循環器トライアルデータベース

EASY
Early Discharge After Transradial Stenting of Coronary Arteries

目的 橈骨動脈アプローチのステント施行例において,血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬abciximabボーラス投与(当日退院)の有効性を,abciximabボーラス投与+12時間静注(翌日退院)と比較する非劣性試験。
一次エンドポイントは30日後の全死亡,Q波・非Q波梗塞(MI),緊急血行再建術,大出血,手技関連の再入院,手技部位の合併症,重篤な血小板減少。
コメント 撓骨動脈アプローチでステント留置を施行した患者において,abcixmiabの持続点滴を省略し当日退院するストラテジーが,abcixmiabの持続点滴を行い翌日退院するストラテジーに比べ安全性の点で差がないと結論した研究である。入院日数の短縮は医療経済的効果をもたらし,外来PCIは患者(特に就業中の患者)の利便性を高めることは間違いない。
しかしながら日本における診療環境は本研究が施行されたカナダとは大きく異なっており,本研究の結論を日本の診療プラクティスに当てはめることは現実的ではない。日本において撓骨動脈アプローチは良く普及しているが,abcixmiabやclopidogrelは薬事承認を受けていない。本研究の対象患者の平均年齢は60歳であるが,日本の PCI対象患者の平均年齢は67~68歳と高齢者が多い。日本では冠動脈血行再建法としてCABGが選択されることが少なく,糖尿病や腎機能障害患者が多いことから,複雑病変を有する患者を対象とすることも多い。また日本ではPCI施行後翌日退院することも未だ一般的とは言えない。このような診療環境において当日退院というストラテジーは医療供給者にとっても患者にとっても魅力的であるとは言えない。
外来PCIの試みは新しいものではないが,広く普及する兆しはない。冠動脈疾患患者にとって入院は重要な機会である。入院し医療従事者や同病の患者と交流することで,自分の病気を理解し,生活習慣を見直す貴重な時間を得ることができる。さらに入院中に2次予防のための生活指導や服薬指導を十分に行うことも可能となる。日本においてステント血栓症の頻度が低い原因として,抗血小板療法に対するコンプライアンスが良好である点が指摘されているが,これも入院期間中のしっかりとした服薬指導と無関係ではない。
一方で本研究はPCI後に当日退院することが可能な患者を明確に規定したと言える。本研究において当日退院のプロトコルから除外された患者は,発症72時間未満のST上昇型心筋梗塞,LVEF30%以下,術中の血圧低下,大腿動脈アプローチ,B型以上の解離の残存,側枝閉塞,スローフローや血栓を有する患者であった。これらの除外基準に該当せず,患者が希望する場合にはPCI後4~6時間で当日退院しても安全であることが明確に示された。(木村
デザイン 無作為割付け,オープンラベル,単施設(カナダの大学病院),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は30日。登録期間は2003年10月~2005年4月。
対象患者 1005例。18歳以上でカテーテル治療およびPCIの可能性ありと診断された橈骨動脈アプローチのステント成功例。
除外基準:最近(<72時間)のST上昇型MI;EF≦30%既往;PCI中の一過性血管閉塞または循環虚脱;大腿動脈鞘など。
■患者背景:平均年齢(当日退院群60歳,翌日退院群61歳),男性(78%,79%),糖尿病(16%,16%),脂質異常血症(84%,88%),高血圧(52%,55%),家族歴(70%,74%),喫煙(33%,34%),MI既往(43%,45%),PCI既往(21%,19%),不安定狭心症(66%,67%),MI<7日(33%,34%),トロポニンT>0.1ng/mL(18%,19%),clopidogrel>12時間(92%,90%)。
治療法 ステント施行後,合併症のない患者を当日退院群(504例:手技時のabciximabボーラス投与のみで12時間静注は行わずPCIの4~6時間後に退院)と翌日退院群(501例:abciximab [0.125μg/kg/分~最大10μg/分] を12時間静注し,翌日退院)にランダム化。
PCI不成功例(343例)はregistry群に組入れた。
最初のバルーン拡張前にabciximab 0.25mg/kgをボーラス投与。
結果 一次エンドポイントはMIをトロポニンTで定義した場合,当日退院群20.4%,翌日退院群18.2%(p=0.017で非劣性),クレアチンキナーゼ心筋型(creatine kinanase myocardial band:CK-MB)で定義した場合11.1% vs 9.6%(p=0.0004で非劣性)と,両群で同等であった。
Q波梗塞が当日退院群で2例(0.4%),死亡例,ステント血栓症例なし。大出血の発生率は両群ともきわめて低く,4例(0.8%)vs 1例(0.2%)であった。
当日退院群の88%が当日退院し,翌日退院群と比べて再入院(4.8% vs 3.4%),任意来院(6% vs 6%)の増加はなかった。
★結論★橈骨動脈アプローチのステント施行後の合併症を伴わない症例において,abciximabボーラス投与のみでの当日退院は,ボーラス投与+12時間静注後の翌日退院と比べて臨床的に劣らないことが示唆された。
ClinicalTrials. gov No.: NCT001169819
文献
  • [main]
  • Bertrand OF et al for the early discharge after transradial stenting of coronary arteries (EASY) study investigators. A randomized study comparing same-day home discharge and abciximab bolus only to overnight hospitalization and abciximab bolus and infusion after transradial coronary stent implantation. Circulation. 2006; 114: 2636-43. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2007.04