循環器トライアルデータベース

A to Z
Aggrastat-to-Zocor

目的 A-phase:非ST上昇の急性冠症候群(ACS)で血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬tirofibanとaspirinの併用療法例において,低分子量heparin(enoxaparin)の有効性と安全性を非分画heparin(UFH)と比較する非劣性試験。一次エンドポイントはtirofiban投与開始後7日以内の全死亡+心筋梗塞(MI)+難治性虚血。二次エンドポイントは一次エンドポイント+緊急血行再建術+臨床的虚血。
Z-phase:HMG -CoA reductase阻害薬simvastatinによる早期の積極的な治療の有効性と忍容性を非積極的治療と比較。一次エンドポイントは心血管死+非致死的MI+ACSによる再入院+脳卒中。
コメント 非ST上昇の急性冠症候群例に対して血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬(tirofiban)と非分画heparinの併用療法はすでに確立されている。非分画heparinに比し低分子量heparinは血中半減期が長く,血液凝固能のモニタリングが不要で血小板減少症の頻度は低いが,腎不全例やCABG施行予定例には注意を要し,小出血の頻度が高いと報告されている。本研究ではtirofibanとの併用において,低分子量heparinが非分画heparinと同様に有用であり,特にハイリスク例や保存的治療を行った例では一次エンドポイントの発生率がより低下していた。これまでにも同様のプロトコールを用いたトライアル(ACUTE II,INTERACT)があったが,低分子量heparinの安全性を示すのみで,臨床的有用性の評価が可能な症例数ではなかった。本研究では年齢が3歳若く,陳旧性心筋梗塞症例が少なく,スタチンを内服しているハイリスク例を除外しているので,一次エンドポイントの発生率は約9%と低く,両heparinの差異がみられなかったのかもしれない。非ST上昇の急性冠症候群のPCI施行例(tirofiban併用)においても,低分子量heparinと非分画heparinは同等の有用性が報告されている(SYNERGY trial)。(星田
デザイン A-phase:無作為割付け,オープンラベル,多施設(41か国340施設),intention-to-treat解析。
Z-phase:無作為割付け,二重盲検,多施設(41か国322施設),intention-to-treat解析。
期間 A-phaseの追跡期間は30日。登録期間は1999年12月~2002年5月。
Z-phaseの追跡期間は6~24か月。登録期間は1999年12月~2003年1月。
対象患者 A-phase(3987例):安静時に10分以上続く虚血の症状があり,STの0.5mm以上の下降;1mm以上の一過性ST上昇;心マーカー上昇(トロポニンあるいはCKMBが正常値上限以上,また特定のマーカー値が得られない場合は総CKが正常値上限の2倍)を伴う発症から24時間以内の非ST上昇ACS。
除外基準:非虚血性の胸痛,ショック,試験薬の使用が不能なmedical condition,脂質低下薬使用中,総コレステロール>250mg/dL,血清クレアチニン>2mg/dLなど。
■患者背景:年齢中央値61歳,男性(enoxaparin群71.4%,UFH群71.2%),狭心症既往(58.2%,55.2%;p=0.06),喫煙(36.0%,39.4%;p=0.03),試験担当医によるMIの診断(74.5%,72.8%),心マーカー上昇(80.3%,79.7%),ST変化>1mm(70.3%,71.9%),UFH/LMWH使用歴なし(31.1%,30.2%)。
Z-phase(4497例):21~80歳の非ST上昇ACSあるいはST上昇MI,総コレステロール(TC)≦250mg/dL,次のリスクを1つ以上有するもの;70歳以上;糖尿病;冠動脈疾患・末梢血管疾患・脳卒中既往;CK-MBあるいはトロポニン上昇;再発性のST波変化を伴う狭心症;退院前の負荷試験によるECG上の虚血;冠動脈造影による多枝疾患。
■患者背景:平均年齢61歳,男性(非積極治療群75%,積極治療群76%),予防的PCI(percutaneous coronary intervention) 両群45%,イベント治療のためのPCI 44%,43%,MI16%,18%(p=0.05),脳血管疾患6%,5%(p=0.06),6週間以内のうっ血性心不全4%,6%(p=0.02),糖尿病24%,23%,高血圧 両群50%,ST上昇MI 両群40%,非ST上昇ACS 両群60%,A phaseからの参加58%,57%,退院時の併用療法;aspirin 両群98%,β遮断薬 両群90%,ACE阻害薬 72%,70%。
治療法 A-phase
enoxaparin群(2026例):12時間ごとに1mg/kg,UFH群(1961例):ACCおよびAHAのガイドラインに基づく用量(体重が≧70kg:4000Uボーラス静注後900U/時を点滴,<70kg:60U/kg,最大4000Uまでボーラス静注後12U/kg/時を点滴)を投与(目標活性化部分トロンボプラスチン時間50~70秒)。
全例にtirofiban[10mg/kgを3分ボーラス投与後,0.1mg/kg/分を48時間以上(あるいはインターベンション後は12時間以上)120時間以内維持点滴],aspirin(150~325mg/日投与後,75~325mg/日)を投与。
30日後のエンドポイント追跡後にZ phaseにランダム化。
Z-phase
早期積極治療群(2265例):simvastatin 40mg/日を30日投与後80mg/日に増量。非積極治療群(2232例):プラセボを4か月投与後,simvastatin 20mg/日を投与。
結果 A-phase
試験薬投与時間の中央値はenoxaparin群49.1時間 vs UFH群48.2時間。一次エンドポイントの発生は,enoxaparin群169例(8.4%)vs UFH群184例(9.4%)[ハザード比(HR)0.88,95%信頼区間 0.71~1.08]。絶対ベネフィット1%,相対ベネフィット12%で所定の非劣性試験の基準に合致していた。
