循環器トライアルデータベース

REACH Registry
Reduction of Atherothrombosis for Continued Health Registry

目的 アテローム性動脈硬化(アテローム血栓症)の危険因子と治療法の世界規模登録研究。
本報は患者背景。
コメント JAMA. 2006; 295: 180-9.へのコメント
日本を含む世界の心血管病に関する基礎データとなる発表である。心血管病に関する危険因子を持つものの約2年間の追跡調査であり,予後決定因子を見る上では重要な研究である。また,世界各地にわたる研究であることから地域ごとの危険因子も明らかにすることができると期待される。注目すべきことは,高血圧では診断されていないものが27%,治療されていないものが約半数という事実と,高脂血症で診断されていない糖尿病が約5%,耐糖能異常が約36%と留意しなければならない危険因子が十分把握されていないことが明らかになったことである。(寺本
デザイン 観察登録研究,多施設(日本を含む44か国)。
期間 追跡期間は24か月。
登録期間は2003年12月~2004年6月(日本は2004年8月~12月)。
参加者 67,888例。45歳以上の冠動脈疾患(CAD),脳血管疾患(CVD),末梢血管疾患(PAD),あるいはアテローム性動脈硬化(血栓症)の危険因子を3つ以上有するもの。
CADの定義:次のうち1つ以上を有するもの;CADの記録のある安定狭心症;CADの記録のある不安定狭心症;PCI既往;CABG既往;心筋梗塞既往。
CVDの定義:一過性脳虚血発作(TIA)あるいは脳梗塞の記録のあるもの。
PADの定義:次のうち1つあるいは両方を有するもの;足首関節-上腕血圧係数(ankle brachial index: ABI)<0.9の間欠性跛行,あるいは以前のおよび関連インターベンション(血管形成術,ステント,アテレクトミー,末梢血管バイパスグラフト,切断を含むその他の血管インターベンション)既往の間欠性跛行。
危険因子:糖尿病治療,糖尿病腎症,ABI<0.9,無症候性頸動脈狭窄(≧70%),頸動脈内膜-中膜肥厚が隣接部位に2倍ないしそれ以上,3か月以上の降圧治療にもかかわらず収縮期血圧が150mmHg以上,薬物治療を受けている高脂血症,1日15本以上の喫煙,65歳以上の男性あるいは70歳以上の女性。
調査方法
結果 国別参加者数:北米(カナダ1976例,米国25,770例);ラテンアメリカ(ブラジル441例,チリ253例,メキシコ899例);中南米(コスタリカ,ドミニカ共和国,エクアドル,グァテマラ,パナマ,ペルー)338例;西欧(オーストリア1588例,ベルギー383例,デンマーク422例,フィンランド311例,フランス4592例,ドイツ5521例,ギリシャ699例,オランダ324例,ポルトガル218例,スペイン2515例,スイス695例,英国618例);東欧(ブルガリア996例,ハンガリー957例,リトアニア99例,ルーマニア2009例,ロシア999例,ウクライナ596例);中東(イスラエル379例,レバノン120例,サウジアラビア198例,アラブ首長国連邦149例);アジア(中国708例,香港175例,インドネシア499例,韓国505例,マレーシア525例,フィリピン1039例,シンガポール880例,台湾1057例,タイ515例);日本(登録が遅れた日本のデータはアジアの解析に含まず)5048例;オーストラリア2872例。
CADは40,258例,CVDは18,843例,PADは8273例,危険因子を3つ以上有するもの12,389例,症候性55,499例。
全体(67,888例)の平均年齢68.5歳(日本69.7歳),男性63.7%(73.8%),危険因子:糖尿病(治療例あるいは既往)44.3%(38.5%);高血圧(治療例)81.8%(70.5%);高脂血症72.4%(44.6%);肥満(男性:腹囲102cm以上,女性:88cm以上)46.6%(8.8%),過体重(BMI:25~29kg/m²)39.8%(29.5%),肥満:class I; BMI 30~34kg/m² 19.9%(3.4%),class II; 35~39kg/m² 6.7%(0.2%),class III; 40kg/m²以上3.6%(0.1%);喫煙(喫煙歴41.6%[46.6%],現在の喫煙例15.3%[14.7%])。世界的にみてアテローム血栓症患者が罹患している危険因子の状況は同様であったが,肥満度は北米が他の地域に比べ有意に高かった(p<0.001)。
