循環器トライアルデータベース

WAFACS
Women’s Antioxidant and Folic Acid Cardiovascular Study

目的 観察研究,メタ解析から女性におけるホモシステイン低下療法の有用性が示唆されているが,女性での観察・介入研究は非常に少なく,本治療法の有効性がより大きいと思われる長期の転帰を観察した研究もあまりない。
そこで,高リスク女性において,葉酸,ビタミンB6,B12が心血管疾患発症リスクを低下させるかを7年以上の追跡により検討する。
一次エンドポイントは心血管合併症(心筋梗塞,脳卒中,冠動脈血行再建術),心血管死。

・本研究は,女性において3種類の抗酸化ビタミン(C,E,βカロテン)の心血管リスクに対する有効性を検討していたWomen’s Antioxidant Cardiovascular Study: WACSに葉酸・ビタミンB6・B12を1998年に追加したNHLBIによる研究。
コメント 多くの疫学研究ではホモシステイン高値と心血管イベント発症の関連を明らかにしている。またメタ解析でも同様な結果を示すものが多い。しかしながら,これまでの葉酸とビタミンBによる前向き介入研究ではことごとく,心血管イベント抑制効果は認められていない。本研究は,その有効性が高い可能性がある高リスクの女性にしぼって長期間の前向き二重盲検法で検討したが,やはり結果はホモシステイン値は低下するも心血管イベント予防効果は認められなかった。このような疫学研究と介入研究のギャップがなぜ生じるのかが今後の課題である。(桑島
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(アメリカ),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は7.3年。
試験期間は1998~2006年7月。
対象患者 5,442例。WACS研究参加者のうち死亡例,本研究参加を拒否した2,729例を除外したもの。40歳以上の閉経後あるいは妊娠の可能性のない高リスク*女性。
* 心血管疾患(心筋梗塞,脳卒中,冠動脈/末梢動脈血行再建術,狭心症,一過性脳虚血発作)の既往あるいは3つ以上の心血管危険因子(高血圧,高コレステロール血症,糖尿病,両親の60歳未満での心筋梗塞発症,肥満[BMI≧30kg/m²],喫煙)を有する女性。
除外基準:10年以内の癌(悪性黒色腫以外の皮膚癌を除く)の既往,重症非心血管疾患,warfarinあるいはその他の抗凝固薬使用例。
■患者背景:平均年齢62.8歳:55~64歳(実薬群36.4%,プラセボ群35.6%),65歳以上(42.2%, 42.9%),心血管疾患既往(64.8%, 63.5%),危険因子:高血圧(86.7%, 85.8%);高コレステロール血症(77.8%, 79.0%),糖尿病(21.0%, 21.1%),両親の60歳未満での心筋梗塞発症(38.9%, 40.5%),肥満(49.3%, 49.6%),喫煙(11.4%, 12.3%)。
治療状況:aspirin(51.1%, 48.9%),ホルモン補充療法(48.5%, 48.8%),脂質低下薬(33.6%, 34.5%),β遮断薬(26.6%, 27.0%),ACE阻害薬(24.3%, 25.8%),マルチビタミン(22.6%, 23.2%)。
食事による摂取量(中央値):葉酸(424.4μg/日,438.7μg/日),ビタミンB6(2.48mg/日,2.54mg/日),B12(7.10μg/日,6.98μg/日)。
治療法 実薬群(2,721例):葉酸2.5mg/日・ビタミンB6 50mg/日・B12 1mg/日の合剤,プラセボ群(2,721例)。
結果 心血管イベントは796例で両群のリスクは同様であった。
実薬群406例(226.9例/10,000人・年) vs プラセボ群390例(219.2例/10,000人・年);相対リスク(RR)1.03;95%信頼区間0.90~1.19(p=0.65)。
サブグループによる違いはみられなかった。

二次エンドポイントである心筋梗塞は34.5例/10,000人・年 vs 39.5例/10,000人・年(RR 0.87;0.63~1.22, p=0.42),脳卒中:41.9例/10,000人・年 vs 36.8例/10,000人・年(RR 1.14;0.82~1.57, p=0.44),心血管死:50.3例/10,000人・年 vs 49.6例/10,000人・年(RR 1.01;0.76~1.35, p=0.93)。

blood substudy(実薬群150例,プラセボ群150例)
患者背景で非サブスタディ群との間に差があったのは,喫煙例(サブスタディ群8.0% vs 非サブスタディ群12.1%, p=0.003),糖尿病既往(16.7% vs 21.3%, p=0.06)で,いずれもサブスタディ群で少なかった。
葉酸値(中央値):ベースライン時は実薬群8.9ng/mL vs プラセボ群8.8ng/mLで両群同様で(p=0.94),不十分(<7ng/mL)例は34%であった。
追跡終了時は,プラセボ群で15.4ng/mLと有意に上昇したものの(p<0.001),ホモシステイン値低下にはつながらず,葉酸値の相対上昇率は実薬群の方が大きかった(>40ng/mL例は実薬群49.3% vs プラセボ群4.7%)。
ホモシステイン値(中央値):ベースライン時は両群間に有意差はなかったが(p=0.96),実薬群:ベースライン時12.1μmol/L→終了時9.8μmol/L(p=0.001),プラセボ群:12.5μmol/L→ 11.8μmol/L(p=0.99)。また>15.5μmol/L例は27.7%→ 10%と減少した。
ホモシステインの変化を比較すると,両群間の差は2.27μmol/Lで実薬群でプラセボ群より18.5%有意に低下した(12.5%~24.1%, p<0.001)。
★結論★高リスクの女性において,葉酸,ビタミンB6,B12は,ホモシステイン値を有意に低下したものの,心血管イベント抑制効果は認められなかった。
ClinicalTrials. gov No.: NCT00000541
文献
  • [main]
  • Albert CM et al: Effect of folic acid and B vitamins on risk of cardiovascular events and total mortality among women at high risk for cardiovascular disease: a randomized trial. JAMA. 2008; 299: 2027-36. PubMed

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収載年月2008.07