一次エンドポイントと二次エンドポイントの要素のうち,死亡の発生がenoxaparin群23例(1.1%)vs UFH群17例(0.9%)とわずかであったことを除き,すべてでenoxaparinの優越性を示していた。TIMI大出血および小出血の発生率はenoxaparin群3.0% vs UFH群2.2%(p=0.13)。worst-case解析では,enoxaparinの使用によりTIMI大出血が200例に1件発生すると算定された(0.9% vs 0.4%,p=0.05)。
★結論★tirofibanおよびaspirinが投与されている非ST上昇ACS患者において,enoxaparinはUFHの適切な代替治療法であると考えられる。本試験におけるenoxaparinのベネフィットは非劣性試験の基準に合致しており,血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬を使用しない過去の試験結果とも一致している。Z-phase
発症からランダム化までの平均時間は3.7日。LDL-Cは積極群でsimvastatin 40mg/日投与の1か月後に112→ 68mg/dLへ39%低下,80mg/日投与の4か月後に62mg/dLへさらに6%低下したが,24か月後に上昇(各p<0.001),非積極群は111→ 122→ 124(プラセボ投与時)→ 81mg/dL(simvastatin 20mg/日投与時)。TCは積極群185→ 138→ 132→ 138mg/dL(各p<0.001),非積極群184→ 198→ 202→ 157mg/dL。C-reactive proteinは4,8か月後に積極群で有意に低かった。
一次エンドポイントは積極群309例(14.4%),非積極群343例(16.7%),ハザード比(HR)0.89[95%信頼区間(CI)0.76~1.04]で両群間に有意差は認められなかった(p=0.14)。最初の4か月間の一次エンドポイントのHRは1.01と両群で同様であったが,4か月以降試験終了まで積極群で有意に低下した(HR 0.75;95%CI 0.60~0.95,p=0.02)。
ミオパチーが積極群で9例(0.4%),プラセボ投与時に1例発症した(p=0.02)。
★結論★ACSにおけるsimvastatinの早期積極治療による一次エンドポイントの有意な低下は実現しなかったが,主要な心血管イベント抑制の傾向が認められた。
ClinicalTrials.gov Identifier: NCT00251576
文献
  • [main]
  • Blazing MA for the A to Z investigators: Safety and efficacy of enoxaparin vs unfractionated heparin in patients with non-ST-segment elevation acute coronary syndromes who receive tirofiban and aspirin: a randomized controlled trial. JAMA. 2004; 292: 55-64. PubMed
  • de Lemos JA et al for the A to Z investigators: Early intensive vs a delayed conservative simvastatin strategy in patients with acute coronary syndromes; phase z of the A to Z trial. JAMA. 2004; 292: 1307-16. PubMed
  • [substudy]
  • 入院時の診断,クレアチニンクリアランス,LDL-C,CRP,BNPで調整後,単球遊走因子-1(monocyte chemoattractant protein-1:MCP-1)>238pg/mLは死亡率と独立して関連する:J Am Coll Cardiol. 2007; 50: 2117-24. PubMed
  • 30日後の高感度CRP(hs-CRP)が>3mg/Lのものは1~3mg/L,<1mg/Lのものに比べ2年後の死亡率が有意に高い(6.1% vs 3.7%vs 1.6%,p<0.0001)。4月後のhsCRP値でも同様。年齢,性,糖尿病,喫煙,心血管疾患既往などで補正後のhsCRP>3mg/L例は<1mg/L例に比べ死亡リスクは3倍以上。hsCRPが平均的(1~3mg/L)な例でも,<1mg/dL例に比べリスクが上昇:Circulation. 2006; 114: 281-8. PubMed
  • z-phaseとPROVE IT-TIMI 22と合わせて検討:患者背景はA to Zの方が高リスク。アメリカの登録例がより多く,ランダム化前の血行再建術はPROVE IT-TIMI 22の方が多かった。早期(4か月以内)のLDL-Cの低下率はA to Zの方がPROVE IT-TIMI 22より大きい。CRPの有意な低下はPROVE IT-TIMI 22でA to Zより早期にみられ,早期のイベント率はA to Zの方が高かった。A to Zでは最初の4か月に有効性はみられなかったが,PROVE IT-TIMI 22では有意に近い有効性が確認された:Circulation. 2006; 113: 1406-14. PubMed
  • z-phase:BNP値をベースライン時,試験開始から4か月後,12か月後も退院後に測定。2年の追跡期間に死亡230例,うっ血性心不全(CHF)163例。ベースライン時にBNPが高値(>80pg/mL)だったものは死亡あるいは新規CHFのリスクが有意に高かった。4か月後もBNPは生存と強く関連,さらに12か月後も同様に強い相関がみられた:JAMA. 2005; 294: 2866-71. PubMed

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収載年月2004.09
更新年月2008.01