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EVEREST
Efficacy of Vasopressin Antagonism in Heart Failure Outcome Study with Tolvaptan

目的 心不全(CHF)入院患者において,標準治療にバソプレッシンV2受容体拮抗薬tolvaptanを追加した場合の有効性および安全性を検討する。1)短期有効性試験と2)長期予後試験から成る。
1) 一次エンドポイントは7日後(早期退院の場合,退院時)の全般的臨床症状,体重の変化。
2) 一次エンドポイントは全死亡,心血管(CV)死+心不全による入院。
コメント V2受容体拮抗薬トルバプタンは強力な水利尿作用を発揮する。慢性心不全の急性増悪期にみられる体液貯留や浮腫の改善には,ループ利尿薬が用いられるが,長期に投与すると低Na血症や低カリウム血症を誘発する。トルバプタンは電解質バランスを是正する利尿薬として注目されているが,今回の短期有効性試験で,水分貯留,浮腫改善の効果は強く,投与1日目から強力な利尿効果がみられることが明らかになった。また肺うっ血改善に伴う呼吸困難も改善した。しかし,1週後の全般的臨床状態の改善は有意ではなく,口渇も強いため,抗心不全薬としての限界を示したとも考えられる。
長期予後試験で,60日間のトルバプタンの投与が長期(平均9.9か月)の予後改善や心不全の悪化抑制効果を示さないことが明らかになった。慢性心不全の薬物治療は,症候の改善と予後の改善作用は乖離することが多く,経口狭心症薬にも血管拡張薬にもこの乖離がみられる。予後の改善には,心筋障害や心モデリングの抑制効果が必須条件となることが示唆されているが,トルバプタンにはこの作用がないのかもしれない。ただ,体重の減少や血中BUNの低下,血清Na値の上昇は60日間の投与後も継続しており,腎血行動態の安定化作用を意味するものと考えられる。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(北米,南米,ヨーロッパの20か国359施設),intention-to-treat解析。
期間 1) 追跡期間は7日,早期退院の場合は退院まで。
2)追跡期間は9.9か月(中央値)。
登録期間は2003年10月7日~2006年2月3日。
対象患者 4133例。18歳以上;入院の30日以上前に治療を要したCHFの既往がある;CHF悪化による入院から48時間以内;EF≦40%;体液貯留の徴候;NYHA III~IV度。
CHFは安静時あるいは軽度労作時の症状およびうっ血の徴候(呼吸困難,頸静脈怒張,末梢浮腫)のあるものとした。
除外基準:60日以内の心臓手術;60日以内の心臓補助循環,両心室ペースメーカー植込み;入院時の急性心筋梗塞など。
■患者背景:平均年齢(tolvaptan群65.9歳,プラセボ群65.6歳),男性(73.4%,75.4%),EF(27.5%,27.5%),虚血性心不全(65.1%,65.9%),NYHA III度(60.1%,58.7%),IV度(39.5%,40.6%),糖尿病(39.8%,37.6%),僧帽弁疾患(31.2%,31.9%),治療状況:ACE阻害薬,ARB(84.3%,84.1%);β遮断薬(70.8%,69.6%);利尿薬(97.1%,96.6%);アルドステロン受容体拮抗薬(53.6%,54.7%)。
治療法 tolvaptan群(2072例):30mg/日を経口投与,プラセボ群(2061例)にランダム化。
入院から48時間以内に投与を開始し60日以上投与。心不全の標準治療(医師の裁量により利尿薬,digoxin,ACE阻害薬,AII受容体拮抗薬,アルドステロン受容体拮抗薬,β遮断薬,硝酸薬,hydralazineを投与)は継続した。
1) の短期有効性試験では,検証性向上のため同一の試験A(2048例:tolvaptan群1018例,プラセボ群1030例)と試験B(2085例:1054例,1031例)にわけた。
結果 1) 短期有効性結果
有害イベントによる治療中止例は,試験Aは54例(2.6%),うち有害イベントによるものは13例(tolvaptan群10例),試験Bは50例(2.4%),うち3例(2例)であった。
一次エンドポイントは試験A:1.06 vs 0.99,試験B:1.07 vs 0.97(両試験ともp<0.001)とtolvaptan群で有意に高かった。体重減少は1日目(1.71kg vs 0.99kg,1.82kg vs 0.95kg;両試験ともp<0.001),7日目または退院時(3.35kg vs 2.73kg,3.77kg vs 2.79kg;両試験ともp<0.001)とtolvaptan群で有意に高かった。全般的臨床症状には両群間差はなかった。tolvaptan群ではプラセボ群と比べて1日目の呼吸困難が有意に改善した(76.7% vs 70.6%,72.1% vs 65.3%;両試験ともp<0.001)。tolvaptan群の7日目または退院時の浮腫は試験B(p=0.02)で有意に改善したが,試験Aでは有意差はみられなかった(p=0.07)。
有害事象は49.1% vs 40.0%,55.9% vs 47.9%とtolvaptan群で有意に多かった(p<0.001)。重篤な有害事象は,5.9% vs 4.8%,4.3% vs 5.8%で両群同様であった。低血圧,頻脈,腎不全,血清K,血清Mg,肝機能異常についても差はなかった。口渇(4.2% vs 0.7%,6.0% vs 0.7%;ともに p<0.001),喉の渇き(7.8% vs 0.5%,11.3% vs 1.0%;ともにp<0.001)はtolvaptan群で有意に多かった。
★結論★心不全の入院患者において利尿薬を含む標準治療にtolvaptanの経口投与を追加した場合,重篤な有害事象も伴うことなく種々の症状および徴候を改善した。

