循環器トライアルデータベース

OASIS-5
Fifth Organization to Assess Strategies in Acute Ischemic Syndromes

目的 非ST上昇型心筋梗塞(MI)または不安定狭心症の高リスク患者において,Xa阻害薬fondaparinuxの有効性と安全性を低分子量heparinであるenoxaparinと比較する。

有効性の一次エンドポイントは9日後の死亡,MI,難治性虚血の複合。
安全性の一次エンドポイントは9日後の大出血。
コメント 急性冠症候群(ACS)の高リスク患者に対して,抗凝固薬,抗血小板薬,観血的治療の併用は虚血性心イベントを抑制するが出血も増加するので,治療効果を低下させずに出血を生じにくい治療法が望まれている。抗凝固薬として非分画heparinと低分子量heparinがACSの患者に用いられるが,後者の方が死亡や心筋梗塞の発症リスクをより低下させる。合成ペンタサッカライドのfondaparinuxはXa因子を抑制することで抗凝固作用を示す。fondaparinuxは低分子量heparin enoxaparinと比べて深部静脈血栓症や肺塞栓の治療では同等であり,整形外科手術時の静脈血栓症の予防により有用である。ACS患者やPCI患者でのpilot studyではfondaparinuxの有用性はenoxaparinと同等で,安全性はより優れることが報告されている。本研究では非ST上昇型心筋梗塞/不安定狭心症の高リスク患者においてfondaparinuxとenoxaparinとを対比しており,有効性は同等であるが,前者は大出血1/2,小出血1/3と出血の頻度が少なく,長期的にも死亡率を低下させ,安全面に優れると考えられる。一般に,直接的抗トロンビン薬は非分画heparinより出血が多いことが知られている。enoxaparinにより出血が増大する理由はトロンビン抑制時の内因的特性が原因かもしれない。低用量のenoxaparinの有効性は明らかではないが,現在用いられているenoxaparinの用量が多すぎる可能性もある。出血により死亡率が増大した理由は,凝固系が賦活化され虚血イベントが増加したこと,出血後に抗血栓療法を中止したこと,低血圧や輸血による影響,などが考えられる。大出血が長期予後と関連するので,出血の頻度が少なく虚血イベントを有効に低下させるfondaparinuxは今後期待できる治療薬である。(星田
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(41か国576施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は90日~180日。
治療期間は平均6日(最大8日)。
対象患者 20,078例。60歳以上,トロポニンあるいはクレアチンキナーゼMBアイソザイムの上昇,虚血を示す心電図上の変化,のうち2つ以上に該当するもの。
除外基準:低分子量heparinの禁忌,最近の出血性脳卒中,急性冠症候群以外の抗凝固療法の適応,血清クレアチニン>3mg/dL。
■患者背景:平均年齢(両群とも66.6歳),男性(fondaparinux群62.0%,enoxaparin群61.4%),心拍数(両群とも73拍/分),収縮期血圧(136.6mmHg, 136.3mmHg),不安定狭心症(45.6%, 45.1%),MIが疑われるもの(54.4%, 54.9%),既往:MI(両群とも25.7%);CABG/PCI(20.1%, 19.5%);高血圧(67.4%, 67.1%);糖尿病(25.6%, 25.0%);喫煙(54.1%, 54.6%),心電図上の異常(80.6%, 79.8%),1mm以上のST低下(51.7%, 50.3%),治療状況:aspirin(77.7%, 78.1%),clopidogrelあるいはticlopidine(31.2%, 31.5%),未分画heparin(17.7%, 17.8%),低分子量heparin(31.2%, 31.9%),ACE阻害薬あるいはARB(51.1%, 51.2%),β遮断薬(59.2%, 60.2%),Ca拮抗薬(22.6%, 22.4%),脂質低下薬(38.2%, 38.5%)。入院中の手技:血管造影(63.5%, 63.1%);PCI(両群とも34.3%);CABG(9.6%, 9.0%)。
治療法 発症から24時間以内に次の2群にランダム化。
fondaparinux群(10,057例):2.5mg/日+プラセボ×2回/日を退院あるいは最大8日まで皮下注,enoxaparin群(10,021例):1mg/kg×2回/日(クレアチニン・クリアランスが<30mL/分の患者は1日1回)+プラセボ/日を症状が安定するまで,あるいは2~8日間皮下注。
担当医の裁量により標準的な治療を行い,PCI施行の場合は最低6時間前のclopidogrelおよびaspirin投与を推奨。
結果 有効性の一次エンドポイントはfondaparinux群579例(5.8%),enoxaparin群573例(5.7%);ハザード比[HR]1.01(95%信頼区間[CI]0.90~1.13)で,fondaparinux群のenoxaparin群に対する非劣性が確認された(非劣性境界1.185,非劣性検定p=0.007)。
主な二次エンドポイント(死亡+MI)もfondaparinux群409例(4.1%) vs enoxaparin群412例(4.1%);HR 0.99(95%CI 0.86~1.13),fondaparinux群のenoxaparin群に対する非劣性が確認された(非劣性検定p=0.005)。
30日後の一次エンドポイントを構成する複合エンドポイント(805例[8.0%] vs 864例[8.6%];HR 0.93[95%CI 0.84~1.02], p=0.13),および死亡+MI(619例[6.2%] vs 682例[6.8%],HR 0.90[95%CI 0.81~1.01], p=0.07)で,fondaparinux群はenoxaparin群に比べ低い傾向にあったが,これはfondaparinux群で死亡が有意に減少したことによるものであった(295例[2.9%] vs 352例[3.5%],HR 0.83[95%CI 0.71~0.97], p=0.02]。
