循環器トライアルデータベース

JMIC-B
Japan Multicenter Investigation for Cardiovascular Disease-B

目的 冠動脈疾患(CAD)を有する日本人高血圧例において,心イベント抑制効果を長時間作用型Ca拮抗薬nifedipineとACE阻害薬とを比較する。

一次エンドポイントは全心イベント[心臓死あるいは突然死,心筋梗塞(MI),狭心症あるいは心不全による入院,重篤な不整脈,冠動脈インターベンション]。
二次エンドポイントは脳血管イベント,腎不全,非心血管イベント,全死亡。
コメント 冠動脈疾患例の予後改善に対してACE阻害薬が有用であることがHOPE試験,EUROPA試験で証明され,降圧効果がわずかでも心イベント抑制効果が大きかったことから,「beyond blood pressure lowering effect」が論議されるようになった。本試験は日本人の冠動脈疾患では,Ca拮抗薬の長期的有用性はACE阻害薬と同等であることを示した点で意義が大きい。注目すべきは,ほぼ全経過を通じてnifedipine群の方が降圧効果は強いことである。このことがnifedipine群の心イベント予防に影響した可能性はある。最近,冠動脈合併の高血圧例に対する有用性をアンジオテンシンII受容体拮抗薬とCa拮抗薬amlodipineで比較したVALUE試験の結果が発表されたが,やはりCa拮抗薬の降圧の強さが心イベント抑制に寄与することが報告された。これらの結果は人種を問わず,冠動脈疾患合併高血圧患者では,まずCa拮抗薬による降圧が重要であることを示している。本試験は,NICS-EH試験の結果とともにblood pressure lowering treatment trialists' collaborationによるメタアナリシス(Lancet. 2003; 362: 1527-35.)の解析対象となっているわが国の数少ない臨床試験の1つである。(桑島
デザイン PROBE(prospective, randomized, open, blinded endpoint),多施設(日本の心血管疾患専門病院354施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は3年。
登録期間は1994年1月~1997年7月。
対象患者 1650例。<75歳の外来患者。日本人。
CADの定義:American Heart Associationの基準[1年以内の冠動脈造影(CAG)による≧75%の狭窄]に拠った。CAG非実施例は次の2点を満たすCAD。1)安定した頻度で毎週3回以上の狭心症発作の既往,2)トレッドミル運動負荷試験による1mm以上のST下降。
高血圧の定義:1)収縮期血圧(SBP)≧160mmHgあるいは拡張期血圧(DBP)≧95mmHg,およびSBP≧150mmHgおよびDBP≧90mmHg,2)降圧薬治療既往。
除外基準:急性心筋梗塞,不安定狭心症,DBP≧120mmHg,二次高血圧,症候性脳血管疾患,顕在心不全,心房細動,重篤な不整脈(心室性頻拍,心室細動),腎不全(クレアチニン>176.8μmol/L)など。
■患者背景:平均年齢(nifedipine群65歳,ACE阻害薬群64歳),男性(67.6%, 70.0%),血圧(147/82mmHg, 145/82mmHg;治療例146/81mmHg, 144/81mHg;未治療例160/91mmHg, 163/93mmHg),MI(38.0%, 46.4%),狭心症(68.4%, 61.7%),高脂血症(25.6%, 21.1%),糖尿病(24.0%, 21.1%)。
治療法 降圧薬治療例にwashout期間は設けずに試験薬に切り替えた。
nifedipine群(828例):nifedipine徐放錠10~20mg×2回/日,ACE阻害薬群(822例):enalapril 5~10mg, imidapril 5~10mg, lisinopril 10~20mg。両群とも治療期間は3年間。
目標血圧値<150/90mmHgに達しない場合は,α遮断薬(doxazosin, bunazosin, prazosin)を併用。抗狭心症効果が十分でない場合は長時間作用型あるいは短時間作用型硝酸薬および/あるいはβ遮断薬を併用投与した。
結果 一次エンドポイントはnifedipine群116例(14.0%):64.69/1000人・年,ACE阻害薬群106例(12.9%):63.42/1000人・年で相対リスク(RR)1.05[95%信頼区間(CI)0.81-1.37, p=0.75]。3年間の一次エンドポイントの累積を示すKaplan-Meier曲線による両群間の有意差は認められなかった(p=0.86)。
