循環器トライアルデータベース

ADVANCE-血糖コントロール試験
Action in Diabetes and Vascular Disease: Preterax and Diamicron MR Controlled Evaluation

目的 高リスクの2型糖尿病患者において,血圧コントロール(ACE阻害薬perindopril-利尿薬indapamide)+血糖コントロール(スルホニル尿素[SU]薬gliclazide)による大血管および細小血管障害への有効性を検討する。
一次エンドポイントは,大血管障害(非致死的脳卒中,非致死的心筋梗塞[MI],心血管死)および細小血管障害(腎症*,糖尿病性網膜症**の新規発症あるいは悪化)。
* 顕性腎症(尿中アルブミン/クレアチニン比>300μg/mg cre,>2.26mg/dLのクレアチニン値の倍増),腎代償療法の必要,腎疾患死。
** 増殖糖尿病網膜症, 黄斑浮腫,糖尿病による失明,網膜光凝固。
コメント 本試験は,ACCORD試験と同時に発表された血圧コントロールに加えて血糖の厳格治療による大血管障害と細小血管障害の予防効果をみる大規模臨床試験である。一次エンドポイントである両者を合わせた有効性は示せたものの,大血管障害の予防効果は示し得なかった。つまり,ACCORD試験と同様,糖尿病の厳格な治療による心血管病予防効果は示し得なかったことになる。本試験では,死亡率の上昇は認められなかったことがACCORD試験と異なる点である。本試験では,厳格な治療の標準的な治療法が示されており,インスリンの使用量が少なく,むしろチアゾリジンの使用量が多かった。このような標準的治療法を示したことが死亡率を上昇させなかったことにつながった可能性はある。いずれにしても糖尿病が大血管障害の重要な危険因子で得あることは揺るがぬ事実であり,いかなる治療法が大血管障害予防につながるのか今後の課題として十分な検討が必要である。(寺本
デザイン 無作為割付け,2×2 factorial,多施設(20か国*215施設),intention-to-treat解析。
*オーストララシア(オーストラリア,ニュージーランド),アジア,ヨーロッパ,北アメリカ
期間 追跡期間は5年(中央値)。
登録期間は2001年6月~’03年3月,試験終了は2008年1月。
対象患者 11,140例。55歳以上,30歳以上で2型糖尿病の診断を受けたもの,大血管,小血管障害の既往あるいは血管疾患の危険因子を1つ以上有するもの。
HbA1c値の登録・除外基準はなし。
除外基準:試験治療への特別な適応あるいは禁忌,長期インスリン治療の明確な適応。
■患者背景:平均年齢66歳,最初に糖尿病と診断された平均年齢は58歳,糖尿病罹病期間(厳格血糖コントロール群7.9年,標準コントロール治療群8.0年),平均BMIは28kg/m2,体重(78.2kg, 78.0kg),腹囲(99cm, 98cm)。
既往:主要な大血管障害(32.2%, 32.3%):心筋梗塞(両群とも12.0%);脳卒中(9.2%, 9.1%),主要な細小血管障害(10.3%, 10.5%):顕性腎症(3.4%, 3.9%);眼疾患(7.2%, 7.0%),微量アルブミン尿(27.0%, 26.7%)。
オーストララシア(13.4%, 13.3%),アジア(両群とも37.1%),ヨーロッパ(45.6%, 45.7%),北アメリカ(4.0%, 3.9%)。
治療法 6週間のrun-in期間中,通常の血糖コントロールは継続し,降圧試験薬であるperindopril, indapamideの合剤を投与。
厳格血糖コントロール群(5571例):HbA1c≦6.5%を目標に,gliclazide MR 30~120mg/日を投与。その他のSU薬の投与は不可。目標達成のためのその他の治療は担当医に委ねたが,プロトコールでは受診時のHbA1c値に基づいてgliclazideを増量,metformin, thiazolidinediones, acarbose,インスリン(基礎インスリンからの開始を推奨)の追加・増量とした。
標準血糖コントロール群(5569例):目標血糖値は参加国のガイドラインに則った。試験開始時にgliclazideを投与していたものは,継続投与が必要な場合はその他のSU薬を投与。
結果 最終受診時のgliclazideの投与率は90%,120mg/日投与は70.4%。
治療状況の変化
[血糖降下薬]gliclazide:厳格治療群(ベースライン時7.6%→試験終了時90.5%),標準治療群8.0%→ 1.6%,その他のSU薬:64.2%→ 1.9%, 63.1%→ 57.1%,metformin:61.0%→ 73.8%, 60.2%→ 67.0%,thiazolidinedione:3.6%→ 16.8%, 3.7%→ 10.9%,acarbose:9.2%→ 19.1%, 8.0%→ 12.6%,glinide:1.8%→ 1.2%, 1.5%→ 2.8%,全経口血糖降下薬:91.3%→ 93.7%, 90.6%→ 84.4%,インスリン:1.5%→ 40.5%, 1.4%→ 24.1%。
[その他の薬剤]aspirin:44.2%→ 57.0%, 43.7%→ 54.9%,その他の抗血小板薬:4.9%→ 7.1%, 4.2%→ 6.2%,スタチン系薬剤:27.9%→ 45.6%, 28.6%→ 47.7%,その他の脂質治療薬:9.0%→ 7.0%, 7.8%→ 7.0%,降圧薬:75.1%→ 88.9%, 75.1%→ 88.4%。

