循環器トライアルデータベース

RECORD
Rosiglitazone Evaluated for Cardiac Outcomes and Regulation of Glycaemia in Diabetes

目的 ビグアナイド系薬剤metforminあるいはスルホニル尿素(SU)薬では血糖管理が不十分な2型糖尿病患者における,インスリン抵抗性改善薬rosiglitazoneの非劣性試験。
一次エンドポイントは心血管疾患*による入院,心血管**死。
* 急性心筋梗塞(AMI),脳卒中,うっ血性心不全,一過性脳虚血発作,血栓性イベント,予定外の血行再建術,四肢切断,その他の心血管原因。
** 心血管疾患による死亡,原因不明の死亡。
コメント 本論文は,すでに中間解析されたものの最終結果である。
糖尿病治療薬であるSU剤,もしくはビグアナイド剤の単剤治療では十分な効果があげられなかった患者に,rosiglitazone(Rosi)を追加投与した群が,SU剤+ビグアナイド剤併用群に比較して心血管イベントが多発しないということの証明が一次エンドポイントであり,これについては中間解析と同様最終結果でも確認された。
しかし,本試験がPROBE法であること,この期間での心血管イベントが予想よりはるかに少なかったことより,確かな結果とは評価できない。またRosi群で心不全が有意に多かったことなど問題点を指摘する結果となった。一方,pioglitazone(Pio)については,心血管イベントについてもむしろ改善するというメタ解析もある。これについてはPioには脂質改善作用があり,PPARγの他にもαに対するアゴニスト作用があるためと推定されている。このようなことから,アメリカとヨーロッパの糖尿病学会では,インスリン抵抗性改善薬としてはRosiよりPioを推奨するとしている。(寺本
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded-endpoints),多施設(欧州,オーストラレーシアの25か国364施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は5.5年。
試験期間は2001年4月~’08年12月。
対象患者 4447例。40~75歳;WHO定義による2型糖尿病;BMI>25kg/m2;HbA1c>7.0~9.0%,metformin,SU薬単独投与で最大用量投与しても血糖コントロールが不十分な症例。
除外基準:3か月以内の主要な心血管イベントによる入院;心血管インターベンション施行予定例;心不全例,治療例あるいは既往例。
■患者背景:平均年齢(metforminが投与されていた群:rosiglitazone追加群57.0歳,SU薬追加群57.2歳;SU薬が投与されていた群:rosiglitazone追加群59.8歳,metformin追加群59.7歳),男性(53.8%,52.9%;49.0%,50.6%),糖尿病罹病期間(6.1年,6.3年;両群とも7.9年),BMI(32.8kg/m2,32.7kg/m2;30.3kg/m2,30.1kg/m2),HbA1c(両群とも7.8%;両群とも8.0%),空腹時血糖値(両群とも171mg/dL;183.7mg/dL,181.9mg/dL),血圧(140/84mmHg,139/83mmHg;両群とも138/82mmHg)。
治療法 4週間のrun-in期間後,SU薬投与例はrosiglitazone追加投与群とmetformin追加投与群にランダム化,metformin投与例はrosiglitazone追加投与群とSU薬(glyburide,gliclazide,glimepiride)追加投与群にランダム化。
HbA1c;7%以下を目指した介入試験
rosiglitazone群(2220例):metformin投与例(1117例),SU薬投与例(1103例)。rosiglitazone 4mg/日で投与を開始し,8週間後のHbA1cが目標(≦7.0%)に達しない場合は最大忍容量である8mgに漸増投与。それでも≧8.5%の場合にはmetforminは2550mg/日,SU薬はglibenclamideは15mgへ,gliclazideは240mg,glimepirideは4mgまで増量。それでも≧8.5%の場合には3番目の薬剤を追加し,それでも低下しない時はrosiglitazoneの投与を中止しインスリン治療を開始した。
metformin+SU薬群(対照群2227例):8週間後のHbA1cが目標に達しない場合は,metforminを2550mgに,SU薬:glyburide 15mgまたはgliclazide 240mgまたはglimepiride 4mgまで増量。最大忍容量を投与してもHbA1cが≧8.5%の場合,インスリン投与を開始した。
結果 [治療状況:ベースライン時→終了時]
心血管関連の治療率は試験期間中に高くなった。
スタチン系薬剤:rosiglitazone群18.0%→ 55.2%,対照群19.2%→ 46.0%,フィブラート系薬剤:5.9%→ 11.0%,5.4%→ 10.7%,サイアザイド系利尿薬:9.4%→ 21.4%,10.1%→ 19.5%,ループ系利尿薬:3.1%→ 13.0%,3.1%→ 8.1%,β遮断薬:22.6%→ 37.3%,20.9%→ 37.0%,ACE阻害薬,ARB:43.1%→ 62.4%,42.1%→ 64.3%,Ca拮抗薬:19.1%→ 32.1%,21.6%→ 36.2%,硝酸薬:5.9%→ 10.2%,6.3%→ 10.6%,抗血小板薬:20.0%→ 35.6%,18.9%→ 36.4%。
[心血管疾患危険因子値の変化]
HbA1c:metforminが投与されていた群(rosiglitazone追加群:-0.28%,SU薬追加群+0.01%;p<0.0001),SU薬が投与されていた群(rosiglitazone追加群:-0.44%,metformin追加群:-0.18%;p<0.0001)。
体重:(3.8kg,0.0kg;p<0.0001),(4.1kg,-1.5kg;p<0.0001)。
血圧:(-1.5/-3.6mmHg,-2.2/-3.4mmHg;p=0.31/p=0.72),(-1.5/-3.1mmHg,-0.9/-2.4mmHg;p=0.34/p=0.060)。

