循環器トライアルデータベース

WEST
Which Early ST-Elevation Myocardial Infarction Therapy Study

目的 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において,入院前のランダム化,治療による迅速な至適薬物療法の転帰を迅速なprimary PCIと比較する。さらに薬物療法+標準的治療と薬物療法+24時間以内の侵襲的治療(PCI等)の転帰を比較。
有効性の一次エンドポイントは30日間の死亡+再梗塞+難治性虚血+うっ血性心不全+心原性ショック+重度の心室性不整脈。安全性の一次エンドポイントは頭蓋内出血,障害の残る脳卒中,全身性の大出血。
コメント 急性心筋梗塞症例に対する血栓溶解療法はprimary PCIに比べて,(1)再灌流達成率がより低く,(2)反復する虚血や再梗塞が生じやすく,(3)頭蓋内出血など合併症のリスクがあり,死亡率もより高い。しかし,病院到着前の発症早期に治療が開始でき,PCIをする施設や熟練者を必要としないという利点がある。本研究ではST上昇型心筋梗塞(MI)患者において,入院前にランダム化を行い,primary PCIと発症早期の血栓溶解療法を24時間以内のPCIの有無にわけて比較検討した。
結果としては,血栓溶解療法はprimary PCIとほぼ同等の臨床転帰を示し,出血性合併症は増大しなかった。従来の報告と異なる結果の理由としては,発症早期の入院前にMIを診断しランダム化を行うことにより,血栓溶解療法が発症後2時間と,これまでの試験に比べてより早期に開始されていることが考えられる。CAPTIM試験でも発症から2時間以内に血栓溶解療法を行うと,primary PCIよりも死亡率が低く心原性ショックの頻度も少ないと報告されている。PCIを行わない血栓溶解療法では死亡+再梗塞だけに限ると発生率が高いので,24時間以内のPCIは発症早期の血栓溶解療法時には必要と考えられる。しかし,血栓溶解療法とPCIの最適な時間間隔は未だ明らかではなく,平均17時間の間隔であったGRACIA-1試験では死亡率/再梗塞率は低下しているが,immediate PCIをしたASSENT-4 PCI試験では逆に死亡や合併症が増大している。ただし,rescue PCIをしたREACT試験では有害心血管イベントは低下しており,primary PCIができない状況下において血栓溶解療法の効果がない時にはrescue PCIとの組み合わせが選択肢の一つである。(星田
デザイン feasibility study,無作為割付け,オープン,多施設(カナダの4都市),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は30日。
対象患者 304例。18歳以上。発症から6時間以内で,STEMIによるとみられる症状が20分以上持続し,ECG上の高リスクの証拠(2つ以上の隣接前胸部/肢誘導で2mm以上のST上昇,2つ以上の肢誘導で1mm以上のST上昇+2つ以上の隣接前胸部誘導で1mm以上のST低下または新規の左脚ブロック)を有し,ランダム化3時間以内の再灌流療法(primary PCI/血栓溶解療法/rescue PCI)が可能なもの。
除外基準:妊娠,診断後1時間以内のprimary PCI対象だと思われる症例,血栓溶解療法の禁忌,7日以内の血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬の使用例,CABG既往。
患者背景:年齢中央値58歳,女性20.4%,高血圧41.4%,糖尿病13.8%,早期CADの家族歴38.5%,狭心症の既往24.3%,以前のMI 12.5%,以前のPCI 7.2%,喫煙44.7%,前壁MI 39.8%,Killip分類class I 95.6%。
治療法 A群(100例):血栓溶解薬tenecteplase(TNK,体重調整用量)+標準的治療,B群(104例):TNK(体重調整用量)+24時間以内のrescue PCI等の侵襲的治療(TNK投与後90分の50%以上のST低下が得られなかった場合,血行動態的・電気的不安定が生じた場合),C群(100例):clopidogrel 300mgで投与を開始+primary PCI。
全例にランダム化時にaspirin 160~325mg,enoxaparin 1mg/kg皮下投与後,12時間ごとに72時間以上の継続を推奨。C群ではPCI中のenoxaparin 0.3~0.5mg/kg静注可。C群および他群のPCI施行例にはabciximabの使用を推奨(血栓溶解療法3時間以内のPCI施行を除く)。
結果 発症から治療までの時間(中央値)は,A群とB群のTNK治療に各113分,130分,C群のPCIに176分であった。
有効性の一次エンドポイントの発生はA群25.0%,B群24.0%,C群23.0%で群間差は認められなかった。死亡率も治療群間に有意差がなかったが[B群(1.0%)vs A群(4.0%):ハザード比[HR]0.23(90%信頼区間0.04~1.46),C群(1.0%)vs A群:0.25(0.04~1.54),B群 vs C群:0.95(0.09~9.7)],死亡+再梗塞はA群(13.0%)でC群(4.0%)に比べ有意に高く(HR 0.29[0.11~0.74],p-logrank=0.021),B群(6.7%)とC群間には有意差がなかった(1.73[0.62~4.8],p-logrank=0.378)。
安全性の一次エンドポイントは非出血性脳卒中2例,全身性の大出血4例で治療群間に差はなく,有効性の一次エンドポイント+安全性の一次エンドポイントはA群26.0%,B群25.0%,C群24.0%であった。
★結論★STEMI患者における迅速な薬物療法は,血栓溶解療法後24時間以内のrescue PCIおよび適時のPCI施行と有効性,安全性,実行可能性の点で差異のないことが示された。
文献
  • [main]
  • Armstrong PW for the WEST steering committee: A comparison of pharmacologic therapy with/without timely coronary intervention vs. primary percutaneous intervention early after ST-elevation myocardial infarction:;the WEST (which early ST-elevation myocardial infarction therapy) study. Eur Heart J. 2006; 27: 1530-8. PubMed

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収載年月2006.11