循環器トライアルデータベース

STRATEGY
Single High Dose Bolus Tirofiban and Sirolimus Eluting Stent vs Abciximab and Bare Metal Stent in Myocardial Infarction Trial

目的 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)によるprimary 血管形成術例において,コスト高にならず転帰のより改善を目指し,血管造影および臨床上の転帰を血小板 GP IIb/IIIa受容体拮抗薬tirofibanの高用量単回ボーラス投与(SHDB)+sirolimus溶出ステントと現在推奨されているabciximab前投与後のベアメタルステント(BMS)植込みとで比較する。
一次エンドポイントは8か月後の死亡+非致死的心筋梗塞+脳卒中+binary再狭窄。
コメント 欧米のガイドラインでは,STEMIのprimary PCI時に心筋組織の灌流や責任冠動脈の開存に対する治療法としてabciximabの使用が推奨されている。ベアメタルステント(BMS)はSTEMIに対してclass Iの適応があるが,sirolimus溶出ステントはBMSに比しPCI後のTVR率を低下させ長期予後を改善させる。しかし,両ステントの経済的側面からのランダム化試験は少ない。また,無制限のsirolimus溶出ステントの使用により経済的理由からのabciximabの併用が減少している。米国ではPCI時に80%以上がBMSの代わりに薬剤溶出ステント(DES)を用いているが,ヨーロッパでは経済的理由により6%以下にとどまっている国もある。特に高価なabciximabとの併用は制限を受けている。本研究では経済的側面を考慮し,abciximab(2,432ドル)の代わりに高用量のtirofiban(742ドル)を用いることによって,BMS(768ドル)より高価なsirolimus溶出ステント(2,304ドル)の臨床上の有用性を維持できるかを検討した。
結果は,sirolimus溶出ステントとtirofibanの組み合わせは有害心血管イベントの発生率,再狭窄率を低下させ,血小板減少症の出現も少なかった。本研究はDESをSTEMIに用いた最初のランダム化試験である。すでに非ST上昇型心筋梗塞も含めてACS例にリアルワールドではDESが高頻度に用いられているが,大規模ランダム化試験により長期的血栓症発症も含めて臨床的有用性を明らかにする必要がある。
ところで通常量のtirofibanでは血小板抑制作用が弱く周術期の心筋梗塞発症がより高いため,abciximabの方がtirofibanよりPCI時の心血管イベント発生が少ないことが知られている。本研究では高用量のtirofibanを用いており,血小板抑制作用はabcixiamabと同様であった。高用量のtirofibanとabciximabとの同等性を検討する大規模試験が現在進行中である。(星田
デザイン 無作為割付け,オープンラベル,単盲検,単施設,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は8か月。ランダム化期間は2003年3月6日~'04年4月23日。
対象患者 175例。ECG上2以上の連続した誘導で1mm以上のST上昇/新規左脚ブロックを伴う30分以上の胸痛;発症後12時間以内あるいは虚血の確認後12~24時間の入院。
除外基準:30日以内の血栓溶解療法,出血傾向の既往/試験薬に対するアレルギー,15日以内の大手術,出血中あるいは6か月以内の脳卒中。
■患者背景:年齢中央値(SHDB tirofiban+sirolimus溶出ステント群62歳,abciximab+BMS群63歳),男性(77%,69%),1枝病変(53%,65%),TIMI grade 0~1(70%,74%),ST上昇中央値(10mm,9mm)。
治療法 SHDB tirofiban+sirolimus溶出ステント群(87例):tirofiban (25μg/kgを3分間ボーラス投与後0.15μg/kg/分を18~24時間点滴)+sirolimus溶出ステント(Cypher;Cordis社。直径2.25~3.00mm),abciximab+BMS群(88例):abciximab(0.25mg/kgを3分間ボーラス投与後0.125μg/kg/分を12時間点滴)+BMS(一次選択はSonic Stent;Cordis社),にランダム化。
sirolimus溶出ステントからBMSへのクロスオーバーは,植込み不成功またはステント径が血管径と不適合の場合のみ許可。全例にaspirin(160~325mgで投与開始,以後80~125mg/日を無期限に経口投与),clopidogrel(300mgで投与開始,以後75mg/日を3か月以上経口投与)を投与し,heparin 50U/kgを手技前に投与後,活性化凝固時間200秒以上を目標にボーラス投与。
無作為に選別した70例から成るサブグループに,血小板 GP IIb/IIIa受容体拮抗薬投与前および投与後10分に血小板凝集能測定を実施。PCIの成功は治療した血管のTIMI grade 3の灌流および残存狭窄<30%と定義し,ベースライン時,手技直後,追跡時の定量的血管造影により最小血管径(MLD)を測定し,急性期獲得径,晩期損失を算出。
結果 一次エンドポイントは,tirofiban+sirolimus溶出ステント群14/74例(19%,95%信頼区間[CI]10~28%)vs abciximab+BMS群37/74例(50%,95%CI 44~56%)であった(ハザード比[HR]0.33;95%CI 0.18~0.60,p<0.001)。
主要な心/脳血管有害イベント(死亡+再梗塞+脳卒中+標的血管血行再建術[TVR])の発生は18% vs 32%(HR 0.53;95%CI 0.28~0.92,p=0.04)とtirofiban+sirolimus溶出ステント群で有意に低かった。死亡+再梗塞は両群で同様であったが(13% vs 17%,HR 0.71;95%CI 0.34~1.5,p=0.39),TVRはtirofiban+sirolimus溶出ステント群で有意に低かった(7% vs 20%,HR 0.30;95%CI 0.12~0.77,p=0.01)。binary再狭窄はtirofiban+sirolimus溶出ステント群6/67例(9%)vs abciximab+BMS群24/66例(36%)であった(p=0.002)。
★結論★STEMIの新しい治療戦略としてtirofiban+sirolimus溶出ステントは転帰を改善し,医療費を増大させず(欧州),あるいはわずかに増大(米国)することが示された。
文献
  • [main]
  • Valgimigli M et al for the STRATEGY investigators: Tirofiban and sirolimus-eluting stent vs abciximab and bare-metal stent for acute myocardial infarction: a randomized trial. JAMA. 2005; 293: 2109-17. PubMed
  • [substudy]
  • 2年後も死亡,MI,標的血管血行再建術(TVR)はtirofiban+sirolimus溶出ステント群24.2%,abciximab+BMS群38.6%でtirofiban+sirolimus溶出ステント群で抑制された(ハザード比[HR]0.56;95%信頼区間0.33~0.98,p=0.038)。死亡+MIは両群同様(16.1% vs 20.5%,HR 0.77;0.38~1.55,p=0.43)であったが,TVRはtirofiban+sirolimus溶出ステント群で有意に低かった(9.8% vs 25.5%,HR 0.34;0.16~0.77,p=0.01)。ステント血栓症(confirmed, probable, possible),hienopyridine系薬剤投与中止後の死亡/MIにおいて両群間差はなかった:J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 138-45. PubMed

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EBM 提供:大日本住友製薬 「循環器トライアルデータベース
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収載年月2005.08
更新年月2007.08