循環器トライアルデータベース

CASE-J
Candesartan Antihypertensive Survival Evaluation in Japan

目的 高リスク高血圧患者において,長期の心血管イベント抑制効果をAII受容体拮抗薬candesartanとCa拮抗薬amlodipineとで比較する。

一次エンドポイントは突然死(急性発症で24時間以内の内因死),脳血管イベント(脳卒中あるいは一過性脳虚血発作[TIA]),心イベント(心不全,狭心症,急性心筋梗塞[AMI]),腎イベント(血清クレアチニン≧4.0mg/dL,クレアチニン値の倍増[ただし≦2mg/dLはイベントとしない],末期腎不全),血管イベント(解離性大動脈瘤,末梢動脈の動脈硬化性閉塞)の複合。
コメント 口頭発表後1年半をかけてようやく論文化された。論文を読むと,学会発表では明らかにしていなかった大きな事柄も論文化によって明らかになっており,研究は論文化されてこそ評価すべきものということを改めて感じさせる。
まず驚きは,candesartan群とamlodipine群の降圧薬併用薬剤の違いである。candesartan群の方が明らかに多くの降圧薬を併用していることが明らかになったことの意味は大きい。すなわちcandesartanは他の薬剤をたくさん併用しなければamlodipine群と同等の降圧が得られないことを証明しているのである。
またエンドポイントの内訳をあらためて見直してみると,candesartan群が優位なのは狭心症,TIAといった客観性に乏しいエンドポイントばかりであり,脳卒中などの客観性のあるエンドポイントはむしろamlodipine優位に傾いているのである。狭心症やTIAが試験薬群に優位という傾向は JIKEI- HEART試験でも同じように認められ,ここに企業支援によるPROBE法の問題点が明瞭に浮かんでくるのである。
またトライアル初期から中期にかけてcandesartan群の方の脱落例が明らかに増えており,candesartan群はハイリスク症例で早期にイベントを起こしていることを示している。このような試験ではtime to eventまでの期間を比較するべきであり,その意味ではamlodipine群の方がcandesartan群よりもハイリスク症例のイベント発症をより先送りさせることができたことを示している。amlodipine群の方が治療中の血圧が低かったことが早期のイベント発症抑制に効果があったと考えられる。
本試験のプロトコールの最大の欠点は,2000年の日本のガイドライン(JSH2000)にあわせて年齢別に試験開始基準や降圧目標値を分けている点であり,いまでは世界的には全く通用しない考え方である。たとえば68歳の対象者が試験期間中に70歳を超えた場合には,降圧目標値を高めに引き上げたのであろうか。知りたいところである。(桑島
デザイン PROBE(Prospective Randomized Open Blinded-Endpoints),多施設,intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は3.2年(中央値3.4年)。
2006年1月1日試験終了。ランダム化は2001年9月~2002年12月。
対象患者 4703例。高リスク高血圧:診察時の2回連続座位測定で,70歳未満の場合は収縮期血圧(SBP)≧140mmHg,あるいは拡張期血圧(DBP)≧90mmHg,70歳以上はSBP≧160mmHg,あるいはDBP≧90mmHg,次の危険因子のうち1つ以上を有するもの:重症高血圧(SBP≧180mmHgあるいはDBP≧110mmHg);2型糖尿病;6か月以前の脳卒中,TIAの既往;心エコー図上の≧12mmの左室後壁あるいは心室内中隔壁の肥厚,あるいはECG上Sv1+Rv5≧35mmの左室肥大,狭心症;蛋白尿あるいは腎機能障害(クレアチニン≧1.3mg/dL);動脈硬化性末梢動脈閉塞。
除外基準(Hypertens Res. 2003; 26: 979-90.より):座位SBP≧200mmHgあるいはDBP≧120mmHg;1型糖尿病;6か月以内の心筋梗塞あるいは脳血管イベントの既往;6か月以内のPTCAあるいはCABG既往または予定例;うっ血性心不全(NYHA≧II度)あるいはEF<40%;α,β遮断薬やCa拮抗薬を必要とする冠動脈疾患;心房細動/粗動,血清クレアチニン>3mg/L以上の腎障害など。
■患者背景:平均年齢(candesartan群63.8歳,amlodipine群63.9歳),女性(46.4%, 43.2%:有意差あり),BMI(24.6kg/m², 24.5kg/m²),血圧(162.5/91.6mmHg, 163.2/91.8mmHg),重症高血圧(19.3%, 21.0%),喫煙例(20.8%, 22.8%),2型糖尿病(両群とも42.9%),既往:脳血管イベント(10.5%, 9.6%);心イベント(42.8%, 43.6%);腎イベント(24.3%, 23.1%)。
治療法 candesartan群(2354例):4~8mg/日経口投与,降圧目標に達しない場合は最大用量12mg/日まで増量。
amlodipine群(2349例):2.5~5mg/日で経口投与し,必要に応じ最大用量10mg/日まで増量。
登録時に利尿薬,α遮断薬,β遮断薬,α,β遮断薬を投与していた症例は持続投与可とした。試験薬投与開始後の試験薬以外のAII受容体拮抗薬,Ca拮抗薬,全ACE阻害薬の投与は禁じた。
降圧目標値:60歳未満は<130/85mmHg,60歳代はそれぞれ<140/90mmHg,70歳代は<150/90mmHg,80歳以上は<160/90mmHg。
結果 累積15,175人・年の追跡(candesartan群7563人・年,amlodipine群7612人・年)。
candesartan群(54.5%)はamlodipine群(42.7%)に比べ追加併用降圧薬数が有意に多かった(p<0.001)。3年後の試験薬を含む投与降圧薬数はcandesartan群1.54剤,amlodipine群1.37剤。
追加降圧薬:利尿薬(candesartan群24.6%,amlodipine群13.8%*);α遮断薬(25.9%, 16.6%*);β遮断薬(22.3%, 16.9%*),α,β遮断薬(8.2%, 6.2%;p=0.009);その他(4.2%, 2.0%*)。
* p<0.001
その他の治療薬は,脂質異常症治療薬(44.6%, 43.9%),インスリンを含む糖尿病治療薬(37.1%, 38.3%),抗血栓薬(27.7%, 26.4%),抗狭心症薬(11.2%, 11.9%),抗不整脈薬(4.8%, 5.2%)。

