のうち,待機的手術:819例(84%),緊急手術:127例(13%),虚血性イベント発症中の手術:21例(2%),緊急状態での手術:11例(1例)。僧帽弁置換術を同時に行ったものは178例(18%)。SVR追加によりCABG手技単独に比べ心肺バイパス時間が27分(中央値)延長した(p<0.001)。
[左室容積:心エコー実施例373例(CABG+SVR群161例,CABG群212例)]
CABG+SVR群の方が有意に低下した。
平均収縮末期容積指標:CABG+SVG群(ベースライン時83mL/m²→ 4か月後67mL/m²:19%低下),CABG群(82mL/m²→ 77mL/m²:6%低下)。
[症状,6分間歩行]
両群ともCCS,NYHAともに改善し,両群間に有意差はみられなかった。
6分間歩行距離はCABG+SVR群(中央値:ベースライン時358m→ 4か月後410m),CABG群(350m→ 398m)。両群の歩行距離の延長に差はなかった(52m vs 48m, p=0.80)。
[一次エンドポイント:全死亡,心疾患による入院]
両群間差は認められなかった。
CABG+SVR群289例(58%) vs CABG群292例(59%):ハザード比0.99(95%信頼区間0.84~1.17, p=0.90)。
全致死的イベント:138例(28%) vs 141例(28%):1.00(0.79~1.26, p=0.98)。
心疾患による入院:204例(41%)vs 211例(42%):0.97(0.80~1.18, p=0.73)。
[二次エンドポイント,イベント]
ランダム化から30日以内の死亡:30例 vs 22例(p=0.26)。
試験手技施行後に行った手技,急性心筋梗塞,脳卒中に両群間差はなかった。
★結論★CABGに左室形成術を追加することによりCABG単独より左室容積を縮小するが,症状,運動耐用能の改善にはつながらず,死亡,心疾患による入院も抑制しなかった。
ClinicalTrials. gov No: NCT00023595
文献
  • [main]
  • (1) Velazquez EJ et al for the STICH investigators: Coronary-artery bypass surgery in patients with left ventricular dysfunction. N Engl J Med. 2011; 364: 1607-16. PubMed
    Fang JC: Underestimating medical therapy for coronary disease...again. N Engl J Med. 2011; 364: 1671-3. PubMed
  • (2) Jones RH et al for the STICH hypothesis 2 investigators: Coronary bypass surgery with or without surgical ventricular reconstruction. N Engl J Med. 2009; 360: 1705-17. PubMed
    Eisen HJ: Surgical ventricular reconstruction for heart failure. N Engl J Med. 2009; 360: 1781-4. PubMed
  • [substudy]
  • 10年後の全死亡,CV死,死亡+CVによる入院,手術関連死とCABG(+薬物治療)の関係に性は影響しなかった。
    CABG(+薬物治療)群の長期有効性(vs 薬物治療群)に性が関連するかを検証した。
    女性(148例)のほうが男性(1,064例)より高齢(63.4歳 vs 59.3歳*, p=0.016)で,BMIが高く(27.9 vs 26.7kg/m²*, p=0.001),喫煙(13.5% vs 21.8%)を除く冠動脈疾患の危険因子の保有が多く(糖尿病:55.4% vs 37.2%,高血圧:70.9% vs 58.6%,高脂血症:70.3% vs 58.9%),CABG既往が少なかった(0% vs 3.4%;すべてのp<0.05)。さらに,NYHA心機能分類が高く(III~IV度:66.2% vs 57.0%),6分間歩行距離が短く(300m vs 350m*),Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire全体サマリースコアが低かった(51 vs 63;すべてのp<0.05)。また女性は抑うつ症の報告がより多く,腎機能が不良だった(推算糸球体濾過量83.8 vs 91.2mL/分/1.73m²*, p<0.001)。* 中央値