MIはnifedipine群16例(1.9%),ACE阻害薬群13例(1.6%)でRR 1.31(95%CI 0.63-2.74),突然死あるいは心臓死は両群とも6例(0.7%)でRR 0.96(95%CI 0.31-3.04),全死亡はそれぞれ12例(1.4%),15例(1.8%)でRR 0.76(95%CI 0.35-1.63),脳血管イベントは両群16例でRR 1.00(95%CI 0.50-2.02)で両群間に有意差はみられなかった。サブグループ解析でも心イベントにおける両群間の有意差はなかった。
併用状況:硝酸薬[nifedipine群587例(70.9%),ACE阻害薬群567例(69.0%)],β遮断薬[205例(24.8%),192例(23.4%)]は両群間に有意差はなかった。α遮断薬[52例(6.3%),88例(10.7%)]は有意差があったものの(p=0.0012),サブ解析では心イベントの差に影響はしていなかった。
有害事象はnifedipine群76例,ACE阻害薬群121例。有害事象による脱落は5.0% vs 8.8%で有意差がみられた(p=0.002)。
文献
  • [main]
  • Yui Y et al for the Japan multicenter investigation for cardiovascular diseases-B study group: Comparison of nifedipine retard with angiotensin converting enzyme inhibitors in Japanese hypertensive patients with coronary artery disease; the Japan multicenter investigation for cardiovascular diseases-B (JMIC-B) randomized trial. Hypertens Res. 2004; 27: 181-91. PubMed
  • [substudy]
  • CADを合併した高血圧のCKD患者で降圧によりeGFRが改善する可能性が示された。
    CKD(推算糸球体濾過量[eGFR]<60mL/分/1.73m²)を合併した高血圧患者(98例;平均年齢68歳;女性46.9%;CAD[心筋梗塞44.9%,狭心症58.2%,無症候性心筋虚血10.2%];血圧143/80mmHg;血清クレアチニン115.4μmol/L)において,降圧治療が低eGFRの低下を予防し,eGFRを改善できるか検討した結果:CKD合併例は非合併例(eGFR≧60 mL/分/1.73m²・682例)にくらべ有意に高齢で女性が多く,血清クレアチニン値,利尿薬,ACE阻害薬の服用率が有意に高かった。
    3年間の降圧治療でCKD合併例のeGFRは有意に増加した(51.87→57.55 mL/分/1.73m², p<0.001)。一方,CKD非合併例ではeGFRは有意に低下(91.84→88.95 mL/分/1.73m², p<0.001)。降圧薬の種類を問わず同様の結果であった:J Clin Hypertens. 2013; 15: 171-5. PubMed
  • 降圧によりCAD合併高血圧患者の心リモデリングおよび心機能が改善。
    降圧治療に逆リモデリング効果があり心機能を改善できるのか,降圧薬の種類による違いがあるのかを検証した結果(左室造影[LVG]解析を実施したCa拮抗薬群58例・平均年齢64歳;女性19.0%,ACE阻害薬群61例・65歳;19.7%):患者背景,試験期間中の併用治療に両群間に有意差はなく,利尿薬服用(ベースライン時および試験期間中)にも差ははなかった。
    両群とも左室拡張末期容積指標,収縮末期容積指標が有意に減少,EF,1回心拍出係数,心係数は有意に増加し,局所壁運動低下が改善した。これらの効果における両群間の有意差はみられなかった。
    両群とも治療による収縮期血圧の低下(Ca拮抗薬群15.2mmHg,ACE阻害薬群14.5mmHg, p=0.675)と逆リモデリング・心機能改善効果とに弱いながらも有意な関連がみられた:J Hypertens. 2010; 28: 178-85. PubMed
  • 心筋梗塞既往の高血圧患者における冠動脈疾患の進展抑制による狭心症による入院減少はnifedipine群がACE阻害薬群を上回る。
    心筋梗塞(MI)既往例(696例・平均年齢64歳:nifedipine群315例,ACE阻害薬群381例),非既往例(954例・65歳:513例,441例)の狭心症による入院抑制とMI既往例の定量的冠動脈造影(QCA)解析(87例:38例,49例)を合わせて検討した結果:背景で有意差があったのは,MI非既往例の糖尿病患者(25.0%, 15.9%;p=0.001)。