HbA1c:厳格治療群(試験開始時7.5%→試験終了時6.5%),標準的治療群(7.5%→ 7.3%)。
空腹時血糖値:154.4mg/dL→ 119.0mg/dL, 153.9mg/dL→ 140.7mg/dL。
時間加重平均で厳格治療群は標準治療群に比べHbA1cは0.67%,空腹時血糖は21.6mg/dL(1.2mmol/L)それぞれ低下した。
終了時の収縮期血圧は厳格治療群135.5mmHg,標準治療群137.9mmHgで平均差は1.6mmHg(p<0.001),体重は厳格治療群の方が0.7kg重かった(p<0.001)。

一次エンドポイント
2125例発生し,厳格治療群18.1% vs 標準治療群20.0%:ハザード比(HR)0.90;95%信頼区間0.82~0.98(p=0.01)。
52例を5年間厳格に血糖コントロール治療をすることにより1件の大血管障害あるいは細小血管障害を予防できる。
厳格治療は標準治療に比べ細小血管障害を有意に抑制したが(9.4% vs 10.9%:HR 0.86;0.77~0.97, p=0.01),大血管障害は抑制しなかった(HR 0.94;0.84~1.06, p=0.32)。
死亡:心血管死(HR 0.88;0.74~1.04, p=0.12),全死亡(0.93;0.83~1.06, p=0.28)。
細小血管障害で厳格治療の抑制効果が大きかったのは,腎症で(4.1% vs 5.2%:HR 0.79;0.66~0.93, p=0.006),網膜症への有意な有効性はみられなかった。
血糖降下治療と降圧治療間の相互作用は認められなかった(全p>0.50)。

重症の低血糖の頻度は高くなかったが,厳格治療群の方が多かった(2.7% vs 1.5%:HR 1.86;1.42~2.40, p<0.001)。
★結論★gliclazideおよびその他の血糖治療薬によりHbA1cを厳格に6.5%まで下げることで大血管障害,細小血管障害を標準治療よりも10%抑制するが,本効果は主に腎症を予防したことによるものである。
ClinicalTrials. gov No: NCT00145925
文献
  • [main]
  • The ADVANCE collaborative group: Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes. N Engl J Med. 2008; 358 :2560-72. PubMed
  • [substudy]
  • 中間報告
    ベースライン時患者背景:平均年齢66歳,女性43%,糖尿病罹病期間8年(診断から>10年の症例36%),血管疾患既往:主要な大血管障害32%,細小血管障害10%。
    危険因子:喫煙14%, TC 201.1mg/dL(>232.0mg/dLは24%),HDL-C 50.3mg/dL(<38.7mg/dLは20%),トリグリセライド177.0mg/dL,アルブミン/クレアチニン比14.2μg/mg(微量アルブミン尿:30~300μg/mgは24%),BMI 28kg/m2,ウエスト周囲99cm。
    血圧関連:血圧145/81mmHg(カナダ138/77mmHg~オランダ155/84mmHg),高血圧既往69%,降圧薬治療例75%:ACE阻害薬43%(うちperindopril投与例47%);AII受容体拮抗薬5%,β遮断薬24%,Ca拮抗薬31%,サイアザイド/サイアザイド系利尿薬14%,その他の利尿薬11%,その他の降圧薬12%。単剤治療例32%,2剤25%,3剤以上18%。
    aspirin,その他の抗血小板薬47%,脂質低下薬35%。
    血糖関連:ヘモグロビンA1c 7.5%(リトアニア6.6%~エストニア8.5%),食事療法のみ9%,経口血糖低下薬投与91%:SU薬71%(うちgliclazide投与例8%);metformin 61%;acarbose 9%。単剤治療例43%,2剤42%,3剤以上6%。
    国別特徴
    アジア(中国,インド,マレーシア,フィリピン)37%,女性は約半数(カナダ27%~エトアニア,フィリピン75%)。大血管および細小血管合併症の既往例はドイツ26%~リトアニア,マレーシア52%。喫煙率はポーランド(23%),オランダ(20%)が高い。BMIはアジアで低く(およそ25kg/m2),白人が多い国で高い(およそ30kg/m2)。
    薬物治療以外の血糖コントロール率はマレーシア(1%)~ドイツ(28%)。脂質低下薬の使用はエストニア,ロシアでは限られており,抗血小板治療はチェコ共和国(26%)~アイルランド,スロバキア(67%):Diabet Med. 2005; 22: 882-8. PubMed

▲pagetop
EBM 提供:大日本住友製薬 「循環器トライアルデータベース
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2008.07