    追跡期間中央値9.8年の全死亡(49.3% vs 64.3%:調整ハザード比0.67;95%信頼区間0.52~0.86, p=0.002)および心血管(CV)死(34.2% vs 46.6%:0.65;0.48~0.89, p=0.006)リスクは女性のほうが男性より有意に低かったが,治療(CABG+薬物治療群 vs 薬物治療群)と全死亡,CV死,全死亡+CVによる入院の関係に有意な性の交互作用はみられなかった。加えて,初回治療としてCABGにランダム化された例において手術関連死と性に有意な関係はなかった(女性;1.5% vs 男性;5.1%, p=0.187):Circulation. 2018; 137: 771-80. PubMed
  • CABG後の5年累積心臓突然死発生率は8.5%。リスクが最も高いのは,施行の1~3か月後。特に術前のESVI,BNP高値例は術後早期のSCDリスク層別の必要性が示唆された。
    EF≦35%のCABG適応の冠動脈疾患患者におけるCABG後の心臓突然死(SCD)の頻度,発生時期,予測因子を検証した。
    1,411例(EF 28%:左室形成術[SVR]+CABG群477例,CABG群934例)を中央値46か月追跡後のSCDは113例(8.0%),その他の死亡は311例(22.0%)。5年累積SCD発生率は8.5%。ICD植込みは16.6%。
    SCD例はその他の死亡例にくらべ有意に若く(61歳 vs 65歳),合併症が少なかった(脳卒中10% vs 11%,糖尿病38% vs 45%,高血圧54% vs 63%,高脂血症58% vs 64%,末梢血管疾患18% vs 21%,慢性腎臓病13% vs 15%,心房細動(AF)/粗動16% vs 19%,CABG既往2% vs 5%など)。
    CABG後30日以内のSCDは5例(全死亡の7%)。SCD発生率が最も高かったのはCABG後31~90日。
    多変量解析でSCDと最も強い関連が示されたのは左室収縮末期容量指標(ESVI),次いでBNP,その他にスタチン使用(ハザード比0.57),冠動脈解剖学的重症度(Duke CAD index),ナトリウム,AF/粗動既往,CABG+SVG群(0.64)とも関係がみられた:Circulation. 2017; 135: 1136-44. PubMed
  • (1) CABG+薬物治療 vs 薬物治療
    10年後の年齢別転帰-CABG+薬物治療群の薬物治療群にくらべた全死亡,全死亡+心血管入院抑制効果は若年者のほうが高齢者より大きかったが,心血管死の抑制は年齢を問わなかった。
    中央値9.8年後の転帰に年齢による違いがあるかを検証した結果:年齢を第1(≦54歳;330例),第2(>54~≦60歳;295例),第3(>60~≦67歳;279例),第4四分位群(>67歳;308例)に層別。
    全死亡率は両群ともに高齢者のほうが有意に高かった(CABG+薬物治療[以下,CABG]群:第1四分位群48% vs 第4四分位群68%;薬物治療群:60% vs 79%)。CABG群の薬物治療群にくらべた全死亡抑制効果は若年者のほうが大きく,年齢上昇に伴い低下する傾向がみられた(第1,第4四分位群のハザード比:0.66, 0.82;交互作用p=0.062)。全死亡+心血管による入院も同様の結果であった(0.55, 0.73;交互作用p=0.004)。対照的に,心血管死は若年層のほうが全死亡に占める割合が高かったものの(79% vs 62%),CABG群の抑制効果は全年齢で一貫して認められた(0.61, 0.70;交互作用p=0.307):Circulation. 2016; 134: 1314-24. Epub 2016 Aug 29. PubMed
  • (1) CABG+薬物治療 vs 薬物治療
    10年後の結果-CABG+薬物治療群は薬物治療群より全死亡,全死亡+心疾患による入院が有意に少なかった。
    追跡期間を5年延長した9.8年(中央値;3.5~13.4年)で,一次エンドポイントはCABG+薬物治療群(359例[58.9%])のほうが薬物治療群(398例[66.1%])より有意に少なかった(ハザード比0.84;95%信頼区間0.73~0.97, p=0.02)。また,同群は心血管死(40.5% vs 49.3%, p=0.006),全死亡+心血管疾患による入院(76.6% vs 87.0%, p<0.001)も少なく,生存期間が1.44年(中央値)長かった(7.73年 vs 6.29年)。死亡1例予防のためのNNTは14:N Engl J Med. 2016; 374: 1511-20. PubMed
  • EF≦35%のCABG適応CADと狭心症-狭心症合併は64%で,薬物治療群の全死亡と関連せず,CABG群の生命予後改善例も同定しなかった。しかし,CABGは薬物治療より狭心症を改善した。
    hypothesis 1(薬物治療群 vs CABG+薬物治療群)の試験参加者において,1) 狭心症合併は薬物治療群の転帰不良に関連するか,2) 狭心症によりCABG+薬物治療による生命予後改善例を同定できるか,3) CABGにより狭心症が改善するかを検証した結果(1,212例;追跡期間中央値56か月):狭心症合併は770例(64%;CCS分類クラスI:187例, II:525例, III・IV:58例)で,非合併例(クラス0:442例)より若かった(平均年齢59歳 vs 61歳)。
