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PCI施行予定の中~高リスク急性冠症候群患者における2種類の抗血小板薬治療(aspirin+thienopyridine系薬剤)において,新規thienopyridine系薬剤であるprasugrelとclopidogrelとを比較する。 有効性の一次エンドポイントは心血管死,非致死的心筋梗塞(MI),非致死的脳卒中の複合。 安全性の主な評価項目は重大な出血。 |
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prasugrelは日本の宇部興産,第一三共が開発した国産薬である。残念ながら臨床開発において,日本が主導権をとることができなかった。世界的な標準治療薬であるclopidogrelとの比較試験において,有効性でprasugrelが優ったのは日本国民として嬉しい。一方,より強力な抗血小板薬であるprasugrelにて出血性合併症が増加した事実は抗血小板薬使用時には有効性/安全性のバランスの配慮が必要であることを示唆した。(後藤) |
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無作為割付け,二重盲検,多施設(30か国707施設),intention-to-treat解析。 |
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治療期間(中央値)は14.5か月。 ランダム化期間は2004年11月~'07年1月。 |
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13,608例(不安定狭心症あるいは非ST上昇型MI 10,074例,ST上昇型MI 3534例)。発症から72時間以内で虚血の症状が10分以上持続している不安定狭心症あるいは非ST上昇型MI;TIMIリスクスコア≧3;ST≧1mmの逸脱あるいは心筋壊死マーカー高値;primary PCI予定あるいはST上昇型MIの治療後14日以内の症例で,発症から12時間以内のもの。 除外基準:出血リスク上昇例,貧血,血小板減少症,頭蓋内疾患既往,5日以内のthienopyridine系薬剤投与例。 ■患者背景:年齢(中央値)61歳,75歳以上13%,BMI (中央値)28kg/m2,女性(prasugrel群25%,clopidogrel群27%),クレアチニンクリアランス<60mL/分(11%,12%)。既往:高血圧64%,高コレステロール血症56%,糖尿病23%,MI 18%。治療状況:ACE阻害薬/ARB(76%,75%),β遮断薬88%,スタチン系薬剤92%,Ca拮抗薬(18%,17%),aspirin 99%。手技状況:PCI 施行(99%)のうちステントはprasugrel群94%,clopidogrel群95%:ベアメタルのみ(48%,47%),1本以上の薬剤溶出性ステント(47%,47%),多枝病変PCI(14%,14%)。PCI時の抗トロンビン薬:heparin(66%,65%);低分子量heparin(9%,8%);bivalirudin(3%,3%);その他あるいは併用治療(22%,23%),入院中のGP IIb/IIIa受容体拮抗薬投与(54%,55%)。 |
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prasugrel群(6,813例):60mgで投与を開始し,手技後10mg/日を維持投与,clopidogrel群(6,795例):300mgで投与を開始し,手技後75mg/日を維持投与。投与期間は6~15か月。 aspirin投与は必須,推奨投与量は75~162mg/日とした。 |
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試験薬投与のタイミング:手技前(prasugrel群26%,clopidogrel群25%);周術期(73%,74%)。 一次エンドポイントはprasugrel群643例(9.9%) vs clopidogrel群781例(12.1%)とprasugrel群で有意に抑制された:ハザード比[HR]0.81;95%信頼区間0.73~0.90(p<0.001)。 心血管死:133例(2.1%) vs 150例(2.4%);HR 0.89(0.70~1.12,p=0.31),非致死的MI:475例(7.3%) vs 620例(9.5%);HR 0.76(0.67~0.85,p<0.001),非致死的脳卒中:61例(1.0%) vs 60例(1.0%);HR 1.02(0.71~1.45,p=0.93)。 全死亡は188例 vs 197例で両群間に有意差はみられなかった(p=0.64)。 ステント血栓症:68例(1.1%) vs 142例(2.4%),緊急標的血管血行再建術:156例(2.5%) vs 233例(3.7%)と,prasugrel群で有意に低下した(いずれもp<0.001)。 