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Morbidity-mortality Evaluation of the If Inhibitor Ivabradine in Patients with Coronary Disease and Left-ventricular Dysfunction

目的 左室収縮機能障害を有する安定冠動脈疾患患者において,標準治療へのIf電流阻害薬ivabradineの追加による心拍数の低下が心血管死亡および合併症を抑制するかを検討。

一次エンドポイントは心血管死,急性心筋梗塞(AMI)による入院,心不全の新規発症あるいは悪化による入院。
コメント Lancet. 2008; 372: 807-16.へのコメント
心拍数が多いこと(例えば≧70/分)は,左室機能障害を持つ安定冠動脈疾患例の心血管イベントの予知指標となることが,あらためて示された。
本研究では多くの例ですでにβ遮断薬が投与されており,選択的If遮断薬ivabradineによる心拍数低下は6拍/分程度とそれ程多くなく,心血管イベント抑制には直結しなかった。しかし,心拍数が多い群ではivabradineによる心拍数低下は冠動脈イベントを抑制する可能性が期待される。(井上
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(33か国781施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は19か月(中央値)。
登録期間は2004年12月~’06年12月。
対象患者 10,917例。55歳以上(糖尿病例は18歳以上),冠動脈疾患,EF<40%,拡張末期径>56mm,安静時心拍数60拍/分(bpm)以上の洞調律,狭心症または心不全の症状が3か月以上安定しており,至適な標準心血管薬物治療を安定用量で1か月以上投与しているもの。
除外基準:6か月以内の心筋梗塞あるいは血行再建術例;3か月以内の脳卒中,一過性虚血発作;ペースメーカー,除細動器植込み例;3年以内の手術の必要が見込まれる弁膜症;洞不全症候群;洞房ブロック,先天性QT延長;完全房室ブロック;重症あるいは治療抵抗性高血圧;NYHA IV度の重症心不全;強力なCYP 3A4阻害薬治療例。
■患者背景:平均年齢65.2歳,男性83%,登録時心拍数71.6bpm,血圧128.0/77.5mmHg,EF 32.4%,NYHA II 度61%。
既往:高血圧71%;糖尿病37%;脂質異常症78%;心筋梗塞88%;PCI・CABG 52%;脳卒中18%;末梢動脈疾患13%,
薬物治療:aspirin・抗血栓薬94%,スタチン系薬剤74%,ACE阻害薬・AII受容体拮抗薬90%,β遮断薬87%,硝酸薬43%,利尿薬59%,抗アルドステロン利尿薬27%。
治療法 14日のrun-in後にランダム化。
ivabradine群(5479例):5mg×2回/日より開始し,2週間後に安静時心拍数60bpm以上では7.5mg×2回/日に増量,50bpm以下への低下または徐脈関連の症候発生の場合には5mg×2回/日に減量。5mg×2回日で安静時心拍数50bpm以下への低下または徐脈関連の症候発生の場合は投与中止,プラセボ群(5438例)。
施設,β遮断薬治療の有無により層別化。全例で試験期間中,至適な標準心血管薬物治療(β遮断薬,ACE阻害薬/AII受容体拮抗薬,脂質低下薬,aspirin等の抗血小板薬,抗血栓薬など)を継続。
結果 投与量:15日後に用量を7.5mg×2回/日へ増量したのは,ivabradine群2555例(47%),プラセボ群4187例(77%)で,1か月後のivabradine平均投与量は6.18mg×2回/日,ivabradine群の2207例(40%)が7.5mg×2回/日投与。
投与中止:ivabradine群1528例(28%),プラセボ群856例(16%)。ivabradine群での中止は主に徐脈(705例[13%]vs プラセボ群79例[2%])が原因で,同群の症候性徐脈は146例(21%)。エンドポイント,その他の冠イベント,心不全を除く重篤な有害イベントは1233例(23%)vs 1239例(23%);p=0.70。

ivabradine群の安静時心拍数の低下(プラセボ群との差)は,6か月後7.2bpm,12か月後6.4bpm,18か月後6.0bpm,24か月後5.6bpm。
一次エンドポイントはivabradine群844例(15.4%) vs プラセボ群832例(15.3%)で両群間に有意差はなかった:ハザード比(HR)1.00;95%信頼区間0.91~1.1(p=0.94)。この結果は全サブグループで同様であった。
全死亡は572例(10.4%)vs 547例(10.1%):HR 1.04;0.92~1.16(p=0.55)。

