循環器トライアルデータベース

ONTARGET
Ongoing Telmisartan Alone and in Combination with Ramipril Global Endpoint Trial

目的 血圧値が正常域内の高リスク患者において,AII受容体拮抗薬(ARB)telmisartanの有効性を次の2試験で検討する。
ONTARGET試験:telmisartanがACE阻害薬ramiprilと同程度に有効であるか(非劣性試験),非劣性が認められた場合,telmisartanとramiprilの併用がramipril単剤投与よりも有効であるかを検討。
TRANSCEND試験:ACE阻害薬に忍容性のない患者において,telmisartanがプラセボよりも優れているかを検討。

一次エンドポイントは心血管死,非致死的心筋梗塞(MI),非致死的脳卒中,うっ血性心不全による入院の複合。
二次エンドポイントは新規うっ血性心不全,血行再建術,新規糖尿病,認知症/認知障害,腎症,新規心房細動。
コメント ■コメント 堀 正二
■コメント 桑島 巌

ONTARGET試験は(1)ACE阻害薬(ramipril)とARB(telmisartan)の比較(ARBのACE阻害薬に対する非劣性),(2)ARBとACE阻害薬の併用療法のACE阻害薬・単独治療に対する優位性を検討した文字通りの大規模試験である。
心血管イベントの発症においてramiprilとtelmisartanの有効性に差がみられなかったが,予想された如く,咳などの点で忍容性はtelmisartanで若干有効であったので,ACE阻害薬の代替薬としての位置付けは確立されたものと考えられる。
心筋梗塞の発症の抑制がARBよりもACE阻害薬の方が優れているかどうかについては,今回の成績では両剤に差がみられなかった。
従来,心筋梗塞の発症抑制効果についてARBはACE阻害薬より劣っているのではないかとの危惧がもたれていた。これは,急性心筋梗塞後のハイリスク患者を対象にしてOPTIMAAL 試験で,losartan群の死亡率がcaptopril群よりもやや高い傾向がみられたことも主な一因となっているが,今回の成績はVALIANT試験(心不全または左室機能低下を伴う急性心筋梗塞を対象としたcaptoprilとvalsartanの比較試験)と似て,ACE 阻害薬とARBの間に心筋梗塞発症に有意差を認めなかった。したがって,ARBがACE阻害薬に劣るという危惧が一応否定されたと考えてもよい。
脳卒中については,降圧の大きい併用群がその抑制効果が大きいと予想されたが,今回の試験は,血圧正常域の患者を対象にしているため,降圧効果の差がアウトカムに反映されなかったものと考えられる。
併用療法については,一次エンドポイント(イベント抑制)に効果はなく,低血圧や失神が多い点で,ACE阻害薬とARBの併用の有用性は否定された。Val-HeFTCHARM試験では併用により心不全の入院が抑制されたが,本試験は心不全患者を対象としていないため疾患対象により併用療法の効果は異なる可能性があると考えられる。ただ,本試験で,併用群で腎機能低下が有意に多く認められたのは,高用量の併用療法による糸球体内圧の過度の低下が原因になっている可能性があるものと考えられる。いずれにしてもVALIANT試験の結果も合わせて併用療法の位置付けは後退したといえよう。

中間報告へのコメント
糖尿病がうっ血性心不全のリスク因子であることは確立しているが,糖尿病の有無にかかわらず空腹時血糖値が心不全の独立したリスク因子であることが確認された。このメカニズムには,(1) 高血糖に伴うAGE(糖化蛋白)や酸化ストレスが心筋障害や心筋線維化を促し,動脈硬化を促進する,(2) 高インスリン血症が心肥大・リモデリングを促進する,(3) 高血糖による浸透圧利尿が促進し,交感神経が賦活化される,などの要因が関与していると考えられるが,高血糖は,冠動脈疾患のリスク因子でもあり,今後ますます注目されるようになるだろう。収縮不全と拡張不全のどちらに寄与が大きいかも興味ある課題である。(


ハイリスク症例におけるARBの真の位置づけはTRANSCENDの結果を待つべき
一次エンドポイントの同等性はある程度予想された。しかし,大方の予想と異なったことは,(1) ACE阻害薬に対するARBの上乗せ併用効果は全く認められず,副作用を増強させるだけであったこと,そして(2) 心筋梗塞予防効果においてARBはACE阻害薬に劣らなかったことである。
