循環器トライアルデータベース

A-HeFT
African-American Heart Failure Trial

目的 黒人の心不全進展例(NYHA心機能分類III度以上)において,標準治療への硝酸薬isosorbide dinitrateおよび血管拡張薬hydralazineの上乗せ効果を検討する。
一次エンドポイントは18か月後の全死亡,心不全による初回入院,6か月後のQOLスコアから成る複合スコア*。
コメント V-HeFT試験でISDN+hydralazineの効果はアフリカ系アメリカ人(黒人)の方が大きいことが示唆されており,黒人ではNOのbioavailabilityが低いためと考えられていた。今回のA-HeFT試験の結果,ACE阻害薬およびβ遮断薬が投与されていてもISDN+hydralazineが大きな予後改善効果をもたらしたが,そのメカニズムは,(1)ISDNが内皮機能(NO)を改善し,(2)hydralazineがNADH/ NADPH oxidaseを阻害することにより酸化ストレスを抑制したことが,予後改善効果につながったものと考えられる。酸化ストレスの抑制が予後の改善を示した試験として注目される。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(米国の161施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は10か月。ランダム化開始は2001年6月12日。
対象患者 1050例。18歳以上;アフリカ系黒人;3か月以上のNYHA III~IV度の心不全;心不全の標準治療を受けているもの(3か月以上のACE阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬,β遮断薬投与例,digoxin,spironolactone,利尿薬);6か月以内の左室機能不全(安静時EF<35%あるいは心エコーによる左室拡張末期径が>2.9cm/体表面積[m²]または拡張末期径>6.5cmで安静時EF<45%);両群とも心不全治療薬の安定用量が投与され,2週間以内の体重変化が2.5%未満のもの。
除外基準:3か月以内の急性心筋梗塞,急性冠症候群,脳卒中;3か月以内の心臓手術あるいはPCI,または試験期間中にこれらの手技が必要になると思われるもの;臨床的に重大な弁膜症,肥大型あるいは拘束型心筋症,心筋炎,治療抵抗性の高血圧など。
■患者背景:平均年齢(isosorbide dinitrate+hydralazine群56.7歳,プラセボ群56.9歳),男性(55.8%, 63.9%;p=0.008),体重(92.5kg, 94.1kg),心不全の原疾患:虚血性心疾患(23.4%, 22.7%),高血圧(40.0%, 37.4%),突発性(24.5%, 27.6%),NYHA III度(96.7%, 94.7%),糖尿病(44.8%, 37.0%;p=0.01),腎不全(16.2%, 18.2%),心房細動(15.0%, 18.0%),ICD植込み(16.6%, 17.3%),EF(23.9%, 24.2%),血圧(127.2/77.6mmHg, 125.3/75.6mmHg)。治療状況:利尿薬(88.0%, 91.5%),ACE阻害薬(69.4%, 69.5%),ARB(17.2%, 16.5%),β遮断薬(74.1%, 73.5%),carvedilol(55.2%, 55.8%),digoxin(58.5%, 60.7%),spironolactone(40.2%, 37.6%)。
治療法 isosorbide dinitrate+hydralazine群(ISDN/HYD群518例):isosorbide dinitrate 20mg+hydralazine 37.5mgを含有する錠剤1錠×3回/日で投与を開始し,2錠×3回/日(総用量isosorbide dinitrate 120mg+hydralazine 225mg)まで増量,プラセボ群(532例)。
*一次エンドポイント(複合スコア)のスコアリング法:死亡のスコアは-3,生存 0,心不全による最初の入院-1,入院なし 0,6か月後のQOL:≧10単位の改善+2;5~9単位の改善+1;5単位未満の変化 0;5~9単位の悪化-1,≧10単位の悪化-2。可能な複合スコアは-6~2ということになる。
結果 試験はプラセボ群でISDN/HYD群に比べ死亡率が有意に高かったため(54例[10.2%] vs 32例[6.2%],p=0.02),2004年7月19日に早期終了した。
目標投与量達成率はISDN/HYD群68.0%,プラセボ群88.9%(p<0.001)で,平均投与錠剤数はそれぞれ3.8錠/日,4.7錠/日。
一次エンドポイントはISDN/HYD群-0.1スコア,プラセボ群-0.5スコアで実薬群がプラセボ群に比べ有意に良好であった(p=0.01)。また一次エンドポイントを構成する死亡もプラセボ群に比べ実薬群のハザード比は0.57で相対リスクは43%低下(p=0.01),心不全による初回入院は33%低下(p=0.001),QOLスコアも同群で有意に改善した(p=0.02)。
有害事象はCHFの悪化がISDN/HYD群8.7%,プラセボ群12.8%(p=0.04),CHFの重篤な悪化3.1% vs 7.0%(p=0.005),頭痛47.5% vs 19.2%(p<0.001),めまい29.3% vs 12.3%(p<0.001)。
★結論★黒人のNYHA III以上の心不全患者において,心不全標準治療へのisosorbide dinitrateおよびhydralazineの追加投与は有効で生存率を改善する。
文献
  • [main]
  • Taylor AL et al fo rthe African-American heart failure trial investigators: Combination of isosorbide dinitrate and hydralazine in blacks with heart failure. N Engl J Med. 2004; 351: 2049-57. PubMed
  • [substudy]
  • ISDN/HYD群のイベントを伴わない生存率の有意な改善,心不全による初回入院の有意な抑制効果は早期(治療から50日)からみられ,試験期間中持続した。本効果は年齢,性,血圧,慢性腎不全の既往,糖尿病,心不全の原因,試験開始時の治療にかかわらずみられた:Circulation. 2007; 115: 1747-53. PubMed
  • SBP≦126mmHg(中央値)は重症心不全が多く,死亡,心不全による初回入院の独立した危険因子である。ISDN/HYDはSBP≦126mmHg症例のSBPは降圧せず,相対ベネフィットは>126mmHgと同様:Am Coll Cardiol. 2007; 49: 32-9. PubMed
  • ISDN/HYD群は男女の転帰を改善したが,一次エンドポイントおよびイベントを伴わない生存率も,心不全による初回入院のリスク同様,性差はみられなかった。死亡抑制効果は女性の方がやや高かったが,治療の有意な性差はなかった:Am Coll Cardiol. 2006; 48: 2263-7. PubMed
  • 平均追跡期間12.8か月の費用対効果:ISDN/HYD群はプラセボ群に比べて心不全による入院(1患者当たり0.33回 vs 0.47回,p=0.002),入院日数(6.7日 vs 7.9日,p=0.006)が少なかった。薬剤コストを除いた心不全関連(5997ドル vs 9144ドル,p=0.04),総ヘルスケアコスト(15,384ドル vs 19,728ドル,p=0.03)のいずれもISDN/HYD群が低かった。ISDN/HYD群の薬剤コスト6.38ドル/日を加えても同群のコスト減,転帰の改善はプラセボ群を凌いだ:Circulation. 2005; 112: 3745-53. PubMed

▲pagetop
EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
ご不明の点はお問い合わせください
収載年月2006.07
更新年月2007.06