循環器トライアルデータベース

Steno-2

目的 (1) 治療期間中の予後:持続性アルブミン尿を有する2型糖尿病患者において,生活習慣改善および薬物治療による多因子(血糖,血圧,脂質)の厳格コントロールによる心血管抑制効果を検討する。
一次エンドポイントは心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中+血行再建術+末梢動脈疾患による切断(N Engl J Med. 2003; 348 383-93.)。
(2) 治療終了後の観察期間の予後: (1)の試験で非致死的心血管疾患抑制効果が認められた多因子介入が全死亡,心血管死も予防するかを検討する。
一次エンドポイントは全死亡(N Engl J Med. 2008; 358: 580-91.)。
コメント 2型糖尿病は大血管障害の大きな危険因子であるが,大規模臨床試験であるUKPDSでは,糖尿病治療による細小血管症の予防は可能であったものの大血管障害の予防については有意な結果を示しえないでいる。しかし,2型糖尿病患者における大血管障害予防の寄与因子として,LDL-C,収縮期血圧が最も大きく,血糖の寄与がそれに続いていたとしている。このような背景から,Steno-2は糖尿病に関わる大血管障害の他の危険因子である脂質異常や高血圧についても,糖尿病治療とあわせて総合的に治療した場合の有効性を検討している。その結果,厳格な治療を行った群での糖尿病による最小血管症はもとより,大血管障害も有意に抑制された。Steno-2は,2型糖尿病においては総合的な管理が重要であることを示したという点で実用的な試験として評価できる。さらに,本試験後,特別な介入はせずに5.5年間観察するという予後調査をしているが,脂質や血圧,血糖などには有意差は見られないものの,7.8年の厳格な治療がその後の13年間の死亡率にも有意な影響を与えているということは,厳格な治療の重要性を再認識させるという意味でも意義深いものと思われる。(寺本
デザイン PROBE(Prospective, Randomized, Open, Blinded-Endpoints),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は13.3年:治療期間7.8年後,5.5年観察。
試験開始は1993年,観察終了は2006年12月31日。
対象患者 160例。平均年齢55.1歳(厳格群54.9歳,通常群55.2歳)。WHO定義による2型糖尿病。
治療法 2群とも治療の目標値は1988年時(2000年改訂)のデンマーク医師会推奨によった。
厳格コントロール群(80例):各目標値:血圧(1993~’99年<140/85mmHg,2000~’01年<130/80mmHg),糖化ヘモグロビン(HbA1c)(いずれも<6.5%),空腹時総コレステロール(TC)(<190mg/dL, <175mg/dL),空腹時トリグリセリド(TG)(いずれも<150mg/dL)。
通常治療群(80例):各目標値:血圧(<160/95mmHg, <135/85mmHg),HbA1c(<7.5%, <6.5%),空腹時TC(<250mg/dL, <190mg/dL),空腹時TG(<195mg/dL, <180mg/dL)。
使用薬剤
ACE阻害薬:微量アルブミン尿症例のため,血圧値にかかわらず投与。ただし,1993~’99年の通常治療群は投与せず。
aspirin:虚血性心疾患に投与し,末梢動脈疾患は厳格群には投与,通常群には投与せず。また非冠動脈疾患,非末梢動脈疾患には2000~’01年の厳格群のみに投与。
結果 検査値,食事,治療法の推移(ベースライン時→平均7.8年後→平均13.3年後):(2)の文献参照
・血圧(mmHg):厳格群146/85→ 131/73(p<0.01 vs 通常群)→ 140/74,通常群149/86→ 146/78→ 146/73。
・HbA1c(%):8.4→ 7.9(p<0.01 vs 通常群)→ 7.7, 8.8→ 9.0→ 8.0。
・空腹時TC(mg/dL):210→ 159(p<0.01 vs 通常群)→ 147, 233→ 216→ 155。
LDL-C(mg/dL):133→ 83(p<0.01 vs 通常群)→ 71, 137→ 126→ 77, HDL-C(mg/dL):40→ 47→ 51, 39→ 45→ 47。
TG(mg/dL・中央値):159→ 115(p<0.05 vs 通常群)→ 99, 205→ 159→ 148。
尿中アルブミン排泄量(mg/24時間・中央値):78→ 46(p<0.01 vs 通常群)→ 69, 69→ 126→ 75。
尿中ナトリウム排泄量(mmol/24時間・中央値):185→ 170→ 169, 211→ 198→ 201。
・炭水化物摂取量(%):37.2→ 46.4(p<0.01 vs 通常群)→ 45.8(p<0.01 vs 通常群),38.6→ 43.7→ 43.9。
脂肪摂取(%):41.1→ 30.6(p<0.01 vs 通常群)→ 32.6(p<0.05 vs 通常群),41.8→ 35.0→ 34.3。
飽和脂肪酸摂取量(%):17.5→ 10.6(p<0.01 vs 通常群)→ 12.1, 17.4→ 12.7→ 12.8。
・ACE阻害薬あるいはARB(%):20→ 97→ 91, 19→ 70→ 87,
ACE阻害薬+ARB(%):0→ 28(p<0.01 vs 通常群)→ 18, 0→ 0→ 5,
降圧薬(%):41→ 99(p<0.01 vs 通常群)→ 93, 41→ 83→ 100,
スタチン系薬剤(%):0→ 85(p<0.01 vs 通常群)→ 84, 3→ 22→ 82,
aspirin(%):14→ 87(p<0.01 vs 通常群)→ 85, 13→ 56→ 76。

