循環器トライアルデータベース

TAXUS V ISR

目的 ベアメタルステント(BMS)再狭窄例において,paclitaxel溶出ステント(PES)と冠動脈内放射線治療(vascular brachytherapy:VBT) とを比較する。
一次エンドポイントは9か月後の虚血による標的血管血行再建術(TVR)。
コメント 抗血小板薬を長期に使用できない例や費用対効果を考えて,局所病変や大きい血管径の例ではベアメタルステントは現在でも使用されているが,症例の背景因子や病変の複雑性により再狭窄率は10~50%と幅がみられる。ベアメタルステント再狭窄例に対して冠動脈内放射線治療(VBT)はFDAが認可した唯一の治療である。しかし,VBTは高価で操作が困難であり,ステント近縁の再狭窄が多く,遠隔期の血栓症や再狭窄も報告されている。これまでの小規模の研究によりTaxusのステント再狭窄例に対する安全性と有用性が報告されている。本研究はプロスペクティブな多施設研究であり,ステント狭窄例に対してTaxusがVBTより血管造影上も臨床転帰上も有用であることを示した。同様の試験デザインでCypherもVBTより有用であることが報告されており(SISR study),薬剤溶出ステントがベアメタルステント再狭窄例に対するfirst choiceであることが確立された。しかし,ステント再狭窄で分岐部病変,蛇行あるいは屈曲病変,過度の石灰化病変の例や腎機能低下例ではVBTの有用性は残るかもしれない。薬剤溶出ステント後の再狭窄例やベアメタルステント再狭窄に対するVBT治療後の再狭窄例に対する薬剤溶出ステントの効果は明らかではない。ベアメタルステント再狭窄例に対する薬剤溶出ステントの長期効果,抗腫瘍薬を局所に再投与することの安全性,抗血小板薬の適切な投与期間を明らかにする研究が待たれる。(星田
デザイン 無作為割付け,多施設(北米の教育病院および地域病院37施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は9か月。ランダム化期間は2003年6月6日~'04年7月16日。
対象患者 396例。18歳以上。安定/不安定狭心症あるいはnative血管のベアメタル再狭窄病変へのPCIで誘発される虚血;標的病変の参照血管径は目測で2.5~3.75mmで病変長46mm以下。
除外基準:標的血管へのVBT,external beam radiotherapy,薬剤溶出ステントの既往あるいは予定例;ataxia-telangiectasia(末梢血管拡張運動失調症)または他の遺伝的放射線感受性疾患;72時間以内の心筋梗塞(MI)あるいはクレアチンキナーゼ-MB値が標準上限の2倍以上;EF<25%;左主幹部あるいは入り口病変,血管あるいは病変の過度の石灰化;蛇行あるいは屈曲;分岐部疾患;標的病変の閉塞あるいは血栓など。
■患者背景:平均年齢63歳,男性(VBT群70.1%,PES群62.1%,p=0.09),治療の必要な糖尿病(30.3%,40.0%,p=0.04):インスリン投与例(10.4%,19.5%,p=0.01),高血圧(79.1%,84.6%),高脂血症(91.5%,90.8%),MI既往(52.7%,51.8%),BMS植込みからの時間(中央値:316日,281日)。標的病変:左前下行枝(33.3%,39.2%);左回旋枝(26.9%,23.2%);右冠動脈(38.8%,37.1%),参照血管径(2.61mm,2.68mm),最小血管径(0.83mm,0.80mm),狭窄率(68.0%,68.5%),病変長(15.0mm,15.9mm)。狭窄パターン:局所(29.0%,18.6%,p=0.02);びまん性(47.0%,60.8%,p=0.006),増殖性(23.5%,19.1%)。
治療法 VBT群(201例):β線源,PES群(195例):ポリマーベースpaclitaxel溶出ステント。試験開始時と9か月後に血管造影を実施。
結果 追跡結果は385例(97.2%:VBT群194例,PES群191例)。
VBT群の治療時間(dwell time)は198秒,線源からの距離は30mm(中央値),線量は87.8mCi(中央値)。新たなステント植込みはVBT群22例(10.9%),PES群のマルチプルステント植込みは57例(29.2%)。
急性期獲得径,手技後最小血管径,最終狭窄率はPES群がVBT群より有意に良好であった。
9か月後の再狭窄率はVBT群31.2%,PES群14.5%(相対リスク[RR]0.47;95%信頼区間(CI)0.30~0.71,p<0.001)。
一次エンドポイントはVBT群34例(17.5%),PES群20例(10.5%)でPES群がVBT群に比べ抑制した(RR 0.60;95%CI 0.36~1.00,p=0.046)。
標的病変血行再建術は27例(13.9%) vs 12例(6.3%)でRR 0.45;95%CI 0.24~0.86(p=0.01),主要な有害心イベントは39例(20.1%) vs 22例(11.5%)でRR 0.57;95%CI 0.35~0.93(p=0.02)とPES群で有意に抑制した。心臓死あるいはMI(RR 0.71,p=0.48),標的血管血栓症(RR 0.61,p=0.72)は両群間に有意差はみられなかった。
★結論★ベアメタルステント再狭窄例において,PESはVBTよりも9か月後の再狭窄を抑制しイベント発症を伴わない生存率を改善した。
ClinicalTrials.gov Identifier: NCT00287573
文献
  • [main]
  • Stone GW et al for the TAXUS V ISR investigators: Paclitaxel-eluting stents vs vascular brachytherapy for in-stent restenosis within bare-metal stents; the TAXUS V ISR randomized trial. JAMA. 2006; 295: 1253-63. PubMed

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収載年月2006.05