循環器トライアルデータベース

PROVE IT-TIMI 22
Pravastatin or Atorvastatin Evaluation and Infection Therapy-Thrombolysis in Myocardial Infarction 22

目的 急性冠症候群(ACS)において,HMG-CoA reductase阻害薬atorvastatinによる強力な脂質低下治療の死亡および主要な心血管イベント抑制効果をpravastatinによる標準的治療と比較する。
一次エンドポイントは全死亡+心筋梗塞(MI)+入院を要する不安定狭心症+血行再建術(ランダム化から30日以降に施行)+脳卒中。
コメント 本試験は,本来ACS直後では,プラバスタチンによる標準的治療(LDL-C:95mg/dLに低下)がアトルバスタチンによる強力な治療(LDL-C:62mg/dLに低下)に対してイベント発症に差がないのではないかということで組まれた試験である。結果としては,やはりリスクの高い群ではLDL-Cは下げればそれだけ効果があることが実証されたことになる。また,極めて早期にその治療効果があったということからACS直後からの治療が重要であることを示したと言える。4162人という大規模で行われ,その信頼性は高く,今後の管理目標値の設定に影響を与えそうである。ただし,ベースラインのLDL-Cが125mg/dL未満の群では両治療群の間には有意な差が見られないことから治療開始基準については今後の課題になりそうである。(寺本
デザイン 無作為割り付け,二重盲検,多施設(8か国349施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は24か月(18~36か月)。
登録期間は2000年11月15日~2001年12月22日。
対象患者 4162例。18歳以上。10日以内の急性冠症候群(急性心筋梗塞,高リスクの不安定狭心症)による入院例;安定した状態のもので,経皮的血行再建術予定例は施行後に登録;ACS発症から24時間以内の総コレステロール(TC)≦240mg/dL,ACS発症時に脂質低下薬を長期投与していた例はTC≦200mg/dL。
除外基準:いかなるスタチンであれ発症時に80mg/日のスタチン薬投与例,脂質低下療法にフィブラート系薬あるいはナイアシンを併用しランダム化前に投与を中止できないもの,1か月前のチトクロームP-450 3A4の強い阻害薬投与例あるいは試験中に投与が必要になりそうな例,6か月以内のPCI(percutaneous coronary intervention)施行例など。
■患者背景:平均年齢58歳,女性22%,LDL-C 106mg/dL,C-reactive protein(CRP)12.3mg/L,発症前のMI既往18%,発症前のCABG既往11%,ACSの治療のためのPCI施行69%,糖尿病18%,発症時のスタチン投与25%。
治療法 aspirin 75~325mg/日+ACS標準薬物およびPCI治療例を次の2群にランダム化。強力脂質低下療法群(2099例):atorvastatin 80mg/日,標準的脂質低下療法群(2063例):pravastatin 40mg/日。
30日後,4か月後,その後最終通院の2003年8~9月まで4か月ごとのフォローアップ通院時に食事のカウンセリングを実施。
結果 併用薬はaspirin 93%, warfarin 8%, clopidogrelあるいはticlopidineは開始時は72%,1年後は20%,β遮断薬85%,ACE阻害薬85%,アンジオテンシン受容体拮抗薬14%。ランダム化は発症から平均7日後。スタチン非投与例(2985例)30日後に,atorvastatin群でLDL-Cが51%,prvastatin群で22%それぞれ低下(p<0.001),投与例ではatorvastatin群で32%低下しpravastatin群で変化はなかった(p<0.001)。HDL-C上昇例は6.5%, 8.1%(p<0.001),CRPは各群で1.3mg/L, 2.1mg/L低下した(p<0.001)。
LDL-C(中央値)はatorvastatin群62mg/dL,pravastatin群95mg/dL(p<0.001)。
一次エンドポイントはatorvastatin群22.4%,pravastatin群26.3%でatorvastatin群でハザード比が16%低下した(p=0.005, 95%信頼区間5~26%)。
