循環器トライアルデータベース

ILLUSTRATE
Investigators and Committees of the Investigation of Lipid Level Management Using Coronary Ultrasound to Assess Reduction of Atheroscleosis by CETP Inhibition and HDL Elevation

目的 HDL-C値は心血管イベント発症と逆相関する。HDL-Cを上昇させるコレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬torcetrapibの抗動脈硬化作用については明らかではない。そこで,冠動脈疾患患者において,HMG-CoA reductase阻害薬atorvastatinに対してtorcetrapib併用によるHDL-C上昇効果を検討する。
一次エンドポイントはアテローム容積の変化。
コメント HDL-コレステロール(HDL-C)が低いことが動脈硬化性疾患の危険因子であることはよく知られており,低HDL-C血症の治療薬の開発が望まれていた。コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害によるHDL-Cの上昇については,特にわが国で議論のあるところであったが,動物実験では動脈硬化抑制効果が認められており,その阻害薬であるtorcetrapibには期待がもたれていた。しかし,約15000例を対象にした大規模臨床試験(ILLUMINATE)では,むしろ治療群で死亡率の増加が認められ,動脈硬化性疾患も多発したことから,試験が中断された。この試験についての詳細な報告は待たねばならないが,本ILLUSTRATEにおいてもアテローム容積の改善が認められなかった点は,torcetrapibの有効性はほぼ否定されたと考えてよいであろう。その理由であるが,第一の要因として血圧上昇があげられる。第二に,コレステロール逆転送系の阻害が動脈硬化予防には有効には働かない可能性があげられる。第三には,CETP阻害により生ずるHDLのpleiotropic effects(抗炎症,抗酸化など)消失なども考えられる。いずれにしてもこれがCETP阻害薬のクラス効果なのか,torcetrapib自体の問題なのかILLUMINATEの詳細な検討を待ちたい。(寺本
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(北米,欧州の137施設)。
期間 追跡期間は24か月。ランダム化期間は2003年10月30日~2004年8月16日。
対象患者 1188例。18~75歳。臨床的に心臓カテーテル検査の適応があり,血管造影上≧20%の狭窄を1つ以上有する場合と,標的血管が<50%閉塞でもそれが40mm以上のセグメントにわたる場合。
除外基準:左主幹部病変の>50%閉塞;治療にもかかわらず血圧が>140/90mmHg;トリグリセライド>500mg/dL,クレアチニンが正常上限の>1.7倍。
■患者背景:平均年齢57歳,男性70%。
治療法 4~10週間のrun-in期間:ライフスタイル改善などの指導。atorvastatin 10mgで投与を開始し,2週間ごとに20mg,40mg,必要なら80mgと漸増投与。LDL-C<85~100mg/dLに達したものをランダム化。
atorvastatin+torcetrapib(併用)群(591例):atorvastatin+torcetrapib 60mg,atorvastatin単独投与群(597例)。
ベースライン時の冠動脈造影後,IVUSを実施し24か月後に再実施。
結果 atorvastatinの平均用量は両群とも23mg。
追跡IVUS例は910例(77%):併用群464例,atorvastatin単独投与群446例。
HDL-Cは併用群で有意に上昇(併用群:46.0→ 72.1mg/dLと約61%上昇,atorvastatin単独群:45.2→ 43.9mg/dLと低下,p<0.001),LDL-Cは併用群で有意に低下した(83.1→ 70.1mg/dL[20%低下] vs 84.3→ 87.2mg/dL, p<0.001)。CRPは中央値2.1→ 1.8mg/L vs 1.8→ 1.5mg/Lで両群間に有意差はなかった。
血圧はベースライン時両群とも120/73mmHgであったが,併用群126.4mmHg/76.0mmHg,単独群122.0/74.3mmHgと,併用群で6.5/2.8mmHg有意に上昇した(p<0.001)。
一次エンドポイントであるアテローム容積は併用群+0.12% vs 単独群+0.19%と両群間に有意差は認められなかった(p=0.72)。最も狭窄の大きい10mmセグメントでも同様であった(-4.1mm³ vs -3.3mm³, p=0.12)。正常化総アテローム容積の減少は併用群の方が大きかった(-9.4mm³ vs -6.3mm³, p=0.02)。
全死亡は8例(1.4%) vs 6例(1.0%),冠動脈疾患死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中+不安定狭心症による入院+血行再建術は同様であった(124例[21.0%] vs 117例[19.6%])。血圧関連の有害イベントは併用群で多く(140例[23.7%] vs 63例[10.6%]),>140/90mmHg症例(21.3% vs 8.2%),>15mmHgの血圧上昇も同群で多かった(9.0% vs 3.2%)。
★結論★CETP阻害薬torcetrapibはHDL-Cを上昇,LDL-Cを低下させたが,血圧が上昇し,アテローム性動脈硬化の進展抑制効果は認められなかった。
ClinicalTrials.gov: NCT00134173
文献
  • [main]
  • Nissen SE et al for the ILLUSTRATE investigators: Effect of torcetrapib on the progression of coronary atherosclerosis. N Engl J Med. 2007; 356: 1304-16. PubMed
  • [substudy]
  • torcetrapib投与例の大半でアテローム性動脈硬化の退縮効果は認められなかった。
    退縮がみられたのはHDL-Cが最高値の例のみ(4分位最高値-0.31% vs 最低値+0.88%)。torcetrapib投与により,血清Naが上昇,kが低下。多変量解析によると,HDL-Cの変化は独立して動脈硬化の進展を予測した:Circulation. 2008; 118: 2506-14. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2007.04
更新年月2009.02