循環器トライアルデータベース

SEAS
Simvastatin and Ezetimibe in Aortic Stenosis

目的 無症候性の軽症~中等症大動脈弁狭窄症において,HMG-CoA reductase阻害薬+小腸コレステロールトランスポーター阻害薬(simvastatin-ezetimibe)の有効性を検討する。
一次エンドポイントは,心血管死,大動脈弁狭窄症関連イベント(大動脈弁置換術,うっ血性心不全),虚血性イベント:非致死的心筋梗塞(MI),入院を要するイベント(不安定狭心症,心不全,CABG,PCI),非出血性脳卒中(脳梗塞)の複合。
コメント 大動脈弁狭窄症は高LDL-C血症ではよくみられる動脈硬化性疾患の一つであり,高LDL-C血症の治療で進展予防が期待される病変である。しかし,これまでのスタチンでの予防試験では十分な結果が得られていなかった。本試験はスタチンとezetimibe(エゼチミブ)による50%以上のLDL-Cの低下で,それが実証できるか検討した大規模試験である。結果としては,大動脈弁の病変の進展抑制には有効性を示し得なかった。ただ,虚血性心血管イベントのみが有意に抑制された。対象となった患者群は67歳と比較的高齢であり,大動脈弁狭窄の進展にかかわる危険因子としてのLDL-Cの意義は低かったのかもしれない。本研究で問題となったのは,癌の発症率がエゼチミブ群で有意に高かったことである。そこで,エゼチミブを用いた現在進行中の二つの大規模臨床試験をの中間解析を急遽行い,その結果を合わせたメタ解析をしており,癌の発症率には差がなく,一試験のバイアスである可能性が高いとしている。他の二つの試験は2年前後の中間解析であり,十分な解析とはいえないということを念頭に置く必要はあるが,現在進行中の試験における倫理性は担保されたものといえよう。エゼチミブのエビデンスとしては,今後予定されている二つの試験の結果に依存することになったといえよう。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(欧州7か国173施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は52.2か月(中央値)。
対象患者 1873例。45~85歳;心エコーで軽度~中等度の大動脈弁狭窄が診断され,最高ジェット血流速度が2.5~4m/秒のもの;無症候。
除外基準:冠動脈疾患の診断あるいは症状;末梢血管疾患;脳血管疾患;糖尿病;脂質低下治療適応例。
■患者背景:平均年齢(simvastatin-ezetimibe群67.7歳,プラセボ群67.4歳),女性(38.5%, 38.8%),BMI(26.9kg/m2, 26.8kg/m2),新生物腫瘍(8.4%, 11.1%;p=0.05),血圧(145.6/82.0mmHg, 144.0(p=0.08)/82.0mmHg),高血圧(51.8%, 51.2%),高感度CRP(中央値:2.10mg/L, 2.20mg/L)。
脂質値:総コレステロール(TC:223mg/dL, 221mg/dL);LDL-C(140mg/dL, 139mg/dL);HDL-C(両群とも58mg/dL);TC/HDL-C比(4.12, 4.13);非HDL-C(165mg/dL, 164mg/dL);トリグリセライド(両群とも126mg/dL);アポリポ蛋白B(132mg/dL, 130mg/dL)。
心エコー背景:最高ジェット血流速度(3.09m/秒, 3.10m/秒),大動脈弁圧較差:最高値(39.3mmHg, 39.6mmHg);平均(22.7mmHg, 23.0mmHg),大動脈弁口面積(1.29cm2, 1.27cm2)。
薬物治療:ACE阻害薬(14.7%, 16.0%),ARB(10.1%, 10.5%),Ca拮抗薬(16.6%, 17.2%),β遮断薬(25.6%, 28.8%),aspirin,その他の抗血小板薬(25.0%, 28.0%),利尿薬(spironolactoneを含む)(22.1%, 24.7%)。

本試験は大動脈弁狭窄症でsimvastatin(40~80mg)をプラセボと比較するSimvastaitn in Aortic Stenosis(SAS)に,ezetimibeを追加した治療を,より大規模で検討したもの。2001年3月~2002年12月,SASから196例をSASでの割付け治療と同群に組入れた。
治療法 4週間のプラセボおよびNCEP推奨による脂質低下食事療法によるrun-in後,ランダム化。
simvastatin 40mg-ezetimibe 10mg群(944例),プラセボ群(929例)。
担当医の判断で,オープンラベルでsimvastatin 40mgあるいは相当量のその他のスタチン系薬剤の追加投与を可とした。
結果 オープンラベルのスタチン系薬剤追加投与例はsimvastatin-ezetimibe群69例,プラセボ群134例,オープンラベルのスタチン系薬剤のみの投与例は30例,24例。