これまでACE阻害薬とARBの比較試験はELITE-IIOPTIMAALVALIANTがあるが,いずれもARBがACE阻害薬より優れるという結果を示していない。ONTARGETはこれらのトライアルの結果を考慮して,ARBの心血管保護効果はACE阻害薬に劣らない,という控えめな仮説を証明するために企画,実行された試験である。これまでの3つのトライアルではcaptoprilという最も古典的で,かつ持続性も短いACE阻害薬を比較対照に選んだことが問題となっていたが,ONTARGETはACE阻害薬の中でもHOPE試験で“降圧を超えた心保護効果”を示したramiprilと PPAR-γによるインスリン抵抗性改善作用も期待され,かつ降圧効果の持続性に優れるtelmisartanとの比較であり,その結果はおおいに注目された。
対象が心筋梗塞既往約50%を含む非常に高リスク症例であることから,本試験の結果から,ARBは心筋梗塞を引き起こすといった懸念は一応は払拭されたと考えられるが,この結果がARBのclass effectか,あるいはほかのARBではどうなのかという問題は残る。
しかし本試験の結果から,ハイリスク症例にARBが不可欠という評価は,まもなく発表されるであろうtelmisartanとプラセボとの比較試験 TRANSCENDの結果をみてからにすべきである。なぜなら最近の冠動脈疾患ハイリスクに対してACE阻害薬とプラセボを比較したPEACEで,強力なACE阻害薬であるperindoprilでさえもプラセボに勝る心血管合併症予防効果を示していないからである。またCa拮抗薬でも安定狭心症に対する nifedipineの長期的有用性を検討したACTIONでプラセボとの間に一次エンドポイント発生に有意な差をみとめなかった。
ACE阻害薬の降圧を超えた心保護効果のはしりとなったHOPEEUROPAなどの時代とは格段に抗血小板薬,スタチン薬などの使用率が高くなってきており,イベント自体が発症しにくくなっていることから,もはや高血圧を有さない症例ではハイリスクとはいえどもACE阻害薬,ARBの“降圧を超えた心保護効果”を示すことはできなくなっている可能性も念頭に置かなければいけない。いずれにしろTRANSCENDの結果によって本試験ONTARGETの実地診療における位置づけに対する評価が異なってくる可能性は否定できない。

本試験の最大の目標であった併用の有効性が全く認められなかった理由は不明であるが,やはり抗血小板薬,スタチン薬が処方されており,かつ十分な降圧が得られている段階ではもはや更なる心保護効果は得られにくく,副作用が増強するばかりなのかもしれない。とくに併用によって腎機能が悪化したという結果は注目すべきであり,今後我が国のガイドラインにも注意項目あるいは禁忌事項として盛り込む必要があろう。(桑島)
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照(TRANSCEND試験),二重盲検,多施設(40か国733施設),intention-to-treat解析。
期間 ONTARGET試験:追跡期間は56か月(中央値)。
TRANSCEND試験:登録期間は2004年5月終了。
対象患者 ONTARGET試験(25,620例):プロトコール(Am Heart J. 2004; 148: 52-61)
55歳以上。次のいずれかを有するもの。冠動脈疾患;MI既往(合併症のないMI後から>2日);多枝疾患の証拠がある>30日前の安定/不安定狭心症;>30日前の多枝疾患PTCA;>4年前のCABGあるいは施術後の狭心症再発,末梢血管疾患;下肢バイパス術あるいは血管形成術の既往;四肢あるいは脚部切断;足関節 対 上腕血圧比≦0.80の間欠性跛行;血管造影あるいは非侵襲的検査により立証された著明な(>50%)末梢血管狭窄,脳血管疾患;脳卒中既往;7日~1年未満の一過性脳虚血発作(TIA),糖尿病;終末器官障害を伴う高リスクの糖尿病。
除外基準:ACE阻害薬またはARBの継続投与が不可能;ACE阻害薬またはARBの過敏性あるいは非忍容;症候性のうっ血性心不全;血行動態的に著明な弁膜あるいは流出路閉塞;3か月以内の心手術あるいはPTCAの予定,コントロール不良の高血圧(>160/100mmHgなど),顕著な腎血管疾患,蛋白尿(TRANSCEND試験のみ),肝機能障害など。