降圧
candesartan群162.5/91.6mmHg→ 3年後136.1/77.3mmHg,amlodipine群163.2/91.8mmHg→ 134.4/76.7mmHgと両群で良好に降圧したが,SBP(1.7mmHg;p<0.001),DBP(0.6mmHg;p=0.028)のいずれもamlodipine群はcandesartan群に比べ有意に降圧した。

一次エンドポイント
candesartan群134例(5.7%),amlodipine群134例(5.7%)で両群間差は認められなかった;ハザード比(HR)1.01(95%信頼区間0.79~1.28, p=0.969)。
複合エンドポイントの各イベントの結果は次の通りで,いずれも両群間に有意差はみられなかった。
突然死:11例(0.5%) vs 15例(0.6%);HR 0.73(0.34~1.60, p=0.434),
脳血管イベント:61例(2.6%) vs 50例(2.1%);1.23(0.85~1.78, p=0.282)。
・脳卒中:60例(2.5%) vs 47例(2.0%);1.28(0.88~1.88, p=0.198)。
・TIA:2例(0.1%) vs 4例(0.2%);0.50(0.09~2.73, p=0.414)。
心イベント:43例(1.8%) vs 47例(2.0%);0.92(0.61~1.39, p=0.680)。
・心不全:20例(0.8%) vs 16例(0.7%);1.25(0.65~2.42, p=0.498)。
・狭心症:8例(0.3%) vs 14例(0.6%);0.57(0.24~1.36, p=0.201)。
・AMI:17例(0.7%) vs 18例(0.8%);0.95(0.49~1.84, p=0.870)。
腎イベント:19例(0.8%) vs 27例(1.1%);0.70(0.39~1.26, p=0.230)。
・クレアチニン値異常:19例(0.8%) vs 26例(1.1%);0.73(0.40~1.31, p=0.287)。
・末期腎不全:4例(0.2%) vs 10例(0.4%);0.40(0.13~1.29, p=0.112)。
末梢動脈イベント:11例(0.5%) vs 7例(0.3%);1.57(0.61~4.05, p=0.348)。

二次エンドポイント
死亡:73例(9.4例/1000人・年) vs 86例(11.1例/1000人・年)。全死亡,心血管死において両群間に有意差はみられなかった。
プロトコールには含まれていなかったが,2005年に新たに加えられた新規糖尿病発症は8.7例/1000人・年 vs 13.6例/1000人・年でcandesartan群で相対リスクが36%有意に低下した(p=0.033)。

