循環器トライアルデータベース

GISSI-HF
Gruppo Italiano per lo Studio della Sopravvivenza nell'Infarto Miocardico Heart Failure

目的 症候性の慢性心不全(CHF)患者において,(1) HMG-CoA reductase阻害薬rosuvastatin,(2) n-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の有効性を検討する。

一次エンドポイントは全死亡,全死亡および心血管疾患による入院。
コメント Lancet. 2008; 372: 1231-9, 1223-30.へのコメント
CORONA試験で慢性虚血性心不全に対してスタチンが予後改善を示さないことが報告されたが,非虚血性心不全も含む心不全患者でスタチン(rosuvastatin)が有効かどうか,本試験の結果が期待されていた。しかし,GISSI-HF試験でもスタチンの効果は証明されなかった。これまで,小規模の試験でスタチンが有効との報告は多くみられ,有効性のメカニズムとして脂質低下による冠血管イベントの抑制とスタチンの抗炎症性作用と考えられてきたが,CORONA試験とGISSI-HF試験の結果から,慢性心不全に対するスタチン投与は有効でないことが判明した。本試験では,ACE阻害薬/ARBが92%,β遮断薬が64%,抗アルドステロン拮抗薬が39%に投与されており,このような神経体液性因子の抑制が充分にかかっている状態では,もはやスタチンの上乗せ効果がないものと考えられよう。
しかし,一方でn-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の投与は,心不全の予後及び入院の抑制効果を示した。リスク減少は8~9%であり,あまり大きいものではないが,上記の標準治療を行った上での効果であることを考えると意義が大きい。興味深いのは,本剤が心不全の増悪を抑制しており,それが心室性不整脈の抑制によることである。脳卒中や心筋梗塞の抑制効果はほとんどないため,本剤の効果は抗動脈硬化作用とは考えにくい。抗不整脈効果をもつ抗心不全薬として新しい分野が開けるかもしれない。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(イタリアの357施設:心臓病センター326施設,内科31施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は3.9年(中央値)。
ランダム化期間は2002年8月6日~2005年2月28日。
対象患者 (1)4574例,(2)7046例。18歳以上;NYHA II~IV度のCHF;CHFの病因問わない;登録前3か月以内のEFが>40%の場合は前年にCHFにより1回以上入院したもの。
除外基準:心臓に関連しない合併症(癌など);1か月以内の試験薬投与例;1か月以内の急性冠症候群,血行再建術の施行;ランダム化後3か月以内に心臓手術が予定されているもの;(1) rosuvastatin試験:重大な肝疾患,クレアチニン>221μmol/L,アラニン・アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ>正常上限の1.5倍,クレアチン・ホスホキナーゼ>標準上限など。
■患者背景
(1) 平均年齢68歳:70歳以上は2014例(44%),女性23%,血圧127/77mmHg,NYHA II度62%;III度35%,CHFの病因:虚血40%;拡張型心筋症35%;高血圧18%。治療状況:RAS抑制薬94%,β遮断薬62%,spironolactone 40%,利尿薬90%,digitalis 40%,硝酸薬32%,経口抗凝固薬30%,aspirin 45%,amiodarone 19%。

(2) 平均年齢67歳:70歳以上は2947例(42%),女性21%,126/77mmHg,NYHA II度63%%;III度34%,病因:虚血50%;拡張型心筋症29%;高血圧15%。治療状況:RAS抑制薬93%,β遮断薬65%,spironolactone 39%,利尿薬90%,digitalis 37%,硝酸薬35%,経口抗凝固薬29%,aspirin 48%,amiodarone 19%,スタチン系薬剤23%。
治療法 (1) rosuvastatin群(2285例):10mg/日,プラセボ群(2289例)。
(2) n-3 PUFA群(3529例):1g/日(エイコサペンタエン酸,ドコサヘキサエン酸エチルエステルの比率が1:1.2になるように配合。850~882mg),プラセボ群(3517例)。
結果 (1) 脂質値
LDL-C:rosuvastatin群では122.2mg/dL→ 1年後83.1mg/dL;32%低下→ 3年後89.3mg/dL;27%低下,プラセボ群(121.0mg/dL→ 130.3mg/dL→ 118.3mg/dL)では有意な変化はみられなかった(p<0.0001)。
HDL-C:プラセボ群に比べたrosuvastatin群の有意な変化はみられなかった(p=0.67)。
一次エンドポイント
全死亡:rosuvastatin群657例(29%) vs 644例(28%);調整前ハザード比(HR)1.03;95.5%信頼区間(CI)0.917 ~1.145(p=0.660) ,調整後HR 1.00;0.898~1.122(p=0.943)。
死因で最も多かったのは心不全の悪化(203例[8.9%] vs 231例[10.1%]),次いで不整脈死と想定されるイベント(198例[8.7%] vs 182例[8.0%])。
全死亡,心血管疾患による入院:1305例(57%) vs プラセボ群1283例(56%):調整前HR 1.02;99%CI 0.923~1.130(p=0.594) ,調整後HR 1.01;0.908~1.112(p=0.903)。
rosuvastatin,n-3 PUFAの両方を投与したものは転帰の評価から除外した。
試験終了時に投与を中止していたのは,790例(35%) vs 831例(36%);p=0.22。有害事象のため投与を中止したのは104例 vs 91例。
★結論★慢性心不全患者においてrosuvastatinは安全であるが,臨床転帰への有効性は認められなかった。

