循環器トライアルデータベース

PRoFESS
Prevention Regimen for Effectively Avoiding Second Strokes

目的 脳梗塞患者の再発予防効果および安全性を次の2種類の治療法で検討する。
(1) 降圧治療:脳梗塞発症後早期のARB telmisartan投与開始 vs プラセボ。
(2) 抗血小板療法:低用量aspirin+徐放性dipyridamole vs clopidogrel。
一次エンドポイントは脳卒中の再発。
コメント ■コメント 桑島 巌
■コメント 後藤 信哉

降圧治療
脳梗塞発症早期にARBを追加することが脳梗塞再発を予防できるか否かをプラセボと比較した試験であるが,結果は失望的である。
脳卒中再発予防における降圧薬の有用性を検討した試験としてはPROGRESS試験がある。PROGRESS試験ではACE阻害薬perindoprilを用いた場合,全体としては脳卒中再発を有意に抑制したという結果であったが,実はACE阻害薬単独では有意差は認められず,利尿降圧薬との併用によって初めて有意な降圧と有意な脳卒中再発抑制が認められたのである。RA系抑制薬には降圧利尿薬の併用なしには降圧,イベント抑制ともなしえないことを如実に示したといえよう。
本試験の試験期間は2.5年と比較的短いことも有意差をもたらさなかった一因であるかもしれない。利尿薬,ACE阻害薬,Ca拮抗薬,β遮断薬などの降圧薬併用率はプラセボ群の方が高く,血圧の差を縮ませたことが両群で有意差をもたらさなかった可能性もあるが,それでも試験を通じての血圧は,telmisartan群の方収縮期3.8/拡張期2.0mmHgが低い。それにもかかわらず,再発イベントは差が認められなかったことは解釈が難しい。
気になる点は試験中止理由のなかで心房細動による中止がtelmisartan群で多いことである(0.8% vs 0.5%,p<0.006)。この数字が心房細動すべての発症率を示すものではないと思われるが,これまでのARBの心房細動抑制がみられたとする考え方とは異なった結果である。また本試験ではARBの新規糖尿病発症抑制もまったく認められていない。少なくともRA系抑制薬の“降圧を超えた臓器保護効果”を完全に否定する結果である。
本試験は企業の経済的支援によって行われた結果でありながら,ネガテイブな成績をすべて論文化し公表したことは評価に値する。(桑島


抗血小板療法
aspirinとdipyridamoleの併用とclopidogrel併用の脳梗塞再発予防効果の差異を検証した大規模臨床試験である。aspirin,dipyridamoleはいずれも消化性潰瘍,動悸などの症候を呈する副作用がある。このため薬剤の中断率はaspirin,dipyridamole併用群において,より頻度が高かった。
一番の興味であった脳梗塞再発予防効果については両者に差異を認めなかった。脳梗塞の再発率はaspirin,dipyridamole併用群において若干少なかったものの,脳出血は同群の方が多かった。死亡に至る,またはquality of lifeの障害の著しい脳卒中の発症には両群間に差異を認めなかった。本研究は主にaspirin,dipyridamole併用(合剤)メーカーがスポンサー試験であるが,中立的な結果を示した態度は立派であると思う。(後藤
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照((1) 降圧治療),2×2 factorial,多施設(35か国695施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は 2.5年。
実施期間は2003年9月11日~2008年2月8日。
対象患者 20,332例。55歳以上,24時間以上症状が持続した比較的最近発症した(発症90日以内)脳梗塞,症状の持続が24時間以内であってもCT,MRIにて脳梗塞が確認された症例も登録可。ただし,抗血小板薬禁忌の症例は登録不可とした。6000例を登録した時点で登録基準が若干変更された。すなわち50~54歳の症例の登録の促進と,発症後90~120日の脳梗塞であっても2つ以上の心血管病のリスク因子のある症例の組入れを可能とした。
■患者背景
(1) 降圧治療:平均血圧144.1/83.8mmHg,白人/欧州人 約58%,その他の血管床でのアテローム性動脈硬化19%,現在あるいは過去の喫煙例57%,ACE阻害薬37%,ラクナ梗塞 約52%,軽い障害を伴う(Rankin Scale≧3)もの24%。
発症からランダム化までの時間は15日(中央値):10日以内;40%,11~30日;29%,30日以上;31%。
(2) 抗血小板療法:平均年齢66.1歳,女性36.0%,BMI 26.8kg/m²,既往:脳卒中,一過性脳虚血発作 およそ25%,高血圧74.0%,脂質異常症46.7%,糖尿病28.2%,冠動脈疾患16.3%,ラクナ梗塞52.0%。
発症からランダム化までの時間(中央値)15日,10日以内が39.8%。
欧州,イスラエル,オーストラリア(ASA-ERDP群38.1%,clopidogrel群38.4%),アジア(31.8%, 31.7%),米国,カナダ(24.5%, 24.2%)。
治療法 (1) 降圧治療:telmisartan群(10,146例):80mg/日,プラセボ群(10,186例)。
(2) 抗血小板療法:(aspirin 25mg+徐放性dipyridamole 200mg)×2回/日群(ASA-ERDP群10,181例),clopidogrel群(10,151例):75mg/日。
結果 (1) 降圧治療
1年後の試験薬投与例:telmisartan群77.6%,プラセボ群80.3%,2年後は73.7%, 76.7%,3年後は68.3%, 70.8%。
試験終了時の他の降圧薬の併用投与はプラセボ群の方が多かった:利尿薬(telmisartan群22.6%,プラセボ群28.2%),ACE阻害薬(28.4%, 33.9%),Ca拮抗薬(26.5%, 30.9%),β遮断薬(22.3%, 25.4%)。
血圧
telmisartan群の方が良好に降圧したが,両群間差は1年後に小さくなった:1か月後の収縮期血圧(telmisartan群-8.3mmHg,プラセボ群-2.9mmHg:両群差5.4mmHg→ 1年後の両群差4.0mmHg:追跡期間全体の平均差3.8mmHg)。拡張期血圧:1か月後の両群差2.9mmHg→ 1年後2.2mmHg→終了時1.6mmHg:平均差2.0mmHg。
一次エンドポイント
telmisartan群880例(8.7%) vs プラセボ群934例(9.2%):HR 0.95;0.86~1.04(p=0.23)。どの病型でも両群間に有意差は認められなかった。最初の6か月間は347例(3.4%)vs 326例(3.2%),6か月以降が533例(5.3%)vs 608例(6.0%)。
抗血小板療法との有意な相互関連はみられなかった(p=0.35 for interaction)。
二次エンドポイント
心血管イベントは1367例(13.5%) vs 1463例(14.4%):HR 0.94;0.87~1.01(p=0.11)。最初の6か月が474例(4.7%) vs 433例(4.3%),それ以降が893例(8.8%) vs 1030例(10.1%)。
新規糖尿病発症は125例(1.2%)vs 151例(1.5%)で両群間に有意差はなかった:HR 0.82;0.65~1.04(p=0.10)。
有害イベント
治療中止は1450例(14.3%) vs1127例(11.1%)でtelmisartan群の方が有意に多かった(p<0.001)。低血圧,失神は同群で有意に多かった。死亡,出血に両群間差はなかった。
★結論★脳梗塞発症早期からのtelmisartanの投与開始,2.5年の継続投与はプラセボ群と比較して有意な再梗塞,心血管イベント,糖尿病抑制効果は認めなかった。

