| INTERHEART |
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世界中における冠動脈疾患のリスク因子の重要性を評価するための大規模標準化症例対照研究。様々なリスク因子と急性心筋梗塞(AMI)との関連度の決定付け,その関連度が地域,民族,性,年齢により異なるかを検討する。 |
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2001年のworld health reportでも世界中で心血管病の増加が顕著であり,その対策が重要であることが報告された。そして,欧米を中心として動脈硬化ガイドラインが作成されている。しかし,問題は心血管病の死亡率は必ずしも高くはないが徐々に心血管病が増加しているわが国などは,従来の死亡率でみるタイプの調査では危険因子の寄与率が必ずしも十分把握できていない可能性がある。したがって,疾病発症でみるケースコントロールスタディの意義は十分あると思われる。本研究で特筆すべきことは,オッズ比でみる限り,世界中,男女を問わず危険因子の寄与率は違わないということと,高脂血症,喫煙,社会的精神的因子が最も寄与率が高いという点である。本レポートは今後,各地域における心筋梗塞予防の重要な情報になり,各地域のガイドライン作成に大きく影響を与えるものと期待される。(寺本) |
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観察研究(ケーススタディ),多施設(アジア,欧州,中東,アフリカ,オーストラリア,北米,南米の52か国262施設)。 |
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症例,対照登録期間は1999年2月~2003年3月。 |
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症例12,461例,対照14,637例。心筋梗塞の特徴的症状+新規発症を暗示するようなECG上の変化。症例(AMI)ごとに1組以上の年齢がマッチする(±5歳),性,施設がマッチする心疾患を有していない対照も登録した。 |
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人口統計的因子(出身国,第一言語),社会経済因子(教育,職業,収入),ライフスタイル(喫煙,身体活動,食事),本人および家族の病歴,心血管疾患リスク因子の情報を入手。 リスク因子[喫煙,高血圧あるいは糖尿病既往,ウエスト/ヒップ比,食事,身体活動,アルコール,アポリポ蛋白(Apo),社会的精神的因子]とAMIの関係を検討するため,オッズ比と99%信頼区間を算定,さらに人口寄与リスク[PAR:population attributable risks(一般人口からそのリスク因子が除去された場合,何%その疾患を減少させるかという指標)]を計算した。 |
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現在喫煙中 vs 喫煙経験なしのオッズ比(OR)2.87,現在喫煙中および喫煙歴 vs 喫煙経験なしのOR 2.04, PAR 35.7%),Apo B/Apo A1比の上昇(5分位の最大値 vs 最小値)のOR 3.25, PAR 49.2%(5分位の上位4つの値 vs 最小値),高血圧既往のOR 1.91, PAR 17.9%,糖尿病既往のOR 2.37, PAR 9.9%,腹部肥満(3分位最大値 vs 最小値のOR 1.62,中間値 vs 最小値のOR 1.12),3分位の上位2つの値 vs 最小値のPAR 20.1%,心理社会因子(OR 2.67, PAR 32.5%),果物野菜摂取(0.70, 13.7%),アルコール(0.91, 6.7%),身体活動(0.86, 12.2%)のすべてが有意にAMIと相関した(アルコールがp=0.03以外はすべてp<0.0001)。この相関は老若男女に関係なく世界中で認められ,男性PARの90%,女性の94%がこれら9因子によるものであった。 社会的精神的因子を年齢で層別化(<45歳,45~55歳,56~65歳,66~70歳,>70歳)して検討(AMI 11,119例,対照13,648例):ある期間の職場でのストレス(OR 1.38),職場での恒常的なストレス(2.14),家庭でのストレス(1.52),職場,家あるいは両方でのストレスが時々ある(1.45),いつもある(2.17),金銭的ストレス(1.33),離婚,失業,病気などの人生の大きな出来事(1.48)はAMI発症と有意に関連した(p<0.0001)。うつのORは1.55であった。この違いは民族,地域,男女を問わず一致していた。