安全性
有害イベントによる投与中止は125例(5.4%) vs 134例(5.8%)。高カリウム血症がcandesartan群で多く(1.0% vs 0.3%),顔面紅潮,肺炎がamlodipine群で多かった(それぞれ0% vs 0.2%, 0.1% vs 0.5%)。
文献
  • [main]
  • Ogihara T et al for the candesartan antihypertensive survival evaluation in Japan trial group: Effects of candesartan compared with amlodipine in hypertensive patients with high cardiovascular risks. Candesartan antihypertensive survival evaluation in Japan trial. Hypertension. 2008; 51: 393-8. PubMed
  • プロトコール
    (目的)高リスク高血圧患者において,長期の心血管イベント抑制効果をAII受容体拮抗薬candesartanとCa拮抗薬amlodipineとで比較する。
    一次エンドポイントは突然死(急性発症で24時間以内の内因死);脳血管イベント(脳卒中あるいは一過性脳虚血発作の新規発症あるいは再発);心イベント(心不全,狭心症,急性心筋梗塞の新規発症,増悪または再発),腎機能不全(血清クレアチニン≧4.0mg/dL,末期腎不全,クレアチニン値の倍増[ただし≦2mg/dLはイベントとしない]),血管イベント(解離性大動脈瘤,末梢動脈の動脈硬化性閉塞)。
    二次エンドポイントは全死亡;左室肥大;脱落率。
    (デザイン)PROBE(Prospective Randomised Open Blinded Endpoints),多施設,intention-to-treat解析。
    (期間)追跡期間は2005年12月まで。登録期間は2001年9月~2002年12月。
    (対象患者)試験参入の基準:(1)20~85歳,(2)2回の診察時の座位測定で70歳未満は収縮期血圧(SBP)≧140mmHg,70歳以上はSBP≧160mmHg,あるいは拡張期血圧(DBP)≧90mmHg,(3)次の危険因子のうち1つ以上を有するもの:SBP≧180mmHgあるいはDBP≧110mmHg;2型糖尿病(空腹時血糖値≧126mg/dL,随時血糖値≧200mg/dL,HbA1c≧6.5%,75g経口ブドウ糖負荷試験[OGTT]2時間値≧200mg/dLまたは血糖降下薬投与例);6か月以前の脳出血,脳梗塞,一過性脳虚血発作の既往;心エコー図上の≧12mmの左室後壁あるいは心室内中隔壁の肥厚,あるいはECG上Sv1+Rv5≧35mm,狭心症,6か月以上前の心筋梗塞(MI)既往;3か月以内の+1以上の蛋白尿あるいは腎機能障害(クレアチニン≧1.3mg/dL);動脈硬化性末梢動脈閉塞(Fontaine分類≧2)。
    除外基準:座位SBP≧200mmHgあるいはDBP≧120mmHg;1型糖尿病;6か月以内の心筋梗塞あるいは脳血管イベントの既往;6か月以内のPTCAあるいはCABG既往または予定例;うっ血性心不全(NYHA≧II度)あるいはEF<40%;α・β遮断薬やCa拮抗薬を必要とする冠動脈疾患;心房細動/粗動,血清クレアチニン>3mg/L以上の腎障害など。
    有意性を見出すのに必要な組入れ予定数は3200症例。
    (治療法)candesartan群:4~8mg/日経口投与,必要に応じ最大用量12mg/日まで増量。ただし腎機能不全症例は2mgから投与を開始し,必要な場合は8mg/日まで増量。amlodipine群:2.5~5mg/日で経口投与し,必要に応じて最大用量10mg/日まで増量。両群とも試験薬の増量後も降圧が不十分な場合は利尿薬,α遮断薬,β遮断薬,α,β遮断薬などを追加(漸増)投与。
    登録時に利尿薬,α遮断薬,β遮断薬を投与,あるいは登録前にα,β遮断薬を投与していた症例は持続投与可とする。試験薬投与開始後の試験薬以外のAII受容体拮抗薬,Ca拮抗薬,全ACE阻害薬の投与は禁じた。
    降圧目標値:<60歳はSBP<130mmHg,DBP<85mmHg,60歳代はそれぞれ<140mmHg,<90mmHg,70歳代は<150mmHg,<90mmHg,80歳代は<160mmHg,<90mmHg(Fukui T et al for the CASE-J study group: Candesartan antihypertensive survival evaluation in Japan (CASE-J) trial of cardiovascular events in high-risk hypertensive patients: rationale, design, and methods. Hypertens Res. 2003: 979-90.)。 PubMed