大出血は146例(2.4%) vs 111例(1.8%)でprasugrel群で有意に増加し(HR 1.32;1.03~1.68,p=0.03),生命にかかわる出血は1.4% vs 0.9%(p=0.01),非致死的出血1.1% vs 0.9%(p=0.23),致死的出血0.4% vs 0.1%(p=0.002)であった。 ★結論★PCI施行予定の急性冠症候群において,prasugrelはステント血栓症を含む虚血性イベントを有意に抑制したものの,致死的出血を含む重大な出血リスクが上昇した。死亡に関してはclopidogrelと有意な差は認められなかった。 ClnicalTrials.gov No. NCT00097591 |
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- [main]
- Wiviott SD et al for the TRITON-TIMI 38 investigators: Prasugrel versus clopidogrel in patients with acute coronary syndromes. N Engl J Med. 2007; 357: 2001-15. PubMed
- [substudy]
- prasugrelはclopidogrelよりも費用対効果に優れる。
8か国(米国,オーストラリア,カナダ,ドイツ,イタリア,スペイン,英国,フランス)6,705例(prasugrel群3,373例,clopidogrel群3,332例)の結果:心血管治療費は総卸売価格(prasugrel 5.45ドル/日,clopidogrel 4.62ドル/日)を使用して見積もった。
追跡期間中央値14.7か月の平均総コスト(入院費+試験薬剤費)はprasugrel群(2万4,205ドル+1,862ドル=2万6,067ドル)がclopidogrel群(2万4,734ドル+1,554ドル=2万6,288ドル)より221ドル/1患者少なく(95%信頼区間-759~299),これは主に同群がPCIを含む再入院率が低かったことによった。さらに同群では平均余命が0.102歳(0.030~0.180)長かったが,これは同群で非致死的MIが抑制されたためであった。
clopidogrelのジェネリックが1ドル/日と仮定すると,prasugrelによる正味の増分費用(incremental nest cost)は996ドル/1患者で,増分費用対効果比は1獲得生存年(life-year gained)あたり9,727ドル:Circulation. 2010; 121: 71-9. PubMed
- prasugrelの有効性はGP IIb/IIIa受容体拮抗薬の併用の有無を問わない
入院中にGP IIb/IIIa受容体拮抗薬を投与したのは7,414例(54.5%)で,一次エンドポイントのハザード比は0.76(0.64~0.90),非投与例は0.78(0.63~0.97,pinteraction=0.83)。GP剤の併用の有無にかかわらずprasugrelはMI,緊急血行再建術,ステント血栓症を有意に抑制した。GP剤併用例で出血率が上昇したが,prasugrel vs clopidogrelのTIMI大・小出血リスクは,GP剤併用群,非併用群間に有意差はなかった:J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 678-85. PubMed
- prasugrelのclopidogrelと比べた有意な心筋梗塞抑制効果
prasugrelはclopidogrelより全心筋梗塞(MI)を有意に抑制したが,この有効性は手技に関連するMI,手技非関連MI,MIのサイズ,維持治療中に発症したMIを問わずみられた:Circulation. 2009; 119: 2758-64. PubMed
- シトクロムP450多型(CYP)とclopidogrelへの反応
健常者162例での検討:clopidogrel投与例でCYP2C19 reduced-function allele(機能低下対立遺伝子)の保有例では,非保有例に比べclopidogrelの活性代謝レベルが有意に低下し,血小板凝集阻害が抑制され,ステント血栓症などの有害心血管イベントが増加した:N Engl J Med. 2009; 360: 354-62. PubMed
- PCIを施行するST上昇型心筋梗塞(MI)例において,prasugrel群はclopidogrel群よりも出血リスクを増大させることなく30日後の虚血性イベントを抑制した。
primary PCI例(発症から12時間以内の施行。2438例):prasugrel群1203例,clopidogrel群1235例,secondary PCI例(14日以内の施行。1094例):564例,530例。
