| MERLIN-TIMI 36 |
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非ST上昇型急性冠症候群(ACS)患者において,抗狭心症薬ranolazine長期投与の有効性と安全性を検討する。 有効性の一次エンドポイントは心血管(CV)死,心筋梗塞(MI),虚血の再発*の複合エンドポイント。 安全性の主要なエンドポイントは,全死亡,症候性不整脈。 * 虚血の再発:(1)心電図変化を伴う虚血症状,(2)虚血再発による入院,(3)および血行再建,(4)CCS 1度以上の狭心症状の悪化:3項目以上で「重篤」。 |
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CARISA 試験によって慢性狭心症での運動耐用能の改善と抗狭心症効果が示されたranolazineがACSに対しても有効かどうかを検討したトライアルである。ranolazine は心筋の代謝を介して抗虚血作用を発揮する薬剤で,心拍や血圧に影響を及ぼさないと言われている。本トライアルでは慢性期の虚血再発を抑制したものの,ACSへの有効性は証明されず,従ってCARISA 試験での結論の域を出ていない。慢性期の虚血症状に関しても,併用した血行再建術との関連が示されていないためranolazineだけの効果と断定することもできない。以前から懸念されているQT 延長や心室性不整脈がACS 急性期にも増加していなかったのは好材料だが,大部分が血管迷走神経性と推察されている失神が多い点が気になる。予後を好転させない以上,従来の抗狭心症薬の“スーパーサブ”を上回る役割りは難しいかもしれない。(中野・中村・永井) |
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無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(17か国442施設),intention-to-treat解析。 |
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追跡期間中央値348日。 実施期間は2004年10月8日~2007年2月14日。 |
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6560例。18歳以上,48時間以内に安静時の心筋虚血症状が10分以上持続する非ST上昇型ACSで,以下のリスクを1項目以上有する症例:心筋壊死のバイオマーカー上昇;≧0.1mVのST低下;糖尿病, TIMIリスクスコア≧3)。 除外基準:心原性ショック;持続的ST上昇;ランダム化前の責任病変への血行再建成功例;重篤な肝疾患;透析を要する末期腎疾患;QT間隔を延長させる薬剤の使用,ホルター心電図による虚血確認を妨げる心電図異常,余命<12か月。 ■患者背景(両群間に有意差なし):年齢中央値(ranolazine群64歳,プラセボ群64歳),女性(33.7%, 36.1%),非ST上昇型MI(51.1%, 50.8%),MI既往(34.5%, 33.7%),不安定狭心症(47.0%, 46.5%),発症からランダム化までの時間中央値(23.9時間,23.4時間),入院時の血管造影(59.1%, 59.0%),糖尿病(33.7%, 34.0%),高血圧(73.5%, 73.9%)。 治療状況:aspirin(96.2%, 96.0%),heparin(91.2%, 89.5%),GP IIb/IIIa受容体拮抗薬(15.0%, 14.1%),thienopyridine(64.0%, 64.5%),β遮断薬(88.7%, 89.7%),ACE阻害薬またはAII受容体拮抗薬(77.6%, 78.9%),スタチン系薬剤(82.7%, 82.0%)。 |
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ranolazine群(3279例):ranolazine 200mgを1時間静注後,80mg/時を12~96時間持続静注(推定クレアチニンクリアランス<30mL/分の場合は40mgに減量)。その後ranolazine徐放剤1000mg×2回/日を試験終了まで経口投与。静注時に用量を調整した症例では,最終注入率により750mg×2回/日,500mg×2回/日,375 mg×2回/日経口投与とした。 プラセボ群(3281例)。 ランダム化後7日間連続ホルター心電図を実施。 |
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治療内容は薬物療法のみ3966例(60.5%),PCI併用2074例(31.6%),CABG 520例(7.9%)であった。 一次エンドポイントはranolazine群21.8%,プラセボ群 23.5%で両群間に有意差はみられなかった(ハザード比0.92;95%信頼区間0.83~1.02, p=0.11)。 主要な二次エンドポイント(CV死,MI,重篤な虚血の再発)についてもranolazine群18.7%,プラセボ群19.2%で両群間に有意差はなかった(0.96;0.86~1.08, p=0.50)。 CV死+MIも10.4% vs 10.5%(0.99;0.85~1.15, p=0.87)で両群同様であったが,虚血再発はranolazine群で有意に低く(13.9% vs 16.1%, 0.87;0.76~0.99, p=0.03),特に狭心症状の悪化が有意に少なかった(4.2% vs 5.9%, 0.77;0.62~0.97, p=0.02)。 ホルター心電図モニタリング期間の不整脈はranolazine群で有意に少なかった(73.7% vs 83.1%, p<0.001)が,静注用量の減量を要するQTc延長は0.9% vs 0.3%,症候性不整脈は3.0% vs 3.1%(p=0.84)と群間差はみられなかった。全死亡についても両群間差はなかった(172例 vs 175例,0.99;0.80~1.22, p=0.91)。 有害事象による投与中止はranolazine群で有意に多かった(8.8% vs 4.7%, p<0.001)。ranolazine群で多かった有害事象はめまい(13% vs 7%),吐き気(9% vs 6%),便秘(9% vs 3%)であり,失神は3.3% vs 2.3%(p=0.01)でその大部分は血管迷走神経性失神であった。 ★結論★非ST上昇型ACSの標準治療とranolazineの併用による主要な心血管イベント抑制効果は認められなかったが,ranolazineによる全死亡または症候性不整脈のリスク増加はみられず,虚血の再発を抑制したことにより,安定型狭心症の治療薬としては可能性が残る。 ClinicalTrials.gov No.:NCT00099788 |
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- [main]
- Morrow DA et al for the MERLIN-TIMI 36 trial investigators: Effects of ranolazine on recurrent cardiovascular events in patients with non-ST-elevation acute coronary syndromes: the MERLIN-TIMI 36 randomized trial. JAMA. 2007; 297: 1775-83. PubMed
- [substudy]
- ranolazineはBNP高値例のみにおいて一次エンドポイントリスクを抑制
BNP値によるサブグループ解析(事前に計画された探索的解析):4,543例・平均追跡期間は343日。
BNP高値(>80pg/mL;1,935例),低値(≦80pg/mL;2,608例):高値例は低値例に比べ高齢で,女性,MI既往,心不全既往,EF<40%が多く,血管造影例(2,536例)では多枝病変,左前下行枝が多かった(いずれもp<0.001)。
BNP高値例は低値例よりも一次エンドポイント(26.4% vs 20.4%,p<0.0001),心血管死(8.0% vs 2.1%,p<0.001),MI(10.6% vs 5.8%,p<0.001)のリスクが有意に高かった。BNP高値例ではranolazineによる一次エンドポイントリスクの有意な低下が認められたが(ハザード比0.79; 0.66~0.94,p=0.009),BNP低値例ではranolazineの効果は認められなかった。虚血再発,心血管死/MIリスクも低下が認められた。多変量解析の結果,BNP値とranolazine治療の有意な交互作用が認められた(調整後p=0.041):J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 1189-96. PubMed
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