■患者背景:平均年齢(telmisartan群66.4歳,ramipril群66.4歳,併用群66.5歳),民族:欧州(72.7%, 73.1%, 73.2%);アジア(13.7%, 13.8%, 13.7%),BMI(28.1kg/m², 28.1kg/m², 28.0kg/m²),女性(26.3%, 27.2%, 26.5%),総コレステロール(189.5mg/dL, 189.5mg/dL, 193.4mg/dL),LDL-C(3群とも112.1mg/dL),HDL-C(3群とも50.3mg/dL),血糖(3群とも120.7mg/dL)。既往:冠動脈疾患(74.5%, 74.4%, 74.7%),心筋梗塞(49.3%, 48.3%, 49.3%),狭心症:安定狭心症(34.6%, 35.4%, 34.8%);不安定(15.2%, 14.7%, 14.9%),脳卒中/一過性脳虚血発作(20.6%, 21.0%, 20.9%),高血圧(68.6%, 69.0%, 68.5%),糖尿病(38.0%, 36.7%, 37.9%),CABG(22.5%, 21.7%, 22.3%),PTCA(29.0%, 29.5%, 28.6%)。
収縮期血圧>140mmHgは13,386例,ベースライン時に尿解析をした21,074例のうち微量アルブミン尿は13.2%, 13.1%, 13.3%,喫煙例(喫煙歴)は12.4%(52.3%), 12.4%(52.0%), 12.9%(51.1%)。
治療法 ONTARGET試験
単盲検による3週間のrun-in期間後,次の3群にランダム化。
telmisartan 80mg/日群(8,542例),ramipril 10mg群(8,576例):5mg/日で投与を開始し,2週間後に10mgに増量,併用群(8,502例):telmisartan 80mg/日+ramipril 10mg/日。
TRANSCEND試験
telmisartan 80mg/日群,プラセボ群にランダム化。
結果 ONTARGET試験
[忍容性]
telmisartan群:1年後(ARB投与率93.9%,ACE阻害薬投与2.6%)→ 2年後(91.2%, 4.2%)→ 3年後(89.3%, 4.6%)→ 4年後(87.7%, 5.0%)→試験終了時(85.6%, 6.4%)。2年後の80mg/日(full dose)投与率は88.6%。
ramipril群:1年後(ACE阻害薬投与率92.2%,ARB 1.0%)→ 2年後(89.4%, 1.8%)→ 3年後(87.5%, 2.0%)→ 4年後(86.6%, 2.4%)→(84.7%, 3.3%)。2年後の10mg/日(full dose)投与率は81.7%。
併用群:併用;1年後85.5%→ 2年後81.5%→ 3年後78.7%→ 4年後76.8%→終了時73.6%,ACE阻害薬のみ;2.8%→ 4.2%→ 4.5%→ 4.7%→ 6.0%,ARBのみ3.5%→ 4.8%→ 5.4%→ 5.7%→ 6.4%)。2年後のramipril full dose投与率は75.3%,telmisartanは84.3%。
投与中止例(中止後,再投与を奨励したため1患者で複数回の中止有り):ramipril群2,099件(24.5%),telmisartan群1,962例(23.0%),併用群:2,495例(29.3%)。
中止理由:症候性低血圧:ramipril群149例 vs telmisartan群229例(ramipril群と比較したtelmisartan群の相対リスク[RR] 1.54, P<0.001),失神:15例 vs 19例(RR 1.27, p=0.49),咳:360例 vs 93例(RR 0.26, p<0.001),下痢:12例 vs 19例(RR 1.59, p=0.20),血管性浮腫:25例 vs 10例(RR 0.40, p=0.01),腎機能障害:60例 vs 68例(RR 1.14, p=0.46)。
ramipril群 vs 併用群(2099例[24%] vs 2495例[29%]:ramipril群と比較した併用群のRRは1.20(p<0.001)。
