循環器トライアルデータベース

EPIC
European Prospective Investigation into Cancer and NutritionÅ|Norfolk Population Study

目的 癌発症と食事因子およびその他の決定因子との関連を検討している9か国共同研究(EPIC)の英国・Norfolkコホートおいて,血漿コレステリルエステル転送蛋白(CETP)蛋白量と冠動脈疾患(CAD)リスクのprospectiveな関連を検討し,トリグリセライド値に依存するかを評価。
一次エンドポイントは血漿CETP蛋白量,冠動脈リスク因子,CADリスクの関連性の評価。
コメント Circulation. 2004; 110: 1418-23.へのコメント
コレステロールエステル転送蛋白(CETP)とHDL-Cとの関連は良く知られており,HDL-Cと冠動脈疾患(CAD)との相関も良く知られている。したがって,CETP阻害薬でHDL-Cを上昇させてCAD予防を期待するという発想は当然出てくる。この立場から,CETP阻害薬の開発が行われているのが現状である。本研究では,従来知られているCETP蛋白量と脂質との関連を大規模なケースコントロールスタディで確認し,その上でCADとの関連を検討している。CETP蛋白量とCAD発症との関連性はあるものの,トリグリセリド値が正常のものではその傾向が消失し,高トリグリセリド血症(150mg/dL以上)においてのみ,その関連が示されている。したがって,今後CETP阻害薬の効果をみる場合にもこのような脂質異常を伴った場合にのみ有効である可能性を示唆するものである。(寺本
デザイン nested ケースコントロールスタディ,多施設(英国Norfolk州)。
期間 本報告時点の追跡期間は平均6年(2003年1月まで)。ベースライン調査期間は1993~'97年。
参加者 ケース群735例:英国Norfolk州在住の45~79歳の男女25,663例を対象としたEPIC-Norfolk cohort studyにおいて,外見上健常者(ベースライン来院時に心発作/脳卒中の既往なし)で追跡期間中に致死性/非致死性CADを発症したもの。対照群1400例:追跡期間中にCAD発症がなく,ケース患者1例につき2例の性別,年齢(5歳以内),来院日(3か月以内)の一致するもの(ケース患者70例は対照1例にのみ一致)。
■患者背景:年齢(両群とも64.9歳),男性(両群とも66.2%),非喫煙歴(ケース群30.5%,対照群40.4%),糖尿病(7.2%, 2.5%)。
調査方法 一般診療の登録患者を対象に郵便で参加者を募集し,健康および生活習慣に関する詳細な質問票への回答後,来院時に看護師が追加データ収集。食後の採血により,血清総コレステロール,HDL-C,トリグリセリドを測定し,LDL-Cを算出,血漿CRP,CETPを測定。CADリスクのオッズ比(OR)は年齢,性別を考慮し,冠動脈リスク因子(喫煙,収縮期血圧,糖尿病,BMI,CRP値,空腹時)で調整の上, CETP値(蛋白量)の五分位数[第1(<2.4mg/L):424例,第2(2.4~2.9mg/L):385例,第3(3.0~3.7mg/L):433例,第4(3.8~4.9mg/L):445例,第5(>4.9mg/L):448例]ごとに算出し,LDL-C,HDL-C,LDL-C/HDL-Cによるさらなる調整も行った。また,トリグリセリド値により2群(中央値未満/以上)に分類し,LDL-C/HDL-C,CADリスクを比較した。
結果 血漿CETP値はケース群(4.0mg/L)の方が対照群(3.8mg/L)より高かったが,両群間に有意差はなかった(p=0.07)。血漿CETP値は血漿総コレステロール,LDL-Cと正の相関,HDL-C値とは負の相関を示した。CADリスクの調整後ORはCETP五分位数に伴って直線的に上昇し(p=0.02),第5五分位では第1五分位の1.5倍となった(OR 1.43, 95%CI 1.03~1.99, p=0.03)。低トリグリセリド群(<中央値=150.5mg/dL)の血漿CETP値はケース群(3.9mg/L)と対照群(3.9mg/L)で有意差がなかったが(p=0.5),高トリグリセリド群(中央値以上)ではケース群(4.1mg/L)で対照群(3.8mg/L)に比べ有意に高く(p=0.036),低トリグリセリド群ではCADリスクがCETP値の上昇に関連しなかった一方(p=0.5),高トリグリセリド群では関連が強く(p=0.02),CETP第5五分位では第1五分位に対しORが1.87であった(95%CI 1.06~3.30, p=0.02)。高トリグリセリド群ではLDL-C値による調整後もCETP値とCADリスクの関連は有意であったが,さらにHDL-C値,LDL-C/HDL-C比により調整した場合は関連性は減弱し有意差はなくなった。
★結論★健常にみえる人において,CETP値の上昇はトリグリセリド値が高い場合においてのみCADリスクの上昇に関連した。

