循環器トライアルデータベース

TAXUS VI

目的 長い複雑病変において,ポリマーベースのpaclitaxel溶出ステントの安全性と有効性を検討する。一次エンドポイントは9か月後の標的血管血行再建術(TVR)。
コメント 薬剤溶出ステント(DES)は単純な新規病変において臨床的有用性のエビデンスを持つが,リアルワールドで用いられている長い複雑病変に対してのエビデンスはない。本研究は,ポリマーベースのpaclitaxel溶出ステントを用いてステントのoverlapが必要なくらいの長い複雑病変に対する二重盲検試験であり,その安全性と臨床的有用性を確立し,日常臨床ですでに行われているDESの使用意義を検証した。ベアメタルステント(BMS)のアキレス腱はステント内再狭窄であり,病変長,複雑病変,血管径,糖尿病の有無が関連する。今回対象として用いたBMS(Express)は血管造影上良好な臨床効果がすでに報告されているが,paclitaxel溶出ステントはTVRをさらに53%有意に低下させた。糖尿病患者では再狭窄率を80%低下させ,ステント内再狭窄を生じた例でも局所のより短い狭窄であるので再PCIが比較的容易である。しかし,9か月後の全有害事象は両ステント群で差はなく,入院時の非Q波心筋梗塞がpaclitaxel溶出ステントで多い傾向にあった。理由としては,ポリマーベースステントはstrutが厚いこと,ポリマーにより局所反応を生じたこと,微少塞栓が形成されたことより,側枝の血流が障害されたことが考えられる。両ステント群でステント内血栓形成例は少ないが,本研究の患者数は少ないので両群の優劣は評価できない。危惧されている冠動脈瘤形成に関してはIVUSを用いたサブ解析の結果を待ちたい。現時点では,DESは3mm未満の血管径,15mm以上の血管長の病変に薦められており,UKでは実際にPCIを受ける症例の77%が相当するといわれている。(星田
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(欧州15か国44施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は9か月。登録期間は2002年5月~12月。
対象患者 446例。18歳以上;心筋虚血の証拠のあるもの;参照血管径が2.5~3.75mmのnativeの1枝に位置する新規病変;狭窄率≧50%;最大ステント長48mmで完全にカバーできる病変;標的病変は一つのみ;非標的血管に位置する非複雑非試験病変への手技成功例。
除外基準:最近発症した急性心筋梗塞(AMI);左室機能低下例;左主幹部病変;入口病変など。
■患者背景:平均年齢(TAXUS群61.8歳,対照群63.4歳),男性(76.3%,76.2%),糖尿病治療例(17.8%,22.0%),高脂血症治療例(70.3%,73.4%),高血圧治療例(57.5%,58.1%),不安定狭心症(24.7%,22.9%),PCI既往(17.9%,20.7%)。血管・病変長背景:平均病変長20.6mm,ステントがカバーする長さ33.4mm,ACC/AHA type C 55.6%,血管径<2.5mmの小血管27.8%。
治療法 paclitaxel溶出ステントTAXUS群(219例),対照群(227例):ベアメタルステント。
aspirin 75mg,clopidogrel 300mgを手技の2時間以上前に投与し,手技後それぞれ75mg/日以上,75mg/日を6か月以上投与。非分画heparinを活性化凝固時間≧250秒を維持するように静注。
結果 overlappingステントが27.8%,非試験ステントによる非標的血管PCI追加施行は23.5%。
9か月後の血管造影転帰(417例;TAXUS群210例,対照群207例):binary再狭窄率(二次エンドポイント)は9.1% vs 32.9%(TAXUS群のリスク低下は72%,p<0.0001)。参照血管径はTAXUS群で手技前2.81mm→手技後2.84mm→ 9か月後2.83mm,対照群2.77mm→ 2.81mm→ 2.74mm,最小血管径は各群0.84mm→ 2.58mm→ 2.20mm(9か月後p<0.0001 vs 対照群),0.87mm→ 2.57mm→ 1.58mm,狭窄率は70.2%→ 8.3%→ 22.2%(9か月後p<0.0001 vs 対照群),68.6%→ 7.7%→ 42.8%,晩期損失はステント内0.39mm vs 0.99mm(p<0.0001),解析セグメント0.24mm vs 0.66mm(p<0.0001),近位edge 0.16mm vs 0.33mm(p=0.0019),遠位edge -0.02mm vs 0.11mm(p=0.0013)。
一次エンドポイントはTAXUS群20例(9.1%),対照群44例(19.4%)とTAXUS群で相対リスクが53%有意に低下した(p=0.0027)。
二次エンドポイントである標的病変血行再建術(TLR)も15例(6.8%) vs 43例(18.9%)と対照群に比べTAXUS群で64%有意に低下した(p=0.0001)。TAXUS群のTLRへの有効性は次の危険因子とは独立していた;小血管5% vs 29.7%(相対リスク低下[RR]83%,p=0.0003);>26mmの長い病変長4.4% vs 26.3%(RR 83%,p=0.0097);糖尿病2.6% vs 22.0%(RR 88%,p=0.0103)。
ステント血栓はTAXUS群1例,対照群3例で同様であった。clopidogrelの6か月投与中止後3か月間のステント血栓は両群で発生しなかった。全有害事象(死亡,AMI,TVR)は16.4% vs 22.5%で両群間に有意差は認められなかった(p=0.12)。
★結論★長い複雑病変において,TAXUS Moderate Releaseステントは安全で有効である。
文献
  • [main]
  • Dawkins KD et al on behalf of the TAXUS VI investigators: Clinical efficacy of polymer-based paclitaxel-eluting stents in the treatment of complex, long coronary artery lesions from a multicenter, randomized trial: support for the use of drug-eluting stents in contemporary clinical practice. Circulation. 2005; 112: 3306-13. PubMed

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収載年月2006.02