症候性低血圧:149例 vs 406例(RR 2.75, p<0.001),失神:15例 vs 29例(RR 1.95, p=0.03),咳:360例 vs 392例(RR 1.10, P=0.19),下痢:12例 vs 39例(RR 3.28, p<0.001),血管性浮腫:25例 vs 18例(RR 0.73, p=0.300),腎機能障害:60例 vs 94例(RR 1.58, p<0.001)。
[治療状況]
スタチン系薬剤:試験開始時61.6%→終了時70.6%,抗血小板療法:80.9%→ 77.5%,β遮断薬:56.9%→ 56.9%,利尿薬:28.0%→ 32.5%。

[降圧,カリウム,クレアチニン]
・run-in前141.8/82.1mmHg→ 6週間後ramipril群-6.4/-4.3mmHg,telmisartan群-7.4/-5.0mmHg,併用群-9.8/-6.3mmHg,試験期間中,ramipril群に比べtelmisartan群(-0.9/-0.6mmHg),併用群(-2.4/-1.4mmHg)の方が降圧度がわずかに大きかった。
・カリウム値>5.5mmol/Lはramipril群(283例)とtelmisartan群(287例)は同様であったが,併用群(480例)で有意に増加した(p<0.001 vs ramipril群)。
・クレアチニン値の倍増は各群159例,170例,180例で群間差はなかった。

[一次エンドポイント,死亡]
・ramipril群 vs telmisartan群
ramipril群:1412例(16.5%),telmisartan群:1423例(16.7%):RR 1.01(95%信頼区間0.94~1.09, p=0.004 for non-inferiority)。
複合エンドポイントのいずれのエンドポイントも同様の結果であった。
死亡は1014例(11.8%) vs 989例(11.6%):0.98(0.90~1.07)。
per-protocol解析でのramipril群と比べたtelmisartan群のRRは1.00(0.92~1.09, p=0.006 for non-inferiority)。
・ramipril群 vs 併用群
抑制効果において併用群はramipril単独群を凌げず(1412例 vs 1386例[16.3%]:RR 0.99;0.92~1.07),死亡リスクが上昇(1014例[11.8%] vs 1065例[12.5%]:RR 1.07;0.98~1.16, p=NS)。
per-protocol解析でのramipril群と比べた併用群のRRは0.98(0.90~1.07)。

[主な二次エンドポイント,その他のエンドポイント]
心血管死,心筋梗塞,脳卒中(HOPE試験の一次エンドポイント)
・ramipril群 vs telmisartan群
1210例(14.1%)vs 1190例(13.9%):RR 0.99(0.91~1.07, p=0.001 for non-inferiority)。
・ramipril群 vs 併用群:1210例(14.1%) vs 1200例(14.1%):1.00(0.93~1.09)。
新規糖尿病発症
・ramipril群 vs telmisartan群:366例(6.7%) vs 399例(7.5%):1.12(0.97~1.29)。
・ramipril群 vs 併用群:366例(6.7%) vs 323例(6.1%):0.91(0.78~1.06)。
腎機能障害
・ramipril群 vs telmisartan群:871例(10.2%) vs 906例(10.6%):1.04(0.96~1.14)。
・ramipril群 vs 併用群:871例(10.2%) vs 1148例(13.5%):1.33(1.22~1.44, p<0.001)。
★結論★血管疾患/高リスク糖尿病患者におけるtelmisartanの有効性はramiprilと同等で,血管性浮腫はより少なかった。併用投与のramipril単独投与を上回る有効性はみられず,有害イベントが増加した。
Clinical Trials. gov No.: NCT00153101
文献
  • [main]
  • The ONTARGET investigators: Telmisartan, ramipril, or both in patients at high risk for vascular events. N Engl J Med. 2008; 358: 1547-59. PubMed