二次エンドポイントであるCHD死,MI,血行再建術はatorvastatin群19.7%,pravastatin群22.3%でatorvastatin群で14%低下(p=0.029)。atorvastatin群の死亡,MI,緊急血行再建術のリスクは25%低下(p<0.001)。個々のイベントにおいてもatorvastatin群で同様に有効であった[同群の血行再建術のリスク低下14%(p=0.04),不安定狭心症の再発29%低下(p=0.02),全死亡28%低下(p=0.07),死亡,MI 18%低下(p=0.06)]。脳卒中の発症はほとんどなく両群間に差はなかった。
atorvastatin群の有効性はサブグループ(性,不安定狭心症,MI,糖尿病)でも同様。その有効性はベースライン時のLDL-C≧125mg/dL例で34%低下で大きく,<125mg/dL例では7%であった。
1年後の治療中止率はatovastatin群22.8%,pravastatin群21.4%(p=0.30),2年後は30.4%, 33.0%(p=0.11)。pravastatin群で投与量を80mg/日に増量したものは8%,肝機能異常により投与量を半減したものはatorvastatin群1.9%,pravastatin群1.4%(p=0.20)。筋肉痛クレアチンキナーゼ上昇による中止例は3.3% vs 2.7%(p=0.23)。
★結論★ACS発症直後において,スタチンによる強力脂質低下療法は標準的治療よりも死亡あるいは主要な心血管イベントに対し有意な保護効果を示した。早期にLDL-Cを下げ低値を持続する治療の有効性を示した今回の結果から,現行のLDL-C管理目標値が下がることが示唆される。
文献
  • [main]
  • Cannon CP et al for the pravastatin or atorvastatin evaluation and infection therapy-thrombolysis in myocardial infarction 22 investigators: Comparison of intensive and moderate after acute coronary syndromes. N Engl J Med. 2004; 350: 1495-504. PubMed
  • [substudy]
  • ACS後の患者において,追跡期間中の平均血圧値と心血管イベントリスクの関係はJ型またはU型。
    追跡期間中,毎評価時に測定された各患者の血圧(SBP,DBP)の平均値を算出し,10mmHgごとにサブグループ化して心血管転帰との関係を検証した結果:試験期間中のACSの管理は標準法で行われ,血圧管理は担当医の判断に任された。平均SBPが低かった患者は高かった患者に比べてベースライン時が低リスク(若年者,男性,非肥満,非喫煙者が多く,リスク因子の保有も少ない傾向)で,逆に平均DBPが低かった患者は,リスクが高かった(高齢者,女性,高血圧,CABG歴,心不全などが多い)。
    一次エンドポイントは1,000例(24%),二次エンドポイントは856例(21%)で,それぞれの発生率と追跡期間中の平均SBP,DBPとの間にJ型もしくはU型の関係が認められた。この関係はベースライン変数で調整後も変わらなかった。また,ベースライン血圧と心血管イベントリスクの間にはこのような関係は認められなかった。非線形Cox比例ハザードモデルでは,一次エンドポイントの発生率がもっとも低い血圧値として136/85mmHg(範囲130~140/80~90mmHg)が示された。SBP 110~130mmHg,DBP 70~90mmHgの範囲は比較的曲線の勾配が平坦であった:Circulation. 2010; 122: 2142-51. PubMed
  • atorvastatinによる強力脂質低下治療は一次エンドポイントの続発も標準治療より抑制した。
    複数回のイベントを発症した例は,ベースライン時の合併症(糖尿病,高血圧,高コレステロール血症既往など)の頻度が高く,イベント時に不安定狭心症を発症している場合が多かった。またLDL-C,総コレステロールとの関連はなかったが,トリグリセライドがより高値であった(vs イベント非発症あるいは1件発症例)。さらに,イベント前のスタチン系薬剤使用率が有意に高かった(複数イベント発症例;31.6% vs 1イベント発症例28.8% vs 非発症例23.7%, p<0.001)。
    一次エンドポイント初発数の両群(atorvastatin 80mg/日群,pravastatin 40mg/日群)差は73例で,初発後のイベント発症もatorvastatin 80mg/日群の方が抑制した(275イベント vs 340イベント,p=0.009)。結果,追跡期間中の一次エンドポイント総数はatorvastatin 80mg/日群の方が138件少なかった(739イベント vs 877イベント:発症率比0.85;95%信頼区間0.77~0.94, p=0.001)。ポアソン回帰解析によるハザード比は0.82(p=0.008)でatorvastatin 80mg/日群の方がイベントを抑制した:J Am Coll Cardiol 2009; 54: 2358-62. PubMed