[主な結果]- 心筋梗塞の危険因子としてのメタボリックシンドローム(MetS)は糖尿病,高血圧と同程度であるが,人口寄与危険度は小さい。
2万6,903例(急性心筋梗塞発症例1万2,297例[HbA1c,HDL-Cの測定値のあるもの6,905例],対照1万4,606例[9,109例]):WHO基準によるMetS(年齢,肥満調整後)はMI群の22.1%,対照群の10.1%*,国際糖尿病連合(IDF)定義(年齢,肥満で調整後)ではそれぞれ28.1%, 17.2%*。定義を問わず年齢,肥満で調整すると,MI例におけるMetSの罹患率は女性が男性に比べて,南アジア,その他のアジア人(タイ,フィリピン,日系),アラブ,黒人アフリカ人(black Africans),非白人アフリカ人(colored Africans)がヨーロッパ人,中国人,ラテンアメリカ人に比べて高かった。また,定義を問わない糖尿病あるいはHbA1c≧6.5%はMI群3,045例(39.7%),対照群1,843例(19.6%)*,高血圧は5,384例(43.9%),3,058例(23.4%)*。* p<0.0001 MetSはMIのリスク増大と関連(WHO基準:オッズ比2.69;95%信頼区間2.45~2.95,IDF基準:2.20;2.03~2.38。人口寄与危険度(PAR)はそれぞれ14.5%;12.7~16.3%, 16.8%;14.8~18.8%)。この関連は東南アジア人,特にタイ,フィリピン,シンガポール,日本,その他のアジア人がその他の地域,人種より強かった。 WHOの定義によるMetSとMIの関連は糖尿病(2.72;2.53~2.92・PER:25.2;23.1~27.3),高血圧(2.60;2.46~2.76・27.2;25.5~29.2)と同程度で,腹部肥満(1.64;1.55~1.74・29.0;26.0~32.0),HDL-C低値(1.30;1.22~1.37・10.9;8.3~13.1)はMIのリスクが下がった。が,糖尿病,高血圧のほうがPARは大きかった。 閾値より低値の危険因子が≧3つ集積した場合,正常値に比べMIのリスクが増大し(1.50;1.24~1.81, p<0.001),閾値より高値の場合はさらに上昇(2.73;2.49~3.00, p<0.001)。IDF定義でも同様の結果であった(Mente A et al for the INTERHEART investigators: Metabolic syndrome and risk of acute myocardial infarction: a case-control study of 26,903 subjects from 52 countries. J Am Coll Cardiol. 2010; 55: 2390-8.)。 PubMed
- アジア(9699人。南アジア:2,674人,中国/香港:5,232人,東南アジア:1,546人,日本:247人・65施設)における急性心筋梗塞(AMI)と関連因子。
AMI初発例(5,731例),対照(6,459例)のいずれでも,非アジア人(10,322人)に比べアジア人はLDL-Cが約10mg/dL低く,LDL-C≦100mg/dL例はアジア人が多かった(AMI初発例25.5%,対照32.3% vs 非アジア人19.4%,25.3%)。HDL-Cはアジア人の方がわずかに低かった。低HDL-C例は南アジア人(AMI初発例82.3%,対照81%)がその他のアジア人(57.4%,51.6%)より多かった(p<0.0001)。しかし,LDL-C上昇とHDL-C低下によるAMIリスクはアジア人,非アジア人で同等であった。南アジア人においては,アポリポ蛋白(Apo)A1はHDL-Cよりもリスクを予測した。アジア人,非アジア人においてApoB/ApoA1はAMIリスクと最も強く関連した(Karthikeyan G et al: Lipid profile, plasma apolipoproteins, and risk of a first myocardial infarction among Asians: an analysis from the INTERHEART study. J Am Coll Cardiol. 2009; 53: 244-53.)。 PubMed
- 主な食事のパターン(4分位でみる食事リスクスコア):東洋(Oriental);豆腐,大豆などの摂取が多い,西洋(Western):揚げ物,塩気の多いスナック菓子,卵,肉の摂取が多い,prudent(果物,野菜の摂取が多い)と急性心筋梗塞(AMI)との関連:prudentな食事とAMIは逆相関しprudent度の高い例では防御度も高い。Westernな食事とAMIはU字型の曲線関係にあり,Orientalな食事とは関連がみられなかった。unhealthy dietの4分位のうち上位3分位の第4分位と比べたAMIへの人口寄与危険度は30%(Iqbal R et al on behalf of the INTERHEART study: Dietary patterns and the risk of acute myocardial infarction in 52 countries: results of the INTERHEART study. Circulation. 2008; 118: 1929-37.)。 PubMed
