循環器トライアルデータベース

SHEAF
Self-Measurement of Blood Pressure at Home in the Elderly: Assessment and Follow-up

目的 高齢者高血圧治療例において,予後予測因子としての家庭血圧と診察室血圧(外来血圧)を比較する。一次エンドポイントは心血管死。
コメント Pickeringが提唱した仮面高血圧は,降圧薬を服用していない例を対象とした概念であったが,本論文のSHEAF研究は降圧薬を服用中の高齢者における仮面高血圧のリスクも非常に高いことを証明した点で注目される。降圧薬を服用していない例の仮面高血圧は,昼間の喫煙,過剰ストレスのほかに夜間の血圧非下降(non-dipper)をきたす睡眠時無呼吸症候群,自律神経障害などが原因である。一方,本研究のように降圧薬服用中の症例でみられる仮面高血圧は,早朝の著しい高血圧をきたすような降圧効果の非持続性が問題となる。本研究では仮面高血圧は降圧治療を受けている高齢者の9%に認められ,その心血管リスクは,家庭血圧,診療室血圧とも良好にコントロールされている症例の約2倍であり,コントロール不良の高血圧症例よりもむしろ高いという重要な報告を行っている。Pickeringは仮面高血圧は若年者,女性に多いと報告しているが,本研究では高齢者で降圧薬を服用中の男性に多いことを指摘している点でも注目される。平均3.2年間の追跡期間中のコントロール状況が把握されていない,いわゆるコホート研究という限界はあるものの,仮面高血圧のリスクが高いことを示したエビデンスとして重要な論文である。(桑島
デザイン コホートスタディ,観察試験。
期間 平均追跡期間は3.2年。登録期間は1998年2月~'99年3月。
対象 4939例。60歳以上の降圧治療を受けている本態性高血圧;2回の通院時の外来血圧>140/90mmHg,家庭血圧<135/85mmHg;最近,急性心血管イベント(心筋梗塞,脳卒中)を発症していないもの。
■患者背景:平均年齢70歳,男性48.9%,外来血圧152/85mmHg・脈拍67拍/分,家庭血圧146/82mmHg・脈拍64拍/分,肥満19.0%,糖尿病14.7%,高脂血症治療例43.7%。
調査方法 第1段階(評価期間):2週間間隔で2回通院し,外来血圧,家庭血圧,心拍数(家庭計測値の平均),降圧治療,性,年齢,肥満(BMI≧30),喫煙状況(喫煙中,喫煙歴,喫煙経験なし),糖尿病の有無,高脂血症治療の有無(フィブラート系,スタチン系),心血管合併症既往,クレアチニンクリアランスを記録。
第2段階(観察期間):3年間の追跡。
結果 心血管イベント発症は324例(22.2例/1000人・年)。
家庭血圧では収縮期血圧(SBP)が10mmHg上昇するごとに心血管イベントのリスクは17.2%上昇[95%信頼区間(CI)11.0-23.8%],拡張期血圧(DBP)が5mmHg上昇するごとにリスクは11.7%上昇した(95%CI 5.7-18.1%)。一方,外来血圧は血圧の上昇に伴う心血管イベントの有意な増加はみられなかった(各5.8%上昇,1.4%上昇)。
205例が死亡(13.6例/1000人・年),うち85例が心血管死(5.6例/1000人・年)。年齢,性,心血管疾患既往,喫煙などで補正後のCox比例ハザードモデルを使用すると,家庭血圧は心血管イベントの予測因子である。外来SBP,DBPいずれも予測因子ではない。
(1)群:外来,家庭血圧とも良好にコントロールされている高血圧(685例);外来血圧130.2/77.0mmHg,家庭血圧123.0/73.6mmHg,(2)群:外来血圧は上昇しているが家庭血圧は正常(白衣高血圧・656例);150.5/84.8mmHg,126.6/74.3mmHg,(3)群:外来血圧は正常だが家庭血圧は上昇(仮面高血圧・462例);133.7/78.3mmHg,143.8/82.5mmHg,(4)群:両方の血圧ともコントロール不良の高血圧(3125例);159.5/87.3mmHg,155.4/85.6mmHg。
多変量解析を行うと,(4)群の心血管イベントのハザード比は(1)群と比べ1.96(95%CI 1.27-3.02),(3)群は2.06(95%CI 1.22-3.47)と有意に高かった。一方,(2)群は1.18(95%CI 0.67-2.10)で差はなかった。
★結論★仮面高血圧群の心血管合併症発症リスクはコントロール良好群の約2倍であり,家庭血圧は外来血圧よりも有用な予測因子であると思われる。
文献
  • [main]
  • Bobrie GJ et al: Cardiovascular prognosis of “masked hypertension” detected by blood pressure self-measurement in elderly treated hypertensive patients. JAMA. 2004; 291: 1342-9. PubMed

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EBM 提供:大日本住友製薬 「循環器トライアルデータベース
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収載年月2004.04