  • PCI-PROVE IT(サブスタディ)
    PCI施行例においても強力な脂質低下治療は標準治療よりも有害心イベントを抑制。標的血管血行再建術抑制はLDL-C,CRP低下とは独立していた。
    PCI施行例(2,868例[68.9%]:atorvastatin 80mg/日群1,442例,pravastatin 40mg/日群1,425例)の結果:ACS治療のためPCIを施行したものは,より若年で,合併症(糖尿病,高血圧,末梢血管疾患[PAD],心筋梗塞[MI]あるいはCABG既往)が少なく,ACS発症時のスタチン系薬剤使用率,CRP値,喫煙率が高かった。しかし,PCI施行例と非施行例間,治療群間に有意差が認められたのは,PCI施行+pravastatin 40mg/日群でPADが多かったことのみであった。
    LDL-C(中央値):PCI施行例[非施行例](ベースライン時;106mg/dL[106mg/dL]→30日後;PCI+pravastatin 40mg/日群89mg/dL[87mg/dL] vs PCI+atorvastatin 80mg/日群56.5mg/dL[58mg/dL]:p<001[p<001])。
    CRP(中央値):13.2mg/L[9.4mg/L]→2.14mg/L[2.63mg/L] vs 1.55mg/L[1.88mg/L] :p<001[p<001]。
    PCI施行例の2年後の一次エンドポイント:atorvastatin 80mg/日群21.5% vs pravastatin 40mg/日群26.5%(ハザード比0.78;95%信頼区間0.67~0.91, p=0.001)。
    心血管死,非致死的MI,虚血再発,不安定狭心症による入院の複合:15.4% vs 20.1%(0.73;0.61~0.87, p=0.001)。
    標的血管血行再建術(TVR):11.4% vs 15.4%(p<0.001),非TVR:8.0% vs 10.5%(p=0.017)。
    治療中のLDL-C,CRPで調整後のTVRもatorvastatin 80mg/日群の方が有意に抑制したが(オッズ比0.74, p=0.015),非TVRはしなかった(0.92, p=0.55):J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 2290-5. PubMed
  • atorvastatin群の有効性はベースライン時のLDL-Cが高いほど大きかった:LDL-Cの4分位最高値(>132mg/dL。中央値148mg/dL)のatorvastatin群のハザード比0.63(p=0.002),3番目の値(112~132mg/dL。121mg/dL)は0.85(p=0.32),2番目(93~112mg/dL。102mg/dL)は0.84(p=0.26),最低値(≦92mg/dL。81mg/dL)は0.93(p=0.63):J Am Coll Cardiol. 2008; 52: 914-20. PubMed
  • 治療中のトリグリセライド(TG)<150mg/dLは独立してCHDの再発リスク低下と関連。
    治療中のTG<150mg/dLは≧150mg/dLに比べCHDリスクを有意に抑制した(ハザード比[HR]0.73;95%信頼区間0.62~0.87, p<0.001),多変量解析後は0.80;0.66~0.97(p=0.025)。
    LDL-C<70mg/dL・TG<150mg/dL:HR 0.72;0.54~0.94(p=0.017),LDL-C≧70mg/dL・TG<150mg/dL:HR 0.85;0.67~1.08(p=0.180) vs LDL-C≧70mg/dL・TG≧150mg/dL),LDL-C<70mg/dL・TG<150mg/dL・CRP<2mg/L:HR 0.59;0.41~0.83(p=0.002)。低HDL-CはCHDリスクと関連しなかった。
    TG 10mg/dL低下ごとの死亡,心筋梗塞,ACS再発症低下率は1.6%(p<0.001),LDL-C,非HDL-Cなどで調整後は1.4%(p=0.01):J Am Coll Cardiol. 2008; 51: 724-30. PubMed
  • ACS発症から平均7日後,4か月後にネオプテリンを測定。ネオプテリン上昇により検出される単球活性化の上昇は,ACS後の長期死亡,急性冠イベントのリスク例を同定できる:Circulation. 2007; 115: 3071-8. PubMed