- 急性心筋梗塞発症リスクの推定能が最もすぐれている脂質比は非空腹時アポリポ蛋白B(ApoB)/アポリポ蛋白A1(ApoA1)。
ApoB/ApoA1比の人口寄与危険度(Population-Attributable Risk:PAR)は54%で,1標準偏差のオッズ比は1.59(95%信頼区間1.53~1.64)。LDL-C/HDL-C比のPARは37%,総コレステロール/HDL-C比は32%で,ApoB/ApoA1比より低かった(p<0.0001)。これは,人種,性,年齢を問わず同様であった(McQueen MJ et al for the INTERHEART study investigators: Lipids, lipoproteins, and apolipoproteins as risk markers of myocardial infarction in 52 countries (the INTERHEART study): a case-control study Lancet. 2008; 372: 224-33.)。 PubMed
- 心筋梗塞発症の男女(女性6787例)別危険因子
急性心筋梗塞初発年齢(中央値)は女性の方が男性より高かった(65歳 vs 56歳,p<0.0001)。女性では60歳以上が約3分の2,男性では40%。 心筋梗塞発症関連因子:高血圧オッズ比(女性2.95;95%信頼区間2.66~3.28 vs 男性2.32;2.16~2.48,p=0.0001),糖尿病(4.26;3.68~4.94 vs 2.67;2.43~2.94,p<0.0001),身体活動(0.48;0.41~0.57 vs 0.77;0.71~0.83,p<0.0001),中等度のアルコール摂取(0.41;0.34~0.50 vs 0.88;0.82~0.94,p<0.0001)は,女性の方が男性より心筋梗塞とより強く関連。脂質値異常,喫煙,腹部肥満,高リスクの食事,心理社会的ストレス因子との関連度は男女同様。リスク因子との関連は高齢者(60歳以上)に比べ若い(60歳未満)例で概して強い。以上9つの危険因子の人口寄与リスクは94%で性差はなかった(96% vs 93%)(Anand SS et al on behalf of the INTERHEART investigators: Risk factors for myocardial infarction in women and men: insights from the INTERHEART study. Eur Heart J. 2008; 29: 932-40.)。 PubMed
- ラテンアメリカ(アルゼンチン,ブラジル,コロンビア,チリ,グアテマラ,メキシコ):AMI初発1237例,対照1888例。AMIのリスクが高かったのは持続する心理社会的ストレス(OR 2.81;95%CI 2.07~3.82),高血圧既往(2.81;2.39~3.31),糖尿病(2.59;2.09~3.22),喫煙中(2.31;1.97~2.71),ウエスト/ヒップ比の増加(3分位の第1分位 vs 第3分位のOR 2.49;1.97~3.14),アポリポ蛋白B/A-1(3分位の第1分位 vs 第3分位のOR 2.31;0.55~0.82)の上昇,低かったのはフルーツ,野菜の日常的摂取(0.63;0.51~0.78),規則的な運動(0.67;0.55~0.82)。腹部肥満の人口寄与危険度は48.5%,脂質異常40.8%,喫煙38.4%と高く,これらを合わせると88%になった(Lanas F et al for the INTERHEART investigators in Latin America: Risk factors for acute myocardial infarction in Latin America: the INTERHEART Latin American study. Circulation. 2007; 115: 1067-74.)。 PubMed