  • プロトコル
    TRANSCEND試験(telmisartan 80mg vs プラセボ)の患者背景(2004年5月10日時点。5776例)
    平均年齢66.9歳,男性57.1%,心拍数68.8拍/分,BMI 28.3,ウエスト/ヒップ比0.9,クレアチニン92.6μmol/L,総コレステロール197.2mg/dL,HDL-C 50.2mg/dL,LDL-C 116.0mg/dL,トリグリセライド159.3mg/dL,既往;MI 46.2%;安定狭心症36.9%;不安定狭心症14.9%;CABG 18.9%;PTCA/PCI 26.0%;脳卒中/一過性脳虚血発作22.1%;頸動脈血管内膜除去術1.8%;間欠性跛行10.1%,危険因子;高血圧75.9%;糖尿病35.4%;喫煙(現在9.8%,過去43.4%),治療状況;ACE阻害薬58.1%;ARB 29.9%;β遮断薬57.9%;利尿薬32.9%;硝酸薬33.9%;diltiazem/verapamil 9.9%;その他のCa拮抗薬31.2%;aspirin 74.7%;スタチン系薬剤54.5%;インスリン7.2%;経口血糖降下薬23.8%;ホルモン補充療法(女性)(9.3%)。
    血圧(runi-in期間→ランダム化時)142/82mmHg→135/78mmHg:Teo K, et al for the ONTARGET/TRANSCEND investigators: Rationale, design, and baseline characteristics of 2 large, simple, randomized trials evaluating telmisartan, ramipril, and their combination in high-risk patients; the ongoing telmisartan alone and in combination with ramipril global endpoint trial/telmisartan randomized assessment study in ACE intolerant subjects with cardiovascular disease (ONTARGET/TRANSCEND) trials. Am Heart J. 2004; 148: 52-61. PubMed
  • [substudy]
  • 降圧治療でSBP<120mmHgを達成した例はMI,脳卒中を除くCVDリスクが高く,DBP<70mmHg例ではさらにMI,心不全による入院リスク増加と関連した。高リスク患者において低イベントリスクと関連する目標血圧値は120~130/70~80mmHg。
    ベースライン,発症前(心血管[CV]イベント発症前あるいは最後の外来),降圧治療達成平均血圧と複合CVイベントの関係を,両試験を統合した30,937例で検証した。
    <ベースライン時血圧>収縮期血圧(SBP)≧140mmHg例は120~<140mmHg例にくらべ全複合CVイベント(CV死,心筋梗塞[MI],脳卒中,心不全による入院)リスクが高かった。対照的に,拡張期血圧(DBP)<70mmHg例は≧70mmHg例にくらべ脳卒中を除きCVイベントリスクが上昇した。
    SBP 140~<160mmHg,≧160mmHg例はMI(≧160mmHg例のみでリスク上昇)を除きリスクが高かった。DBP≧90mmHg例は,それより低値例にくらべ複合CVD,MI,心不全による入院リスクが低かった。
    <治療による達成血圧>SBP<120mmHg例(4,052例)は,120~<140mmHg例(16,099例)にくらべ複合CVイベント(調整ハザード比1.14),CV死(1.29),全死亡(1.28)のリスクが高かったが,MI,脳卒中,心不全による入院に対しては中立的だった。
    DBP<70mmHg例(5,352例)は,70~80mmHg例(14,305例)よりも複合CVD(1.31),MI(1.55),心不全による入院(1.59),全死亡(1.16)リスクが高かった。