30日後の一次エンドポイント(心血管死,非致死的MI,非致死的脳卒中):prasugrel群115例(6.5%) vs clopidogrel群166例(9.5%);ハザード比0.68(0.54~0.87,p=0.0017)で,clopidogrel群の有効性は15か月後まで持続した。primary PCI例:prasugrel群79例(6.6%) vs clopidogrel群101例(8.2%);0.80(0.60~1.08,p=0.1440),secondary PCI例:36例(6.4%) vs 65例(12.3%):0.50(0.34~0.76,p=0.0008)。
30日後の心血管死,MI,非致死的緊急血行再建術も同群で有意に低下:0.75(0.59~0.96,p=0.0205),15か月後も同群の有効性は持続。primary PCI例:0.92(0.68~1.24,p=0.5710),secondary PCI例:0.53(0.35~0.79,p=0.0016)。
ステント血栓症は同群の方が少なく,脳卒中は両群間に差はなかった。CABG非関連のTIMI大出血はprasugrel群17例(1.0%) vs clopidogrel群23例(1.3%);0.74(0.39~1.38,p=0.3359),生命にかかわる出血は両群とも0.6%,CABG非関連のTIMI大・小出血は3.0% vs 3.3%;0.91(0.62~1.32,p=0.6170):Lancet. 2009; 373: 723-31. PubMed
- 糖尿病患者ではprasugrel群の虚血性イベントの抑制効果がより大きく,出血リスクの増大もみられなかった。
糖尿病既往・インスリン非投与例(2370例)+糖尿病・インスリン投与例(776例)での結果。一次エンドポイントは糖尿病例:prasugrel群12.2% vs プラセボ群17.0%(ハザード比[HR]0.70,p<0.001),非糖尿病例:9.2% vs 10.6%(HR 0.86,p=0.02):pinteraction=0.09。糖尿病・インスリン投与例:14.3% vs 22.2%(HR 0.63,p=0.009),インスリン非投与例:11.5% vs 15.3%(HR 0.74,p=0.009)。
心筋梗塞:prasugrel群で非糖尿病例は18%低下(7.2% vs 8.7%,p=0.006),糖尿病例では40%低下(8.2% vs 13.2%,p<0.001):pinteraction=0.02。
TIMI大出血:prasugrel群で非糖尿病例は増加(HR 1.43,p=0.02),糖尿病例はプラセボ群と同等(HR 1.06,p=0.81):pinteraction=0.29。
prasugrel群の有効性を統合すると,糖尿病例(HR 0.74,p=0.001),非糖尿病例(HR 0.92,p=0.16):pinteraction=0.05:Circulation. 2008; 118: 1626-36. PubMed
- prasugrel群は虚血性イベント(心筋梗塞,ステント血栓症,緊急標的血管血行再建術)を最初の3日間,それ以降から試験終了まで(維持投与期間)双方の期間で有意に抑制した。CABGに関連しないTIMI大出血は早期は両群同様であったが,維持投与期間にprasugrel群で有意に増大した。臨床上の有効性をnetでみると同群の方が有意に大きい:J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 2028-33. PubMed
- ステント施行例において,prasugrel群はclopidogrel群よりも虚血性イベント,ステント血栓症を抑制した。
BMSのみを植込んだのは6461例:prasugrel群3237例,clopidogrel群3224例,DESのみは5743例:2865例,2878例:paclitaxel溶出ステント2766例(prasugrel群1404例,clopidogrel群1362例);sirolimus溶出ステント2454例(1210例,1244例),BMS/DESは640例。
ステント施行例での一次エンドポイント:prasugrel群9.7% vs clopidogrel群11.9%;ハザード比0.81(p=0.0001),DESのみの例では9.0% vs 11.1%;0.82(p=0.019),BMSのみでは10.0% vs 12.2%;0.80(p=0.003)。
心筋梗塞:7% vs 10%;0.76(p<0.0001),緊急標的血管血行再建術:2% vs 4%;0.68(p=0.0003),血行再建術:4% vs 6%;0.77(p=0.001)。
ステント血栓症:1.13% vs 2.35%;0.48(p<0.0001)。DESのみの例では0.84% vs 2.31%;0.36(p<0.0001),BMSのみの例では1.27% vs 2.41%;0.52(p=0.0009):Lancet. 2008; 371: 1353-63. PubMed
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