循環器トライアルデータベース

FAST
Factor Seven for Acute Hemorrhagic Stroke Trial

目的 遺伝子組換え活性型VII因子(rFVIIa)20μg/kgおよび80μg/kgの投与の有効性を評価する。
一次エンドポイントは90日後の重度の障害(modified Rankin scale score 5~6),死亡。
コメント 近年,降圧治療の普及により,脳卒中の病型の中で脳出血は減少しているが,それでも脳卒中全体の約20%がなお頭蓋内出血で占められている。脳出血は発症後24時間以降に増大することが少なくないため,出血巣の拡大を防ぐために凝固因子製剤を投与することは理にかなっているが,血栓による梗塞を助長する可能性もある。活性型第VII因子(rFVIIa)は新しい凝固因子製剤として期待されており,第II相試験で出血巣の拡大抑制と転帰の改善が示唆されていた。しかし,今回の成績からは,出血巣の拡大は抑制できるが,臨床的転帰には改善効果は認められなかった。つまり,第II相試験の結果から期待した程の好成績は得られなかったわけであるが,血栓形成の増大を伴わずに出血巣の拡大が抑制できたことは本薬剤の有用性を示唆するものと考えられる。今後,患者選択などに配慮しながら更なる検討の余地があるものと思われる。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(22か国122施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は90日。
実施期間は2005年5月~’07年2月。
対象患者 841例。18歳以上。発症から3時間以内にCTスキャンで特発性脳内出血が確認されたもの。
除外基準:Glasgow Coma Scale score≦5;24時間以内の血腫除去術の予定;外傷,動静脈形成異常,その他の原因による二次性脳内出血;経口抗凝固薬使用,血小板減少症,凝固障害;急性敗血症,挫滅外傷,播種性血管内凝固症候群;妊娠;発症前のmodified Rankin scale score>2の障害;30日以内の血栓塞栓性疾患(狭心症,跛行,深部静脈血栓症,脳梗塞,心筋梗塞)。
■患者背景:平均年齢65歳,男性62%,白人69%,アジア人19%,Glasgow Coma Scale score 14(中央値),National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)score 13,深部灰白質78%,lobar region 22%,脳内出血量 23.2mL。発症からCTスキャンまでの所要時間は109分,スキャンから治療までは51分:発症から治療までは160分(発症から2時間以内に治療したものは17%,3時間以内は72%)。
治療法 rFVIIa 20μg/kg群(276例),80μg/kg群(297例),プラセボ群(268例)にランダム化。
凍結乾燥した粉末を滅菌水で再構成した試験薬を,発症から4時間以内,ベースライン時CTスキャンから1時間以内に2分間静注。静注から24,72時間後に追跡CTスキャンを実施し,脳内出血,脳室内出血,浮腫を評価。登録時,試験薬投与後1,24時間,入院2,3,15日,脳卒中後90日に臨床評価を行い,Glasgow Coma Scale,NIHSSにより神経障害を評価。
結果 24時間後の脳内出血の平均増加率はプラセボ群26%(ベースライン時22mL→ 24時間後28mL),rFVIIa 20μg/kg群18%(24→ 28mL);p=0.09(vs プラセボ群),80μg/kg群11%(23→ 25mL);p<0.001(vs プラセボ群)で,脳内出血量はプラセボ群に比べ20μg/kg群2.6mL(95%信頼区間-0.3~5.5, p=0.08),80μg/kg群3.8mL(0.9~6.7, p=0.009)減少した。
rFVIIa群での出血量減少にもかかわらず,一次エンドポイントはプラセボ群24%,20μg/kg群26%,80μg/kg群30%と治療群間に有意差はみられなかった。
90日後の死亡はプラセボ群19%, 20μg/kg群18%(対プラセボ群p=0.38),80μg/kg群21%(p=0.75)。Barthel index score(中央値)は各70.0, 72.5(p=0.54 vs プラセボ群),70.0(p=0.91 vs プラセボ群),NIHSS score(中央値)は各5.0, 5.0(対プラセボ群p=0.20), 4.0(p=0.02)であった。血栓塞栓性の重症有害イベントは各8%, 9%, 10%と治療群間差はなかったが,動脈性イベントは各4%, 5%, 8%(80μg/kg群 vs プラセボ群;p=0.04)であった。
★結論★脳内出血患者において,rFVIIaによる止血治療は血腫の増大を低減させたが,生存率および身体機能的転帰は改善しなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00127283
文献
  • [main]
  • Mayer SA et al for the FAST trial investigators: Efficacy and safety of recombinant activated factor VII for acute intracerebral hemorrhage. N Engl J Med. 2008; 358: 2127-37. PubMed
    Tuhrim S: Intracerebral hemorrhage--improving outcome by reducing volume? N Engl J Med. 2008; 358: 2174-6. PubMed

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収載年月2009.01