スタチン治療例は全体で69.4%,CVDは56.4%,CADは76.2%,日本は44.6%で最低,抗血栓治療例は全体で78.6%,3つ以上の危険因子を有するものは53.9%,CADは85.6%,CVDは81.8%,PADは81.7%,日本は74.3%,およびその他のリスク低下のエビデンスを持つ治療の実施率は全体的に低かった。
ベースライン時の血圧上昇例は50%で,高血圧と診断されたもののうちベースライン時の血圧上昇例は54.9%,診断されなかったものは27.6%,ベースライン時の高血圧の50%が未治療。糖尿病と診断されていない高脂血症は4.9%,耐糖能異常は36.5%。症候性アテローム血栓症のうち15.9%がpoly vascular disease(1患者における2~3か所[冠動脈,脳および/あるいは末梢]の症候性動脈疾患) であった。
★結論★心血管疾患の一般的な危険因子の罹患は世界的に高く共通しているが,多くの地域で治療,コントロールが不十分である。

REACH Registryホームページ
http://www.reachregistry.org/

[主な結果]
  • アテローム血栓症患者における脈圧-血圧とは独立して複数の有害CVイベントと関連。
    4年追跡例(日本人5,073例を含む45,087例:平均年齢68歳,女性35%,アテローム性血栓症82%,降圧治療例81%,収縮期血圧[SBP]138mmHg, PP 49mmHg)において,PPが有害心血管(CV)イベントと関係するかを検証した結果:PPの第4四分位(>70mmHg)群は第1四分位(≦50 mmHg)群にくらべ,非致死的心筋梗塞(MI),致死的・非致死的MI,非致死的脳卒中,CVによる入院,CV死・MI・脳卒中・入院の複合イベントの調整(血圧を含む)ハザード比が有意に高かった(全p<0.05)。なお,PPの第4四分位群の93%がSBP≧140mmHgであった(Selvaraj S et al on behalf of the REACH Registry investigators: Pulse pressure and risk for cardiovascular events in patients with atherothrombosis: from the REACH Registry. J Am Coll Cardiol. 2016; 67: 392-403.)。 PubMed
  • 糖尿病と長期CVイベント-4年後,糖尿病患者(約44%)は死亡,虚血性イベント,心不全リスクが高かった。特に心不全合併例はCV死リスクが上昇。
    4年後の心不全による入院を含む心血管(CV)転帰を糖尿病の有無で比較した結果(45,227例[平均年齢68.4歳];糖尿病患者19,699例[43.6%]):日本人は糖尿病患者11.8%,非糖尿病患者10.8%(p=0.001)。
    4年後の≧1剤の抗血栓薬投与は糖尿病患者のほうが少なく(83.7% vs 91.0%, p<0.001),aspirin単独投与もわずかに少なかった(53.3% vs 57.9%)。糖尿病患者で投与の多かった治療薬は,ビグアナイド薬(42.3%),SU薬(40.2%),インスリン(31.2%)。
    CV死,非致死的心筋梗塞(MI),非致死的脳卒中の複合エンドポイントのリスクは糖尿病患者のほうが有意に大きく(16.5% vs 13.1%*:調整ハザード比[HR]1.27;95%信頼区間[CI]1.19~1.35),CV死(8.9% vs 6.0%*:1.38;1.26~1.52),非致死的MI(4.4% vs 3.2%*)も同様であったが,非致死的脳卒中に有意差はなかった(5.7% vs 5.3%)。全死亡率は糖尿病患者のほうが有意に高かった(14.3% vs 9.9%*)。
    また,糖尿病患者は心不全による入院リスクが高く(9.4% vs 5.9%:調整オッズ比[OR]1.33;95%CI 1.18~1.50),心不全合併はCV死(調整HR 2.45*;2.17~2.77),心不全による入院(調整OR 4.72*;4.22~5.29)とそれぞれ独立して関連した。さらに,アテローム血栓症合併(13,673例)は危険因子保有のみの糖尿病例(6,026例)にくらべCVリスクが有意に高かった(複合エンドポイント:19.5% vs 9.5%*,さらに虚血による入院を追加:33.0% vs 13.8%*,全死亡:16.4.% vs 8.7%*,CV死:10.5% vs 4.5%*)。
