循環器トライアルデータベース

van Gogh Studies

目的 静脈塞栓症患者において,標準治療(ビタミンK拮抗薬,heparin)の代替治療として長時間作用型の活性型第X因子阻害薬idraparinuxの有効性を検討する。
(1) idraparinuxによる再発予防投与の可能性を検討
標準治療と比較する2つの非劣性試験:深部静脈血栓症(DVT試験),肺塞栓症(PE試験)から成る。
有効性の一次エンドポイントは3か月間の症候性静脈血栓塞栓症(致死的,非致死的)の再発。
安全性の主なエンドポイントは出血,全死亡。

(2) idraparinux予防投与期間延長の検討
静脈血栓塞栓症の再発予防治療として,6か月間のビタミンK拮抗薬,idraparinux投与((1)の試験)後,さらにidraparinuxを6か月間投与する投与期間延長の有効性と安全性を検討する。
有効性の一次エンドポイントは6か月後の症候性静脈血栓塞栓症の再発。
安全性の主なエンドポイントは重大な出血。
デザイン PROBE(Prospective Randomised Open Blinded-Endpoints),プラセボ対照((2)の試験),二重盲検((2)の試験),多施設((2)145施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は6か月。登録期間は(1) 2003年5月~2004年11月,(2) 2003年11月~2005年2月。
対象患者 (1) 5119例:DVT試験2904例,PE試験2215例。18歳以上の急性の症候性深部静脈血栓症あるいは肺塞栓症。下肢症状を有するものはDVT試験,胸痛(胸の症状)を有するものはPE試験。
除外基準:ランダム化前に低分子heparinまたは未分画heparinを36時間以上投与しているもの;血栓溶解治療既往,塞栓除去術,大静脈フィルターを要する塞栓症例;その他のビタミンK拮抗薬適応;クレアチニンクリアランス(CCr)<10mL/分,治療抵抗性高血圧(>180/110 mmHg)など。
■患者背景
DVT試験:平均年齢(idraparinux群58.0歳,標準治療群58.9歳),男性(55%, 53%),体重50~100kg(84.6%, 83.6%);>100kg(13.6%, 15.0%),CCr 50~<80mL/分(27.9%, 28.6%),DVTの診断:圧縮超音波検査(96.4%, 97.1%),危険因子:静脈塞栓既往(21.6%, 21.0%);癌既往(15.2%, 13.8%)。
PE試験:平均年齢(idraparinux群62.2歳,標準治療群61.6歳),男性(47.9%, 49.3%),体重50~100kg(84.1%, 82.5%);>100kg(14.4%, 15.6%),CCr 50~<80mL/分(33.8%, 31.0%),PEの診断:肺スキャンの所見がhigh probability(24.1%, 25.7%),スパイラルCT(63.6%, 63.2%),危険因子:静脈塞栓既往(23.6%, 23.8%);癌既往(14.2%, 14.7%)。

(2) 1215例。(1)の試験で試験薬(ビタミンK拮抗薬,idraparinux)による6か月間の治療を終了したもの。ただしビタミンK拮抗薬投与例の約3分の1は本試験非参加例。
■患者背景:(idraparinux群60.2歳,プラセボ群59.9歳),男性(53.4%, 52.5%),体重50~100kg(86.1%, 82.0%);>100kg(13.2%, 16.8%),CCr 30~<50mL/分(10.4%, 10.4%);≧50mL/分(88.4%, 89.1%),診断からランダム化までの日数(193.4日,193.7日),肺塞栓症(47.6%, 49.0%);深部静脈血栓症(55.9%, 54.3%),危険因子:静脈塞栓既往(18.4%, 18.0%);癌既往(8.9%, 10.8%);特発性疾患(61.3%, 59.7%)。
治療法 (1) DVT試験
idraparinux群(1452例):2.5mgを週1回皮下注。CCr<30mL/分の症例は2回目以降の投与量は1.5mgとした。標準治療群(1452例):tinzaparin, enoxaparin,静注heparinを活性化部分トロンボプラスチン時間が1.5~2.5となるように用量調整投与後,ランダム化から24時間以内にビタミンK拮抗薬(warfarin,あるいはacenocoumarol)をINR 2.0~3.0で投与。INRが2日続けて2.0を超えた場合および5日以上投与したらheparin投与は中止した。その後,INRは1か月に1回以上測定。
PE試験
idraparinux群(1095例),標準治療群(1120例)。治療法はDVT試験と同様。
両試験ともランダム化は施設と担当医師が評価した再発リスクによる投与期間(3か月,6か月)で層別化した。

(2) idraparinux群(594例):2.5mg/週を6か月間皮下注,プラセボ群(621例)。モニタリングはしなかった。
結果 (1) DVT試験
治療予定期間が3か月のものはidraparinux群22.1%,6か月は77.9%,標準治療群はそれぞれ21.8%, 78.2%。
92日目の再発率はidraparinux群2.9% vs 標準治療群3.0%:オッズ比(OR)0.98(95%信頼区間0.63~1.50)でidraparinux群の非劣性が認められた(p<0.001)。
6か月の時点のidraparinux群のハザード比は1.01で非劣性条件を満たした(0.66~1.55)。
92日目における出血の発生率はidraparinux群4.5%,標準治療群7.0%でidraparinux群で低かったが(p=0.004),6か月の時点では同等であった。
PE試験
治療予定期間が3か月のものはidraparinux群9.3%,6か月は90.7%,標準治療群はそれぞれ9.2%, 90.8%。
92日目の再発率は3.4% vs 1.6%:OR 2.14(1.21-3.78, p=0.59)でidraparinux群は非劣性基準を満たさず,さらに劣性を示した。
92日目の出血率は5.8% vs 8.2%,183日目は7.7% vs 9.7%。
★結論★深部静脈血栓症患者において,3か月または6か月の週1回のidraparinuxの皮下投与は標準治療と同等の有効性が認められたが,肺塞栓症患者においては認められなかった。
Clinical Trials.gov No.:DVT試験 NCT00067093,PE試験 NCT00062803

(2) 静脈血栓塞栓症の再発率はidraparinux群6例(1%) vsプラセボ群23例(3.7%)とidraparinux群で有意に低かった(p=0.002)。
重大な出血は11例(1.9%) vs 0例(p<0.001)で同群で有意に増加。11例のうち3件は致死的頭蓋内出血であった。
(2)の試験でプラセボ群にランダム化された症例では,(1)の試験でidraparinux群だったものはビタミンK拮抗薬群だったものと比較して再発率が有意に低かった(0.7% vs 5.9%)。
また (1)の試験でのidraparinux群では,ビタミンK拮抗薬群よりも重大な出血の発生率が有意に高かった(3.1% vs 0.9%)。
★結論★6か月間のidraparinux予防投与期間の延長により血栓塞栓症の再発抑制効果は認められたものの,重大な出血リスクが増加した。
Clinical Trials.gov No. NCT00071279
文献
  • [main]
  • (1) van Gogh investigators: Idraparinux versus standard therapy for venous thromboembolic disease. N Engl J Med. 2007; 357: 1094-104. PubMed
  • (2) van Gogh investigators: Extended prophylaxis of venous thromboembolism with idraparinux.. N Engl J Med. 2007; 357: 1105-12. PubMed

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収載年月2008.03