循環器トライアルデータベース

Long-DES II

目的 病変長の長い病変において,sirolimus溶出ステント(SES)とpaclitaxel溶出ステント(PES)の有効性を比較する。
一次エンドポイントは6か月後のセグメント内binary再狭窄(>50%)。
コメント 再狭窄リスクが高いとされる病変長の長い病変(目視による病変長25mm以上/32mm以上のステント長)において,2種類の代表的な薬剤溶出性ステントであるSESとPESの成績を無作為割り付けで比較している。プライマリーエンドポイントである6か月の追跡造影における再狭窄率はSES群3.3%,PES群14.6%とSES群で再狭窄率の著明な抑制を認めた。プライマリーエンドポイントは代用エンドポイントではあるが,臨床的なエンドポイントであるTLRさらには最も重要なエンドポイントであるclinically driven TLRも同様にSESにより抑制されている。結論は明確であり臨床的な意義も大きい。
 SESとPESをhead-to-headで比較する試験はすでに多く行われているが,結論は必ずしも一致していない。試験結果に影響を及ぼす因子としては,登録基準(対象患者の再狭窄リスク),エンドポイント(臨床的エンドポイントか造影上のエンドポイントか),追跡造影の施行率などが挙げられる。
 本研究では造影上のエンドポイントを用いているために,当然高率に追跡造影が施行されている。本来,追跡造影は臨床的に必要な時のみに施行するという条件下でのTLRを評価するというデザインが,head-to-headの比較試験では臨床的に最も適切ではある。一般的に追跡造影の施行は,いわゆるoculo-stenotic reflexによってTLRの頻度を押し上げ,再狭窄率とTLRの頻度が接近するとされている。しかしながら本研究におけるPES群の再狭窄率は14.6%でTLRの頻度は7.2%と再狭窄症例の半数しかTLRを受けていなかった。またclinically driven TLRは5.6%とTLR症例の大部分を占めており,本研究におけるTLRが適切な適応に基づいて施行されていることが示唆されている。
 一般的に再狭窄リスクの低い病変を多く含む試験では,SESとPESの再狭窄抑制の差は顕著ではない。本研究でSESとPESの再狭窄抑制の差がこれほど顕著に示された最大の理由は,再狭窄リスクの高い病変のみを対象としたことであると思われる。このようなハイリスク病変においてのSESの再狭窄率3.3%という数字は驚異的である。サブスタディとして投与されたcilostazolがこの低い再狭窄率にどのように関与したのか興味深い。(木村
デザイン 無作為割付け,多施設(韓国の5施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は9か月。試験期間は2004年8月~2005年8月。
対象患者 500例。18歳以上。狭心症あるいは負荷試験で陽性の症例,目測で≧25mmのnative病変。
除外基準:aspirin,clopidogrel,cilostazolの禁忌;左主幹部病変(目測で≧50%の狭窄);グラフト血管の疾患;EF<30%;最近発症した血液病あるいは白血球数<3000/mm³および/あるいは血小板数<10万/mm³;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)あるいはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)が正常上限の3倍以上の肝機能障害;クレアチニン≧2.0mg/dLの腎機能障害など。
■患者背景:平均年齢(SES群61.4歳,PES群60.7歳),男性(67.2%, 61.2%),高血圧(55.2%, 54.8%),糖尿病(32.8%, 33.6%),総コレステロール≧200mg/dL(28.8%, 29.6%),喫煙例(37.2%, 37.6%),PCI既往(8.4%, 11.6%),安定狭心症(44.8%, 46.0%),不安定狭心症(36.8%, 33.6%),急性冠症候群(55.2%, 54.0%),2週間以内の心筋梗塞(18.4%, 20.4%),EF(58.8%, 58.7%),多枝病変(59.6%, 66.8%),左前下行枝(62.0%, 60.8%),左回旋枝(両群とも10.4%),右冠動脈(27.6%, 28.8%),TIMI flow grade 0~1(16.8%, 15.6%),入口部病変(16.4%, 14.0%),分岐部病変(側枝≧1.5mm)(41.6%, 33.6%)。
治療法 SES群(250例),PES群(250例)にランダム化。
ステント長は32mm以上。前拡張の有無は術者に委ねた。
手技の24時間以上前より手技後,全例にaspirin 200mg/日,clopidogrel 300mgのローディングドーズで投与後,75mg/日を6か月以上投与した。GP IIb/IIIa受容体拮抗薬の静注は担当医の判断とした。
cilostazolのステント内晩期径損失抑制効果を評価するために,手技後にランダム割付けし,2×2 factorialデザインで200mgで投与を開始し,100mg×2回/日を6か月間投与した。
6か月後に血管造影を実施。
結果 追跡血管造影率はSES群84.0%,PES群82.0%(p=0.552)で,実施時期はSES群188日後,PES群186日後(いずれも中央値)。
病変長はSES群33.9mm,PES群34.5mm(p=0.527),前拡張(99.2%,98.0%),ステント長(40.6mm,41.1mm),標的病変使用ステント本数(1.4本,1.5本),ステント内晩期径損失(0.09mm,0.45mm,p<0.001),ステント内再狭窄率(2.9%,11.7%;p=0.001)。
一次エンドポイントはSES群7例(3.3%),PES群30例(14.6%)でSES群の方で有意に抑制された(相対リスク0.23;95%信頼区間0.10~0.51,p<0.001)。
再狭窄症例における限局性再狭窄率は100% vs 53.3%でSES群の方が多かった。
結果,二次エンドポイントの一つである9か月後の標的病変血行再建術がSES群で抑制された(2.4% vs 7.2%,p=0.012)。また死亡は0.8% vs 0%(p=0.499),心筋梗塞は8.8% vs 10.8%(p=0.452)で両群間に有意差はなかった。
★結論★病変長の長い病変において,PES群に比べSES群では血管造影上の再狭窄,標的病変血行再建術が抑制された。
文献
  • [main]
  • Kim YH et al for the long-DES-II study investigators: Sirolimus-eluting stent versus paclitaxel-eluting stent for patients with long coronary artery disease. Circulation. 2006; 114: 2148-53. PubMed

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収載年月2007.02