    糖尿病患者の心不全入院は,北米にくらべ東欧,西欧は有意に高かったが,日本は有意に低かった(OR 0.44*)。* p<0.001(Cavender MA et al on behalf of the REACH registry investigators: Impact of diabetes mellitus on hospitalization for heart failure, cardiovascular events, and death: outcomes at 4 years from the reduction of atherothrombosis for continued health (REACH) registry. Circulation. 2015; 132: 923-31.)。 PubMed
  • 高血圧合併アテローム性動脈硬化症における治療抵抗性高血圧-有病率12.7%,4年後の心血管転帰は不良。
    高血圧を有する無症候性/症候性アテローム性動脈硬化症患者53,530例において,ベースライン時の治療抵抗性高血圧(利尿薬を含む降圧薬≧3剤投与下で≧140/90mmHg)とその後4年間の一次エンドポイント(心血管[CV]死+心筋梗塞[MI]+脳卒中の複合エンドポイント)の関係を評価した結果:治療抵抗性高血圧の有病率は12.7%(平均4.7剤投与;3剤投与6.2%,4剤4.6%,≧5剤1.9%)。使用薬剤はACE阻害薬63.3%,ARB 33.1%,ACE阻害薬/ARB 90.1%,β遮断薬67.0%,Ca拮抗薬50.8%,硝酸薬35.6%。
    治療抵抗性高血圧例はそうでない高血圧例にくらべ一次エンドポイントのリスクが有意に高かった(18.9% vs 14.2%:調整後ハザード比1.11;95%信頼区間1.02~1.20, p=0.017)。これは非致死的脳卒中の増加によるところが大きく(6.9% vs 5.3%:1.26;1.10~1.45;p=0.0008),CV死(9.8% vs 6.9%),非致死的MI(4.6% vs 3.7%),致死的脳卒中(1.8% vs 1.2%)には差がなかった。また,うっ血性心不全による入院も多かった(12.6% vs 6.2%, p<0.0001)。一次エンドポイントのリスクは服用降圧剤数が多いほど高かった(≧5剤 vs ≦3剤:1.21;1.02~1.44, p=0.03)(Kumbhani DJ et al for the REACH Registry Investigators: Resistant hypertension: a frequent and ominous finding among hypertensive patients with atherothrombosis. Eur Heart J. 2013; 34: 1204-14.)。 PubMed
  • CAD患者における脳卒中・TIA既往-CVDリスクの上昇と独立して関連。特にDAPT例と発症から1年以内は出血性脳卒中リスクが上昇。
    26,389例の冠動脈疾患(CAD)患者(脳卒中・TIA既往例4,460例[16.9%]):既往例は非既往例にくらべ,高齢で女性,既往(糖尿病,高血圧,心房細動,心不全,末梢血管疾患など),2剤併用抗血小板薬治療(DAPT)例,抗凝固薬の服用などが有意に多かった。さらにREACHリスクスコアリングによるCVD再発,血管イベントリスクも高かった。
    脳卒中(2,969例),TIA(1,491例)既往例を4年追跡した結果:非既往例にくらべてCVD(心血管死,心筋梗塞[MI],脳卒中)再発リスクが有意に高く(24.9% vs 13.3%:調整ハザード比1.52;95%信頼区間1.40~1.65, p<0.001),特に非致死的脳梗塞(9.6% vs 2.5%:3.06;2.62~3.57, p<0.001),非致死的出血性脳卒中(0.6% vs 0.3%:1.76;1.00~3.08, p=0.05)のリスクが高かった。
    全死亡は17.8% vs 11.2%(1.16;1.06~1.28, p<0.001),MIは8.8% vs 6.0%(1.17;1.03~1.35, p<0.001)で,両リスクは,脳卒中・TIAの発症から1年以内,1年以上で差はなく同等であった。
    既往例は非既往例にくらべ出血リスクが高かった(3.5% vs 2.5%, p=0.001)。TIA例を除外した結果,非致死的出血性脳卒中の調整ハザード比は1.88(1.00~3.54, p=0.051)で,TIAのみの解析では有意なリスク上昇はみられなかった(1.49:0.58~3.80, p=0.40)。