EPICホームページ
http://epic.iarc.fr/

[主な結果]
  • Boekholdt SM, et al: Plasma levels of cholesteryl ester transfer protein and the risk of future coronary artery disease in apparently healthy men and women: the prospective EPIC (European prospective investigation into cancer and nutrition)-Norfolk population study. Circulation. 2004; 110: 1418-23. PubMed
  • 平均生涯飲酒量とCVDとの関連は,ベースライン飲酒量と大して違いはない。飲酒は非致死的CADリスクと負の相関があった一方,脳卒中とは正の相関が示された。
    ベースラインおよび生涯飲酒量と心血管疾患(CVD*)リスクの用量反応関係をアルコール種別リスクも含め評価した(CVDの決定因子を検討しているEPIC-CVD研究)。
    * 非致死的・致死的冠動脈疾患(CAD),脳卒中(出血性および虚血性)
    EPIC参加国中,イタリア,スペイン,英国,オランダ,ギリシャ,ドイツ,スウェーデン,デンマークの8か国。1991年3月~2010年2月に発症したCVD例を評価。
    ベースラインの飲酒量はEPIC全体の有効な食事質問票に基づき,生涯飲酒量は20,30,40,50歳時のアルコール種別の週当たり飲酒量をグラス換算して算出した。生涯平均飲酒量は各年齢時の飲酒時間で重み付けして割り出した。
    ケース群(17,594例):CVD非既往で追跡期間中にCVDを発症したもの,対照群(16,244例):EPIC参加者のうちCVDを発症しなかったもの。
    ■患者背景:年齢中央値52歳,女性52%,飲酒量は男女とも非喫煙者にくらべ前喫煙者,現喫煙者で多かった。
    <結果>追跡不能は0.3%未満。
    初発CADは11,006例:非致死的9,307例;致死的1,699例,初発脳卒中は6,588例:非致死的5,855例:致死的733例。
    ベースラインの飲酒量と非致死的CADには負の相関がみられ(飲酒量12g/日 増加当たりのハザード比0.94;95%信頼区間 0.92~0.96, P =0.001 for trend),致死的CADとはJ字型の関係が示された(総摂取量0.1-4.9g/日に対するハザード比は,5.0-14.9g/日:0.83;0.70~0.98, 15.0-29.9g/日:0.65;0.53~0.81, 30.0-59.9g/日:0.82;0.65~1.03)。
    一方,ベースラインの飲酒量と脳卒中の関係は,非致死的,致死的ともに正の相関があった(飲酒量12g/日 増加当たりのハザード比は,非致死的脳卒中1.04;1.02~1.07,致死的脳卒中1.05;0.98~1.13。この結果は病型別(虚血性,出血性)にみてもほぼ同様であった。
    また,生涯平均飲酒量とCVDの関連も,ベースラインの飲酒量とほぼ同様の結果であった。
    アルコール種別でみると,ワインおよびビールの飲酒量と非致死的CADは負の相関があった[ワインおよびビール飲酒12g/日 増加当たりのハザード比はともに0.94;0.91~0.97/ 0.89~0.99, P =0.001 for trend(同0.013)]。ビールは非致死的脳卒中と正の相関が示された[摂取量12g/日増加当たり7%のリスク増加(3~12%), P =0.002 for trend]が,ワインとは有意な関係は示されなかった。また,スピリッツ,リカー類,酒精強化ワインの摂取は,CADおよび脳卒中のいずれとも関連がなかった。
    さらに,CVDに対する飲酒と喫煙の交互作用に関する強いエビデンスは示されなかった。
    Ricci C, et al: Alcohol intake in relation to non-fatal and fatal coronary heart disease and stroke: EPIC-CVD case-cohort study. BMJ. 2018; 361: k934. PubMed
  • 肥満(BMI)だけではなく,腹部脂肪(腹囲,ウエスト/ヒップ比)も死亡リスクと関連した(EPICに参加している9か国・35万9,387人での結果)。
    平均追跡期間9.7年で14,723例が死亡。死亡リスクが最も低かったBMIは男性25.3kg/m²,女性24.3kg/m²。腹囲が5cm増加するごとに,死亡リスクは男性1.17倍,女性1.13倍に増大した。BMIで調整後,腹囲5分位最大値(男性≧102.7cm,女性≧89.0cm)の最低値(<86.0cm, <70.1cm)との相対リスクは男性2.05;95%信頼区間1.80~2.33,女性1.78;1.56~2.04)およびウエスト/ヒップ比(1.68; 1.53~1.84, 1.51; 1.37~1.66)は死亡リスクと強い相関を示した。
    Pischon T, et al: General and abdominal adiposity and risk of death in Europe. N Engl J Med. 2008; 359: 2105-20. PubMed
  • アポリポ蛋白A-I,Bで調整した場合,HDL-Cが非常に高い例,HDL粒子サイズが非常に大きい例はCAD発症のリスクが上昇。
    IDEAL試験と合わせた検討結果(CAD発症858例 vs 非発症例1491例)。平均HDL-C:IDEAL試験46.5mg/dL, EPIC-Norfolk 50.9mg/dL。