脂質値の変化
LDL-C:simvastatin-ezetimibe群(試験開始時140mg/dL→ 8週間後53mg/dLで61.3%低下:追跡期間全体では53.8%の低下,プラセボ群:追跡期間全体では3.8%の低下(p<0.001)。
一次エンドポイント
simvastatin-ezetimibe群333例(35.3%) vs プラセボ群355例(38.2%)で両群間に有意差はなかった:simvastatin-ezetimibe群のハザード比0.96;95%信頼区間0.83~1.12(p=0.59)。
心血管死:47例(5.0%) vs 56例(6.0%):0.83;0.56~1.22(p=0.34)。
大動脈弁置換術:267例(28.3%) vs 278例(29.9%):1.00;0.84~1.18(p=0.97)。
大動脈弁狭窄症の進展によるうっ血性心不全:25例(2.6%) vs 23例(2.5%):1.09;0.62~1.92(p=0.77)。
非致死的MI:17例(1.8%) vs 26例(2.8%):0.64;0.35~1.17(p=0.15)。
CABG:69例(7.3%) vs 100例(10.8%):0.68;0.50~0.93(p=0.02)。
PCI:8例(0.8%) vs 17例(1.8%):0.46;0.20~1.05(イベント数が少ないためp値は適用せず:NA)。
不安定狭心症による入院:5例(0.5%) vs 8例(0.9%):0.61;0.20~1.86(NA)。
脳梗塞:33例(3.5%) vs 29例(3.1%):1.12;0.68~1.85(p=0.65)。
二次エンドポイント
・大動脈弁狭窄症関連イベント:308例(32.6%) vs 326例(35.1%):0.97;0.83~1.14(p=0.73)。大動脈弁置換術は,267例(28.3%) vs 278例(29.9%):1.00;0.84~1.18(p=0.97)。
・虚血性イベント:148例(15.7%) vs 187例(20.1%):0.78;0.63~0.97(p=0.02)で,simvastatin-ezetimibe群での抑制効果は主に同群でCABGが少なかったことによる(69例[7.3%] vs 100例[10.8%]:0.68;0.50~0.93, p=0.02)。
・全死亡,非心血管疾患
全死亡:105例(11.1%) vs 100例(10.8%):1.04;0.79~1.36(p=0.80)。
癌の発症率はsimvastatin-ezetimibe群の方が有意に多かった(105例 vs 70例,p=0.01)。
★結論★大動脈弁狭窄症患者において,simvastatin-ezetimibe群は虚血性心血管イベントは抑制したが,大動脈弁狭窄症関連イベントは抑制しなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00092677
文献
  • [main]
  • Rossebø AB et al for the SEAS investigators: Intensive lipid lowering with simvastatin and ezetimibe in aortic stenosis. N Engl J Med. 2008; 359: 1343-56. PubMed
  • [substudy]
  • simvastatinにezetimibe追加によるLDL-C強力低下治療は癌リスクを増大するか?
    癌リスクが上昇したSEASの他に,simvastatin+ezetimibe vs プラセボ比較試験であるStudy of Heart and Renal Protection(SHARP:9264例,平均追跡期間2.7年)とImproved Reduction of Outcomes: Vytorin Efficacy International Trial(IMPROVE-IT:11,353例,平均追跡期間1.0年)を合わせて解析した。
    SHARP+IMPROVE-IT:癌発症は実薬群313例 vs プラセボ群326例で実薬群のプラセボ群に比べた癌リスク増大は認められなかった:リスク比0.96(95%信頼区間0.82~1.12, p=0.61)。また有意にリスクが上昇する癌発症部位もなかった。しかし,有意ではなかったが,実薬群では癌死が多く(97例 vs 72例,p=0.07),一方で非死亡例は同群で少なかった(216例 vs 254例,p=0.08)。追跡期間の長さと癌発症のリスク,癌死の関連傾向はみられなかった★結論★検討した3試験からezetimibeが癌の発症リスクを増大させる信頼しうるエビデンスは得られなかった。より長期の追跡結果が得られれば,リスクとベネフィットの信頼できるバランスが明らかになると思われる:N Engl J Med. 2008; 359: 1357-66. PubMed

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収載年月2008.10