循環器トライアルデータベース

HPFS
Health Professionals Follow-up Study

目的 食事と心疾患および癌との関連を検討する前向きコホート研究。
コメント 最近は薬物による強力な治療の効果が続々と発表されているが,基本は,生活療法であることは言うまでもない。しかし,1970年代まで行われていた食事療法による介入試験はほとんどが失敗し,食事療法の大規模介入試験の困難さが認識される。翻って,近年薬物療法の効果が示され,脂質や血圧,血糖のコントロールが確実な動脈硬化発症予防につながることが示されると,改めて生活療法によるコントロールの重要性を認識すべきであると思われる。本研究のように極めて大規模で医療従事者を対象とした食事内容と冠動脈疾患に関する調査は,多くの正しい情報を与えてくれるものと期待される。近年重視されているアディポネクチンも,この大規模な調査では心血管病との関連性が明らかになったが,今後,食事内容との関連が示されることが期待される。このように,本研究は食事介入の重要な情報となることが期待される。(寺本
デザイン 観察研究。
期間 1986年開始。
参加者 51,529例。40~75歳。癌,心血管疾患の既往のないアメリカの男性医療専門家:歯科医29,683例,獣医10,098例,薬剤師4,185例,検眼士3,745例,整骨医2,218例,手足治療医1,600例。
調査方法 1986年,飲酒量を含む131品目の食物についての摂取頻度に関する半定量的質問票に自己回答後,過去10年間の医療歴,心疾患リスク因子,食事の変化にも回答。1988年に新たに診断された冠動脈疾患(CAD)を聞き出すために追跡質問票を送付。
結果