  • [substudy]
  • 2型糖尿病,CKD,左室肥大合併高血圧患者では,降圧治療による達成血圧値が高いほどCVDリスクが増大。
    追跡期間中に1回以上来院した心血管イベント非発症の4,553例(candesartan群2,278例,amlodipine群2,275例)において,糖尿病,CKD,または左室肥大の合併の有無により達成血圧と心血管イベントの関係を評価した結果:3年後の平均血圧の変化は162.7/91.6→136.2/77.5mmHg。糖尿病/CKD/左室肥大合併例は約85%(糖尿病1,958例,CKD 2,079例,左室肥大1,558例)。合併例では達成血圧(最終来院時の血圧)が高いほど心血管イベント(CVD)リスクが高かった。左室肥大合併例では,達成血圧<130/75~79 mmHgで,CVDリスクは左室肥大を合併していない<130/75~79mmHgの患者と同等レベルまで低下した。一方,糖尿病またはCKD合併例は<130/75~79mmHgまで降圧しても,非合併例にくらべてCVDリスクが有意に高かった:Hypertens Res. 2009; 32: 248-54. PubMed
  • 3年延長試験においてもcandesartanとamlodipineの心血管イベント抑制効果は同等で,candesartanは糖尿病新規発症を抑制。
    CASE-Jの3年延長試験(CASE-J Ex):CASE-J Exの同意取得例は2,232例(candesartan群1,140例,amlodipine群1,092例)。candesartan群のほうが女性(49.1% vs 44.2%;p=0.021),脳血管イベント既往例(11.1% vs 8.4%, p=0.031)が多かった。
    延長期間中もcandesartan群の85.3%,amlodipine群の82.8%が試験薬の服用を継続。他の降圧薬併用例はcandesartan群のほうが多く(53.7% vs 45.1%, p<0.05),延長3年終了時の平均降圧薬服用数(試験薬含む)はそれぞれ1.63, 1.43であった(p<0.001)。
    血圧は延長期間中,両群ともに良好にコントロールされた(延長3年後の平均血圧: 133.9/75.7mmHg vs 134.1/75.9mmHg)。
    心血管イベントリスクは両群で同等であったが(15.5 vs 16.3/1,000人・年:ハザード比0.95;95%信頼区間0.77~1.18, p=0.65),糖尿病の新規発症リスクはcandesartan群で29%低下した(9.5 vs 13.3/1,000人・年:0.71;0.51~1.00, p=0.0495): Hypertens Res. 2011; 34: 1295-301. PubMed
  • 高齢の高リスク高血圧患者におけるcandesrtanとamlodipineの心血管イベントへの有効性は同等。75~84歳では<150/85mmHgにコントロールすることの重要性が示唆された。
    65歳未満(2247例):candesartan群1132例(3年後の血圧135.6/79.4mmHg),amlodipine群1115例(133.0/78.7mmHg):amlodipine群と比べたcandesartan群の心血管イベントのハザード比(HR)は1.03;95%信頼区間0.67~1.56(p=0.904)。
    65~74歳(1705例):862例(136.1/75.5mmHg),843例(135.2/75.4mmHg):1.05;0.73~1.51(p=0.787)。
    75~84歳(751例):360例(137.6/74.4mmHg),391例(136.5/73.3mmHg):0.94;0.58~1.53(p=0.808)。
    ・65歳未満と65~74歳では血圧がコントロールされていない(収縮期血圧[SBP]≧140mmHg)場合,心血管リスクが増大し,特にSBP≧160mmHgのHRは65歳未満:9.30;4.13~20.95(p<0.001),65~74歳:8.45;4.04~17.66(p<0.001)。一方,75~84歳はSBP≧150mmHgは心血管リスクが有意に増加したが,他の2つの年齢群ほど大きくはなかった。SBP≧160mmHgのHRは3.90;1.44~10.54(p=0.007),150~159mmHgのHRは2.91;1.01~8.39(p=0.048)。
    拡張期血圧(DBP)に関しては,65歳未満でJ-カーブ現象がみられた:DBP<75mmHgのHR 2.51;1.03~6.10(p=0.042)。75~84歳・DBP≧85~89mmHgのHR 3.29(p<0.05):Hypertens Res. 2008; 31: 1595-601. PubMed

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収載年月2006.09
更新年月2013.02