試験終了時の死亡+MI+難治性虚血はfondaparinux群1222例(12.3%)vs enoxaparin群1308例(13.2%);HR 0.93, 95%CI 0.86~1.00(p=0.06),死亡+MIは1042例(10.5%)vs 1127例(11.4%);HR 0.92, 95%CI 0.84~1.00(p=0.05),死亡は574例(5.8%)vs 638例(6.5%);HR 0.89, 95%CI 0.80~1.00(p=0.05)であった。
大出血はfondaparinux群でenoxaparin群に比べ有意に少なかった(30日後:3.1% vs 5.0%;HR 0.62, 95%CI 0.54~0.72, p<0.001,180日後:4.3% vs 5.8%;HR 0.72, 95%CI 0.64~0.82, p<0.001)。一次エンドポイント+大出血はfondaparinux群7.3% vs enoxaparin群9.0%であった(HR 0.81, 95%CI 0.73~0.89, p<0.001)。
★結論★非ST上昇型急性冠症候群患者において,9日後の虚血イベントのリスク低下はfondaparinuxはenoxaparinと同等であるが,fondaparinuxの方が大出血を実質的に低下させ長期的な死亡率および合併症発生率の大幅な改善をもたらす。
ClinicalTrials.gov No.: NCT00139815
文献
  • [main]
  • Yusuf S et al for the fifth organization to assess strategies in acute ischemic syndromes investigators: Comparison of fondaparinux and enoxaparin in acute coronary syndromes. N Engl J Med. 2006; 354: 1464-76. PubMed
  • [substudy]
  • 非ST上昇型ACSの女性において,入院後早期のルーチン侵襲的治療による2年後のCVD抑制効果は認められず,むしろ死亡リスク増大の可能性。
    女性184例(平均68歳)において,ルーチンの侵襲的治療(入院後4日以内に冠動脈造影を行い,必要に応じて7日以内に血行再建術を施行)と待機的戦略(重症虚血の症状・兆候を認めたときのみ冠動脈造影)のイベント予防効果を比較した結果(追跡期間2年):死亡+心筋梗塞(MI)+脳卒中の複合エンドポイントに有意な治療群間差は認められなかった(21.0 vs 15.4%:ハザード比1.46;95%信頼区間0.73~2.94)。その他の項目にも差はみられなかった(死亡+MI:18.8 vs 14.3%;1.39, 0.67~2.88, MI:12.9 vs 13.3%;0.95, 0.42~2.19,脳卒中:2.3 vs 4.4%;0.67, 0.12~3.70)。しかし,1年後の死亡(8.8 vs 1.1%;9.01, 1.11~72.90)と30日後の大出血(8.8 vs. 1.1%;11.45, 1.43~91.96)はルーチン群で有意に増加した。
    なお,同時に行ったメタ解析(ランダム化比較試験5試験;2,692例)でも,死亡+MIのリスクには有意な群間差を認めなかったが(オッズ比1.18, 0.92~1.53),死亡リスクはルーチン群のほうが高かった(1.51, 1.00~2.29):Eur Heart J. 2012; 33: 51-60. PubMed
  • GP IIb/IIIa受容体拮抗薬,チエノピリジン系薬剤併用例でfondaparinuxは大出血を抑制し,予後を改善
    GP IIb/IIIa受容体拮抗薬投与群(3630例):fondaparinux群はenoxaparin群より大出血を抑制;5.2% vs 8.3%,HR 0.61(p<0.001)。チエノピリジン系薬剤投与群(1万3531例)でもfondaparinux群が大出血を抑制した;3.4% vs 5.4%,HR 0.62(p<0.001)。虚血性イベントは両群間差はなく,全体の臨床転帰(死亡,MI,難治性虚血,大出血)はfondaparinux群が優れており,GP IIb/IIIa群は14.8% vs 18.9%,HR 0.77(p=0.001),チエノピリジン系群は11.0% vs 13.2%;HR 0.82(p<0.001):J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 468-76. PubMed
  • fondaparinux治療はheparinをベースにした治療(未分画heparin,enoxaparin)に比べ,死亡率,虚血性イベント,大出血抑制効果に優れ,侵襲的治療例,保存的治療例を問わず,全体の臨床転帰を改善した(OASIS 5+OASIS 6の結果):Circulation. 2008; 118: 2038-46. PubMed
  • 早期PCIを含むPCI施行例(予定されていたサブ解析):fondaparinuxによるupstream治療はenoxaparinによるupstream治療に比べ,有効性は維持しながら重大な出血を低下させ,死亡,心筋梗塞,脳卒中を含む臨床全体での有効性が大きかった。PCI時のfondaparinuxに代わる標準UFHの投与は,fondaparinuxの有効性を損なうことなく冠動脈造影上の合併症を予防できると思われる:J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 1742-51. PubMed

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収載年月2006.06
更新年月2013.04