- 南アジア(インド,パキスタン,スリランカ,バングラデシュ,ネパール)でのAMI初発平均年齢は53.0歳でその他の国・地域(58.8歳)に比べ有意に若い。またprotective factor(運動量が中等度~重度6.1% vs その他の国・地域21.6%;果物,野菜の摂取/日 26.5% vs 45.2%;飲酒1回/週が10% vs 26.9%)が低い。一方で,harmful factor(アポリポ蛋白B100/アポリポ蛋白A-1比43.8% vs 31.8%,糖尿病既往9.5% vs 7.2%)は高い。(Joshi P et al: Risk factors for early myocardial infarction in South Asians compared with individuals in other countries. JAMA. 2007; 297: 286-94.)。 PubMed
- 喫煙率が65歳以下の女性で比較的高い(>20%)のは北米,西ヨーロッパ,アフリカ,非常に低い(<5%)のはアジア,中東。中間(10~20%)がオーストラリア/ニュージーランド,東・中央ヨーロッパ,ラテンアメリカ。55歳以下の男性で喫煙率が最も高い(>50%)のは中国,香港,東・中央ヨーロッパ,アフリカ。最も低い(<25%)のは北米,オーストラリア,ニュージーランドで,これらは喫煙既往率が最も高い地域でもある。喫煙既往率の低いのは南アジア,中東,中国,香港。
喫煙例は非喫煙例に比べ,非致死的AMIのリスクが約3倍(オッズ比[OR]2.95;95%信頼区間2.77~3.14,p<0.0001)で,そのリスクは喫煙本数が増えるごとに上昇した(1~9本/日:OR1.63;p<0.0001,10~19本/日:OR2.59;p<0.0001,20本以上/日:OR4.59;p<0.0001)。喫煙の影響は56歳以上(OR2.55)に比べ55歳以下(OR3.53)で影響が大きく,中でも20本/日以上の喫煙例で最も高かった(OR5.6)。 禁煙後3年のORは1.87に低下。煙草の種類を問わず喫煙そのものがリスク上昇と関連。>21時間/週の間接喫煙例は1~7時間/週に比べOR1.24(Teo KK et al on behalf of the INTERHEART study investigators: Tobacco use and risk of myocardial infarction in 52 countries in the INTERHEART study: a case-control study. Lancet. 2006; 368: 647-58.)。 PubMed
- アフリカ(sub-Saharanアフリカ9か国):AMI初発578例,対照785例(black African 36.3%,colored African 46.7%,European and other African 17%)。MI初発平均年齢は54.3歳(男性53.2歳,女性56.4歳)でINTERHEART研究全体よりも3.8歳早い発症。一般的な危険因子とMIとの関連はINTERHEART研究全体と同様であった。modeling 危険因子(喫煙歴,糖尿病既往,高血圧既往,腹部肥満,アポリポ蛋白B/アポリポ蛋白A-1比)のAMI寄与リスクは89.2%。black Africanは他のアフリカ人とは対照的にAMIのリスクは収入,教育レベルが高いほど上昇した。高血圧歴はblack AfricanにおいてMIリスクをより上昇させた(Steyn K et al for the INTERHEART investigators in Africa: Risk factors associated with myocardial infarction in Africa; the INTERHEART Africa study. Circulation. 2005; 112 :3554-61.)。 PubMed
- Yusuf S et al on behalf of the INTERHEART study investigators: Effect of potentially modifiable risk factors associated with myocardial infarction in 52 countries (the INTERHEART study); case-control study. Lancet. 2004; 364: 937-52. PubMed
- Rosengren A et al for the INTERHEART investigators: Association of psychosocial risk factors with risk of acute myocardial infarction in 11119 cases and 13648 controls from 52 countries (the INTERHEART study); case-control study.
Lancet. 2004; 364: 953-62. PubMed
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