    IDEAL:年齢,性,喫煙,アポリポ蛋白A-1(apoA-1)およびBで調整後,高HDL-Cは冠イベントの危険因子(40~49mg/dLの相対リスクは1.10, 50~59mg/dL: 1.12, 60~69mg/dL: 1.25, 70~79mg/dL: 2.19, >80mg/dL: 2.49 vs <40mg/dL)。EPIC: 42.5~54.1mg/dLのオッズ比0.98, 54.1~69.6mg/dL: 1.00, 69.6~81.2mg/dL: 1.11, 81.2~96.7mg/dL: 1.47, >96.7mg/dL: 1.41 vs <42.5mg/dL)。同様の関連がEPIC-NorfolkのHDL-C粒子サイズでもみられた。apoA-1とは逆相関した。
    van der Steeg WA, et al: High-density lipoprotein cholesterol, high-density lipoprotein particle size, and apolipoprotein A-I: significance for cardiovascular risk: the IDEAL and EPIC-Norfolk studies. J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 634-42. PubMed
  • 男性ホルモンであるテストステロン(endogenous testosterone)は,男性において心血管死,全死亡と逆相関する。
    男性11,606例:全死亡825例,心血管死369例,癌死304例。
    年齢,BMI,血圧,性ホルモンなどで調整後のテストステロン値4分位の最低値(<12.5nmol/L)と比較した全死亡のオッズ比(OR)は,2番目の分位(12.5~15.6nmol/L)0.75,3番目(15.7~19.6nmol/L)0.62,4番目(>19.6nmol/L)0.59(p for trend <0.001),心血管死のORはそれぞれ0.89, 0.60, 0.53 (p for trend <0.001)(endogenous testosterone)。
    Khaw KT, et al: Endogenous testosterone and mortality due to all causes, cardiovascular disease, and cancer in men: European prospective investigation into cancer in Norfolk (EPIC-Norfolk) prospective population study. Circulation. 2007; 116: 2694-701. PubMed
  • 平均追跡期間9.1年で冠動脈疾患(CAD)が男性1708例,女性892例発症。CAD発症のウエスト/ヒップ比の5分位 vs 1分位のハザード比(BMI,危険因子調整後)は男性1.55,女性1.91。腹部肥満はBMIよりもCAD発症の強い予測因子である。
    Canoy D, et al: Body fat distribution and risk of coronary heart disease in men and women in the European prospective investigation into cancer and nutrition in Norfolk cohort: a population-based prospective study. Circulation. 2007: 11: 2933-43. PubMed
  • 血清アポリポ蛋白(apo)A-IIはケース群(34.5mg/dL)が対照群(35.2mg/dL)より有意に低く,CADのリスクと負の相関がみられた。apoA-Iで調整後もapoA-IIのCAD予測能に影響はなく,HDL粒子数およびサイズで調整後もapoA-IIとCADのリスクと関連がみられた。
    Birjmohun RS, et al: Apolipoprotein A-II is inversely associated with risk of future coronary artery disease. Circulation. 2007; 116: 2029-35. PubMed
  • 観察開始時に明らかに健康で,8年間の観察期間で冠動脈疾患(CAD)を発症した1138例での検討:発症例は非発症例に比べ,血清ミエロペルオキシダーゼ(MPO)値が有意に高く(中央値704pmol/L vs 638pmol/L, p<0.001),CRP,白血球数と有意に相関した。MPOの4分位の第4分位 vs 第1分位のオッズ比(OR)は1.49(95%信頼区間1.20~1.84, p<0.001)。従来の危険因子で調整後のORも1.36でやはり有意であった。
    MPOは女性に比べ男性で有意に高かった(680pmol/L vs 619pmol/L, p<0.001)。男性・CAD例は734pmol/L vs 男性・CAD非発症例657pmol/L(p<0.001),女性・CAD発症例660pmol/L vs 女性・非発症例607pmol/L(p=0.098)。
    MPO上昇(>728pmol/L)は,CAD発症の低リスク例:LDL-C<130mg/dL(OR 1.52, 1.21~1.91), HDL-C>50mg/dL(OR 1.59: 1.24~2.05), CRP<20mg/dL(OR 1.42, 1.14~1.77)でもCAD発症を予測した。
    Meuwese MC, et al: Serum myeloperoxidase levels are associated with the future risk of coronary artery disease in apparently healthy individuals: the EPIC-Norfolk prospective population study. J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 159-65. PubMed

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収載年月2005.06
更新年月2018.08