循環器トライアルデータベース

i-SEARCH

目的 外来高血圧患者において,国ごとの微量アルブミン尿(MAU)の罹患率を評価し,さらにMAUと心血管疾患危険因子との関連性を検討する世界規模の観察研究。
主な評価項目は,高血圧患者におけるMAUの頻度(i-SEARCH A),冠動脈疾患(CAD)の有無によるMAUを伴う高血圧例の比較(i-SEARCH B)。
コメント 微量蛋白尿(MAU)は人種を問わず,前高血圧の時期から出現しており,しかも冠動脈疾患と強く関連しているという成績である。ベトナム,インドネシア,中東といった発展途上国と,カナダ,ドイツといった先進国との間にMAUの頻度に差があることは降圧薬使用頻度の差に由来するものと推定される。
収縮期血圧の120mmHgからMAUが増え始め,血圧の上昇に一致してさらに増えていることは,高血圧臓器障害の早期発見のためにはMAUのスクリーニングが非常に重要であることをエビデンスとして示している。
冠動脈疾患の有無とMAUが強い関連があることも,今叫ばれている慢性腎臓病(CKD)が心血管疾患のマーカであるという考え方を支持する結果である。(桑島
デザイン 観察研究,多施設(26か国1750施設)。
期間 期間は6か月。
参加者 21,050例(オーストラリア171例,ヨーロッパ13,708例,極東2,868例,北アフリカ・中東1107例,南米・北米3196例)。18歳以上の治療中あるいは新規に診断された高血圧(座位血圧[sSBP/sDBP]≧140/90mmHg)で,心臓専門医/内科医(76.4%/22.3%)への外来患者。
除外基準:急性発熱(>38℃),腎疾患(クレアチニン>20mg/L),尿路感染症,制酸剤cimetidine投与例など。
■患者背景:平均年齢62.4歳,男性52.3%,BMI 28.9kg/m²,腹囲99.4cm,ウエスト・ヒップ比0.95,血圧149.2/87.4mmHg,血圧コントロールできていない(≧140/90mmHg)症例76.8%,心拍数74拍/分,洞調律94.8%。
・危険因子:総コレステロール205.0mg/dL,HDL-C 50.3mg/dL,LDL-C 123.7mg/dL,トリグリセライド159.3mg/dL,C反応性蛋白(CRP)0.93mg/dL,糖尿病27.5%(2型95.1%),血清クレアチニン(15,511例)1.01mg/dL,クレアチニンクリアランス(15,140例)87.9mL/分:60~80mL/分26.5%;80~120mL/分26.5%,心筋梗塞/CADの家族歴27.8%,定期的な運動なし35.0%,喫煙中/歴14.2%/20.5%。
・合併症:CAD 22.9%,うっ血性心不全5.8%,心房細動8.3%,脳梗塞既往4.8%,一過性虚血発作既往3.8%,末梢動脈疾患4.2%,頸動脈内膜切除19.7%,左室肥大(8311例)Sokolow 24.8mm,EF≦40% 4.7%,頸動脈狭窄2.9%,大動脈瘤1.4%。
・治療状況:サイアザイド系利尿薬28.3%,Ca拮抗薬32.7%,β遮断薬43.7%,ARB 32.6%,ACE阻害薬38.5%,脂質低下薬治療41.3%:スタチン系薬剤38.1%;フィブラート系薬剤3.4%,抗血小板/抗凝固薬66.5%:aspirin 40.0%;warfarin/coumadin 5.0%。
調査方法 施設ごとに心拍数,尿中アルブミン(10,30,80,150mg/L),尿中クレアチニン,腹囲,腰囲を測定。MAUは1回のdipstick testにて評価。加えて,人口統計データ,心血管疾患既往,心血管疾患危険因子,合併症,心血管疾患の症状/徴候,長期的薬物療法などを症例報告書に記録。
結果 一次評価項目
・MAUを伴う症例は高血圧患者全体の58.4%,男性(61.6%)で女性(54.9%)に比べ多かった。MAUの罹患率は,国別ではベトナム(71%),インドネシア(71%)で最も高く,ドイツ/スイス(53%)で最も低かった。
・MAUとCADとの間に強い関連が認められた:MAU 10mg/dL例(8,755例):非CAD例でのMAUは43.2% vs CAD例36.1%→ 30mg/L例(7,671例):非CAD例,CAD例それぞれ36.4%→ 80mg/L例(2,703例):12.3% vs 14.8%→ 150mg/L例(1,921例):8.1% vs 12.7%(p<0.0001)。
二次評価項目
・MAUとの関連がみられた心血管疾患危険因子のオッズ比
男性(vs 女性):オッズ比1.26(95%信頼区間1.17~1.35),大きい腹囲(vs標準腹囲):1.13(1.04~1.24),sSBP≧120mmHg(vs <120mmHg):120~129mmHg:1.25(1.02~1.53);130~139mmHg:1.45(1.19~1.75);140~159mmHg:1.62(1.34~1.95),160~169mmHg:1.82(1.50~2.22);≧180mmHg:2.08(1.66~2.62),sDBP≧100mmHg(vs <80mmHg):100~110mmHg:1.30(1.13~1.50);≧110mmHg:1.42(1.15~1.76),心拍数(vs 60拍/分):60~79拍/分:1.28(1.13~1.44);80~99拍/分:1.47(1.29~1.68);100~119拍/分:1.56(1.22~1.99);≧120pbm:2.55(1.22~5.33),糖尿病:1.24(1.12~1.38),うっ血性心不全:1.26(1.07~1.48),CAD:1.13(1.04~1.23),脳病理既往:1.30(1.17~1.45),閉塞性末梢動脈疾患:1.38(1.16~1.65),呼吸困難:1.28(1.17~1.40),クレアチニンクリアランス≧50mL/分,動悸であった。
・MAUとの関連度が低かったのは,週4時間以上の定期的な運動:0.78(0.73~0.84)。
・心血管疾患/糖尿病治療薬とMAUとに関連がみられた。
Ca拮抗薬:OR 1.31(1.22~1.40),β遮断薬:1.12(1.05~1.20),ビグアナイド系薬剤:1.23(1.07~1.40),SU薬:1.27(1.10~1.46),インスリン:1.68(1.40~2.00),その他の抗凝固薬:1.49(1.00~2.22)。
★結論★世界各地で外来高血圧患者におけるMAU罹患率は非常に高く,特に心血管疾患リスクを有する患者で顕著である。高血圧患者における心血管疾患リスク上昇の早期の独立したマーカである MAU検査による積極的スクリーニングの必要性が示された。

[主な結果]
  • 危険因子を有する高血圧患者における微量アルブミン尿の出現は心拍数と関連し,心房細動既往例で多く認められる。
    心房細動(AF)既往の心血管疾患の危険因子を有する高血圧例(1705例):AFの既往を問わず心拍数が多い例で微量アルブミン尿(MAU)の出現率が高い。AF既往例ではMAUが認められる場合が約10%高い(p<0.001)。AFにかかわらず,男性・糖尿病・心拍数が高い・高拡張期血圧は独立してMAUのリスクが上昇(Böhm M et al: Atrial fibrillation and heart rate independently correlate to microalbuminuria in hypertensive patients. Eur Heart J. 2009; 30: 1364-71.)。 PubMed
  • Bohm M et al: Association of cardiovascular risk factors with microalbuminuria in hypertensive individuals: the i-SEARCH global study. J Hypertens. 2007; 25: 2317-24. PubMed

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収載年月2008.02
更新年月2009.06