循環器トライアルデータベース

BASKET
Basel Stent Cost-Effectiveness Trial

目的 日常臨床における薬剤溶出ステント(DES)の費用対効果増をベアメタルステント(BMS)と比較する。

一次エンドポイントは6か月後の費用対効果(有効性は主要な有害心イベントの抑制)。
コメント 5103人の患者を包含した11試験のメタ解析ではMACEの頻度はBMS(16.4%)に比しDES(7.8%)は約半分であるが,DESのコスト高は,ステント留置後のイベントに費やされるコストで代償することはできないとされている。しかし,ハイリスク患者ではDESの有用性が高まり費用対効果も改善されるため,医療経済性からその適応が制限されるようになるかもしれないが,そうなればDESの価格引き下げも進むであろう。(
デザイン 無作為割付け,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は6か月。
対象患者 826例1281新規病変。2003年5月5日~2004年5月31日にスイスのBasel大学でPCIあるいはステントを施行したもの。
除外基準:標的血管径≧4mm。
■患者背景:平均年齢64歳,男性79%,糖尿病19%,高血圧67%,高脂血症75%,既往:心筋梗塞(MI)27%;PCI 16%;CABG 13%,ST上昇型梗塞21%,不安定狭心症36%,安定狭心症42%,多枝疾患69%,左前下行枝52%,左回旋枝31%,右冠動脈35%,type B病変80%,type C病変24%。
治療法 DES群(545例):paclitaxel溶出ステント(Taxus群[281例]),sirolimus溶出ステント(Cypher群[264例]),BMS群(281例):第3世代コバルトクロム性BMS。
全例clopidogrelを6か月投与(周術期300mg,維持投与量は75mg/日)。通常の標準治療(aspirin 100mg/日,スタチン,GP IIb/IIIa受容体拮抗薬など)を実施。
結果 心臓死,MI,標的血管血行再建術(TVR)はDES群39例(7.2%),BMS群34例(12.1%)であった(オッズ比[OR]0.56,95%信頼区間0.35~0.91, p=0.02)。これは主にTVRの低下によるものであった(OR 0.57)。これらの結果においてDES群のTaxus群とCypher群間に有意差はなかった。しかし,Cypher群とBMS群の絶対差は常にTaxus群とBMS群間差よりもやや大きかった。
コストはDES群(10,544ユーロ),BMS群(9639ユーロ)で,DES群が有意に高かった(p<0.0001)。ステントの平均料金はDES群3961ユーロ,BMS群2259ユーロ,最初の平均入院治療費は5710ユーロ vs 6194ユーロ,追跡期間中の平均コストは873ユーロ vs 1185ユーロ,有害心イベントの平均コストは10,5444ユーロ vs 9639ユーロで,DES群のステントコストの割高度はその他のコスト減では相殺できなかった。DES群のBMS群に比べた主要有害イベント1例を予防するための費用効果比の増分(incremental cost-effectivensee ratio)は18,311ユーロで,質調整後獲得生存年(quality-adjusted life-year gained)ごとのコストは50,000ユーロ以上である。
サブ解析:DESの有効性は3枝病変,65歳以上,1セグメント以上の治療,ステントサイズが小さいかステント長>20mmなどの高リスク例でより顕著であった。
★考察★日常臨床においてDESの費用対効果は高くない。ステントの使用は高リスク患者のみで施行すべきである。
文献
  • [main]
  • Kaiser C et al for the BASKET investigators: Incremental cost-effectiveness of drug-eluting stents compared with a third-generation bare-metal stent in a real-world setting: randomised Basel stent kosten effektivitats trial (BASKET). Lancet. 2005; 366: 921-9. PubMed
  • [substudy]
  • 第1世代DES植込みから5年後のイベントは責任血管領域のほうが多いが,非責任血管領域(CAD進展)も40%近く発生。
    BASKET-PRO (Progression of CAD) study:6か月後の生存例および60か月後に安静/負荷心筋シンチグラフィー検査を実施;
    5年間でイベントが発生した患者は110/428例(25.7%)でイベント数は150件。うち死亡は43例(10%),心筋梗塞(MI)36例(8.4%),再血行再建術が71例(16.6%)。remote(遠隔領域;非標的[責任]血管)のほうが標的血管(TV)領域よりイベント率は低かった:9.8% vs 14.3%(p=0.019)。
    非致死的イベント発症例(124例)の46例(37.1%)が遠隔領域イベントで,62.9%がTV領域。
    イベント非発症例のうち新規に灌流障害が生じたのは23.3%で,無症候性が71%,遠隔領域37.5%;TV領域62.5%であった:J Am Coll Cardiol. 2012; 59: 793-9. PubMed
  • 18か月後の結果:全コストはDES群11,808ユーロ/1例 vs BMS群10,450ユーロ/1例でDES群で1,358ユーロ高かった(p<0.0001)。主要な有害心イベント1例を予防するためのDESの増分費用対効果比(incremental cost-effectivensee ratio:ICERs)は64,732ユーロ,獲得質調整生存年(quality adjusted life year: QALY gained)ごとのICERsは40,467ユーロ。DESが1件の有害心イベント予防の閾値である10,000ユーロのICERsを達成する確率は低リスク例ではわずか0.016,高リスクでは0.874:Lancet. 2007; 370: 1552-9. PubMed
  • 18か月後の標的血管血行再建術(TVR)はDES群7.5% vs BMS群11.6%とDES群で抑制されたが(p=0.05),心臓死,MIは8.4% vs 7.5%(p=0.70)で両群間差はなかった。小ステント例(<3.0mm),CABG例(268例[32%])においてDES群でMI非関連TVR(ハザード比0.44, p=0.02),心臓死,MI(HR 0.44, p=0.04)が有意に低下したが,その他の症例ではTVRは両群同様,心臓死,MIは増加した(2.07, p=0.05):Eur Heart J. 2007; 28: 719-25. PubMed
  • BASKET-LATE(clopidogrelの投与中止後の長期転帰):手技から6か月,12か月後に主要な有害事象の発生しなかった症例をさらに追跡。DES群ではclopidogrel投与は24か月後の死亡,死亡+MIのリスク低下の有意な予測因子であるが,BMS群ではそうではない:JAMA. 2007; 297: 159-68. PubMed
  • BASKET-LATE:clopidgrel投与中止後の晩期(18か月後)イベントおよびステント血栓症を比較(743例): clopidgrelの投与中止後,DESによるTVRの抑制効果は維持されたが,晩期ステント血栓症と関連すると思われる心臓死または非致死的MIが増加した:J Am Coll Cardiol. 2006; 48: 2584-91. PubMed

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収載年月2006.05
更新年月2012.04