(2) 血圧(拡張期血圧;p=0.43,収縮期血圧;p=0.47),心拍数(p=0.73)に有意な変化はみられなかった。トリグリセライドがn-3 PUFA群でやや低下したが(ベースライン時125.7mg/dL→ 1年後120.3mg/dL→ 3年後118.6mg/dL),プラセボ群では変化はなかった(p<0.0001)。
一次エンドポイント
全死亡:n-3 PUFA群955例(27%) vs 1014例(29%):調整前HR 0.93;95.5%CI 0.852~1.021(p=0.124),調整後HR 0.91;0.833~0.998(p=0.041)。
死因で最も多かったのは心不全の悪化(319例[9%] vs 332例[10%]),次いで不整脈死と想定されるイベント(274例[7.8%] vs 304例[8.7%])。
全死亡,心血管疾患による入院:1981例(57%) vs 2053例(59%):調整前HR 0.94;99%CI 0.869~1.022(p=0.059),調整後HR 0.92;0.849~0.999(p=0.009)。
試験終了時に投与を中止していたのは,1004例(29%) vs 1029例(30%);p=0.45,有害事象のため投与を中止したのは102例 vs 104例(p=0.87)。
★結論★n-3 PUFAの日常的投与は安全で,わずかではあるが死亡,心血管疾患による入院を抑制した。
ClinicalTrials. gov No: NCT00336336
文献
  • [main]
  • (1) Gissi-Hf investigators: Effect of rosuvastatin in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2008; 372: 1231-9. PubMed
  • (2) Gissi-Hf investigators: Effect of n-3 polyunsaturated fatty acids in patients with chronic heart failure (the GISSI-HF trial): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2008; 372: 1223-30. PubMed
  • [substudy]
  • AF非合併心不全と脳卒中-合併例と同等の脳卒中リスク患者が存在。標準的な因子でリスク例同定の可能性が示される。
    心房細動(AF)非合併心不全患者の脳卒中リスクとその予測因子を検討した結果(GISSI-HFとCORONAの患者個人データ統合解析;AF非合併例6,054例,合併例3,531例;追跡期間中央値2.97年,3.18年):脳卒中発症はAF非合併例206例(11.1/1,000患者・年)vs 合併例165例(16.8/1,000患者・年)。AF非合併例での抗血栓療法は脳卒中発症例86%,非発症例82%。
    Cox比例ハザードモデルで特定されたAF非合併例における脳卒中の独立した予測因子は,年齢,NYHA III~IV度(vs II度),インスリン治療糖尿病,BMI,脳卒中既往。さらにNT-pro BNPもモデルに加えると独立した予測因子であった。これらの因子からAF非合併例のリスクスコアを算出すると,第3三分位群の脳卒中発症リスクは22.9/1,000患者・年となり,AF合併例とほぼ同等のリスクがあることが示された:Circulation. 2015; 131: 1486-94. PubMed
  • rosuvastatinが心房細動発症を抑制する可能性が示される
    ベースライン時に心房細動(AF)ではなかった3690例(80.7%)のうち3.7年(中央値)の追跡でAFを発症したのは552例(15.0%):rosuvastatin群258例(13.9%) vs プラセボ群294例(16.0%)。両群間に調整前(p=0.097),臨床因子(年齢,BMI,SBPなど)で多変量解析後(p=0.067),は有意差は認められなかったものの,臨床因子および検査値(HbA1c,フィブリノゲン,脂質値,eGFRなど)(p=0.039),検査値および薬物治療(p=0.038)で調整後は有意差が認められた:Eur Heart J. 2009; 30: 2327-36. PubMed

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収載年月2008.09
更新年月2015.05