(1) 7.8年間の転帰
血糖コントロールは食事療法のみが厳格群28%→終了時1%,通常群21%→ 4%;経口血糖降下薬が47%→ 50%, 48%→ 38%,インスリンが5%→ 38%, 11%→ 34%。ビタミン,ミネラルのサプリ使用は試験開始時にはいなかったが,厳格群42%(p<0.001),通常群0%であった。
HbA1c,血圧,空腹時TC・TG,尿中アルブミン排泄量は厳格群は通常群より有意に低下した。
目標値達成率における両群間差:HbA1c<6.5%(p=0.06), TC<175mg/dL(p<0.001), TG<150mg/dL(p=0.19),収縮期血圧(SBP)<130mmHg(p=0.001),拡張期血圧(DBP)<80mmHg(p=0.21)。

心血管イベントは118件:厳格群19例・33件(vs 通常群35例・85件)。
心血管死7例(vs 通常群7例),非致死的MI 5件(vs 17件),CABG 5件(vs 10件),PCI 0件(vs 5件),非致死的脳卒中 3件(vs 20件),切断 7件(vs 14件),血管術 6件(vs 12件)。
一次エンドポイントの通常群に比べた厳格群の調整前ハザード比(HR)は0.47:95%信頼区間0.24~0.73(p=0.008)。糖尿病罹病期間,年齢,性,喫煙,ベースライン時の心血管疾患の有無などで調整後もHR 0.47:0.22~0.74(p=0.01)。

糖尿病性腎症の発症は厳格群16例,通常群31例(うち3例は透析が必要な末期腎症へ進展)。相対リスク(RR)は0.39:0.17~0.87(p=0.003)。
網膜症の発症,進展は38例 vs 51例。網膜症の発症は27例 vs 38例(p=0.02)で(RR 0.42:0.21~0.86, p=0.02),片眼失明は1例 vs 7例(p=0.03)。
自律神経障害:24例 vs 43例(RR 0.37:0.18~0.79, p=0.002),末梢神経障害:40例 vs 37例(1.09:0.54~2.22, p=0.66)。低血糖:42例 vs 39例(p=0.50)で,意識障害により人の助けが必要になった重大な低血糖イベントを1件以上発症したものは5例 vs 12例。
★結論★微量アルブミン尿を有する2型糖尿病患者において,目標値を定めた複数の危険因子への厳格介入により,大血管イベント,細小血管イベントリスクが約50%低下する。

(2) 13.3年後の転帰
目標値達成率における両群間差:HbA1c<6.5%(p=0.31), TC<175mg/dL(p=0.35), TG<150mg/dL(p=0.005), SBP<130mmHg(p=0.27), DBP<80mmHg(p=0.14)。

一次エンドポイント:厳格群24例(30%) vs 通常群40例(50%):絶対リスク低下(ARR)20%(p=0.02)。ハザード比(HR)0.54:0.32~0.89(p=0.02)。
心血管イベント:25例・51件 vs 48例・158件(厳格群のARR 29%, HR 0.41:0.25~0.67, p<0.001):心血管死:9例 vs 19例(HR 0.43:0.19~0.94, p=0.04),心筋梗塞:8例・9件 vs 21例・35件,脳卒中:6例・6件 vs 18例・30件,CABG:8例・8件 vs 13例・13件,PCI:1例・1件 vs 3例・11件,末梢動脈疾患への血行再建術:6例・8件 vs 10例・17件。
末期腎症への進展は厳格群1例,通常群6例(p=0.04)。
厳格群の網膜症に対する光凝固の相対リスクは0.45:0.23~0.86(p=0.02)。
重大な副作用はみられなかった。
★結論★2型糖尿病リスク症例において,多剤併用投与,生活習慣改善による厳格なコントロールによる血管合併症および全死亡,心血管死抑制効果は持続する。
ClinicalTrials.gov No.: NCT00320008
文献
  • [main]
  • (1) Gaede P et al: Multifactorial intervention and cardiovascular disease in patients with type 2 diabetes. N Engl J Med. 2003; 348: 383-93. PubMed
  • (2) Gaede P et al: Effect of a multifactorial intervention on mortality in type 2 diabetes. N Engl J Med. 2008; 358: 580-91. PubMed
  • [substudy]
  • 微量アルブミン尿の寛解はGFRの低下と関連。降圧治療と血糖のコントロールが寛解の予測因子。
    7.8年の追跡期間中に3回以上GFRを計測した151例のうち,46例が寛解(アルブミン尿正常化)し,微量アルブミン尿のままが58例,顕性腎症に進展したのは47例。寛解例のGFR低下は2.3mL/分/年で,微量アルブミン尿例(3.7mL/分/年),顕性腎症進展例(3.7mL/分/年)より有意に小さかった(p<0.001)。ベースライン時の尿中アルブミン排泄率は寛解,進展の独立した予測因子で,網膜症は顕性腎症への進展リスクを有意に増加させた。追跡期間中の降圧治療開始(53例:47例[89%]がRAS阻害薬を投与)は寛解と強く関連し(オッズ比2.32),HbA1c 1%の低下により寛解の可能性が増加した(オッズ比1.48):Nephrol Dial Transplant. 2004; 19: 2784-8. PubMed

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収載年月2008.03
更新年月2008.08