[主な結果]
  • 低リスクのライフスタイル(5因子:喫煙しない,BMI<25kg/m2,中等度の活動時間≧30分/日,適度の飲酒[女性:5~15g/日,男性:5~30g/日],健康的な食事スコアの上40%以内)は複数の慢性疾患リスク低下と関連し,特に脳梗塞予防に有効であると思われる。
    Nurses‘ Health Study(NHS)と合わせて検討:2004年までの追跡で脳卒中は女性(NHS):1559例(脳梗塞853例,脳出血278例),男性(HPFS):994例(600例,161例)。全5因子が低リスク女性の因子非保有例に比べた相対リスクは,脳卒中0.21(95%信頼区間0.12~0.36),脳梗塞0.19(0.09~0.40)。男性は脳卒中0.31(0.19~0.53),脳梗塞0.20(0.10~0.42)。女性の脳卒中の47%,脳梗塞の54%が低リスクのライフスタイル非遵守によるもので,男性はそれぞれ35%,52%(Chiuve SE et al: Primary prevention of stroke by healthy lifestyle. Circulation. 2008; 118: 947-54.)。 PubMed
  • ビタミンD欠乏例は心筋梗塞のリスクが上昇。
    nested case control study(18,225例。追跡期間10年で非致死的心筋梗塞[MI]あるいは致死的冠動脈疾患454例)。
    25-hydrixyvitamin D(25[OH]D)欠乏(≦15ng/mL)は十分(≧30ng/mL)な例に比べMIのリスクが上昇:相対リスク2.42;95%信頼区間1.53~3.84(p<0.001 for trend)。MI家族歴,BMI,糖尿病や高血圧の既往などで調整後も,関連は同様にみられた(2.09;1.24~3.54,p=0.02 for trend)。中等度例も十分な例に比べるとリスクが上昇した:22.6~29.9ng/mL(1.60;1.10~2.32),15.0~22.5ng/mL(1.43;0.96~2.13)(Giovannucci E, et al. 25-hydroxyvitamin D and risk of myocardial infarction in men: a prospective study. Arch Intern Med. 2008; 168: 1174-80.)。 PubMed
  • 痛風症例は死亡リスクが上昇(観察期間12年)。
    ベースライン時に非冠動脈疾患(CHD)・非痛風例と比較した,非CHD・痛風例の多変量解析による相対リスク(RR)は,全死亡:1.28(95%信頼区間1.15~1.41),心血管死:1.38(1.15~1.66),CHD死:1.55(1.24~1.93)。
    CHD・非痛風例と比較したCHD・痛風例のRRは,全死亡:1.25(1.09~1.45),心血管死:1.26(1.07~1.50),CHD死:1.24(1.04~1.49)。
    痛風例は非痛風例に比べ非致死的心筋梗塞のリスクが高い(RR 1.59[1.04~2.41])(Choi HK and Curhan G: Independent impact of gout on mortality and risk for coronary heart disease. Circulation. 2007; 116: 894-900.)。 PubMed
  • ベースライン時のデータから栄養情報のないもの,慢性疾患の既往例を除外した42847例での検討:16年間でCHD(非致死的心筋梗塞,非致死的CHD)は2183例。多変量解析によると,5つのライフスタイル因子:非喫煙;BMI<25kg/m2;中等度~活発な身体活動>30分/日;中等度の飲酒[5~30杯/日];Alternate Healthy Eating Indexに基づくhealthy diet score分布の上位40%)を1つでも有しているものは,有していない例に比べてCHDリスクが低かった。5つの健康的なライフスタイル遵守により本コホートの冠イベントの62%が予防できる可能性がある。降圧薬,あるいは高脂血症治療薬服用例の冠イベントの57%が低リスクライフスタイルにより予防できると思われる。追跡期間中ライフスタイルの変更をしなかったものに比べ,2つ以上の低リスクライフスタイル因子を実行したものはCHDリスクが27%低下した(Chiuve SE et al: Healthy lifestyle factors in the primary prevention of coronary heart disease among men: benefits among users and nonusers of lipid-lowering and antihypertensive medications. Circulation. 2006; 114: 160-7.)。 PubMed
  • NHSと合わせて検討:HPFSでは1986年より,NHSでは1980年よりコーヒー消費量の評価を開始し,以後2~4年ごとに2000年まで評価。この間,CHDは男性で2173例発症:非致死的心筋梗塞1449例,致死的CHD724例,女性で2254例(:各1561例,693例)。補正後のコーヒー消費量によるCHDの相対リスクは,<1杯/月(男性1.0,女性1.0),1杯/月~4杯/週(1.04,0.97),5~7杯/週(1.02,1.02),2~3杯/日(0.97,0.84),4~5杯/日(1.07,0.99),≧6杯/日(0.72,0.68)であった(Lopez-Garcia E et al: Coffee consumption and coronary heart disease in men and women: a prospective cohort study. Circulation. 2006; 113: 2045-53.)。 PubMed
  • 非HDL-Cおよびアポリポ蛋白B(apoB)はLDL-CよりもCHDの強い予測因子であるが,両者を相互に調整するとapoBのみが予測因子であった(Pischon T et al: Non-high-density lipoprotein cholesterol and apolipoprotein B in the prediction of coronary heart disease in men. Circulation. 2005; 112: 3375-83.)。 PubMed
  • Nurse Health Studyと合わせた結果:週3~4回のアルコロールは男性でも女性でも心筋梗塞(MI)の低リスクと関連し,その関連は明らかにアルコールとHDL-C,フィブリノゲン,HbA1cとの関係によるものである(Mukamal KJ et al: Drinking frequency, mediating biomarkers, and risk of myocardial infarction in women and men. Circulation. 2005; 112: 1406-13.)。 PubMed
  • 魚,植物由来のn-6系多価不飽和脂肪酸(PUFA)にはほとんどみられないがn-3系PUFAはCHDのリスクを低下させる可能性がある。特に魚由来のn-3系PUFAの摂取量が少ないとき植物由来のn-3系PUFAがCHDリスクを抑制する可能性がある(Mozaffarian D et al: Interplay between different polyunsaturated fatty acids and risk of coronary heart disease in men. Circulation. 2005; 111: 157-64.)。 PubMed
  • Nurses' Health Studyと合わせて検討:インターロイキン 6およびC-reactive protein(CRP)の上昇は男女で冠動脈疾患(CHD)のリスク上昇と有意に相関したが,可溶tumor necrosis factor α(TNF-α)受容体1と2(sTNF-R1,sTNF-R2)の上昇は女性においてのみ有意に相関(Pai JK et al: Inflammatory markers and the risk of coronary heart disease in men and women. N Engl J Med. 2004; 351: 2599-610.) PubMed
  • 1993~'95年に血液サンプルを提供した18225例のネスティッド・ケースコントロールスタディ:2000年1月31日までの6年間で非致死的心筋梗塞(MI)あるいは致死的冠動脈疾患の発症は266例。血漿アディポネクチンが最低四分位値のものは最高値のものに比べMIの発症が有意に増加[相対リスク(RR)0.39,95%信頼区間(CI)0.23-0.64,p<0.001]。本相関にMI家族歴,BMI,飲酒量,身体活動,糖尿病および高血圧既往は影響しなかった(RR 0.41,95%CI 0.24-0.70,p<0.001)。さらにヘモグロビン(Hb)A1cあるいはCRP(C-reactive protein)の影響もほとんどなかった。しかし,LDL-CおよびHDL-Cで調整すると相関度は減弱した(RR 0.56,95%CI 0.32-0.99,p=0.02)(Pischon T et al: Plasma adiponectin levels and risk of myocardial infarction in men. JAMA. 2004; 291: 1730-7.)。 PubMed
  • 5回目の調査(1991~'95年,3799例中2962例):正常および耐糖能異常患者における空腹時血糖値と凝固因子;正常耐糖能では空腹時インスリンと男性のフィブリノーゲンを除く凝固因子レベルの上昇と関連(Meigs JM et al: Hyperinsulinemia, hyperglycemia, and impaired hemostasis. JAMA. 2000; 283: 221-8. ) PubMed
  • 6年の追跡結果:CHDは757例発症(致死的冠動脈イベント231例,非致死的MI 526例)。歯周病既往例における標準的なCHDのリスク因子で補正後の保有歯数10本以下のCHDリスクは25本以上に比べ上昇した(相対リスク1.67,95%信頼区間1.03~2.71,p=0.09)。この相関度は食事因子で調整したときのみわずかに減弱した。歯周病との関連はみられなかった(Joshipura KJ et al: Poor oral health and coronary heart disease. J Dent Res. 1996; 75: 1631-6.)。 PubMed
  • 1日の平均カロリー摂取量(800~4200kcal)非回答例および70品目しか摂っていない1530例,1986年に癌,MI,狭心症,脳卒中,CABGあるいはPTCA施行既往回答例5940例を除外した44059例で解析。
    冠動脈疾患(CAD)は350例。うち非致死的MI 164例(確実なMIは136例),CADによる死亡50例(うち12例は突然死),CABGあるいはPTCA施行136例。コレステロール,脂肪,食物繊維摂取を含む冠リスク因子で補正後,アルコール摂取量の増加とCAD発症に逆相関が認められた(p<0.001)。相関が最も強かったのはスピリット飲酒例であった。現在の非飲酒例10302例,あるいはアルコール摂取量低下につながると思われるCAD発症に関連する可能性のある疾患(高血圧,糖尿病,痛風など)16342例を除いても,実質上相対リスクには影響しなかった(Rimm EB et al: Prospective study of alcohol consumption and risk of coronary disease in men. Lancet. 1991; 338: 464-8.)。 PubMed

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収載年月2004.10
更新年月2008.10