循環器トライアルデータベース

JUPITER
Justification for the Use of Statins in Prevention: an Intervention Trial Evaluating Rosuvastatin

目的 LDL-Cは正常ながらCRP値が高い症例において,HMG-CoA reductase阻害薬rosuvastatinの主要な心血管イベント一次予防効果を検討する。
一次エンドポイントは主要な心血管イベント*初発。
* 非致死的心筋梗塞(MI),非致死的脳卒中,不安定狭心症による入院,血行再建術,心血管疾患死。
コメント LDL-Cがほぼ正常範囲でも,CRPが高いというだけでスタチンが心血管イベントを抑制したということは,いくつかのポイントがある。ひとつは,CRPが心血管イベントのリスクファクターであることを示唆した可能性があるということである。第二に,LDL-Cの治療に関することである。LDL-Cが130mg/dLでも十分高いということを示している可能性がある。第三にLDL-Cを55mg/dLまで下げても安全性が保証されたということである。
第一の点であるが,もちろんLDL-Cも同時に低下しているので,その調整をしてみないとわからないが,CRPの低下が独立した効果であるのか今後の解析に期待したい。第二の点は,以前より人体にとって必要なLDL-Cは50~60mg/dLといわれていたので,120~130mg/dLは高いということを改めて証明したということであろう。第三の点は,本試験が2年未満で終了したということで長期の安全性を示したことにはならない。とくに一次予防の場合は,安全性と効果のバランスが重要である点を十分認識しておく必要があろう。これらのいくつかの問題はあるにせよ,本試験が今後の治療ガイドラインに与える影響は大きいものと思われる。

→サブ解析(N Engl J Med. 2009; 360:)へのコメント
今回のサブ解析は,あらかじめ設定しておいた二次エンドポイントである静脈血栓予防にもスタチンが有効であるということを示したという意味では,本解析と同様センセーショナルではある。そのメカニズムをこのような臨床試験から類推することはできないが,今後の研究課題としてトロンボモジュリンや組織因子などに対するスタチンの効果を検証していく礎になるものと思われる。臨床的には静脈血栓のリスクの高い患者の手術前などに,考慮することも一つの考え方であろう。(寺本