    非致死的出血性脳卒中リスク増大は脳卒中・TIAの発症から1年以内(3.03;1.51~6.08)に限られ,特にDAPT例で高かった(5.21;1.24~21.90)(Ducrocq G et al: A history of stroke/transient ischemic attack indicates high risks of cardiovascular event and hemorrhagic stroke in patients with coronary artery disease. Circulation. 2013; 127: 730-8.)。 PubMed
  • 冠動脈疾患,危険因子保有患者においてβ遮断薬と心血管リスク低下との関連はみられず。
    [1] 心筋梗塞(MI)既往(14,043例),[2] MI非発症の冠動脈疾患(CAD)患者(12,012例),[3] CADの危険因子保有のみ例(18,653例)別にβ遮断薬と心血管複合イベント(心血管死+非致死的MI+非致死的脳卒中)との関連を検証。propensity score matching法で解析した21,860例([1]:,[2]:7,198例,[3]:7,904例)の結果(最終追跡データは2009年4月,追跡期間中央値44か月):[1] 心血管複合エンドポイント6,758例は489例(16.9%) vs 532例(18.6%):β遮断薬使用例の非使用例と比べたハザード比0.90;95%信頼区間0.79~1.03(p=0.14)。
    [2] 391例(12.9%) vs 405例(13.6%):0.92;0.79~1.08(p=0.31)。
    [3] 467例(14.2%) vs 403例(12.1%):1.18;1.02~1.36(p=0.02)
    (Bangalore S et al for the REACH Registry Investigators: β-Blocker use and clinical outcomes in stable outpatients with and without coronary artery disease. JAMA. 2012; 308: 1340-9.) PubMed
  • アテローム性動脈硬化を合併した2型糖尿病患者において,ビグアナイド系薬剤metformin投与例は非投与例に比べ死亡率が低かった。
    metforminの心血管疾患2次予防投与のリスクとベネフィットを評価するため,REACH登録例のうち糖尿病を合併した19,691例の2年後の死亡率がmetformin投与例(7,457例[38%]),非投与例(12,234例)で違いがあるかを検討:
    ・患者背景;metformin投与例は非投与例より若く(平均年齢67.1歳 vs 69.2歳*),過体重,肥満が多く(79.2% vs 72.4%*),血糖コントロールが不良(空腹時血糖値138 vs 131mg/dL*),腎機能が低下し(76.0 vs 78.3mL/分/1.73m²;p=0.003),総コレステロール値がやや低く(180 vs 184mg/dL;p=0.02),トリグリセライドが高く(157 vs 145mg/dL*),高血圧が多かった(87.7% vs 86.6%;p=0.03)。全体で投与例のほうが心血管リスクが低く,抗血小板薬(85.0% vs 82.3%*),スタチン(75.2% vs 68.5%*),ACE阻害薬(54.3% vs 48.5%*)の投与率が高かった。*p<0.001
    平均追跡期間は投与例;20.8か月,非投与例;20.9か月。
    ・死亡は1,270例(6.4%),心血管死は823例(4.2%)。
    metformin投与例の死亡率は6.3%,非投与例は9.8%:調整ハザード比0.76;95%信頼区間0.65~0.89(p<0.001)。
    同例は心血管死(0.79;0.65~0.96, p=0.02),死亡,心筋梗塞,脳卒中(0.88;0.79~0.99, p=0.04)のリスクも低下した。
    ・metformin投与例の非投与例に比べた死亡リスクの低下は,サブグループ(うっ血性心不全既往:0.69;0.54~0.90, p=0.006,>65歳:0.77;0.62~0.95, p=0.02,eGFR 30~60mL/分/1.73m²:0.64;0.48~0.86, p=0.003)でも一貫していた(Roussel R et al for the reduction of atherothrombosis for continued health (REACH) registry investigators: Metformin use and mortality among patients with diabetes and atherothrombosis. Arch Intern Med. 2010; 170: 1892-9.)。 PubMed