2)長期予後結果
一次エンドポイントの全死亡はtolvaptan群25.9%,プラセボ群26.3%(ハザード比[HR]0.98,
95%信頼区間[CI]0.87~1.11;p=0.68 for superiority,non-inferiority margin 1.25;p<0.001 for non-inferiority)。CV死+心不全による入院は42.0% vs 40.2%(HR1.04;95%CI 0.95~1.14,p=0.55)で両群間差はみられなかった。CV死またはCVによる入院48.5% vs 46.4%(p=0.52),CV死20.3% vs 19.8%(p=0.67),心不全の悪化36.5% vs 35.8%(p=0.62)も両群同様であった。
患者の評価による1日目の呼吸困難の改善はtolvaptan群で有意に大きく(74.3% vs 68.0%,p<0.001),体重の減少も同群で大きかった(1.76kg vs 0.97kg,p<0.001)。また7日目の浮腫も同群で改善した(2グレード以上の改善73.8% vs 70.5%)。
有害事象による投与中止は6.5% vs 5.5%。中止例において喉の渇き(7例 vs 0例,p=0.02)はtolvaptan群で有意に多かった。口渇(4例 vs 0例,p=0.12),高ナトリウム血症(1.7% vs 0.5%)はtolvaptan群で多く,腎不全,低血圧は両群同様であった。
★結論★心不全の入院患者においてtolvaptanによる長期の死亡,心不全関連合併症の抑制効果は認められなかった。
ClinicalTrials. gov No.: NCT00071331
文献
  • [main]
  • Konstam MA et al for the efficacy of vasopressin antagonism in heart failure outcome study with Tolvaptan (EVEREST) investigators: Effects of oral tolvaptan in patients hospitalized for worsening heart failure: the EVEREST outcome trial. JAMA. 2007; 297: 1319-31. PubMed
  • Gheorghiade M et al for the efficacy of vasopressin antagonism in heart failure outcome study with Tolvaptan (EVEREST) investigators: Short-term clinical effects of tolvaptan, an oral vasopressin antagonist, in patients hospitalized for heart failure: the EVEREST clinical status trials. JAMA. 2007; 297: 1332-43. PubMed
  • [substudy]
  • QRS間隔延長は半数近くにみられ,退院後のイベント,死亡の独立した予測因子である。
    9.9か月後(中央値)の全死亡は678例でQRS間隔正常(<120ms)例で307例/1641例(18.7%) vs 延長(≧120ms)例で371例/1321例(28.1%):ハザード比1.61;95%信頼区間1.38~1.87(多変量解析後1.24;1.02~1.50)。心血管死,心不全による入院は32.4% vs 41.6%(1.40;1.24~1.58,[1.28;1.10~1.49]):JAMA. 2008; 299: 2656-66. PubMed

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収載年月2007.06
更新年月2008.06