→サブ解析(Lancet. 2009; 373; 1175-82.)へのコメント
JUPITERのサブ解析である。本来,LDL-Cが正常でCRPが高い患者を対象にして行われたのであり,このような解析は当然なされてしかるべきであろう。スタチンでLDL-CとともにCRPが低下した群では,79%のリスク低下がみられたという数字は衝撃的である。LDL-Cの次なるターゲットがCRPというか炎症であるということを示したのではないだろうか?今後,心血管病の予防を考慮する際CRPの測定はリスクを判断する上でも重要な因子になりそうである。ガイドラインでも,今後どのように扱うか検討すべき課題となろう。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(26ヵ国1315施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は1.9年(中央値)。
登録期間は2003年2月4日~2006年12月15日。
対象患者 17,802例。50歳以上の男性,60歳以上の女性,心血管疾患の既往のないもの,LDL-C<130mg/dL,高感度(hs)CRP≧2.0mg/L,トリグリセライド<500mg/dL。
除外基準:脂質低下治療既往あるいは現在治療中のもの,閉経後のホルモン補充療法実施例,肝機能不全,クレアチンキナーゼ>正常上限の3倍,クレアチニン>2.0mg/dL,治療抵抗性高血圧など。
■患者背景:年齢*66歳,女性(rosuvastatin群38.5%,プラセボ群37.9%),白人(71.4%, 71.1%),BMI*(28.3kg/m2, 28.4kg/m2),血圧*(両群とも134/80mmHg),若年での冠動脈疾患発症の家族歴(11.2%, 11.8%),メタボリックシンドローム(41.0%, 41.8%),hsCRP*(4.2mg/L, 4.3mg/L),LDL-C*(両群とも108mg/dL), HDL-C*(両群とも49mg/dL),トリグリセライド*(TG:両群とも118mg/dL),総コレステロール*(186mg/dL, 185mg/dL)。aspirin使用例(両群とも16.6%) *中央値
治療法 rosuvastatin群(8901例):20mg/日投与,プラセボ群(8901例)。
結果 12ヵ月後のLDL-Cはrosuvastatin群で55mg/dL(中央値)でプラセボ群よりも50%低下し,hsCRPは2.2mg/L(中央値)で37%,TGは17%それぞれ低下した(全p<0.001)。
一次エンドポイント
rosuvastatin群142例(0.77例/100人・年),プラセボ群251例(1.36例/100人・年):rosuvastatin群のハザード比(HR)0.56;95%信頼区間0.46~0.69(p<0.00001)。
2年間のrosuvastatin治療によるNNTは95,5年間の推定NNTは25。
致死的・非致死的心筋梗塞:rosuvastatin群0.17例/100人・年 vs プラセボ群0.37例/100人・年(HR 0.46;0.30~0.70, p=0.0002)。
致死的・非致死的脳卒中:0.18例/100人・年 vs 0.34例/100人・年(HR 0.52;0.34~0.79, p=0.002)。
血行再建術,不安定狭心症による入院:0.41例/100人・年 vs 0.77例/100人・年(HR 0.53;0.40~0.70, p<0.00001)。
全死亡:1.00例/100人・年 vs 1.25例/100人・年(HR 0.80;0.67~0.97, p=0.02)。
rosuvastatin群の有効性は年齢,性別,人種,危険因子を問わず認められた。
有害事象
重篤な有害イベントは両群同様であった:rosuvastatin群1352例,プラセボ群1377例(p=0.60)。ミオパチーは19例,うちrosuvastatin群は10例(p=0.82)。筋衰弱,新規癌発症,血液疾患,消化器,肝,腎系の障害に両群間差はなかった。アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)>標準上限の3倍も両群同様であった。
★結論★脂質異常を有さないhsCRP高値例において,rosuvastatinの主要心血管イベント一次予防効果が認められた。
ClinicalTrials.gov No: NCT00239681
文献
  • [main]
  • Ridker PM, et al.; the JUPITER Study Group. Rosuvastatin to Prevent Vascular Events in Men and Women with Elevated C-Reactive Protein. N Engl J Med. 2008; 359: 2195-207. PubMed
    Hlatky MA: Expanding the Orbit of Primary Prevention -- Moving beyond JUPITER. N Engl J Med. 2008; 359: 2280-2. PubMed
  • [substudy]
  • 中等度のCKD(eGFR<60mL/分/1.73m2)合併患者においても,rosuvasatinは心血管・死亡リスクを低下した。
    中等度のCKD例は3,267例(18%)で,≧60mL/分/1.73m2例に比べ一次エンドポイントのリスクが高かった(ハザード比1.54;1.23~1.02, p=0.0002)。
    中等度のCKD例においてrosuvastatin群で一次エンドポイント+心血管死が45%(0.55;0.38~0.82, p=0.002),全死亡リスクが44%それぞれ有意に低下した(0.56;0.37~0.85, p=0.005)。CKD・非CKDいずれにおいてもrosuvastatin群でLDL-C, CRPが同等に低下。12か月後のeGFRは同群でわずかに改善した:J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 1266-73. PubMed