    <CVイベントとの関連>治療達成平均SBPは,ベースラインあるいは発症前血圧よりもCVD予測能が高く,CVDリスクが最も低いのは約130mmHgで,110~120mmHgは複合CVD,CV死,脳卒中を除く全死亡リスクが高かった。DBPはベースライン,治療中の値が約75mmHgのリスクが低かった★考察★因果の逆転の影響を除外するのは難しいが,高リスク患者において降圧治療で達成可能な血圧最低値が必ずしも至適な目標血圧値ではないことが示唆された:Lancet. 2017; 389: 2226-37. Epub 2017 Apr 5. PubMed
  • 55歳以上のCVD/糖尿病患者では,健康的な食事によりCVD再発リスクが低下。
    ONTARGET+TRANSCENDの参加者31,546例において,食事の質と心血管疾患(CVD)リスクの関係を評価した結果:食事の質はmodified Alternative Healthy Eating Index(mAHEI:高スコアほど野菜や果物,肉より魚などの健康的な食事が多い)を用いて評価。追跡期間56か月のCVDイベントは5,190例。一次エンドポイントのリスクはmAHEIスコアが高い(健康的な食事をしている)ほど低かった(最高5分位群 vs 最低5分位群の調整ハザード比0.78;95%信頼区間0.71~0.87;傾向p≦0.001)。個別のイベントのリスクも最高5分位群で低下した(心血管死:0.65;0.55~0.75,MI:0.86;0.72~1.03,うっ血性心不全:0.72;0.58~0.88,脳卒中:0.81;0.67~0.96)。
    この関係は,二次予防のための治療法別(aspirin[23,828例],β遮断薬[18,036例],スタチン[19,055例])の解析でも変わらず(すべて傾向p<0.001),また高血圧や糖尿病,脂質値などのリスク因子や地域,高・低所得国などの影響も認められなかった:Circulation 2012; 126: 2705-12. PubMed
  • 血圧と心血管リスクの関係は糖尿病,非糖尿病を問わず認められるが,収縮期血圧レベルが同等の場合は糖尿病患者のほうがリスクは高い(追跡期間中央値4.6年)。
    糖尿病群(9,603例)と非糖尿病群(15,981例)の一次エンドポイント(心血管死,非致死的心筋梗塞[MI],非致死的脳卒中,うっ血性心不全による入院の複合)を比較。
    糖尿病群は非糖尿病群にくらべて一次エンドポイントのリスクが有意に高かった(1,938例[20.2%] vs 2,276例[14.2%]:ハザード比1.48;95%信頼区間1.38~1.57,心血管死(1.56;1.42~1.71),MI(1.30;1.17~1.46),脳卒中(1.39;1.23~1.56),うっ血性心不全による入院(2.06;1.82~2.32)。
    ベースラインの収縮期血圧(SBP)が同等の場合は,糖尿病群のほうが一次エンドポイントリスクは高かった(SBP 95~130mmHg[第1四分位]の非糖尿病群と比較した調整後ハザード比1.35;1.25~1.46)。また,治療によるSBPの変化の大きさにかかわらず,心血管リスクは糖尿病患者のほうが有意に高かった。SBPの低下に伴う一次エンドポイントの低下が認められたのは,糖尿病の有無を問わず,ベースラインSBP 143~155mmHgの場合のみ。脳卒中のリスクはSBP 115mmHgまで一貫して低下し続けたが,その他のエンドポイントにはJカーブ現象がみられた:J Am Coll Cardiol. 2012; 59: 74-83. PubMed
  • 24時間ナトリウム排泄量と心血管イベント間にJカーブ現象。
    TRANSCENDと合わせた28,880例での結果:ベースライン時の24時間ナトリウム排泄量4.77g,カリウム排泄量2.19g,56か月(中央値)後の複合一次エンドポイントは4,729例(16.4%)で,心血管(CV)死2,057例,心筋梗塞(MI)1,412例,脳卒中1,282例,CHFによる入院1,213例。
    対照群(ナトリウム排泄量4~5.99g/日[14,156例]。CV死6.3%,MI 4.6%,脳卒中4.2%,CHFによる入院3.8%)に比べ,ベースライン時のナトリウム排泄量が多かった例では,CV死(7~8g/日例9.7%:ハザード比1.53;1.26~1.86,>8g/日例11.2%;1.66;1.31~2.10),>8g/日例のMI(6.8%:1.48;1.11~1.98),脳卒中(6.6%:1.48;1.09~2.01),CHFによる入院(6.5%:1.51;1.12~2.05)リスクが増大した(多変量解析)。
