循環器トライアルデータベース

X-TRACT
X-SIZER for Treatment of Thrombus and Atherosclerosis in Coronary Interventions Trial

目的 伏在静脈グラフト(SVG)病変および血栓を有するnative冠動脈に対するステント植込み前の血栓除去が周術期の心筋壊死を抑制し,イベント発生を伴わない生存率を上昇させるかを検討。
コメント 再狭窄にもある程度の目途が立ち,PCIの焦点はbeyond-DES (drug-eluting stent)に移りつつある。その一つが,血栓やdebris,atheromaなどによるdistal embolismの予防である。distal embolismによってno flowや側枝閉塞が引き起こされ,心筋梗塞や死亡などの重大な合併症に繋がる。予防策として抗血小板剤(血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬),thrombectomy(TEC,Angiojet,X-Sizer),distal protection(バルーン閉塞・吸引,フィルター)などが検討されている。
X-Sizerはセットアップの容易さやコストの面で他のthrombectomy deviceに優る。thromboectomy device間の比較検討はないが,Angiojet,X-Sizerともに30日間のMACEに関しては20%前後との報告が多いようである。一方distal protection deviceでは,SAFER trial,FIRE trialで示されたように,SVG PCIの30日間MACE は10%前後で,ステント単独治療に優るとの報告が多い。本トライアルではlarge MIこそ抑制されたが,予後・冠動脈造影所見(TIMI flow,残存血栓,遠位塞栓,no flow)でステント単独群と差はなく,SVG治療においてdistal protection deviceを上回るのは難しそうである。血栓を含むnative病変ではdistal protection deviceの評価はこれからであるが,thrombectomy deviceが活躍できるとしたら,protectionできない大きな分枝を含む病変かも知れない。(中野中村永井
デザイン 無作為割付け,多施設(米国,カナダの60施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は12か月。ランダム化期間は2000年3月~2002年4月。
対象患者 797例(839病変)。冠動脈造影上,参照血管径3.0mm以上,>50%かつ<100%の狭窄のSVGまたはnative冠動脈に1つ以上の病変を有するもの。SVG病変の完全閉塞はガイドワイヤーでcrossできた場合。native冠動脈病変については担当医により冠動脈造影上で血栓を有すると評価された場合。
臨床的除外基準:24時間以内の急性心筋梗塞;手技日のCPK-MB上昇;EF<30%;心原性ショック。
冠動脈造影的除外基準:入り口病変,SVGの遠位吻合部,6か月以内のSVG,動脈グラフト,ステント内病変,血管あるいは病変部の高度の蛇行,石灰化,6か月以内のPCI不成功など。
■患者背景:年齢(X-SIZER群66.4歳,対照群65.4歳),男性(78.5%,79.1%),糖尿病(31.6%,29.5%),MI既往(66.2%,62.4%),不安定狭心症(85.5%,88.9%),標的血管がSVG(74.7%,71.9%),TIMI grade 3(73.7%,78.6%)。
治療法 最初の病変に対するwire-crossing成功後,X-SIZER群(400例):X-SIZER デバイスによる血栓除去後PCI(可能であればステント植込み),または対照群(397例):血栓除去を行わずPCIおよびステント植込み,にランダム化。
カテーテル前にaspirin咀嚼錠325mg,clopidogrel 300mgを投与。血小板GPIIb/IIIa受容体拮抗薬使用の使用は術者の裁量に任せる。未分画heparinを活性化凝固時間≧300秒(血小板GPIIb/IIIa薬の場合は200~300秒)を維持するよう投与。前治療を受けていない患者に対するGPIIb/IIIa薬のbail-out 使用,本試験で使用しているもの以外のmechanical atherothrombectomyデバイスは不成功例または合併症例のみで許可。試験期間中の末梢保護デバイスの使用は不可。手技後,aspirin 325mg/日を持続投与,clopidogrel 75mg/日は4週間投薬。
結果 周術期の心筋梗塞(MI)の発症率はX-SIZER群15.8%,対照群16.6%(p=0.77)であったが,large MI(新規の異常なQ波発生,または正常値上限の8倍以上のCPK-MBアイソザイム上昇)は5.5% vs 9.6%(多変量リスク比0.35,95%信頼区間0.18-0.66,p=0.002)であった。血栓病変においては,手技後の最高CPK値(160 vs 216,p=0.021),最高CPK-MB値(13 vs 25,p=0.067),30日以内の死亡またはlarge MI(4.7% vs 9.9%,p=0.04)がX-SIZER群で低下した。
主要な心有害イベント[MACE:心臓死,心筋梗塞(MI),標的血管の血行再建術の複合]の発生は,30日後にX-SIZER群16.8% vs 対照群17.1%(p=0.92),1年後に31.3% vs 28.2%(p=0.35)であった。
★結論★高リスクのSVG病変,および血栓を含むnative冠動脈に対するステント植込み前のX-SIZERデバイスによる血栓除去は心筋壊死の度合いを低下させるが,発生率は低下させないとみられ,早期および長期のイベントの発生を伴わない生存率は改善しなかった。
文献
  • [main]
  • Stone GW et al: Prospective, randomized evaluation of thrombectomy prior to percutaneous intervention in diseased saphenous vein grafts and thrombus-containing coronary arteries. J Am Coll Cardiol. 2003; 42: 2007-13. PubMed

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収載年月2004.09