  • 女性におけるrosuvastatinによる心血管疾患一次予防は男性と同等で,メタ解析でも同様の結果が示された。
    [JUPITER]
    rosuvastatin群の女性での絶対心血管疾患(CVD)比(/100例・年)は0.57,プラセボ群1.04で,男性(それぞれ0.88, 1.54/)より低かったが,相対リスク低下は男女同等であった(女性:ハザード比0.54;95%信頼区間0.37~0.80, p=0.002,男性;0.58;0.45~0.73, p<0.001)。女性で一次エンドポイントで有意な抑制がみられたのは血行再建術,不安定狭心症。
    [メタ解析]
    スタチン系薬剤のプラセボ対照ランダム化試験のメタ解析
    平均追跡期間>1年の一次予防試験でCVD,全死亡の性別の結果のある3試験;AFCAPS/TexCAPS(平均年齢63歳,糖尿病3%,lovastatin 20~40mg/日)+MEGA(60歳,18%,pravastatin 10~20mg/日)+JUPITER(69歳,0%,rosuvastatin 20mg/日):1万3,154例の女性・CVD 240例;死亡216例);CVDの相対リスク(RR)0.63(95%信頼区間0.49~0.82, p<0.001;p for heterogeneity=0.56),全死亡は0.78(0.53~1.15, p=0.21;p for heterogeneity=0.20)
    主に一次予防をみた2試験;ALLHAT-LLT(66歳,35%,pravastatin 20~40mg/日),ASCOT-LLA(63歳,24%,atorvastatin 10mg/日)を加えると(計2万147例・CVD>276例),RRは0.79(0.59~1.05),有意差は認められなかった(p=0.11;p for heterogeneity=0.053),総死亡は0.86(0.67~1.12, p=0.27;p for heterogeneity=0.13)。
    さらに一次予防で性別の結果のない2試験:HPS,PROSPERを加えると,CVDのRR 0.82(0.69~0.98, p=0.03):Circulation. 2010; 121: 1069-77. PubMed
  • rosuvastatin群の脳卒中リスク低下は脳梗塞抑制による。
    脳卒中リスクを低下したrosuvastatin群の有効性は,脳梗塞発症率を51%を抑制したことによるものであった(ハザード比0.49;0.30~0.81, p=0.004)。脳出血は両群間に有意差はなかった(0.67;0.24~1.88, p=0.44):Circulation. 2010; 121: 143-50. PubMed
  • rosuvastatinに症候性静脈血栓塞栓症抑制効果が認められる。
    二次エンドポイントである症候性静脈血栓塞栓症の発症は94例:rosuvastatin群34例(0.18/100人・年) vs プラセボ群60例(0.32/100人・年);ハザード比0.57(0.37~0.86, p=0.007)。unprovoked(悪性疾患,外傷,入院,手術に関連しない)塞栓症:19例(0.10/100人・年) vs 31例(0.17/100人・年);0.61(0.35~1.09, p=0.09),provoked塞栓症:15例(0.08/100人・年)vs 29例(0.16/100人・年);0.52(0.28~0.96, p=0.03)。肺塞栓症:17例(0.09/100人・年) vs 22例(0.12/100人・年);0.77(0.41~1.45, p=0.42),深部静脈塞栓症のみ:17例(0.09/100人・年) vs 38例(0.20/100人・年);0.45(0.25~0.79, p=0.004)。4年間の治療により静脈血栓塞栓症1件,一次エンドポイント1例を予防するためのNNTは26。プロトコールでの5年間治療によるNNTは21。
    rosuvastatin群の有効性はサブグループによる違いはなかった。出血リスクは両群間に有意差はなかった(258例 vs 275例,p=0.45):N Engl J Med. 2009; 360: 1851-61. PubMed
  • LDL-CおよびhsCRP両値の低下により血管イベント抑制効果はさらに大きくなる。
    LDL-Cの低下:≧70mg/dL vs <70mg/dL, hsCRPの低下:≧2mg/L vs <2mg/Lの検討(15,548例・追跡期間最長5年,中央値1.9年)。
    プラセボ群に比べrosuvastatin群ではLDL-C<70mg/dL到達例で血管イベントが55%低下:プラセボ群1.11 vs rosuvastatin群0.51/100人・年;ハザード比(HR)0.45(0.34~0.60), p<0.0001。
    また同群でhsCRP<2mg/L到達例は心血管イベントが62%低下:1.11 vs 0.42/100人・年:HR 0.38 (0.26~0.56, p<0.0001)。
    1症例内でのLDL-C低下とhsCRP低下との関連は弱かったが,rosuvastatin群では両値が低下した例では血管イベントが65%低下した:1.11 vs 0.38/100人・年;HR 0.35 (0.23~0.54, p<0.0001)。この抑制効果はいずれかの値が非低下/両値非低下例(33%低下:1.11 vs 0.74/100人・年;HR 0.67[0.52~0.87])より大きかった(p<0.0001)。
    LDL-C<70mg/dL+hsCRP<1mg/L達成例:血管イベントが79%低下(1.11 vs 0.24/100人・年;HR 0.21[0.09~0.52])。hsCRP達成低下値はイベントとの関連をみたアポリポ蛋白などの脂質値との関連とは独立してイベントを予測した:Lancet. 2009; 373: 1175-82. PubMed

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収載年月2008.11
更新年月2010.04