    また,ナトリウム排泄量が少なかった例でも,CV死(2~2.99g/日例8.6%:1.19;1.02~1.39,<2g/日例10.6%:1.37;1.09~1.73),2~2.99g/日例のCHFによる入院(5.2%:1.23;1.01~1.49)のリスクが上昇した(多変量解析)。
    カリウム排泄量<1.5g/日(2,194例。脳卒中6.2%)に比べると,排泄量の多い例では脳卒中リスクが低下(1.5~1.99g/日例4.7%:0.77;0.63~0.94,2~2.49g/日例4.3%:0.73;0.59~0.90,2.5~3g/日例3.9%:0.71;0.56~0.91,>3g/日例3.5%:0.68;0.49~0.92)(多変量解析):JAMA. 2011; 306: 2229-38. PubMed
  • ガイドライン推奨の目標血圧値の達成率が高いと脳・腎血管保護につながるが,心保護効果の増強にはならない。
    ベースライン時収縮期血圧(SBP)が≧140mmHgで心血管イベント発生までに7回以上受診(血圧測定)した患者を目標血圧値(<140/90mmHg,高リスクは<130/80mmHg)達成率により次の4群にわけて検証:<140/90mmHgの達成率<25%(2,973例;ベースライン時SBP 158.4mmHg),25~49%(3,394例;154.7mmHg),50~74%(3,359例;152.3mmHg),≧75%(2,828例;149.5 mmHg)。ベースライン時のSBP高値例は達成率が低く,<25%群は≧75%群に比べLDL-C,血糖が高めで,糖尿病既往が多かった。
    目標血圧までの降圧達成率が高い例ほど,脳卒中,新規発生微量・顕性アルブミン尿が少なく,アルブミン尿例は正常アルブミン尿へ寛解したが,心筋梗塞(MI),心不全リスクに対する効果はみられなかった。調整後の心血管イベントリスクは<140/90mmHg達成率が高い例で低下したが,<130/80mmHg達成例ではリスクは低下しなかった。
    <140/90mmHg例[<130/80mmHg例]:一次エンドポイントの調整ハザード比0.84;95%信頼区間0.76~0.92(p=0.0004)[1.05;0.94~1.16, p=0.414],心血管死+MI+脳卒中:0.84;0.76~0.93(p=0.0011)[1.05;0.93~1.17, p=0.448],心血管死:0.79;0.68~0.92(p=0.0018)[1.00;0.85~1.18, p=0.965],MI:0.92;0.77~1.10(p=0.352)[1.18;0.98~1.42, p=0.086],心不全による入院:0.94;0.78~1.13(p=0.514)[1.19;0.98~1.46, p=0.085],脳卒中:0.81;0.67~0.96, p=0.017[0.89;0.77~1.10, p=0.274]:Circulation. 2011; 124: 1727-36. PubMed
  • 腎機能低下例においてもtelmisartan +ramipril併用投与の単独投与と比べた心血管・腎保護効果はみられず。
    糸球体濾過量(GFR)低下例(eGFR<60mL/分/1.73m2:5,623例[24.0%]),微量アルブミン尿例(3,809例[16.3%]),マクロアルブミン尿例(1,287例[5.5%])での結果:
    [心血管転帰,死亡]単剤投与に比べた併用投与の有効性はみられなかった。マクロアルブミン尿が認められる例で併用投与群で死亡率が低下する傾向がみられた(25.06% vs 30.91%:ハザード比0.8;95%信頼区間0.64~1.01, p=0.056)。
    [腎転帰]併用投与群で慢性透析,クレアチニン値倍化のリスクが増大した(単剤投与に比べた相対リスク上昇率21%;0~46%)。GFR,アルブミン尿との有意な交互作用はみられず,どのサブグループでも併用投与の有効性は認められなかった。リスクがもっとも高い低GFR・マクロアルブミン尿例では相対リスクが63%増大した(全発生数はクレアチニン値倍化417例,慢性透析87例)。