  • 糖尿病を合併した症例は強力な脂質低下治療にかかわらずLDL-C<70mg/dLおよび高感度CRP<2mg/L達成率は38%と低い。同症例において,強力な脂質低下治療は非糖尿病例に比べ有意に急性冠イベントを予防した(予防イベント55件/治療例1000例 vs 40件/1000例):Eur Heart J. 2006; 27: 2323-9. PubMed
  • 強力脂質低下療法群は心不全による入院を有意に抑制した(1.6% vs 3.1%,ハザード比0.55;95%信頼区間0.35~0.85, p=0.008)が,この有効性が最も高かったのはBNP高値(>80pg/mL)症例であった:J Am Coll Cardiol. 2006; 47: 2326-31. PubMed
  • lipoprotein-associated phospholipase A2 (Lp-PLA2) はベースライン時より30日後が低値。特にatorvastatin 80mg/日群で20%低下し,pravastatin(3.6%)より有意に低下。30日後のLp-PLA2が五分位最高値の症例は心血管イベント再発症リスクが有意に上昇した:Circulation. 2006; 113: 1745-52. PubMed
  • A to Z(z-phase)と合わせて検討:患者背景はA to Zの方が高リスク。アメリカの登録例がより多く,ランダム化前の血行再建術はPROVE IT-TIMI 22の方が多かった。早期(4か月以内)のLDL-Cの低下率はA to Zの方がPROVE IT-TIMI 22より大きい。CRPの有意な低下はPROVE IT-TIMI 22でA to Zより早期にみられ,早期のイベント率はA to Zの方が高かった。A to Zでは最初の4か月に有効性はみられなかったが,PROVE IT-TIMI 22では有意に近い有効性が確認された:Circulation. 2006; 113: 1406-14. PubMed
  • 30日後の死亡+心筋梗塞(MI)+ACS再発による再入院はatorvastatin群3.0%,pravastatin群4.2%(ハザード比[HR]0.72, p=0.046)。6か月後~試験終了時はそれぞれ9.6%, 13.1%(HR 0.72, p=0.003):J Am Coll Cardiol. 2005; 46: 1405-10. PubMed
  • 強力低下群のうち4か月後のLDL-Cを測定した1949例の90.1%が目標(<100mg/dL)に達した。うち80~100mg/dLは14%,60~80mg/dLは31%,40~60mg/dLは34%,40mg/dL未満は11%。LDL-Cの低値はより男性,高齢,糖尿病が多く,ベースライン時のLDL-C値が低く,スタチン治療の既往がありMIの既往が少なかった。LDL-Cが低値の例に安全面で重大な違いはみられず,40mg/dL未満,40~60mg/dL例は主要な心イベントが少なかった:J Am Coll Cardiol. 2005; 46: 1411-6. PubMed
  • コントロールが難しい危険因子の保有数とCRPの直線的な関係が両群でみられた(p<0.0001)。この危険因子を保有している例においても強力な脂質低下療法はCRPの低下と関連した(p<0.0001):J Am Coll Cardiol. 2005; 46: 1417-24. PubMed
  • 年齢などで補正後の心筋梗塞再発あるいは血管死のリスクが28%低下したLDL-C<70mg/dLおよびCRP<2mg/Lの両方を達成したのは1018例(27.1%)で,atorvastatin群43.9%,pravastatin群10.5%,LDL-C<70mg/dLおよびCRP<1mg/Lを達成したのはそれぞれ5.8%, 26.1%でatorvastatin群の方が多かったものの,いずれの薬剤も大半の患者にイベント抑制効果を最大限もたらすまでには低下できなかった:J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 1644-8. PubMed
  • クラミジア・ニューモニエに有効なgatifloxacin 400mg/日をランダム化から2週間後に2週間投与し,その後毎月10日間平均2年間投与したが,心血管イベント抑制効果は認められなかった:N Engl J Med. 2005; 352: 1646-54. PubMed
  • スタチン治療後のCRPが低い例は高い例に比べLDL-C値に関わりなく転帰が良好である:N Engl J Med. 2005; 352: 20-8. PubMed

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収載年月2004.03
更新年月2010.12