  • 頸動脈ステント(CAS)と頸動脈内膜切除術(CEA)の長期転帰は同等。
    北米,ラテンアメリカ,欧州,中東,オーストララシアのCAS(1,025例)またはCEA(2,387例)施行例3,412例(70%は無症候性頸動脈狭窄)を2年間前向きに追跡した結果:18か月間の追跡完遂率83%。propensity score matching法による各群836例の解析で,CAS群の2年後の転帰はCEA群と同等であった。
    一次エンドポイント(死亡,脳卒中):Kaplan-Meier推定,CAS群9.9% vs CEA群8.9%:調整ハザード比0.85;95%信頼区間0.57~1.26(p=0.41)。
    二次エンドポイント(脳卒中,一過性脳虚血発作):5.5% vs 5.1%:1.20;0.73~1.96(p=0.47)。
    三次エンドポイント(死亡,心筋梗塞[MI],脳卒中の複合エンドポイント):0.72;0.51~1.01(p=0.06)。
    各構成エンドポイントは,死亡:0.63;0.40~1.00(p=0.051),脳卒中:1.48;0.79~2.80(p=0.22),MI:0.51;0.29~0.91(p=0.02)(Bangalore S et al for the REACH Registry investigators: Late outcomes after carotid artery stenting versus carotid endarterectomy: insights from a propensity-matched analysis of the Reduction of Atherothrombosis for Continued Health (REACH) Registry. Circulation. 2010; 122: 1091-100.)。 PubMed
  • アテローム性動脈硬化患者において虚血性イベントをもっとも強く予測する因子は, polyvascular disease(ポリバスキュラーディジーズ)*,次いで登録前1年間の虚血性イベント,糖尿病。 * 冠,末梢,脳の3つの動脈床のうち複数にアテローム血栓症を認める場合。
    ベースラインデータのある45,227例の4年追跡結果から,虚血性イベント(心血管死,心筋梗塞[MI],脳卒中)予測因子を特定。
    1イベント以上発症したのは5,481例:心血管死2,315例,MI 1,228例,脳卒中1,898例,同日のMI+脳卒中40例。
    虚血性イベント発生率がもっとも高かったのは,虚血性イベント既往のアテローム血栓症(21,890例:CAD 70.8%;CVD 45.9%;PAD 9.6%)で18.3%(95%信頼区間17.4~19.1%),次いで虚血性イベント既往のない安定アテローム血栓症(15,264例:71.4%;18.1%;24.7%)が12.2%(11.4~12.9%),危険因子のみを有する患者(8,073例)9.1%(8.3~9.9%)の順であった(p<0.001)。多変量解析の結果,虚血性イベントのリスクと有意に関連した因子は,ポリバスキュラーディジーズ:ハザード比1.99(95%信頼区間1.78~2.24),登録前1年間の虚血性イベント:1.71(1.57~1.85),糖尿病:1.44(1.36~1.53)であった。いずれもp<0.001。
    日本はその他の国と比べ有意にリスクが低かった(0.70;0.63~0.77, p<0.001)。
    なお4年後の治療時状況は,抗血栓薬≧1剤投与(全体[31,195例]の88.0%,虚血性イベント既往例の93.2%,虚血性イベント非既往例の91.2%,危険因子のみ例の67.5%),aspirin単独投与(56.0%, 56.6%, 57.2%, 51.8%),その他の血小板薬単独投与(13.2%, 14.6%, 14.6%, 6.4%),aspirin+その他の血小板薬(11.2%, 13.4%, 12.0%, 3.7%),経口抗凝固薬(12.6%, 14.5%, 12.4%, 7.5%),糖尿病治療薬≧1剤投与の糖尿病(87.0%, 83.8%, 86.0%, 91.7%),スタチン系薬剤(72.6%, 72.6%, 72.9%, 72.2%),ACE阻害薬あるいはARB(69.4%, 69.8%, 65.4%, 76.0%),β遮断薬(51.4%, 56.4%, 53.0%, 34.6%),Ca拮抗薬(37.9%, 35.6%, 39.0%, 41.8%),利尿薬(43.9%, 42.0%, 42.8%, 51.4%)(Bhatt DL et al for the REACH Registry investigators: Comparative determinants of 4-year cardiovascular event rates in stable outpatients at risk of or with atherothrombosis. JAMA. 2010; 304: 1350-7.)。 PubMed