・ベースライン時の心拍数70bpm以上のサブグループ解析の結果
投与中止例はivabradine群627例(23%),プラセボ群430例(16%),徐脈による投与中止は149例(6%) vs 21例(1%)。
安静時心拍数の変化(プラセボ群との差):6か月後9.0bpm,12か月後7.9bpm,18か月後7.5bpm,24か月後6.9bpm。
一次エンドポイントはivabradine群463例(17.2%)vs プラセボ群498例(18.5%):HR 0.91;0.81~1.04, p=0.17),心血管死,心不全の新規発症あるいは悪化による入院も両群間に差はなかったが,致死的・非致死的AMIによる入院(HR 0.64; 0.49~0.84, p=0.001),AMI/不安定狭心症による入院(HR 0.78;0.62~0.97, p=0.023),血行再建術(HR 0.70;0.52~0.93, p=0.016)はivabradine群で減少した。
★考察★左室収縮機能障害を有する安定冠動脈疾患患者において,ivabradineによる心拍数の低下は心血管イベントの改善をもたらさないが,心拍数70bpm以上の症例においては冠動脈イベントを抑制できる可能性が示された。
ClinicalTrials. gov No: NCT00143507
文献
  • [main]
  • Fox K et al on behalf of the BEAUTIFUL investigators: Ivabradine for patients with stable coronary artery disease and left-ventricular systolic dysfunction (BEAUTIFUL): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2008; 372: 807-16. PubMed
    Reil JC and Böhm M: BEAUTIFUL results--the slower, the better? Lancet. 2008; 372: 779-80. PubMed
  • [substudy]
  • 心拍数≧70/分の左室収縮機能障害を有する幅広い患者におけるivabradine-臨床症状,状態を問わず転帰が改善。
    BEAUTIFUL試験(CAD患者)とSHIFT試験(心不全患者)の患者データを統合し(11,897例:平均年齢62.3歳,心拍数79.6/分,EF 30.3%,β遮断薬87%,ACE阻害薬・ARB 90%,利尿薬74%),ivabradineによる心拍数低下の幅広い左室収縮機能障害患者の転帰への効果を評価した結果(追跡期間21か月[中央値]):1か月後の心拍数は,ivabradine群64.5 vs プラセボ群75.1/分。
    ivabradine群はプラセボ群より心血管死+心不全による入院の複合エンドポイントが低下(相対リスク低下は13%, p<0.001)。 これはおもに心不全による入院リスク19%低下(p<0.001)によった。複合エンドポイントに心筋梗塞(MI)を加えたエンドポイント(15%低下),心血管死+非致死的MI(10%低下),MIによる入院(23%低下)も有意に低下した。
    この結果は臨床状態(EF,NYHA心機能分類)によらず同様で,またivabradineの忍容性は良好であった:Eur Heart J. 2013; 34: 2263-70. PubMed
  • プラセボ群における心拍数70/分以上の症例(2693例)vs 70/分未満の症例(2745例)の比較。
    心拍数70/分以上の群では,心血管イベントの相対リスク(ベースライン時背景による調整後)が有意に上昇した:上昇率は心血管死34%(p=0.0041),心不全による入院53%(p<0.0001),心筋梗塞による入院46%(p=0.0066),血行再建術38%(p=0.037)。心拍数が5/分増加するごとのリスク上昇:心血管死8%(p=0.0005),心不全による入院16%(p<0.0001),心筋梗塞による入院7%(p=0.052),血行再建術8%(p=0.034)。
    ★考察★心拍数の増加(70/分以上)は心血管死,心不全のリスク,冠動脈イベント増加と関連する:Lancet. 2008; 372: 817-21. PubMed

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収載年月2008.10
更新年月2013.08