循環器トライアルデータベース

SCD-HeFT
Sudden Cardiac Death in Heart Failure Trial

目的 軽度~中等度のうっ血性心不全(CHF)患者において,予後に対する抗不整脈薬amiodaroneおよび植込み型除細動器(ICD)の有効性を検討。
一次エンドポイントは全死亡。
コメント 虚血性心疾患に対するICDの一次予防効果を示したMADIT-I,MADIT-II試験に対し,非虚血性心筋症を対象とした小規模のCAT,AMIOVIRT試験ではICDの有用性は認められなかったが,今回のSCD-HeFT試験で虚血・非虚血を問わず左室駆出率が35%以下の低心機能患者でのICDの一次予防効果が示された。今後,慢性心不全(NYHA II,III度)の左室機能低下例へのICDの適応が拡大されるものと予想される。(
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間中央値45.5か月(~2003年10月31日)。
1997年9月16日~2001年7月18日ランダム化。
対象患者 2521例。18歳以上,NYHA心機能分類II~III度の慢性安定CHF(虚血性,非虚血性を問わず),EF35%以下。
■患者背景:年齢中央値(amiodarone群60.4歳,ICD群60.1歳,プラセボ群59.7歳),女性(24%,23%,23%),非白人(23%,23%,24%),糖尿病(29%,31%,32%),肺疾患(17%,21%,19%),高コレステロール血症(52%,52%,54%),高血圧(56%,55%,56%),心房細動または心房粗動(16%,17%,14%),非持続性心室頻拍(23%,25%,21%),EF中央値25%,NYHA II度70%,III度30%,虚血性CHF 52%。薬物療法は,ACE阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬投与(97%,94%,98%),β遮断薬(3群とも69%),ループ利尿薬(3群とも82%),digoxin(73%,67%,70%),aspirin(55%,58%,56%),スタチン(40%,38%,38%)。
治療法 amiodarone群(845例):800mg/日で投与を開始し1週間投与→ 400mg/日を3週間→ 400mg/日(体重>90.9kgの場合),300mg/日(68.2~90.9kg)または200mg/日(<68.2kg)。ICD群(829例):single-chamber ICD(Medtronic社製7223モデル)を用い,電気ショックのみのプログラムで,急速かつ持続的な心室頻拍および心室細動を停止。プラセボ群(847例)。
全例に従来の治療を実施。
結果 死亡例はamiodarone群240例(28%),ICD群182例(22%),プラセボ群244例(29%)。死亡リスクにおいてamiodarone群とプラセボ群は同等であった[ハザード比(HR)1.06,97.5%CI 0.86~1.30,p=0.53]。一方,ICD群ではプラセボ群に比べ全死亡リスクが23%低下し(HR 0.77,97.5%CI 0.62~0.96,p=0.007),5年後における全死亡率の絶対低下率は7.2%であった。
サブグループ解析:虚血性CHF群と非虚血性CHF群に層別しても結果は同様であった。しかし,NYHA II度群とIII度群間において次のような差が認められた;II度群ではamiodarone治療による全死亡リスクの差はなかったが(HR 0.85,97.5%CI 0.65~1.11,p=0.17),III度群では逆に44%増加した(HR 1.44,97.5%CI 1.05~1.97,p=0.010)。また,II度群ではICD治療により全死亡リスクが46%低下したのに対し(HR 0.54,0.40~0.74,p<0.001),III度群では低下しなかった(HR 1.16,97.5%CI 0.84~1.61,p=0.30)。
★結論★NYHA心機能分類II~III度,EF≦35%のうっ血性心不全患者において,amiodaroneの全死亡抑制効果は認められなかったが,電気ショックのみのsingle-chamber ICDは全死亡リスクを23%低下させた。
ClinicalTrials gov. No: NCT00000609
文献
  • [main]
  • Bardy GH et al for the sudden cardiac death in heart failure trial (SCD-HeFT) investigators: Amiodarone or an implantable cardioverter-defibrillator for congestive heart failure. N Engl J Med. 2005; 352: 225-37. PubMed
  • [substudy]
  • 心不全患者,左室機能不全患者において,T波交互脈(TWA)は不整脈イベント,死亡を予測しない。