  • 症候性のアテローム血栓性の血管疾患外来患者は治療にもかかわらず再発率,再入院率が高い
    ベースライン時に症候性だった5万5,499例を3年間追跡した3万9,675例,データ入手が可能だったのは3万2,247例:抗トロンビン薬投与92%,降圧薬91%,脂質低下薬76%。イベント率(心筋梗塞[MI],脳卒中,血管死):1年後4.2%,3年後11.0%。症候性患者は危険因子を保有しているだけの患者に比べ有意に高い:1年後;4.7% vs 2.3%,3年後;12.0% vs 6.0%(いずれもp<0.001)。再入院を加えると症候性患者の1年後の発生率は14.4%,3年後は28.4%。3年後のMI・脳卒中・血管死以外の血管イベントによる再入院は,全体で21.3%,PAD例33.6%,CAD例23.0%。3年後の再入院を加えたイベント率は1血管床疾患25.5% vs 多血管床疾患40.5%(p<0.001)(Alberts MJ et al for the REduction of Atherothrombosis for Continued Health (REACH) Registry investigators: Three-year follow-up and event rates in the international reduction of atherothrombosis for continued health registry. Eur Heart J. 2009; 30: 2318-26.)。 PubMed
  • CVD(18,992例):脳梗塞53.7%,TIA 27.7%,両方18.5%。
    さらに1つ以上の血管床に症候性のアテローム血栓症を有するもの40%,CAD併発例36%,PAD併発例10%,CAD,PAD併発例6%。抗血小板薬投与81.7%,経口抗凝固薬17.3%,脂質低下薬61.2%,高血圧治療薬87.9%。ガイドラインに即した治療率は高いが,目標値達成率は低い(ベースライン時の未治療糖尿病患者は4.5%であるが,血圧上昇例は54.5%)。
    TIAの方が脳梗塞例よりも高リスク:治療高血圧(83.5, 82.0%;p=0.02),BMI≧30kg/m²(26.7, 20.8%;p<0.0001),高コレステロール血症(65.1, 52.1%;p<0.0001),心房細動(14.7%, 11.9%;p<0.0001),頸動脈疾患(42.3%, 29.7%;p<0.0001)(Röther J et al for the REACH Registry investigators: Risk factor profile and management of cerebrovascular patients in the REACH Registry. Cerebrovasc Dis. 2008; 25: 366-74.)。 PubMed
  • 日本のアテローム血栓症の現状:患者背景(5193例・390施設)
    アテローム血栓症の8割以上が症候性で,高血圧の罹患率が最も高い。他の国と比べ肥満度は低いもののCVDが多く,脂質低下薬,糖尿病治療薬の投与率が低い。また,アテローム血栓症の危険因子の治療率,コントロール率も低い。
    平均年齢70.3歳,男性69.4%,糖尿病45.5%,高血圧70.8%,高コレステロール血症46.4%,肥満:NCEP(腹囲:男性≧102cm,女性≧88cm)に拠る10.6%;日本のガイドライン(腹囲:男性≧85cm,女性≧90cm)42.1%,過体重30.4%,喫煙歴45.4%,喫煙中16.9%
    CAD:34.9%, CVD:30.2%, PAD:6.8%。
    CAD+CVD:6.5%, CAD+PAD:2.8%, CVD+PAD:1.7%, CAD+CVD+PAD:0.8%。
    症候性アテローム血栓症は4345例(83.7%)。
    無症候性(危険因子の保有のみ)は848例(16.3%):症候性に比べ,女性の方が多く,糖尿病(85.1%),高コレステロール血症(63.0%)が多いが,喫煙歴が少なかった。