    1) 薬物治療群において狭心症合併の全死亡への影響はみられなかった(149/377例[39.5%]vs非合併例96/225例[42.7%]:非合併例のハザード比(HR)1.05;95%信頼区間0.79~1.38, p=0.74)。ただしCCS≧II以上の狭心症例は非合併例より死亡リスクが高かった(調整HR 1.27;1.04~1.57, p=0.02)。また全死亡と入院の複合エンドポイントにも狭心症合併の影響はみられなかった(71.6% vs 76.4%:1.05;0.86~1.28, p=0.64)。
    2) 狭心症合併例では全死亡率は両群同等であった(薬物治療群37.4% vs CABG群39.5%, 0.89;0.71~1.13, p=0.34)。非合併例ではCABG群のほうが低かったが(32.7% vs 42.7%:0.68;0.50~0.94, p=0.02),狭心症合併と治療群の有意な交互作用は認められず,CCS分類による結果の違いもみられなかった。
    3) ランダム化後に狭心症の評価を少なくとも1回行った生存例1,089例を解析(追跡期間中央値52か月)。狭心症の改善(CCSクラスが≧I改善)は494例(45.4%;CABG群50%,薬物治療群41%)。また狭心症合併例はCABG群のほうがCCS分類の悪化が少なかった(調整オッズ比0.70, p<0.01):J Am Coll Cardiol. 2015; 66: 2092-100. PubMed
  • CABG+左室形成術は,左室収縮末期容積が小さくEFが良好な患者には有効だが,左室容積が大きく,EFが低下するほど効果は減弱。
    (2)CABG vs CABG+左室形成術(SVR)の試験参加者1,000例において,心エコー(710例),心血管MRI(352例),SPECT(344例)により評価したベースライン時の左室機能指標が結果に影響を及ぼすかを検討した結果:評価した指標は,左室収縮末期容積係数(LVESVI),拡張末期容積係数(LVEDVI),EF,局所壁運動異常。ベースライン時の心エコー上のLVESVI,EFの中央値はそれぞれ78.0mL/m²,28.0%。LVESVIを3分位にわけると,LVESVI<66mL/m2 でCABG+SVRにより死亡+心疾患による入院のリスクは有意に低下(ハザード比0.60;95%信頼区間0.42~0.87, p=0.0024),全死亡のリスクも低下傾向を示したが(p=0.055),LVESVI値を臨床的に重要なカットオフ値で3群(<60,60~90,>90mL/m²)にわけるとそれらの結果はより顕著となった(それぞれ0.54;0.35~0.84[p=0.0052], 0.44;0.22~0.87[p=0.022])。またEFを3分位にわけると,EF≧33%ではCABG+SVR のほうが転帰良好だが≦25%では良好でなくなる傾向が示された。局所壁運動異常の程度はSVRの有効性に影響を及ぼさなかった:Eur Heart J. 2013; 34: 39-47.。 PubMed
  • 左室機能が低下したCABG適応の冠動脈疾患患者において,心筋バイアビリティーの評価はCABGにより死亡リスクが低下する患者を同定できず。
    STICHの(1)薬物治療 vs CABG+薬物療法試験の参加者(1,212例)のうち,single-photon-emission computer tomography(SPECT)またはドブタミン負荷心エコー検査により心筋バイアビリティーを評価した601例(CABG+薬物治療群298例,薬物治療群303例)において,心筋バイアビリティーとアウトカムの関係を検討した結果:追跡期間5.1年(中央値)で,死亡率は心筋バイアビリティーが保たれていた患者(178/487例[37%])のほうが保たれていなかった患者(58/114例[51%])に比べて有意に低かった(心筋バイアビリティーが保たれていた患者のハザード比0.64, 95%信頼区間0.48~0.86;p=0.003)。ただし,他の変数で調整すると有意差は消失した(p=0.21)。同様に心筋バイアビリティーが保たれていた患者では心血管死(0.61, 0.44~0.84, p=0.003),全死亡+心血管疾患による入院(0.59, 0.47~0.74, p<0.001)も有意に低下した。多変量解析後,心血管死の有意差は消失したが(p=0.34),全死亡+心血管疾患による入院との関連は有意差を維持していた(p=0.003)。
    心筋バイアビリティーと試験治療の割付けとの有意な交互作用は,いずれのエンドポイントについても認められなかった(全死亡:p=0.53,心血管死:p=0.70,全死亡+心血管疾患による入院:p=0.39):N Engl J Med. 2011: 364: 1617-25. PubMed

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収載年月2009.07
更新年月2018.03