    [有害イベント]透析依存の腎不全(0.08 vs 0.04イベント/100人・年,p=0.002),高カリウム血症(1.29 vs 0.74イベント/100人・年,p<0.001)が併用投与群で多かった。併用群の単独群に比べた投与中止は正常アルブミン尿例で最も多かった(相互作用p=0.006)。併用群の投与中止の理由で多かったのは低血圧で,差が最も大きかったのは正常GFR例(相互作用p=0.018):Circulation. 2011; 123: 1098-107. PubMed
  • telmisartan群,併用群はramipril群より左室肥大(LVH)をわずかに抑制。新規LVH例は心血管疾患リスクが上昇。
    LVHは3群ともベースライン時に比べ有意に増加した(p<0.001)が,ramipril群に比べtelmisartan群に非有意の抑制傾向がみられ(オッズ比0.92;0.83~1.01, p=0.07),併用群でも非有意ながら低下した(0.93;0.84~1.02, p=0.12):telmisartan群:ベースライン時12.5%→2年後10.0%→5年後9.7%,ramipril群:12.5%→10.8%→10.5%,telmisartan+ramipril群:12.4%→9.9%→10.2%。
    新規LVHは一次エンドポイントのリスク上昇と関連した:ハザード比1.77;1.50~2.07(p<0.0001):Circulation. 2009; 120: 1380-9. PubMed
  • 腎の転帰(透析の導入,クレアチニン値の倍増,死亡):telmisartanとramiprilは同等。併用投与は単独投与に比べ蛋白尿への進展を抑制するものの,腎全般の予後は悪化:
    ベースライン時:クレアチニン93.7μmol/L,eGFR 73.6mL/分/1.73m²,eGFR<30mL/分/1.73m² 263例。2年後のeGFRの変化:ramipril群-1.96,telmisartan群-3.05,併用群-5.12(telmisartan vs ramipril,併用 vs ramipril群:いずれもp<0.0001)。
    転帰:ramipril群1150例(13.4%),telmisartan群1147例(13.4%),併用群1233例(14.5%):telmisartan群 vs ramipril群のハザード比(HR)1.00(0.92~1.09, p=0.968),併用群 vs ramipril群;1.09(1.01~1.18, p=0.037)。死亡を除いた転帰は,ramipril群174例(2.03%) vs telmisartan群189例(2.21%):HR 1.09(0.420),併用群212例(2.49%):HR 1.24(vs ramipril群,p=0.038)。微量アルブミン尿から蛋白尿への進展は:ramipril群166例(2.12%),telmisartan群138例(1.77%):HR 0.83(p=0.114),併用群125例(1.61%):HR 0.76(p=0.019):Lancet. 2008; 372: 547-53. PubMed
  • 中間報告
    空腹時血糖値はうっ血性心不全による入院の独立した予測因子。
    平均追跡期間886日の一次エンドポイントは2882例(心血管死1067例,MI 926例,脳卒中823例,CHFによる入院668例)。ベースライン時の糖尿病既往11708例(37%),新規に診断された糖尿病1006例(3.2%)。年齢,性で調整後,血糖値が18mg/dL増加するごとにCHFによる入院リスクは1.1倍に上昇(95%信頼区間1.08~1.12, p<0.0001),この関連は年齢,性,喫煙,心筋梗塞既往,高血圧,ウエスト/ヒップ比,クレアチニン,糖尿病,aspirin,β遮断薬で調整後も持続した(ハザード比1.05, 1.02~1.08, p<0.001):Circulation. 2007; 115: 1371-5. PubMed

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収載年月2006.04
更新年月2017.04