    TWA substudyを490例(37施設)で実施:TWA検査結果が陽性のもの37%,陰性22%,不確定のもの41%。30か月後(中央値)の心臓突然死,持続性心室頻拍・細動,ICDの適切作動の初発は,陽性(17%。死亡25例),陰性例(12%。死亡10例)で両症例間に有意差はなかった:ハザード比1.24;95%信頼区間0.60~2.59(p=0.56)。非陰性(陽性,不確定例:33%。死亡49例),陰性(12%。死亡10例):1.28;0.65~2.53(p=0.46)。amiodarone投与の有無を問わず同様の結果:Circulation. 2008; 118: 2022-8. PubMed
  • 不整脈に対する電気ショックを受けたものは受けないものより死亡リスクが上昇する。
    ICDの電気ショックを1回以上受けたのは269例(33.2%)で,適切なショック(心室性頻拍,心室細動後のショック)は128例,不適切が87例,両方が54例。適切なショックは適切なショックを受けなかったものより全死亡リスクが有意に上昇(ハザード比5.68;95%信頼区間3.97~8.12,p<0.001),不適切なショックを受けた例も受けなかった例より死亡リスクが有意に増加した(1.98;1.29~3.05,p=0.002)。適切なショック後24時間以上生存していた例でも死亡リスクは依然として上昇(2.99;2.04~4.37,p<0.001)。電気ショックを受けた例での死因で最も多かったのは進行性心不全であった:N Engl J Med. 2008; 359: 1009-17. PubMed
  • ICD治療による生存期間の延長でQOLへの有害な影響はない。
    精神的な健康状態は3か月後(p=0.01),12か月後(p=0.003)はICD群の方が有意に改善したが,30か月後は有意差はみられなかった。身体機能の群間差は示されなかった。その他のQOLの評価には3か月後,12か月後,両方でICD群が改善したが,30か月後には有意差はなかった。評価の前月に作動したICDショックは複数の項目のQOL低下と関連:N Engl J Med. 2008; 359: 999-1008. PubMed
  • ベースライン時の除細動閾値テスト(DFT)は長期死亡,電気ショックの有効性を予測しない。
    ICD群(811例)のDFTデータ解析例は717例(うちICD例は88.4%)で,全例≦30-Jであった。≦20-Jでの除細動成功例は97.8%。DFT低値(≦10-J:547例)と高値(>10-J:170例)における生存率に差はなかった(p=0.41):J Am Coll Cardiol. 2008; 52: 551-6. PubMed
  • ICD群において失神と適切なICD作動は関係し,失神は治療にかかわらず死亡リスク上昇と関連した。
    ランダム化前の失神は162例(6%),ランダム化後は356例(14%)で治療群間差はみられなかった。ランダム化前後ともに失神が発生したのは46例(2%)。QRS≧120ms(ハザード比1.30,p=0.014)およびβ遮断薬非使用(1.25,p=0.048)は追跡中の失神の予測因子であった。失神の再発は治療による違いはなかったが,ICD群ではランダム化前の失神(1.75,p=0.019)と後の失神(2.91,p=0.001)と適切なショックが関連した。ランダム化後の失神は,全死亡(1.41,p=0.002),心血管死(1.55,p=0.001)を予測した。失神の死亡リスクの上昇における有意な治療群間差はみられなかった:J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 1277-82. PubMed
  • 血栓塞栓症は中央値45.5か月で71例(3.4%),4年間でICD群3.2%,amiodarone群2.6%,プラセボ群6.0%で,年間発症率はそれぞれ約0.8%,0.7%,1.5%。多変量解析によると,高血圧およびEFの低下が血栓塞栓症の有意な予測因子で,ICDおよびamiodaroneは血栓塞栓症非発症を有意に予測した:Circulation. 2007; 115: 2637-41. PubMed
  • 基本のコスト(discounting at 3%)はamiodarone群49,338ドル(p=0.08 vs プラセボ群42,971ドル),ICD群61,938ドル(p<0.0001)。ICD群のamiodarone群に比べた生存獲得年(life-year saved: LYS)ごとの費用対効果比は38,389ドル,費用効用比(cost-utility ratio)は質調整後獲得生存年(quality-adjusted LYS)ごとに41,530ドル。5年後の費用対効果はLYSにつき127,503ドル,8年後88,657ドル,12年後58,510ドル。NYHA II度症例の費用対効果比はLYSにつき29,872ドルであったが,III度の症例ではコスト増ながら有効性は上昇しなかった:Circulation. 2006; 114: 135-42. PubMed

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収載年月2005.04
更新年月2008.12