循環器トライアルデータベース

DECREASE-II
Dutch Echocardiographic Cardiac Risk Evaluation Study-II

目的 厳密な心拍(HR)管理下でβ遮断薬投与を受けている中等度リスク患者で主要な血管手術予定例において,ACC/AHAガイドラインによる術前心検査の有用性を評価。
一次エンドポイントは術後30日の心臓死または非致死性心筋梗塞(MI)。
コメント ACC/AHAガイドラインでは,大血管手術(AAA,ASO)を受ける症例で冠危険因子を多く伴っていれば,非観血的ストレス検査を行い,虚血が誘発される例にはβ遮断薬投与がすすめられている。非観血的検査でハイリスクと判明した例には冠動脈造影検査を行い,長期予後が改善できると考えられれば血行再建術が推奨されている。しかし,非観血的検査は手術の遅延をもたらし,動脈瘤の破裂や罹患肢の増悪を生じ得る。血管手術前の冠血行再建術は周術期や長期の予後を改善しないとする報告もある。
著者らは以前レトロスペクティブに冠危険因子により大血管手術例をローリスク,中等度リスク,ハイリスクの3群に分類し,β遮断薬投与下ではローリスクや中等度リスク例の周術期のイベントは0%と0.9%と報告している。本研究では,大血管手術を受ける中等度リスク例にβ遮断薬投与下においてプロスペクティブに術前非観血的検査の有用性を検討し,結果としては臨床的有用性を認めていない。術前検査を行うことにより3週間のロスも生じている。術前検査は周術期に心イベントを生じるごく一部の中等度リスク例を明らかにすることができるが,全体で2.2%しか心イベントを生じていないので術前検査の意義は高くない。
β遮断薬の術前投与は66万例以上を対象としたレトロスペクティブ研究で予後の改善を認めている。一方,POBBLE (Perioperative Beta-Blockers)trialやDIPOM(Diabetic Postoperative Mortality and Morbidity)trialでは,β遮断薬術前投与の臨床的意義は認められていない。問題となるのは,β遮断薬の投与量と心拍コントロールの違いである。心拍数を65拍/分以下に保つべく投与量の調節が必要である。ブラインドで投与量を固定する試験デザインではβ遮断薬の効果に限界がある。
他の問題点は,(1)術前非観血的検査でどの程度の異常が出れば冠動脈造影/冠血行再建術を考慮すべきか,(2)中等度リスク例に対してβ遮断薬前投与が心イベント率を有意に低下させるのか,(3)β遮断薬の効果が心拍数や血圧低下に介しているのか,スタチン系薬剤のような他の併用薬との協同作用なのか(DECREASE-IV trialで解明予定),である。(星田
デザイン 多施設(5施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は中央値2.0年。登録期間は2000~'05年。
対象患者 1476例。待機的開腹大動脈/下鼠径動脈再建術施行予定患者。
■患者背景:平均年齢67.0歳,男性73.3%,既往:糖尿病既往21.8%;狭心症55.1%;MI27.0%;うっ血性心不全11.5%;脳血管障害既往19.1%;腎不全歴8.5%。治療状況:スタチン系薬剤42.1%,ACE阻害薬32.6%,aspirin 45.3%。
治療法 心危険因子(71歳以上,狭心症,MI既往/心電図上の病的なQ波所見,代償性うっ血性心不全/うっ血性心不全既往,糖尿病の薬物治療,腎機能不全[血清クレアチニン>160μmol/L],脳卒中既往/一過性脳虚血発作)のスクリーニングにより,低リスク(保有危険因子 0):354例,中等度リスク(1~2):770例,高リスク(3以上):352例に分類。低リスク例では追加検査を行わず手術,高リスク例では追加検査を実施。中等度リスク例は術前負荷試験群(dobutamine心エコーまたはdobutamine/dipyridamole血流シンチグラフィー)386例,非試験群384例にランダム化。
負荷試験群では結果をスコア化し,非虚血およびlimited虚血例(虚血部位1~4/虚血壁1~2)では手術,extensive虚血例(虚血部位5以上/虚血壁3以上)では初回の手術延期が可能であった場合のみ血管造影後に血行再建術を検討。
全例で術前よりβ遮断薬を投与(長期β遮断薬治療の継続またはbisoprolol 2.5mg1日1回。入院時および手術前日に安静時HR 60~65拍/分となるよう用量調整),術後,退院後もHR,血圧測定による用量調整を行いながら継続(術後の経口/経鼻胃投与不能な患者にはmetoprolol静脈内投与)。 抗凝固薬,抗血小板薬治療はPCI後4週以上/手術中継続。
結果 負荷試験の結果は非虚血287例(74%),limited虚血65例(17%),extensive虚血34例(8.8%)であり,extensive虚血例のうち術前の血行再建が可能であった患者は12例(35%:PCI 10例,CABG 2例)であった。スクリーニングから手術までの期間の中央値は負荷試験群53日(13~121日) vs 非試験群34日(7~88日)であった(p<0.001)。
一次エンドポイントは低リスク例0.3%,中等度リスク例2.2%,高リスク例8.5%と中等度リスク,高リスク例が有意に多く(p<0.001),中等度リスク例の負荷試験群と非試験群では同等であった(2.3% vs 1.8%,オッズ比0.78;95%信頼区間0.28~2.1,p=0.62)。負荷試験群における一次エンドポイントは非虚血例0%,limited虚血例6.2%,extensive虚血例14.7%で(p<0.001),extensive虚血例の血行再建術例で一次エンドポイントが改善することはなかった(25.0% vs 9.1%,3.3;0.5~24,p=0.32)。
3年後のエンドポイントは低リスク例0.7%,中等度リスク例3.7%,高リスク例14.8%で,2年後のエンドポイントは中等度リスク例の負荷試験群と非試験群で同等であった(4.3% vs 3.1%,p=0.30)。
ランダム化された群にかかわらず,HR<65拍/分の症例は65拍/分以上の症例に比べ一次エンドポイントが抑制された(1.3% vs 5.2%,0.24;95%CI 0.09~0.66,p=0.003)。
★結論★待機的開腹大動脈/下鼠径動脈再建術施行予定の中等度リスク患者において,厳密なHR管理を目標とするβ遮断薬投与が行われる場合は術後30日および長期の心臓死およびMI発生率は低く,冠動脈疾患の術前検査を省略し得る。
文献
  • [main]
  • Poldermans D et al for the Dutch echocardiographic cardiac risk evaluation applying stress echo study group: Should major vascular surgery be delayed because of preoperative cardiac testing in intermediate-risk patients receiving beta-blocker therapy with tight heart rate control? J Am Coll Cardiol. 2006; 48: 964-9. PubMed

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収載年月2007.07