循環器トライアルデータベース

SENIORS
Study of the Effects of Nebivolol Intervention on Outcomes and Rehospitalisation in Senoirs with Heart Failure

目的 70歳以上の高齢心不全患者において,β1選択性遮断薬nebivololの有効性を検討。
一次エンドポイントは全死亡+心血管イベントによる入院。
コメント 高齢者での比較的左室収縮機能が良好な慢性心不全に対するβ遮断薬の有用性が示されたトライアルとして意義が大きい。β遮断薬はこれまで収縮能の低下(EF<35%)した心不全に対して有用であることが示されてきたが,EF>35%の比較的収縮能の良好な患者に対する効果は明らかではなかった。CHARM試験はEF>40%の慢性心不全患者を対象としてARB(カンデサルタン)の効果をみた研究であるが,厳密な意味で有意差が認められなかった。本試験ではEF>35%の症例が1/3含まれているが,平均EFは36%であり,拡張期心不全を対象にした試験とはいえないが,高齢者の心不全に対するβ遮断薬(nebivolol)の有用性が示されたことの意義は大きいと考えられる。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(11か国),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は21か月。
登録期間は2000年9月~2002年12月,試験終了は2003年11月15日。
対象患者 2,128例。慢性心不全(CHF)既往のある70歳以上の高齢者。次のうち少なくとも1つを有する:12か月以内に入院の記録があり退院時の診断がCHF,あるいは6か月以内のEF≦35%。
除外基準:6週間以内の心不全新規薬物治療開始例,2週間以内の心血管治療薬変更例,治療していない弁疾患が主因の心不全,β遮断薬禁忌あるいは不忍容例(心拍数<60拍/分あるいは収縮期血圧<90mmHg),β遮断薬治療例,重大な肝あるいは腎不全,3か月以内の脳血管疾患など。
■患者背景:平均年齢76歳,女性37%,EF 36%(>35%が35%),NYHA II度(nebivolol群56.5%,プラセボ群56.3%),III度(両群とも38.7%),心拍数(79.2拍/分,78.9拍/分),血圧(138.6/80.5mmHg, 139.5/80.6mmHg)。冠動脈疾患既往(68.9%, 67.6%),心筋梗塞既往(43.8%, 43.7%),高血圧(61.1%, 62.3%),高脂血症(45.9%, 45.6%),心房細動(33.8%, 35.5%),糖尿病(26.9%, 25.3%)。治療状況:利尿薬(85.8%, 85.5%),ACE阻害薬(81.7%, 82.6%),aspirin(42.7%, 41.6%),強心配糖体(38.9%, 39.8%),アルドステロン受容体拮抗薬(28.8%, 26.4%),脂質低下薬(20.3%, 22.4%)。
治療法 nebivolol群(1067例):1.25mg/日から投与を開始し10mg/日まで漸増投与,プラセボ群(1061例)。
結果 平均維持投与量はnebivolol群7.7mg,プラセボ群8.5mg。≧5mgの投与量に達したのはそれぞれ80%, 87%,10mgが68%, 80%。死亡以外の理由による試験中止は27%, 25%。平均血圧は132.3(試験開始時より-6.3mmHg)/76.3mmHg(-4.2mmHg), 135.2(-4.3mmHg)/78.1mmHg(-2.4mmHg),心拍数は68.8拍/分(-10.3拍/分),77.4拍/分(-1.5拍/分)。
一次エンドポイントはnebivolol群31.1% プラセボ群35.3%[ハザード比(HR)0.86:95%信頼区間(CI)0.74~0.99, p=0.039]。絶対リスク低下は4.2%,21か月で1イベント予防するためのNNTは24例。Kaplan-Meierによるtime to eventは約6か月後にnebivolol群がプラセボ群より有効になりその後追跡期間中同群の有効性は維持された。
全死亡は15.8% vs 18.1%(HR 0.88:95%CI 0.71~1.08, p=0.21),心血管死のうち突然死は36% vs 48%。心血管疾患による入院は24.0% vs 26.0%(HR 0.90:95%CI 0.76~1.06)。
有害事象は徐脈がnebivolol群で増加し(118例 vs 28例),うち脱落例は18例 vs 4例。
★結論★高齢心不全患者において,血管拡張作用を有するβ遮断薬nebivololは有効で忍容性も良好である。
文献
  • [main]
  • Flather MD et al on behalf of the SENIORS investigators: Randomized trial to determine the effect of nebivolol on mortality and cardiovascular hospital admission in elderly patients with heart failure (SENIORS). Eur Heart J. 2005; 26: 215-25. PubMed
  • [substudy]
  • 冠動脈疾患合併高齢心不全患者において,nebivololは虚血性心イベントを抑制。
    原因疾患が虚血性心疾患(冠動脈疾患)のもの1,452例(68.2%);nebivolol群735例,プラセボ群717例:2年後の虚血性心イベント(MI死+MIによる入院+不安定狭心症+突然死)は,nebivolol群10.7% vs プラセボ群15.9%(ハザード比0.68;95%信頼区間0.51~0.90, p=0.008)。nebivolol群の有効性は年齢,性,EFとは独立していた。非虚血性心疾患合併例でも結果に違いはなかった:Heart. 2011; 97: 209-14. PubMed
  • nebivololの有効性は高齢拡張性心不全と収縮性心不全とで差はない。
    左室駆出率の保持された(EF>35%)拡張性心不全患者は36%(平均EF 49.2%)で,女性が多く(49.9% vs 29.8%),進展した心不全が少なく,高血圧が多く,心筋梗塞既往が少なかった。
    一次エンドポイント:EF>35%例;235例(31.2%) vs EF≦35%例;465例(34.2%)。プラセボと比べたnebivololのハザード比は,EF>35%例;0.81,EF≦35%例;0.86:Am Coll Cardiol. 2009; 53: 2150-8. PubMed
  • 心エコーサブスタディ(29施設104例):EF≦35%は43例,>35%は61例。12か月後,左室収縮末期容積はEF≦35%群の方がプラセボ群より25.8mL減少し(p=0.016),EFが4.6%改善した(p=0.008)。僧帽弁の拡張早期波(E波)/心房収縮波(A波)比(E/A)またはE波減速時間に変化はみられなかった。EF<35%群では収縮期,拡張期のパラメーターに変化はなかった:Eur Heart J. 2006; 27: 562-8. PubMed

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収載年月2005.07
更新年月2011.09