    ・治療状況
    [高血圧,血圧上昇例]
    降圧薬治療79.6%:Ca拮抗薬55.9%;ARB 32.0%;β遮断薬18.8%;ACE阻害薬18.1%;利尿薬12.8%。
    抗血小板治療:抗血小板薬74.0%:aspirin 54.7%;その他の薬剤31.9%;2剤併用12.5%。抗凝固療法12.4%。
    [糖尿病,高血糖]
    糖尿病治療薬投与37.7%:SU薬21.3%;インスリン11.1%;ビグアナイド系薬剤6.1%。硝酸薬27.3%。
    症候性症例の治療率(30.6%)は無症候性(81.5%)より低い。血糖コントロールも症候性が低い(40% vs 72%)。
    脂質低下治療:脂質低下薬50.8%:スタチン系薬剤44.1%;その他の薬剤9.8%。無症候性症例,CAD既往は投与率が高いが,CVD,PADは低い。
    PAD治療(プロスタグランジン製剤,argatroban, cilostazol)5.3%
    (Yamazaki T et al for the REACH Registry investigators: Prevalence, awareness and treatment of cardiovascular risk factors in patients at high risk of atherothrombosis in Japan. Circ J. 2007; 71: 995-1003.)。 PubMed
  • 1年後の外来患者の心血管イベント結果:2006年7月時点でデータを入手できたものは64,977例(95.22%)。心血管死,心筋梗塞,脳卒中は4.24%。アテローム血栓症患者は4.69% vs マルチプルリスクファクター例は2.15%。CADでは4.52%,CVDは6.47%,PADは5.35%。アテローム血栓性イベントによる入院を加えると,CADでは15.20%,CVDは14.53%,PADは21.14%。危険因子のみの症例は5.31%,危険因子+1か所のアテローム血栓症は12.58%,危険因子+2か所のアテローム血栓症は21.14%,危険因子+3か所のアテローム血栓症は26.27%と,アテローム血栓症の部位の数に伴いイベントリスクは上昇した(p<0.001 for trend)(Steg PG et al for the REACH Registry investigators: One-year cardiovascular event rates in outpatients with atherothrombosis. JAMA. 2007; 297: 1197-206.)。 PubMed
  • 脳梗塞,一過性脳虚血発作18,467例において,頸動脈内膜除去術既往症例は1474例。多変量解析によると,本症例は抗血小板薬(オッズ比1.6;95%信頼区間1.3~1.9, p<0.0001),スタチン系薬剤(1.8;1.6~2.0, p<0.0001)の投与および空腹時総コレステロール<200mg/dL(1.3;1.2~1.5, p<0.0001)が有意に増加した。糖尿病患者において内膜除去術は空腹時血糖値の低下と関連した。一方,血圧,血糖値との関連は有意ではなかった(Touze E et al for the REACH Registry investigators: Impact of carotid endarterectomy on medical secondary prevention after a stroke or a transient ischemic attack: results from the Reduction of Atherothrombosis for Continued Health (REACH) registry. Stroke. 2006; 37: 2880-5.)。 PubMed
  • Bhatt DL et al for the REACH registry investigators: International prevalence, recognition, and treatment of cardiovascular risk factors in outpatients with atherothrombosis. JAMA. 2006; 295: 180-9. PubMed

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収載年月2006.03
更新年月2016.03