    試験期間中のα阻害薬の併用はnifedipine群でMIの既往を問わず有意に少なかったが,硝酸薬,β遮断薬,抗血小板薬,高脂血症治療薬,利尿薬の併用率に差はなかった。
    ・降圧:MI非既往例ではnifedipine群のほうが収縮期血圧(SBP)は低下の傾向(p=0.086),拡張期血圧(DBP)は有意に降圧した(p=0.003)。
    nifedipine群:142/80→134/76mmHg,ACE阻害薬群:140/80→136/78mmHg。
    MI非既往例ではSBP(p=0.003),DBP(p<0.01)いずれも同群のほうが有意に降圧:150/83→138/77mmHg,ACE阻害薬群:150/84→140/79mmHg。
    ・心拍数の変化:両群間差はみられなかった。
    ・冠動脈造影(CAG)所見に基づく狭心症による入院:nifedipine群で有意に抑制された(p=0.013)。
    ・CAG結果:MI既往例における新規病変の発症(p=0.042),既存病変の進展(p=0.028) はnifedipine群が有意に抑制した。
    ・QCA結果:nifedipine群では最小血管径の有意な変化はなかったが,ACE阻害薬群では有意に縮小し,両群間に有意差が認められた(p=0.047):J Hypertens. 2007; 25: 2019-26. PubMed
  • nifedipine群,ACE阻害薬群のいずれもアテローム性動脈硬化の進展抑制の可能性があり,特に軽度~中等度狭窄に対するnifedipine群の有効性が示唆される。
    定量的冠動脈造影(QCA)解析によりアテローム性動脈硬化の進展をnifedipine群(83例・平均年齢64歳:追跡期間31.2か月)とACE阻害薬群(79例・63歳:28.8か月)とで比較した結果:試験期間中のnifedipine平均投与量は33.9mg/日。
    ・降圧:nifedipine群;145/81→135/74mmHg(p<0.001),ACE阻害薬群;144/80→136/76mmHg(p=0.003/0.034)で,両群間に有意差はなかった。
    最小血管径の変化はnifedipine群ではほとんどなく(+0.02mm, p=0.543),ACE阻害薬群では有意に縮小し(-0.12mm, p<0.001),両群間に有意差がみられた(p=0.002)。nifedipine群ではprogressor(1病変以上で最小血管径≧0.4mm縮小したもの,新規に≧1病変発症したもの,完全閉塞への進展)がACE阻害薬群より有意に少なく(p=0.019),治療後の≧1病変発症例にも両群間に有意差があった(p=0.040)。また新規病変数/患者もnifedipine群のほうが少なかった(p=0.072)。
    狭窄率≦40%例ではnifedipine群がアテローム性動脈硬化進展を抑制したが,≧41%例に対しては両群抑制した:Hypertension. 2005; 45: 1153-8. PubMed
  • CADを合併した高血圧患者において,糖尿病の有無にかかわらず心イベント抑制効果はnifedipineとACE阻害薬は同等。
    糖尿病合併例(372例[23%]:nifedipine群199例・平均年齢63歳,ACE阻害薬群173例・64歳),非合併例(1,278例:629例・65歳,649例・64歳)の心イベントを比較した結果:試験期間中の併用降圧薬は糖尿病合併例では有意な群間差はなかったが,非合併例ではnifedipine群でα遮断薬の併用が有意に少なかった。このことと心イベントに関連はない。
    ベースライン時の血圧は糖尿病合併,非合併例に有意差はなかったが,降圧は非合併例で両群間に有意差がみられた(糖尿病合併例:nifedipine群147/82→138/76mmHg,ACE阻害薬群146/81→140/78mmHg,非合併例:147/82→136/77mmHg, 145/82mmHg→138/79mmHg;p<0.01)。心拍数,血糖値に有意な変化は群間にみられず,心拍数は糖尿病合併の有無も問わずみられなかった。
    心イベントは糖尿病合併例,非合併例とも両群間に有意差は認められなかった(糖尿病合併例:nifedipine群15.08% vs ACE阻害薬群15.03%;相対リスク1.06[p=0.838],非合併例:13.67% vs 12.33%;1.04, p=0.792):Hypertens Res. 2004; 27: 449-56. PubMed

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収載年月2004.09
更新年月2013.04