[一次エンドポイント:心血管疾患による入院,心血管死]
両群間に有意差はなかった:rosiglitazone群321例 vs 対照群323例:ハザード比0.99;95%信頼区間0.85~1.16(p=0.93)。
各イベントの結果
全死亡:136例 vs 157例:0.86;0.68~1.08(p=0.19)。
心血管死:60例 vs 71例:0.84;0.59~1.18(p=0.32)。
致死的・非致死的心筋梗塞(MI):64例 vs 56例:1.14;0.80~1.63(p=0.47)。
脳卒中:46例 vs 63例:0.72;0.49~1.06(p=0.10)。
心血管死,MI,脳卒中:154例 vs 165例:0.93;0.74~1.15(p=0.50)。
致死的・非致死的心不全:61例 vs 29例:2.10;1.35~3.27(p=0.0010)。
[重大な有害イベント]
rosiglitazone群では高血糖(1.2% vs 対照群2.5%;p=0.003)よりも低血糖(重大ではない有害イベント:0.7% vs 0.3%)の方が多かった。
女性で骨折が多かった:rosiglitazone群124例 vs 男性61例,対照群68例 vs 50例,上肢骨折(63例 vs 23例,36例 vs 19例),遠位下肢骨折(47例 vs 23例,16例 vs 11例)。
★考察★2型糖尿病において,血糖降下薬にrosiglitazoneを追加した場合,心不全リスクが増大し,主に女性で骨折が増加した。心筋梗塞への影響は明らかではないが,rosiglitazoneは標準の血糖降下薬に比べ心血管疾患合併症,心血管死のリスクが上昇することはなかった。
ClinicalTrials.gov No: NCT00379769
文献
  • [main]
  • Home PD, et al.; RECORD study team. Rosiglitazone evaluated for cardiovascular outcomes in oral agent combination therapy for type 2 diabetes (RECORD): a multicentre, randomised, open-label trial. Lancet. 2009; 373: 2125-35. PubMed
    Retnakaran R and Zinman B: Thiazolidinediones and clinical outcomes in type 2 diabetes. Lancet. 2009; 373: 2088-90. PubMed
  • [substudy]
  • 平均追跡期間3.75年(2007年3月30日まで)の中間解析
    2007年5月に発表されたNissenらのメタ解析によりrosiglitazoneの心毒性(心筋梗塞,心血管死リスクの上昇)が懸念されていることを受け実施した予定外の中間報告。
    治療差を検出するには追跡期間が不十分なため統計学的に限界がある。さらに追跡できなかった例がrosiglitazone群218例,metformin+SU薬群223例あったことも検出力低下となった。
    インスリン治療を開始したものはrosiglitazone群140例,metformin+SU薬群244例。ランダム化された試験薬が投与されていたものはそれぞれ1626例,1476例。脱落例は263例,412例であったが追跡は続行。
    一次エンドポイントは,rosiglitazone群217例,metformin+SU薬群202例(ハザード比[HR]1.08;95%信頼区間[CI]0.89~1.31)。
    判定が決定していない一次エンドポイント(91例:rosiglitazone群50例)を含めるとHRは1.11(95%CI 0.93~1.32)。
    心筋梗塞,心血管死,全死亡において,両群間に有意差はなかった。心不全はrosiglitazone群で有意に多く(38例 vs 17例:HR 2.24;1.27~3.97),判定未決定分を含めると47例 vs 22例(HR 2.15:95%CI 1.30~3.57)で,rosiglitazone群の方が3.0例/1000人・年リスクが増加した。
    ★結論★本中間解析ではrosiglitazone投与による心血管疾患による入院または死亡のリスクに対する結論は出なかった。心血管死,全死亡リスク上昇は認められなかった。rosiglitazoneにより心不全リスクは上昇した。同剤による心筋梗塞上昇をいうにはデータが不十分である:N Engl J Med. 2007; 357: 28-38.
    コメント
    インスリン抵抗性改善薬であるrosiglitazoneによる試験のmeta-analysisにおいてrosiglitazoneを使用した群で,心血管イベントの発症頻度が有意に高いというNissenらの報告は臨床現場に衝撃を与えた。それに答えるべく,本来6年間行われる予定であったRECORD試験の中間解析(3.75年)が発表された。その結果,rosiglitazoneにより心不全が有意に上昇していたが,一次エンドポイントである心血管イベントについては有意差がなかったという報告である。本試験のデザインが通常の糖尿病治療薬に対する非劣性を求めるということから,少なくとも非劣性が示されたとしている。しかし,この結果をNissenらのmeta-analysisに組み入れると,やはり有意に心血管イベントが高くなるという事実から,臨床現場での不安は解消されないであろう(寺本)。 PubMed

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収載年月2007.08
更新年月2009.08