(2) 抗血小板療法
投与中止例はASA-ERDP群の方が有意に多かった:2961例(29.1%) vs 2290例(22.6%);p<0.001。コンプライアンス(試験期間の75%以上服薬)もclopidogrel群の方が良好であった(69.6% vs 76.8%)。
一次エンドポイント
ASA-ERDP群916例(9.0%) vs clopidogrel群898例(8.8%):ハザード比(HR)1.01(95%信頼区間0.92~1.11)。信頼区間の上限はASA-ERDP群の非劣性のマージン1.075を超えた。
脳梗塞は1585例(87.4%):780例 vs 805例でASA-ERDP群の方が25例少なかったものの,同群ではその他,原因不明の脳卒中の再発が5例,脳出血がclopidogrel群より38例多かった。
脳出血はASA-ERDP群の方が多かったが,致死的,介護を要する(再発から3か月後のmodified Rankin scale≧3)脳卒中は,両群同様であった:413例(4.1%) vs 392例(3.9%):HR 1.05(0.96~1.16)。
二次エンドポイント
脳卒中,心筋梗塞,血管死:1333例(13.1%) vs 1333例(13.1%):HR 0.99(0.92~1.07)。

うっ血性心不全の新規発症,悪化はASA-ERDP群の方が有意に少なかった:144例(1.4%) vs 182例(1.8%):0.78(0.62~0.96)。
重大出血はASA-ERDP群の方が多かった:419例(4.1%) vs 365例(3.6%):HR 1.15(1.00~1.32)。死亡,出血性イベント,血栓性血小板減少,好中球減少は両群間差はなく,有害イベントによる投与中止は1650例(16.4%) vs 1069例(10.6%)で,ASA-ERDP群の方が多かった。ASA-ERDP群の投与中止は最初の2か月が多かった(49.6% vs 32.5%)。同群では頭痛による投与中止が多かった(5.9% vs 0.9%)。
脳卒中再発と重大出血イベントのnet リスクは両群同様であった:ASA-ERDP群1194例(11.7%) vs clopidogrel群1156例(11.4%): HR1.03;0.95~1.11。
★結論★aspirin+徐放性dipyridamole群のclopidogrel群に対する非劣性は示せなかったが,脳卒中再発は両群同様で,二次予防効果でいずれの治療が優れているかは示されなかった。
ClinicalTrials. gov No: NCT00153062
文献
  • [main]
  • (1) Yusuf S et al for the PRoFESS study group: Telmisartan to prevent recurrent stroke and cardiovascular events. N Engl J Med. 2008; 359: 1225-37. PubMed
  • (2) Sacco RL et al for the PRoFESS study group: Aspirin and extended-release dipyridamole versus clopidogrel for recurrent stroke. N Engl J Med. 2008; 359: 1238-51. PubMed
  • 非心原性脳梗塞患者において,収縮期血圧が140~<150mmHg,≧150mmHgだけではなく,<120mmHgでも再発リスクが上昇。
    収縮期血圧別の脳梗塞再発率:<120mmHg;8.0%(95%信頼区間6.8~9.2%), 120~<130mmHg;7.2%(6.4~8.0%), 130~<140mmHg;6.8%(6. 1~7.4%), 140~<150mmHg;8.7%(7.9~9.5%), ≧150mmHg;14.1%(13.0~15.2%):JAMA. 2011; 306: 2137-44. PubMed

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収載年月2008.09
更新年月2011.12