循環器トライアルデータベース

SPORTIF V
Stroke Prevention Using an Oral Thrombin Inhibitor in Atrial Fibrillation

目的 脳卒中リスクを有する非弁膜症性心房細動患者において,経口直接トロンビン阻害薬ximelagatranの脳卒中(脳梗塞および脳出血)および全身性塞栓症抑制効果をwarfarinと比較。
コメント 経口直接抗トロンビン薬のximelagatranは,非弁膜症性心房細動の塞栓症予防にwarfarinと同等の効果を示すが,肝毒性からFDAの承認は得られなかった。今後,臨床現場に導入されるにしても,その費用,塞栓症の危険,出血合併症のリスクを考慮してaspirin,warfarinと使い分けされる必要があろう。(井上
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(米国,カナダの409施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は平均20か月。ランダム化期間は2000年8月2日~'01年12月7日。
対象患者 3922例。持続性/発作性非弁膜症性心房細動に加え,次の脳卒中危険因子を1つ以上有するもの:脳卒中・一過性脳虚血発作・全身性塞栓症の既往,高血圧,左室機能不全(EF<40%または症候性収縮/拡張不全),75歳以上,冠動脈疾患/糖尿病を有する65歳以上。
■患者背景:平均年齢72歳(75歳以上42%),男性69%,白人96%,平均体重90kg,喫煙歴56%,飲酒の習慣なし59%,心房細動罹患1年以上 84%,持続性心房細動86%,2つ以上の脳卒中危険因子を保有74%。治療状況:ビタミンK拮抗薬84%,β遮断薬49%,ACE阻害薬48%,HMG-CoA reductase阻害薬37%,aspirin 18%。
治療法 warfarin群(1962例):目標INR 2.0~3.0に用量調整+プラセボ,ximelagatran群(1960例):固定用量36mg×2回/日+プラセボにランダム化。
aspirinは100mg/日まで,非ステロイド抗炎症薬は7日/月まで許可。他の抗トロンビン薬は禁止。
結果 warfarin群の平均INR(2.4)は治療期間の68%で目標範囲内にあった。6405例・年の追跡における一次エンドポイントの発生は88例(warfarin群37例・1.16%/年 vs ximelagatran群51例・1.61%/年)で,群間の絶対差は0.45%/年(95%CI -0.13~1.03%/年,p=0.13)と非劣性を示す値としてあらかじめ設定された2.0%/年より小さかった(p<0.001)。一次エンドポイント+全死亡の発生は151例(4.7%/年) vs 153例(4.8%/年)で,絶対差は0.10%/年(95%CI -0.97~1.2%/年,p=0.86)であった。大出血の発生は両群間に差はなかったが,全出血はximelagatran群で有意に少なかった(903例47%/年 vs 737例37%/年,相対リスク低下10%,95%CI -14~-6.0%/年,p<0.001)。血清ALT値が正常値上限の3倍超に上昇した患者は,warfarin群の15例(0.8%)に対しximelagatran群で117例(6.0%)と多く(p<0.001),治療開始2~6か月に上昇した後,治療継続/中止のいずれの場合も大半がベースライン値に回復したが,2例の肝疾患死(1例は可能性が示唆)が生じた。
★結論★長期の抗凝固治療を要する心房細動患者において,固定用量の経口ximelagatranは厳密な監視下のwarfarin治療に比べ,凝固管理を要することなく塞栓症抑制効果が示されたが,肝毒性の可能性についてはさらなる検討を要すると思われる。
文献
  • [main]
  • Albers GW et al for the SPORTIF executive steering committee for the SPORTIF V investigators: Ximelagatran vs warfarin for stroke prevention in patients with nonvalvular atrial fibrillation; a randomized trial. JAMA. 2005; 293: 690-8. PubMed
  • [substudy]
  • 高齢(75歳以上)例において,ximelagatranは出血リスクが上昇することなくwarfarinと同等の有効性を示したが,アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の上昇が特に女性で多くみられた(SPORTIF IIIとVを合わせて解析)。
    ≧75歳における一次エンドポイントはximelagatran群2.23%/年 vs warfarin群2.27%/年,<75歳:1.25%年 vs 1.28%/年と,非劣性基準を満たした。全出血は≧75歳:39.9% vs 44.7%(p=0.014),<75歳:27.2% vs 35.5%(p<0.001)。ximelagatran群でのALT>3倍の上昇は75歳以上(7.5% vs 5.3%),特に女性(75歳以上の女性9.5% vs 75歳以上の男性6.1%)で多かった:Stroke. 2007; 38: 2965-71. PubMed
  • warfarin群における死亡,心筋梗塞,大出血,脳卒中,全身性塞栓イベントのリスクはINRコントロールと関連(SPORTIF IIIとVを合わせて解析):Arch Intern Med. 2007; 167: 239-45. PubMed
  • ximelagatranの出血リスクはwarfarinよりも低い(31.75%/年 vs 38.82%/年:ximelagatran群の相対リスク低下18.2%,p<0.001)。大出血は2.01% vs 2.68%(25.1%低下,p=0.03),うち致死例は8.16% vs 8.09%(p=0.98)。aspirin投与と高齢がximelagatran,warfarinの出血リスクを上昇させる(SPORTIF IIIとVを合わせて解析):Arch Intern Med. 2006; 166: 853-9. PubMed
  • SPORTIF III & Vでの検討:男性に比べ女性は高齢(73.4歳 vs 69.8歳,p<0.0001)で,76歳以上も多かった。さらに女性は男性よりも多くの脳卒中の危険因子を有し,大・小出血率が高かった(p<0.001)。warfarin投与例での大出血は女性の方が多かった(p=0.001)。一次エンドポイントも2.08%/年 vs 1.44%/年と女性の方が多かった(p=0.016):Eur Heart J. 2006; 27: 1947-53. PubMed
  • 仮想コホート(70歳,慢性心房細動,脳卒中の中等度リスク,抗凝固療法の禁忌なし)におけるximelagatran,warfarin,aspirinのquality-adjusted life-years(QALYs)とコストについてSemi-Markov decision modelで比較した。脳卒中リスクのない患者ではximelagatran,warfarinともaspirinに比べ50,000ドル/QALY以上のコスト高。脳卒中リスクがあり出血リスクの低い例ではximelagatranではwarfarinと比較してQALYの改善はわずか0.12,116,000ドル/QALYのコスト高。ximelagatranは頭蓋内出血リスクの高い患者(warfarinで>1.0%/年)あるいはwarfarin治療でQOL不良の患者以外では,費用対効果が高いとはいえなかった:JAMA. 2005; 293: 699-706. PubMed

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収載年月2005.05
更新年月2007.12